• 2025/10/17
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最新デジタルマーケティング事例から見る、BtoB企業の成長戦略とデマンドセンターの役割

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デジタルマーケティングとは、デジタルチャネルを用いて顧客との関係を構築するプロセスです。特にBtoB企業では、単なるツール導入にとどまらず、戦略的な計画と実践が成果を左右します。

本記事では、BtoBデジタルマーケティングの全体像を整理し、具体的な成功事例を通じて、効果的な戦略構築のポイントを解説します。

最新の事例と実践的なアドバイスをもとに、自社のBtoBデジタルマーケティング戦略を見直すことで、競争力を高め、成果につなげることが可能です。次の一歩を踏み出し、デジタルマーケティングの可能性を最大限に引き出しましょう。
  

BtoB領域でのデジタルマーケティング成功事例5選

まずはBtoBの分野で成功につなげたデジタルマーケティングの取り組み事例を5つご紹介します。各社どのような課題があり、どう解決して成果につなげていったのか、ぜひ参考にしてみてください。

事例1.低コストで見込み顧客を獲得できるコンテンツ運用の仕組みを構築

ある大手ICT企業は、公共機関や教育・医療分野を中心に情報サービスやDX推進を展開していましたが、顧客獲得につながるコンテンツマーケティングの強化が課題でした。

課題

  • コンテンツ企画・制作の強化

施策

  • 見込み顧客データを一元管理する仕組みを整備
  • 年間数百本規模の記事を公開
  • オーガニック検索向けのコンテンツを制作

結果

  • 年間のサイト訪問者数が大幅に増加
  • ページビューの大部分が自然検索やメール経由から流入

まず専門組織を立ち上げ、顧客データの集約と更新体制を整備。その後、記事やウェビナー、展示会などオンライン・オフライン両面で接点を広げ、Web閲覧データからニーズを把握して営業に活用しました。

現在では、低コストで見込み顧客を獲得できる仕組みを確立しており、BtoBデジタルマーケティングの代表的な成功例とされています。

事例2.ツールを活用した顧客行動の可視化で最適な育成アプローチを実現

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ある老舗の電子部品メーカーは、ツールを活用したBtoBマーケティングの取り組みで成果を上げています。

課題

  • 個々のプロモーションが連動せず、顧客の購買プロセスが把握できていなかった
  • 新規市場開拓の必要性

施策

  • MA(マーケティングオートメーション)ツールを導入し、顧客行動をデータベース化
  • オンラインコンテンツの拡充
  • ナーチャリング(顧客育成)の強化

結果

  • 顧客の行動データを可視化し、アプローチを最適化
  • オンライン施策と営業活動を組み合わせ、売上拡大につながる仕組みを構築

この事例は、データ活用とコンテンツ強化を両立させ、顧客育成を着実に実現した好例とされています。

事例3.コンテンツとデータ活用の組み合わせでリード獲得の仕組みを構築

ある産業機器メーカーは、新規顧客開拓のプロセスが未整備で、顧客データも可視化されておらず、組織内にマーケティング知識が不足していました。

課題

  • 新規顧客獲得の仕組みが確立できていない
  • 顧客データが「見える化」されていない
  • 組織にマーケティング理解が浸透していない

施策

  • 認知のタッチポイントを増やすための顧客・競合分析
  • Webサイトでのトラブル事例コンテンツ作成
  • 顧客情報のデータベース化・CRM(顧客関係管理)導入
  • 展示会への出展、名刺デジタル化など

結果

  • コンテンツ施策により月間数万PVを達成
  • 約1年でリード獲得数が大幅に増加
  • 新規顧客獲得プロセスの確立に成功

この事例は、製造業の専門商材でも、Webコンテンツとデータ管理を組み合わせることでリード獲得の仕組み化が可能であることを示しています。

事例4.最適なツール導入とプロセスの仕組み化で定期的なアポ獲得を実現

あるBtoBマーケティング支援企業は、コンサルティングやBPOサービスを含む幅広い事業を展開していましたが、顧客に合わせたアプローチに課題を感じていました。

課題

  • 既存のMAツールでは柔軟な設定ができず、顧客ニーズに合わせたメール配信が難しかった

施策

  • クライアント支援で利用していた別のMAツールへ切り替え
  • ステップメールや自動配信、追客機能を活用し、複数種類のメルマガを展開
  • マーケティングと営業プロセスを仕組み化し、対応の精度とスピードを向上

結果

  • メール配信数を大幅に拡大
  • メール経由で継続的にアポイントを獲得
  • 商談数が2倍以上に伸びるなど、プロセスの仕組み化による成果を実現

この事例は、MAツールの最適化とプロセスの仕組み化によって効率的に成果を拡大した成功例といえます。

事例5.徹底した顧客理解にもとづく広告戦略で売上拡大を達成

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ある大手コンサルティング企業は、自社内にマーケティング経験やノウハウが乏しく、エンドユーザーからのリード獲得が十分でない状況でした。

課題

  • マーケティング知識が社内に不足
  • エンドユーザーからのリード獲得が進まない

施策

  • 徹底的な顧客理解のため、見込み顧客や過去顧客へのヒアリングを実施
  • 潜在層へのアプローチとして、Facebook広告やリスティング広告を出稿

結果

  • 月間リードが大幅に増加
  • インバウンド経由の売上も数倍に伸長

この事例は、顧客理解にもとづくターゲティングと広告活用によって、リード獲得と売上拡大を短期間で実現した成功例といえます。

デジタルマーケティングの基本情報はこちらをご参考ください。

【5分でわかる】デジタルマーケティングとは?基本と実施プロセス&手法一覧、成功事例を紹介

また、わたしたち電通B2Bイニシアティブの事例は以下からご覧いただけます。

電通B2Bイニシアティブ事例一覧

 

