• 2025/02/25
  • 2025/02/25

MAツールを刷新し営業のポテンシャルを最大限に引き出した山洋電気B2Bマーケティングの極意

MAツールを刷新し営業のポテンシャルを最大限に引き出した山洋電気B2Bマーケティングの極意

B2Bマーケティングの戦略においては、獲得したリードを大切に育て、契約につなげるプロセスのなかで、マーケティング部門と営業部門の連携が非常に重要です。

山洋電気株式会社は、MAツールを刷新したことで部門間のコミュニケーションを円滑化し、新規案件の創出金額を数倍に増やしました。

MAツールの導入について、どのように社内の合意形成をしたのでしょうか。また、業務プロセスはどう変化したのでしょうか。

ツールの導入を推進した同社マーケティング部第一課の4名に、電通イニシアティブが迫ります。

小峯理恵子

PROFILE

山洋電気株式会社 マーケティング部 第一課 課長

小峯理恵子

新卒で山洋電気に入社し、BtoBマーケティングを始める。山洋電気のマーケティングを一から構築した。2017年12月から現職。ミッションは、新規案件の創出。行動指針は、“お客様”と私たちが「わくわく」するマーケティングを実践する。24年に日経クロストレンド「日本のマーケター名鑑2024」に選出される。同年、「日経クロストレンド BtoBマーケティング大賞2024」で、山洋電気が「プロセス改革部門」の部門賞を受賞。

齊藤香里

PROFILE

山洋電気株式会社 マーケティング部 第一課 主査

齊藤香里

WEB制作会社を経て、2012年より山洋電気でBtoBマーケティング業務に従事。サイト制作・SEO・広告・アクセス解析・展示会運営などを担当。ウェブ解析士。

安藤遥香

PROFILE

山洋電気株式会社 マーケティング部 第一課 主任

安藤遥香

電設資材商社のマーケティング部門を経て、2021年より山洋電気でBtoBマーケティング業務に従事。戦略設計・ターゲット設定・キャンペーン・CRM推進などを担当。

武内知代

PROFILE

山洋電気株式会社 マーケティング部 第一課

武内知代

広告代理店の制作業務を経て、2012年より山洋電気でテレマーケティング業務に従事。ホワイトペーパー・バナー・イラスト制作などを担当。

荻野亜純

PROFILE

株式会社電通 プランナー/プロデューサー

荻野亜純

IT・通信系クライアントをメインにプロデュース業務に従事。R&D部門との事業開発、B2Bマーケティング支援、EC・マーケットポータル事業、コーポレートブランディング支援、発表会・各種キャンペーン・展示会など幅広く担当。2022年、留学にて社会変革や開発領域におけるコミュニケーションを履修。帰国後は、PR手法をメインに、コミュニケーション設計~施策実施に従事している。

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PROFILE

株式会社CARTA MARKETING FIRM アカウントマネージャー

芳田晃一

映像制作会社、電通を経て​2022年よりCARTA HOLDINGS。B2CからB2Bまで幅広い案件に携わり、デジタル領域を中心にマーケティング戦略からプランニング、効果検証までの業務を推進。電通グループ横断プロジェクト「電通B2Bイニシアティブ」リーダー。

 

メンバーの得意分野を活かし持続可能な体制を実現。山洋電気のマーケティングチーム

荻野氏 はじめに貴社のマーケティング部の組織体制について教えていただけますか?

小峯氏 マーケティング部全体では現在22名の組織で、3つの課に分かれています。そのなかで、主にデジタルマーケティングやデマンドジェネレーションの分野に取り組むのが私たち第一課です。

そして、第二課はプレセールス※1、リサーチを、第三課は展示会の企画や運営を担っています。

※1テレマーケティングの次にMQLを育成し、製品の選定、見積もり段階まで案件を深堀りしてから営業へ引き継ぐ、マーケティングと営業をつなぐ重要な役割

山洋電気株式会社 マーケティング部 第一課 課長 小峯理恵子氏

山洋電気株式会社 マーケティング部 第一課 課長 小峯理恵子氏

荻野氏 今回お集まりいただいた第一課のみなさんの役割分担も伺いたいです。

小峯氏 私は課長としてチームのマネージメントを務めています。目指しているのは、それぞれがオーバーラップしながらも特性を活かし、有機的に成長し続けられる組織です。子どもがいるメンバーもいますし、病気や災害に見舞われる可能性は誰にでもありますが、どんな状況下でも業務を滞りなく進められる持続可能な体制を整えています。

齊藤氏 私はマーケティング戦略のなかで前半部分にあたる「認知獲得」を目的とした施策を主に担当しています。例えばWebサイトの更新やSEO対策、メルマガの配信、SNS運用、アクセス解析などです。最近ではYoutubeの運用も始めました。