成功事例を踏まえたデジタルマーケティングの強化ポイント

BtoB企業におけるデジタルマーケティングの成功は、単なる広告施策に留まらず、顧客理解から始まる戦略的なアプローチが鍵となります。

具体的には、以下の4つの要素をバランス良く組み合わせていることが多いです。

  • 顧客理解
    ターゲットとなる顧客のニーズや業界特有の課題を深く掘り下げ、ペルソナ設計やカスタマージャーニー分析を徹底している
  • コンテンツ
    業界課題の解決に直結するホワイトペーパーやブログ記事、動画、ウェビナーなど多様な形式のコンテンツを効果的に活用し、顧客の関心を引きつけている
  • テクノロジー
    MAやCRM、データ分析ツールを駆使し、リードナーチャリングや効果測定を効率的に実施している
  • 営業連携(インサイドセールス)
    マーケティング部門と営業部門が密に連携し、情報共有や共同でのKPI設定を行い、顧客アプローチの精度と効率を高めている

これらの要素を組み合わせることで、単なる広告施策に留まらず、顧客のニーズを的確に捉えた戦略を実践し、高い成果を上げているのが成功しているBtoB企業の特徴です。

そして4つの成功要因を具体的に掘り下げたポイントを、以下の表にまとめました。これらは単独で機能するのではなく、相互に連携しながら効果を最大化しています。

強化ポイント
成功事例に見る効果
顧客理解の徹底 的確なターゲティングでリード獲得数が増加し、営業効率も向上
コンテンツマーケティングの強化 顧客の関心を引きつけ、リードナーチャリングの質が向上
リードナーチャリングの仕組み化 商談化率が向上し、売上増加に貢献
マーケティングと営業の連携強化 営業活動の効率化とターゲット精度の向上
ABM(アカウントベースドマーケティング)の実践 高単価商談の獲得や顧客満足度の向上
データドリブンな改善サイクルの導入 継続的な改善サイクルの高速化による成果最大化
デジタルとリアルのハイブリッド戦略 顧客接点の拡大とブランド認知度向上

1.顧客理解の徹底

BtoB企業のデジタルマーケティング戦略において、顧客理解の徹底は成功の基盤です。顧客の業界特有の課題やニーズを深く把握することに加え、購買に関わる複数の意思決定者(バイインググループ)の役割と、非線形な購買プロセスを理解することが不可欠です。

データとインサイトに基づいた継続的な顧客理解により、的確なターゲティングと効果的なコミュニケーションを実現できます。

ペルソナ設定とカスタマージャーニーマップの活用

  • ペルソナ設定:自社にとって最も価値の高い顧客企業の特徴を定義(業界、規模、課題、成熟度など)定義。バイインググループ内の各役割(意思決定者、実務担当者、影響者、承認者など)ごとのペルソナを作成
    →施策の方向性を明確化し、ターゲット精度を向上
    →データに基づくペルソナの継続的アップデートにより、常に実態に即した顧客理解を維持
  • カスタマージャーニーマップ:顧客が情報収集から購買に至るプロセス認知→検討→評価→決定→導入→活用の各段階を詳細にマッピング
    各段階でのペルソナ心理やニーズを仮説立て、最適な接点設計を検証
  • BtoB購買の67-90%は企業側から見えない場所で起きている(ダークファネル)ことを認識し、購買シグナル(資料ダウンロード、特定ページの閲覧、競合比較など)の検知体制を構築
  • 業界課題の深掘り:顧客が直面する課題を詳細に分析(ペインポイントの特定と定量化)
    →的確な課題解決策を提案し、信頼構築に貢献
  • 顧客インタビュー、サーベイ、カスタマーサクセスデータ、ソーシャルリスニングなど多角的に顧客の声(VoC)を収集
    →的確な課題解決策を提案し、信頼構築に貢献
    →自社ソリューションが提供する価値を顧客視点で明確化(バリュープロポジション設計)

CRM・MAツールを活用した継続的な精度向上

  • Webサイト行動、メール反応、コンテンツ消費パターン、ウェビナー参加状況などを統合
  • CRM・MAツールを活用した顧客データの一元管理により、顧客情報の精度と一貫性を向上
    →顧客の関心領域、検討段階、課題意識を可視化
  • 特定トピックへの関心急上昇、競合サイトの閲覧など、購買シグナルを早期
    →能動的に情報収集している見込み客へのタイムリーなアプローチ
  • エンゲージメントスコア(関心度)とフィットスコア(ICP適合度)を分離して評価
    →「関心は高いが顧客として不適切」なリードを除外し、営業リソースを最適配分
    →アカウントレベルでのエンゲージメント測定により、ABM戦略と連携

インテントデータ活用で早期アプローチ

インテントデータは、オンライン行動や検索履歴から購買意向を示すシグナルを抽出するデータです。

BtoB購買プロセスの67-90%は企業側から見えない「ダークファネル」で起きているため、自社サイト外での顧客行動を可視化するインテントデータの重要性が高まっています。

これにより、見込み顧客の意欲を早期に把握し、最適なタイミングでアプローチ可能になります。

インテントデータの種類
具体例
期待される効果・メリット
Web閲覧履歴 製品比較ページ、業界関連ブログ、競合サイトの閲覧、特定ソリューションの検索行動 関心度や検討段階の把握、競合検討状況の可視化、適切なコンテンツ・メッセージの選定
検索キーワード 特定課題・製品名の検索クエリ、「○○ 比較」「○○ 導入事例」などの検討段階を示すキーワード 潜在ニーズの早期発見、ターゲティング精度向上、検討段階に応じたコンテンツ提供
コンテンツダウンロード ホワイトペーパー、事例資料 課題認識と購買意欲の高まりの把握
ウェビナー参加履歴 オンラインセミナー参加、質問投稿、視聴時間、特定トピックへの関心度 関心の深さ・関与度の測定、高エンゲージメントリードの優先的フォロー
メール開封・クリック メール配信の開封、リンククリック リードの興味度把握と効果的なフォロー
ソーシャルメディア活動 特定トピックへの投稿、シェア、コメント、業界インフルエンサーのフォロー 顧客の関心領域・課題意識の把握、ソーシャルセリングのきっかけ創出
アカウントレベルのインテント 同一企業から複数の担当者が関連コンテンツを閲覧、組織全体での検討開始を示すシグナル ABM戦略での優先アカウント特定、組織的な購買検討の早期察知

このように、顧客理解を深める施策とデータ活用を組み合わせることで、ターゲティング精度の向上、リード獲得、営業効率の向上が実現します。

一方で企業単位での関心や行動は把握できるものの、誰が具体的にコンテンツを見ているのかまでは特定できないという特性があります。
そのため、ターゲティングや営業アプローチに活用する際には、個別担当者の特定ではなく、組織全体の検討状況や関心テーマを軸に施策を設計する必要があるでしょう。

2.コンテンツマーケティングの強化

最新デジタルマーケティング事例から見る、BtoB企業の成長戦略とデマンドセンターの役割

BtoB企業のデジタルマーケティングにおいて、コンテンツマーケティングはリード獲得と顧客との関係構築に不可欠な要素です。単なる商品説明に留まらず、業界課題の解決に直結する価値あるコンテンツを提供することで、顧客の信頼を獲得し、継続的な関心を引きつけています。

また、近年では生成AI検索におけるWebサイトの評価基準(GEO:Generative Engine Optimization)を意識した対策も重要です。

AIが組み込まれた検索エンジンでは、Webサイトを要約したテキストが検索結果として提示されます。そのためサイトの構造や文章内容がAIに適切に評価されないと、検索結果に引用されず、認知機会を逃す可能性が出てくるのです。

そのため、コンテンツ制作やサイト設計では、生成AIが理解しやすく、評価しやすい構造や記述に気をつける必要があります。

現代のコンテンツマーケティングでは、以下の要素が重要になっています。

  • 購買ジャーニーの各段階に最適化されたコンテンツ設計(認知→検討→評価→決定→活用)
  • AI・生成AIを活用したコンテンツ制作の効率化とパーソナライゼーション
  • インタラクティブコンテンツ(診断ツール、ROI計算機、比較チャートなど)によるエンゲージメント深化
  • データドリブンなコンテンツ最適化(どのコンテンツが商談・受注に貢献しているか)
  • 生成AIが理解しやすい文章・構造を意識したコンテンツ作り(GEO戦略)

具体的には、以下のような施策が効果的です。

施策
具体例
期待される効果
業界課題解決を意識したホワイトペーパー 市場動向分析、課題解決策の詳細解説、調査レポート、技術ガイド 専門性の訴求とリードの質向上、権威性・信頼性の確立
ブログ記事や事例紹介 成功事例の共有、実践的なノウハウ提供、SEO対策記事、ソートリーダーシップコンテンツ 顧客の理解促進と関心喚起、オーガニック検索流入の増加
動画・ウェビナー・ポッドキャストの活用 専門家インタビュー、製品デモ、業界トレンド解説、顧客パネルディスカッション 多様な形式での情報提供によるリーチ拡大とエンゲージメント向上、より深い理解の促進
単なる商品説明を超えた価値提供 業界課題に対する具体的な解決策や事例を中心に発信、ベストプラクティス集、ROI計算ツール 顧客の課題解決に貢献し、信頼関係の強化
インタラクティブコンテンツ 自己診断ツール、ROI計算機、製品比較チャート、インタラクティブインフォグラフィック 高いエンゲージメント、リードインテリジェンスの獲得(回答内容から顧客ニーズを把握)
ケーススタディ・導入事例 同業界・類似規模企業の成功事例、Before/After比較、具体的なROI数値 購買決定の後押し、導入後イメージの具体化、不安解消

これらの施策により、顧客は自社の課題に合った情報を得られるため、リードの獲得だけでなく、その後のナーチャリングも効果的に行えるでしょう。

特に動画やウェビナー、ポッドキャストなど多様なコンテンツ形式を活用することで、顧客の関心を持続的に引きつけ、深い理解の促進につなげます。

結果として、BtoB企業のデジタルマーケティングにおけるコンテンツマーケティング強化は、リードの質向上と商談化率アップに直結し、成功企業の重要な戦略の一つとなっているのです。

単なる商品説明ではなく「業界課題の解決策」を発信

BtoB領域でコンテンツマーケティングを運用する際は、単なる商品説明に終始するのではなく、「業界課題の解決策」を中心に情報を発信することが、成果を上げるための重要な戦略ポイントとなっています。

顧客は自社の課題に直結する具体的な解決策を求めており、単なる製品の機能やスペックの説明では十分な関心を引きつけることが難しいためです。

具体的には、業界特有の課題を踏まえたソリューション提案や成功事例の紹介、さらには課題解決に向けた実践的なノウハウやベストプラクティスの提示が有効です。

これにより、顧客は自身のニーズに合った情報を得ることで、信頼感が高まり、リード獲得やリードナーチャリングの質の向上につながります。

以下は、業界課題の解決策を発信する際の効果的なポイントです。


  • 顧客視点で課題を明確に捉え、共感を呼ぶメッセージを発信すること
  • 単なる商品説明を超えた、問題解決にフォーカスした具体的な内容を提供すること
  • 実績や事例を交えて信頼性を担保し、説得力を高めること
  • 顧客の購買プロセスに合わせたタイムリーな情報提供を心がけること
  • コンテンツの多様な形式やチャネルを活用し、顧客の接触機会を最大化すること
  • 教育的価値の提供:顧客が賢明な意思決定をするための情報・知識を提供
  • 課題の言語化支援:顧客自身が気づいていない潜在課題を顕在化
  • ソリューション中立的な情報:特定製品への誘導前に、課題解決の選択肢を公平に提示(信頼性向上)
  • 実証データとエビデンス:主張を裏付ける調査データ、統計、事例