山洋電気株式会社 マーケティング部 第一課 主査 齊藤香里氏

山洋電気株式会社 マーケティング部 第一課 主査 齊藤香里氏

安藤氏 私はマーケティングの戦略に関する業務を担当しています。ペルソナを設計したり、営業のプロジェクトチームと一緒にキャンペーンを考えたり、戦術的な領域が得意分野です。

山洋電気株式会社 マーケティング部 第一課 主任 安藤遥香氏

山洋電気株式会社 マーケティング部 第一課 主任 安藤遥香氏

武内氏 私が担当しているのは主にテレマーケティングです。見込み客に電話でアプローチをする傍ら、ホワイトペーパーやお客様への説明用の資料、最近ではコンテンツのマルチ展開の取り組みとしてショート動画も作成しています。

山洋電気株式会社 マーケティング部 第一課 武内知代氏

山洋電気株式会社 マーケティング部 第一課 武内知代氏

荻野氏 みなさん専門性が高くとても多彩なチームですね。

小峯氏 一人ひとりが得意分野や興味のある領域に取り組み、限られたリソースを最大限に活かしてボトムアップで動くチームです。上からの指示を待つのではなく、メンバーでアイデアを出し合いながらトライアンドエラーで施策を進めるので、意思決定のスピードはとても早いと思います。

各プロセスを別システムで管理していたため、情報が欠落し、有望度の判断が難しかった

荻野氏 MAツールを刷新する以前、貴社が抱えていた課題を教えてください。

株式会社電通 プランナー/プロデューサー 荻野亜純氏

株式会社電通 プランナー/プロデューサー 荻野亜純氏

小峯氏 以前はマーケティング・テレマーケティング・プレセールス・営業という各プロセスをそれぞれ別のシステムで管理していたため、システムをまたぐごとに情報が欠落していました。

例えば、メールやWebサイトの閲覧などのアクティビティをもとにテレマーケティングを実施して武内が見込み客と5分間電話をしたとします。しかし、それをプレセールスに引き継ぐときには会話を要約したわずか数行のテキストになってしまっていました。テキスト情報だけだと、会話のなかで相手がどんな雰囲気でどんな温度感だったのかが伝わりません。そのため、アクティビティとテレマーケティングの感触としては確度の高いリードなのに、なかなか有望度が伝わりませんでした。

改善策としてBIを使い、システム間のデータを突合・分析したこともありましたが非常に大変で、この運用を続けるのは現実的ではないと断念。また、以前マーケティング部門で使用していたMAツールは使い方が難しく、やりたい施策のアイデアがあってもなかなかそれを実装できないという難しさもありました。

芳田氏 新しいMAツールとしてHubSpotを選んだ理由を教えてください。

株式会社CARTA MARKETING FIRM アカウントマネージャー 芳田晃一氏

株式会社CARTA MARKETING FIRM アカウントマネージャー 芳田晃一氏

小峯氏 顧客の発見から成約までを1つのプラットフォームで支援するというコンセプトが私たちの課題感にフィットしました。マーケティングからセールスまでの全工程を一元管理でき、コンタクトのアクティビティやコミュニケーションログなどの情報が欠落することなく共有できるというのは、まさに私たちが求めていた世界観です。操作性も優れ、新たな施策に取り組みやすいところもHubSpotを選定したポイントです。

MAツールの刷新でプロセス間の情報共有が改善され案件創出金額が5倍に

芳田氏 MAツールをHubSpotに刷新したことでUPSの案件創出金額が約5倍になったそうですね。実際に現場ではどのような変化がありましたか?

小峯氏 1つのプラットフォームでデータの共有が可能になり、プロセス間の連携が格段にスムーズになりました。以前のサイロ化したシステム構造ではプロセスをまたぐごとに少しずつ情報が欠落していきましたが、HubSpotの導入後は見込み顧客の発見から受注獲得までを1つのパイプラインとして見える化できるようになり、今は全員で協力して必要な要素を埋めていくような感覚で取り組んでいます。

山洋電気株式会社 マーケティング部 第一課 課長 小峯理恵子氏

齊藤氏 HubSpotを導入したことで新たな施策の実施やプロセスの変更がしやすくなり、アジャイルマーケティングのスピードが加速しました。テレマーケティングでは、市場のリアクションにあわせて、柔軟にターゲットやアプローチの方法を見直しています。そして、営業部もHubSpotが提供するSFAをフル活用してリード管理や案件の進捗管理、分析・レポーティングなどを行っているようです。