このような情報発信は、顧客の課題解決に直結するため、リードの質が高まり、営業部門との連携による商談化率の向上にもつながります。

単なる商品説明では得られない深い顧客理解と信頼構築が、BtoBデジタルマーケティングの成果強化に不可欠な要素です。

3.リードナーチャリングの仕組み化

BtoB企業のデジタルマーケティングにおいて、リードナーチャリングの仕組み化は、リード獲得後の見込み顧客を段階的に育成し、商談化へつなげる重要なプロセスです。

toB購買サイクルの長期化(平均3-18ヶ月)と購買プロセスの複雑化(平均6-10名の意思決定者が関与)に対応するため、戦略的なナーチャリングが不可欠です。

リードナーチャリングの本質は以下と捉えられます。

  • リードを「放置」せず、購買検討の各段階で適切な情報と価値を継続的に提供
  • 信頼関係を構築し、購買準備が整ったタイミングで営業にパス
  • 短期的な刈り取りではなく、長期的な関係構築を重視

MAツールを活用することで、効率的かつ体系的なナーチャリングが可能となります。

リードナーチャリングの目的

  • リードの購買意欲を高める
  • 適切なタイミングで営業部門に引き渡す
     → 商談化率向上・売上拡大に直結

リードナーチャリングにおける主要な要素と施策

要素
具体的施策
期待される効果
セグメンテーション 業界、企業規模、役職、行動履歴、購買ステージ、エンゲージメントレベルで分類 セグメントごとに最適化されたメッセージ配信、パーソナライゼーション強化
MA活用 リードの行動履歴や属性情報を分析、行動トリガーに基づくスコアリングや自動メール配信、Webパーソナライゼーション 効率的な育成と優先度高いリードの選別、タイムリーなフォローアップ
リードスコアリング 行動データ・属性情報から購買意欲を数値化、優先順位設定 営業への引き渡しタイミング最適化、商談化率向上、営業リソースの効率配分
コンテンツマッピング 購買フェーズや関心に応じたコンテンツ配信、購買ステージ別コンテンツライブラリ構築(認知→検討→評価→決定) 段階的な購買意欲醸成と関心維持、適切な情報を適切なタイミングで提供
シナリオ設計 購買フェーズや関心に応じたコンテンツ配信シナリオ作成、マルチタッチキャンペーン設計(メール、Web、SNS、営業活動の連携) 段階的な購買意欲醸成と関心維持、オムニチャネルでの一貫した体験提供
段階的育成プロセス 認知→検討→決定の各フェーズに対応した情報提供とフォロー、ステージ進行条件の明確化 購買プロセス加速、リード質向上、見込み度に応じた適切なアプローチ
営業連携 スコア基準で見込み度高いリードを営業へ引き渡し、SLA(Service Level Agreement)設定、リードルーティング自動化 商談化率向上、営業効率化、マーケと営業の連携強化
効果測定と改善 KPI設定と施策効果分析、PDCAサイクルで改善 施策最適化、ROI(投資利益率)向上、データドリブンな意思決定

ホットリードの営業への引き渡し

ホットリードは、スコアリングや行動分析で購買意欲が高いと判断されたリード(MQL:Marketing Qualified Lead)です。適切なタイミングで営業に渡すことで、成果最大化が可能となります。

しかし、多くの企業でマーケティングと営業の連携に課題があります。

  • マーケ側の悩み
    「せっかくリードを渡しても営業がフォローしてくれない」
  • 営業側の悩み
    「マーケから来るリードは質が低く、時間の無駄」
  • 結果
    リードの放置、機会損失、ROIの悪化

この溝を埋めるには、明確なルール設定と継続的なコミュニケーションが不可欠です。以下のポイントが、効果的な引き渡しプロセスの鍵となります。

ポイント
具体的内容
期待される効果
MQL/SQL定義の明確化 マーケティング適格リード(MQL)と営業適格リード(SQL)の定義を営業と合意、スコア閾値や特定行動を明確化(例:スコア80点以上、かつ価格ページ閲覧) 営業優先順位の明確化、効果的アプローチ、認識のズレ解消
ホットリード定義 スコア閾値や特定行動を明確化、購買シグナルの種類と優先度設定(例:デモ依頼>資料DL>メール開封) 営業優先順位の明確化、効率的アプローチ
SLA(サービスレベル契約)設定 マーケ側のコミット(月○件のMQL提供、リード情報の正確性)と営業側のコミット(受領後24-48時間以内のフォロー、結果のフィードバック)を文書化 相互の責任明確化、フォロースピード向上、信頼関係構築
情報共有 CRM・MAツールで情報共有(行動履歴、興味領域、エンゲージメント履歴、過去のやりとり、組織情報) 即対応による商談化率向上、営業の事前準備時間短縮、パーソナライズされたアプローチ
引き渡し条件 資料ダウンロードや問い合わせなど特定の購買シグナル発生時に自動アラート、引き渡しワークフロー自動化 適切タイミングでの営業アプローチ、無駄な営業コスト削減、機会損失の防止
コミュニケーションルール 定期ミーティング・情報共有チャネル設置(Slack等)、リード品質レビュー会議(月次) 部門間齟齬減少、連携品質向上、継続的な改善
ツール活用 ダッシュボード・アラートで進捗管理、CRM/MA統合、営業支援ツール(セールスイネーブルメント) 透明化・迅速な問題解決、データドリブンな意思決定

AI活用による効率化とパーソナライゼーション

2024-2025年は、BtoBマーケティングにおけるAI活用の転換点となっています。従来のルールベースの自動化を超え、生成AI(Generative AI)、予測AI、機械学習が実務レベルで活用され始めています。

AI活用がもたらすといわれている3つの革新は以下です。

  1. 大幅な効率化
  2. 超パーソナライゼーション
  3. 予測と先回り


ただし、AI導入には戦略的アプローチ、データ基盤、倫理的配慮が必要です。以下では、BtoBマーケティングにおける具体的なAI活用領域と実装のポイントを解説します。

活用領域
具体例
効果
生成AIによるコンテンツ制作支援 ブログ記事の下書き作成、メールコピーライティング、SNS投稿文案、ホワイトペーパーのアウトライン作成、SEOメタデータ生成、多言語展開 制作時間短縮(50-70%)、品質の一定化、リソース最適配分、アイデア創出支援
パーソナライズ配信 顧客データ分析による最適コンテンツ配信、件名・本文のA/Bテスト自動化、送信タイミング最適化、Webサイトのダイナミックコンテンツ表示 エンゲージメント向上、リード育成効率化、商談化率向上、顧客体験の向上
効果測定と改善 閲覧データ・エンゲージメント分析、ABテスト自動実行と分析、アトリビューション分析、異常検知、改善提案の自動生成 施策精度向上、PDCA高速化、データドリブン意思決定の加速
チャットボット・会話型AI Webサイトでの24時間対応、よくある質問への自動回答、初期ニーズヒアリング、資料送付、MTG予約設定、ホットリードの営業へのエスカレーション 即座の対応による顧客満足度向上、リード獲得機会の最大化、営業・カスタマーサポートの負荷軽減
営業支援(Sales Enablement) 商談記録の自動要約、次のアクション提案、最適な事例・資料の推奨、メールのドラフト作成、競合情報の自動収集 営業の生産性向上、成約率向上、新人の立ち上がり加速

AIを活用することで、顧客の関心やインテントの変化に即応し、タイムリーで最適化されたコンテンツ提供が可能となり、BtoBデジタルマーケティングの成果最大化に直結します。

4.マーケティングと営業の連携強化

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デジタルマーケティング成功には、マーケティング部門と営業部門の強力な連携も欠かせません。両部門が情報を共有し、共通の目標に向かって協働することで、リードから商談への転換率が大幅に向上します。

しかし現実には、多くのB2B企業で部門間の「サイロ化」が深刻な課題となっています。

  • マーケティング
    「せっかくリードを渡しても営業がフォローしない」
  • 営業
    「マーケから来るリードは質が低く、時間の無駄」
  • 結果
    機会損失、顧客体験の分断、ROIの悪化

この溝を埋めるには、仕組み(プロセス・ツール)だけでなく、文化・マインドセットの変革も必要です。以下では、具体的な連携施策とRevOpsによる組織的アプローチを解説します。

施策
具体的内容
期待される効果
共通KPIの設定 マーケティングと営業で目標を共有(例:パイプライン額、受注額、マーケ貢献受注率)し、リード数や商談化率などの指標を定める。部門個別KPIとのバランスも考慮 両部門の目標整合性を高め、成果に向けた協働を促進、責任の押し付け合いを防止
定期的な情報共有会 リードの質や進捗状況を共有し、課題や成功事例を議論する場を設ける(週次または隔週、アジェンダ明確化) 課題の早期発見と迅速な対応、ノウハウの共有による施策改善、相互理解の深化
SFA(営業支援システム)・CRMの連携活用 リード情報や顧客データを共有し、行動履歴やスコアリング結果を活用。MA-CRM統合により自動化 営業が適切なタイミングでアプローチ可能になり、商談化率が向上、情報の重複入力削減
リードの明確な引き渡し基準

スコアリングにもとづくホットリード定義を共有し、営業への適切なタイミングを明確化。SLA(サービスレベル契約)設定

営業活動の効率化と無駄な工数削減、引き渡し後の対応スピード向上
営業からのフィードバック体制 営業からマーケティングへのリードの質に関するフィードバックを定期的に収集。クローズドループレポーティング(商談結果・失注理由の共有) マーケティング施策の精度向上とリード品質改善、スコアリングモデルの継続的改善
共同でのICP(理想顧客プロファイル)定義 どんな企業・担当者が最も成約しやすいかを両部門で分析・合意。ターゲティングの方向性を統一 リードの質向上、営業の受容性向上、マーケティング投資の最適化
営業イネーブルメント マーケが営業に対して、コンテンツ・ツール・トレーニングを提供(競合比較資料、事例集、トークスクリプト、製品知識) 営業の商談力向上、マーケコンテンツの活用促進、新人の立ち上がり加速

これらの施策を通じて、BtoB企業はマーケティングと営業の連携を強化し、リード獲得から商談化までのプロセスを最適化しています。

特にMAやCRMツールの活用は連携効率化に寄与し、スピーディな情報共有とデータドリブンな改善を可能にするのです。

レベニューオペレーション(RevOps)体制構築で部門横断最適化

レベニューオペレーション(Revenue Operations、RevOps)は、マーケティング、営業、カスタマーサクセスの各部門を統合し、収益創出の最大化を目指す戦略的な体制構築の手法です。

従来の縦割り組織では、各部門が異なるツール、プロセス、KPIで動き、顧客体験が分断されていました。RevOpsは「収益」という共通ゴールのもと、部門間の壁を取り払い、一貫した顧客体験と効率的な業務遂行を実現します。

RevOpsが注目される背景は以下です。

  • B2B購買プロセスの複雑化(複数部門・担当者が関与)
  • 顧客はマーケ→営業→CSを「別の部署」ではなく「一つの会社」として認識
  • データ・ツールの分散による非効率
  • サブスクリプションモデルの普及(LTV最大化には全部門連携が必須)

以下の表は、RevOpsの主な役割と期待される効果をまとめたものです。

役割
具体的内容
期待される効果
戦略の統合と調整 マーケティング・営業・カスタマーサクセス間の目標整合と戦略統合。収益目標を部門横断で設定 部門間の連携強化と一貫した顧客接点の実現、重複や抜け漏れの防止
プロセスの標準化・最適化 営業・マーケティングの活動プロセスを統一し、重複や非効率を排除。リードから受注、顧客維持までのエンドツーエンドプロセス設計 業務効率化と迅速なリード対応の実現、顧客体験の一貫性
データ管理と分析の集中化 CRMやMAツールなどのデータを一元管理し、部門横断的な分析を推進 データドリブンな意思決定と施策の継続的改善、レポーティング工数削減
KPIの共通化と可視化 リード数から売上成果まで共通指標を設定し、進捗を共有。ファネル全体の可視化 目標達成に向けた部門間の協働促進、ボトルネックの早期発見
ツールとテクノロジーの連携強化 MA・CRM・SFAなどのツールを統合し、シームレスな情報共有を実現。マーテックスタックの最適化 営業活動の効率化と顧客体験の向上、データサイロの解消