山洋電気株式会社 マーケティング部 第一課 主査 齊藤香里氏

安藤氏 テレマーケティングや顧客行動のデータが可視化されたことで、営業が顧客の興味を実感できるようになった点も、HubSpotを導入した意義だと思います。テレマーケティングの結果を数行のテキストで営業に伝えていた従来のやり方では、そこに「温度感が高い」と書かれていても、営業担当者はあまり実感をもてなかったかもしれません。

HubSpot導入後は、プロダクトサイトのこのページをいつ閲覧したといった行動データを全員で共有できるようになったので、顧客がどんな製品にどれくらい興味を抱いているのか実感し、温度感に合わせて適切なアプローチができるようになりました。

武内氏 テレマーケティングを担当している私にとって、HubSpotを使うようになってから全ての電話が録音されるようになったことが大きな変化です。以前は「テキストだけだと上手く伝わらないのでは」と不安になることも少なくありませんでした。

今では営業担当者が積極的に録音の音声を聞いているようで、お客様とのやりとりをダイレクトに知ってもらえるようになりました。それに、自分で録音を聞き直すことで改善点も発見できます。最初は「自分の間違いもすべてさらけ出してしまうことになる」と正直なところ抵抗感がありましたが、今では録音をしていないと逆に不安に感じるくらいです。また、HubSpotで全体の進捗を追うことで、獲得したリードが最終的に受注になったのか失注したのか、結果も見えるようになりました。

山洋電気株式会社 マーケティング部 第一課 武内知代氏

荻野氏 貴社がツール導入により業務プロセスの改善に成功した秘訣について、どのように捉えていますか?

小峯氏 「仕組みだけ変えても人は変わらない」ということを前提に考えて、「人の気持ち」を重視し、営業担当の意見や状況を把握しながら慎重に進めたことが成功の要因だと思います。営業担当と伴走しながら現場に適応する形で調整し、現場に馴染ませていきました。

安藤氏 HubSpotは営業担当の要望をすぐに実装できるので、一つひとつ叶えてあげることで受け入れてもらえるようになり、新規案件の創出に対しより一体感をもって取り組む、前向きなムードが醸成されたと思います。

例えば、獲得したリードについて、まだ案件の情報が薄く、営業としてはこのまま渡されても動きにくいかなと思ったとき、「もう少しプレセールスで深掘りしましょうか?」と声をかけると、「忙しかったので助かります」と感謝の言葉をかけてもらったこともありました。そういう気配りの部分もとても大切にしています。そのためには営業担当の細かい動きを把握する必要があり、そこでもやはりHubSpotが役立っています。

山洋電気株式会社 マーケティング部 第一課 主任 安藤遥香氏

ワンプラットフォーム・ワンチーム。次に目指すのはグローバルマーケティングの強化

芳田氏 MAツール刷新の成功体験を踏まえ、今後の更なる取り組みの構想はありますか?

小峯氏 HubSpotは現在、活用範囲をSFA部分、お問い合わせ窓口などのサポート部分まで広げました。また、グループ会社も一緒に運用しています。次に目指すのはグローバルも含めた活用推進です。グローバルでの認知拡大など、前提としてクリアすべき課題もありますが、ファネルの入口を広げるとともに営業の体制も整備しながらワンプラットフォーム・ワンチームで挑戦を続けていきたいです。

山洋電気株式会社 マーケティング部 第一課 課長 小峯理恵子氏

荻野氏 さらなる拡大のために、部門の壁を超えてメンバーの繋がりをより強固にしていく。貴社のマーケティング部門はその重要な役割を担っていると感じます。

安藤氏 私はいつも「チーム山洋電気」という意識をすごく大切にしています。部署が分かれていても、同じ目標を目指す仲間です。これからも気遣いと思いやりをもって各部門と接しながら、チーム山洋電気全体でよい仕事をし、お客さまや社会の役にたっていきたいです。

小峯氏 安藤が言うように、マーケティングと営業は仲間です。マーケティングが前工程で、営業が後工程という役割分担をすることで効率的な営業活動につながります。サッカーのように1つのボールを繋いで同じ目標を目指す。全員がその意識をもつことで大きな成果につながるのではないかと思います。それに、いつでも各自の「好き」を活かして楽しく働きたいですね。自分自身が仕事を楽しみながら、相手も楽しめるように配慮する…全員がその意識をもてば、最高の「チーム山洋電気」になると思います。

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山洋電気株式会社 コーポレートサイト:https://www.sanyodenki.co.jp/

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B2B Compass編集部

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B2B Compass編集部

B2B事業支援最大化のための「ブランディング」と「デマンドジェネレーション」を提供する「電通B2Bイニシアティブ」プロジェクト所属メンバーで運営しています。B2B事業グロースに関する多様な実績を持つメンバーが、プロの視点からマーケティング、セールスなどの課題解決に役立つ情報を提供しています。

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