体制を構築する際のポイントは、組織文化の醸成と明確な役割分担、そして継続的な改善サイクルの確立にあります。

具体的には、部門間の壁を越えたコミュニケーション促進を図り、共通の目標に向かって協働する体制を作ることが重要です。

また、データの透明性を高め、成果を正確に評価・分析する仕組みを整えることも欠かせません。

5. ABM(アカウントベースドマーケティング)を実践

ABMは、BtoBのデジタルマーケティングにおいて、特定の重要な顧客アカウントに対して戦略的かつ個別にアプローチを行う手法です。

従来の広範囲にリードを獲得するマーケティング施策とは異なり、ABMは「釣り」ではなく「槍で魚を突く」アプローチで、営業連携を強化しながら、ターゲットアカウントに対して最適化されたコンテンツやメッセージを提供し、高単価商談の獲得や顧客満足度の向上を目指します。

ABMが特に効果的なケース

  • 高単価商材(数百万円以上)
  • 長い営業サイクル(3ヶ月以上)
  • 複雑な購買プロセス(複数の意思決定者が関与)
  • 既存顧客のアップセル・クロスセル
  • 特定業界や企業規模に特化したビジネス

ABMの特徴は、顧客一人ひとりではなく、企業単位のアカウントを中心にマーケティングと営業が連携する点にあります。

これにより、顧客のニーズや課題に深く寄り添った提案が可能となり、成果の最大化につながるのです。

特にBtoB市場では、意思決定者が複数存在し、購買プロセスが複雑なため、ABMの戦略的アプローチが効果的です。

以下の表に、ABM実践の主要なステップとそれぞれのポイントをまとめました。

ステップ
具体的内容
ポイント
1. ターゲットアカウント選定 企業規模、業種、過去の取引履歴や既存顧客の成功パターン分析に基づき、重点的にアプローチすべきアカウントを選定。予測分析・インテントデータも活用 営業部門と連携し、価値の高いアカウントを共に特定することが重要
2. アカウントごとのニーズ・課題分析 各アカウントの業界動向や経営課題、意思決定プロセスを詳細に調査・分析。バイインググループの特定(意思決定者、影響者、実務者、承認者等) パーソナライズされた提案のための基盤となる
3. カスタマイズコンテンツ制作 ターゲットの課題に即したホワイトペーパー、事例紹介、提案資料などを作成。可能であればアカウント名を含む専用コンテンツ(例:「○○社様向け業界分析」) 一般的なコンテンツと差別化し、アカウント固有の価値を提供
4. マルチチャネルでのアプローチ メール、ウェビナー、広告、営業訪問、LinkedIn、ダイレクトメール(物理的) など複数チャネルを組み合わせて接触機会を最大化 チャネル間の連携とタイミング調整が効果向上の鍵
5. 効果測定と改善 各アカウントの反応や商談進捗を定量的に分析し、戦略や施策を継続的に改善
データドリブンなPDCAサイクルを回すことが重要
データドリブンなPDCAサイクルを回すことが重要
6.既存顧客へのABM(アップセル・クロスセル) 既存顧客に対しても、未購入製品・サービスのクロスセル、上位プランへのアップセル、利用拡大をABM手法で推進 新規獲得よりコスト効率が高い

1社ごとの課題や業界動向に合わせたパーソナライズドコンテンツを提供

ABMの効果を最大化するためには、1社ごとの課題や業界動向に即したパーソナライズドコンテンツの提供が不可欠です。

単に汎用的な情報を発信するのではなく、ターゲットとなる企業の特性やニーズに合わせてカスタマイズされたコンテンツは、顧客の関心を引きつけ、リード獲得から商談化までのプロセスを加速させます。

ただし、パーソナライゼーションには「深さ」と「広さ」のトレードオフがあります。

  • 1:1 ABM:完全カスタマイズ(コスト高、スケールしない)
  • 1:Few ABM:セグメント単位のカスタマイズ(バランス型)
  • 1:Many ABM:テクノロジーによる大規模パーソナライゼーション(効率重視)

自社のリソース、対象アカウント数、商談規模に応じた適切なレベルを選択することが重要です。

パーソナライズ手法
具体例
期待される効果
業界別カスタマイズ 業界特有の課題に焦点を当てたホワイトペーパーやブログ記事の提供、業界別ランディングページ、業界特化型ウェビナー、業界別事例集 顧客の共感と関心を獲得し、質の高いリードを創出、業界専門性のアピール
企業特有課題の解決策提示 個別企業の課題に対応したソリューション提案資料やケーススタディの提供、「○○社様向け」と明記した専用資料、競合比較(ターゲット企業が使用中の製品との比較) 顧客の具体的なニーズに応え、商談化率の向上「自社のことを理解している」という信頼感
役職別パーソナライズ

意思決定者向けROI分析資料や現場担当者向け操作ガイドの配信。

経営層→戦略的価値

部門長→業務改善効果

実務者→使いやすさ・機能詳細

各担当者層の理解促進と購買意欲の醸成、バイインググループ全体へのアプローチ
データドリブン分析活用 CRMやMAツールのデータを活用した行動履歴にもとづくコンテンツ推薦、閲覧ページに応じた次のステップ提示、エンゲージメントレベルに応じた配信頻度調整 リードナーチャリングの効率化と効果最大化、適切なタイミングでの適切なコンテンツ提供
動的Webパーソナライゼーション 訪問企業を自動識別(IPアドレス等)し、Webサイトのコンテンツを自動変更(業界別のヒーローイメージ、企業名を含む挨拶文、関連事例の表示) 初回訪問時から「自分向け」と感じる体験、エンゲージメント向上
アカウント専用マイクロサイト 特定アカウント向けの専用Webサイト作成(「○○社様専用ページ」、カスタマイズされたコンテンツ・提案・デモ) 最高レベルのパーソナライゼーション、強烈なインパクト

パーソナライズドコンテンツを効果的に提供するためのポイントとしては、以下が挙げられます。

  • ターゲット企業の最新の課題や業界動向を継続的に把握し、情報をアップデートすること
  • 社内の営業や顧客対応部門と密に連携し、現場の声を反映したコンテンツを作成すること
  • デジタルツールを活用し、顧客の行動データを分析した上で最適なタイミングで配信すること
  • コンテンツの効果を定期的に検証し、改善サイクルを回すこと

6.データドリブンな改善サイクルの導入

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データドリブンな改善サイクルの構築においては、単にデータを収集するだけでなく、適切な指標を設定し、分析・検証を通じて継続的な改善サイクル(PDCAを超えた高速イテレーション)を回すことが重要です。

これにより、施策の効果を的確に把握し、改善点を迅速に特定・実行できます。

なぜデータドリブンアプローチが不可欠なのか、その主な理由は以下です。

  • 複雑性の増大
  •  説明責任
  •  競争優位性
  • 継続的改善

しかし、多くの企業がデータ活用で苦戦しています。

  • データは大量にあるが、分析できていない
  • 部門ごとにデータがバラバラ(サイロ化)
  • ダッシュボードはあるが、誰も見ていない
  • 分析はするが、アクションにつながらない

以下では、実践的なデータドリブン改善サイクルの構築方法を解説します。

さらに、データドリブンな改善を継続的に実現するためには、仕組み(プロセス・ツール)と文化(マインドセット)の両方が不可欠です。

データ分析担当者だけでなく、マーケティング、営業、経営層が共通の指標を理解し、情報を共有することで、組織横断的な改善文化が形成されます。

改善サイクルのステップ
具体的内容
期待される効果
KPI設定とモニタリング

施策目的に合わせた指標の設定:認知(リーチ、インプレッション)、獲得(MQL数、コスト)、育成(エンゲージメント率)、転換(SQL転換率、商談化率)、受注(受注率、受注額、CAC、LTV)等を定期的に進捗確認

目標達成度の可視化と課題の早期発見、全員が同じゴールを見る
データ収集と統合 CRM、MA、SFA、Webアナリティクス、広告プラットフォーム等からデータを収集し、統合データ基盤を構築。データクレンジング(重複排除、不正確データ修正)も実施 唯一の信頼できる情報源の確立、データサイロの解消
データ分析と検証 広告ROI、リード獲得数、商談化率など多角的に効果を測定。コホート分析、ファネル分析、トレンド分析、セグメント別分析を実施 施策の強み・弱みの明確化と改善点抽出、「なぜ」を理解する
アトリビューション分析 顧客が受注に至るまでの全タッチポイントを分析し、各施策の貢献度を評価。ファーストタッチ、ラストタッチ、マルチタッチ、データドリブンアトリビューション 「どの施策が本当に効いているか」の理解、予算配分の最適化
改善施策の立案と実行 分析結果をもとに優先順位を決めた具体的アクションプランの実施。A/Bテスト、段階的ロールアウトで検証しながら展開 PDCAサイクルの高速化と効果最大化、リスク管理された実験
組織文化の醸成とツール活用 共通指標の理解促進と情報共有、分析ツールの導入とトレーニング。データリテラシー向上プログラム 継続的な改善体制の確立と組織全体のパフォーマンス向上、全員がデータを使える組織へ

具体的な指標管理と分析、改善の高速化により、市場変化や顧客ニーズの変動にも柔軟に対応できる体制を構築することが重要です。

営業成果と突き合わせ、効果が出る施策に集中

改善サイクルを構築する際には、単なるデータ分析に留まらないことが重要です。具体的には、営業成果と密接に連携しながら施策の優先順位を見極め、効果が出る施策にリソースを集中させることが不可欠です。

営業成果は最終的な売上や受注数に直結するため、マーケティング活動の真の効果を測る重要な指標となります。

デジタルマーケティングの施策がどの程度営業活動に貢献しているかを把握することで、より戦略的な改善が可能になります。

効果が出る施策に集中するための具体的なポイントは以下の通りです。

  • 営業データとの連携強化
    CRMやSFAなどのシステムを活用し、マーケティング施策から獲得したリードが営業成果に結びついているかを正確にトラッキングする。リードの最終的な受注・失注状況とその理由をマーケにフィードバックにより、精度の高い改善が可能になる
  • 成果指標の明確化と共有
    リードの商談化率、受注率、LTV(顧客生涯価値)など、営業成果を反映した指標をマーケティング・営業間で共通認識とし、定期的にレビューする
  • 施策ごとのROI評価
    営業成果にもとづくROIを算出し、費用対効果の高い施策を抽出して優先的に強化する
  • 営業からのフィードバック活用
    営業現場の声を取り入れ、リードの質や顧客のニーズ変化を把握。施策の改善や新たなコンテンツ企画に反映する
  • リソースの集中配分
    効果が確認された施策に予算や人員を重点的に投入し、非効率な施策は見直しや停止を検討する
  • 継続的なコミュニケーション
    営業とマーケティングの連携を強化し、施策の成果や課題を共有しながら改善サイクルを回す
  • 予測分析の活用
    過去データから将来のトレンドや営業成果を予測し、 目標未達のリスクを早期に察知して先回り対策を実施する
  • 成功パターンの横展開
    効果が実証された施策を他のセグメント・ チャネルにも展開し、成果を最大化する

7.デジタルとリアルのハイブリッド戦略

BtoB企業のデジタルマーケティングでは、デジタル施策とリアル施策を組み合わせるハイブリッド戦略が成果を左右する重要なポイントです。

オンラインとオフラインの情報を統合・活用することで、リード育成や営業連携の精度を高めることができます。

なぜハイブリッド戦略が重要なのか、その理由は以下です。

  • BtoB購買は本質的にハイブリッド
    ・顧客はオンラインで情報収集(67-90%の購買プロセス)しつつ、最終決定では対面での信頼構築を重視
    ・高額・複雑な商材ほど、人間的な接点(展示会、商談、セミナー等)が不可欠
  • デジタルとリアルの相互補完
    ・デジタルの強み:スケーラビリティ、測定可能性、効率性、24時間対応
    ・リアルの強み:深い信頼構築、複雑な説明、非言語コミュニケーション、関係性構築
    ・両者を組み合わせることで、相乗効果を生む
  • パンデミック後の新常態
    ・コロナ禍で加速したデジタル化は不可逆的
    ・しかし、対面の価値も再認識されている
    ・「デジタルかリアルか」ではなく「どう最適に組み合わせるか」が問われている
  • 顧客体験の一貫性
    ・顧客はオンライン・オフラインを別のチャネルではなく、一つの企業体験として認識
    ・分断された体験は顧客満足度を下げる
    ・シームレスな統合が競争優位性に

ハイブリッド戦略の基本原則

  • カスタマージャーニー全体を見る
    どの段階でデジタル/リアルが最適か
  • データで両方をつなぐ
    オフラインで得た情報をCRMに、オンライン行動を営業に共有
  • 相互送客
    デジタルからリアルへ、リアルからデジタルへ、双方向の流れを作る
  • 測定と最適化
    デジタルだけでなく、リアル施策の効果も測定

1.リアルイベントからオンラインナーチャリングへ

展示会やセミナーで獲得した名刺情報は、MAツールに取り込みオンラインでナーチャリングを行います。

リアルイベントは質の高いリード獲得の重要な機会ですが、多くの企業で以下の課題があります。

  • 名刺を集めただけで放置される(名刺の墓場化)
  • フォローが遅い、または一斉送信の画一的なメール
  • イベントでの会話内容が活かされていない
  • 営業とマーケの情報共有不足

そこで、効果的なオンラインナーチャリングを行うことで、以下のように課題を解消できます。

  • イベント投資のROI最大化(参加費・ブースコストを回収)
  • 「ホットリード」からの商談化率向上(通常リードの2-3倍)
  • 長期的な関係構築とブランド認知

課題解消のための重要なポイントは以下です。

  • スピード
    イベント後48時間以内の初回接触が理想
  • パーソナライゼーション
    イベントでの会話内容を反映
  • 段階的アプローチ
    一度に売り込まず、段階的に育成
  • データ統合
    リアルとオンラインの情報を一元管理

ナーチャリング段階
施策内容
期待される効果
イベント前(事前準備) 事前登録フォームでリード情報収集、参加者の役職・関心領域を把握、予告メール配信で期待値醸成 参加者の事前セグメント化、当日の効率的な対応準備、来場率向上
イベント中(接触・情報収集) デジタル名刺交換(QRコード、アプリ)、商談メモのCRM即時入力、デモ実施内容の記録、関心度の評価(A/B/Cランク付け) リードの質の見極め、商談内容の正確な記録、営業との情報共有準備
初期アプローチ 来場御礼メール(48時間以内)、展示会限定資料送付、当日の会話内容を踏まえたパーソナライズメッセージ、展示会専用ランディングページへの誘導 接触機会の最大化、「覚えてもらえている」印象による好感度向上、リードの温度感向上
関係深化(1~4週間後) 業界課題・製品紹介コンテンツ配信、ウェビナー招待、顧客事例の提示、段階的な情報提供 情報収集促進、信頼構築、購買検討の前進、エンゲージメント維持
購買意欲喚起(1~3ヶ月後) デモ・無料トライアル案内、営業フォロー、ROI計算資料、導入事例の詳細提示、比較検討資料 商談化率向上、受注機会創出、購買障壁の低減
商談化・営業連携 適切なタイミング(スコア・行動に基づく)で営業に引き継ぎ、リード情報の完全共有、商談設定支援、継続的なデジタルサポート 受注率向上、営業効率化、スムーズな引き継ぎ
失注・長期育成 今回は商談化しなかったリードも継続ナーチャリング、定期的な情報提供(月1-2回)、タイミング変化の検知 将来の商談機会創出、イベント投資の長期的回収、関係維持

リアルイベント情報とオンライン行動データを統合管理することで、リード状態を正確に把握し、施策改善や営業連携にも活用できます。

2.ウェビナーから営業訪問へのスムーズな接続

ウェビナー参加者は関心度の高いリードであるため、参加状況や質問・アンケートを活用してリードスコアリングを行い、商談化可能性の高いリードを抽出します。

そもそも、なぜウェビナーリードは質が高いのでしょうか。

  • 自ら時間を割いて参加(受動的な広告閲覧より高い関心)
  • 特定テーマへの関心が明確(ニーズの可視化)
  • リアルタイムでの質問・反応から温度感を測定可能
  • 録画視聴も含めれば、スケーラブルな育成手段

またウェビナーでは、「ウェビナーならではのデータ」を得られることもポイントです。

  • 参加申込(事前の関心表明)
  • 実際の参加有無(申込だけか、実際に参加したか)
  • 視聴時間(途中離脱 vs 最後まで視聴)
  • 質問内容(課題の深さ・具体性)
  • アンケート回答(予算、検討時期、決裁権限)
  • 録画視聴(後日の再学習意欲)

ウェビナーからの高エンゲージメント参加者(最後まで視聴+質問+アンケート回答)は、通常リードの3-5倍の商談化率を示します。

適切なフォローアップにより、ウェビナーから営業訪問へスムーズに接続できます。

施策
具体的内容
期待される効果
ウェビナー設計と集客 ターゲット顧客の課題に即したテーマ設定、魅力的なタイトル・講師、適切な長さ(30-45分)、集客チャネルの選定(メール、広告、SNS) 質の高い参加者獲得、ターゲットアカウントの関心喚起
ウェビナー中のエンゲージメント測定 参加状況トラッキング(入室時刻、退室時刻、視聴時間)、Q&A・チャットでの質問内容記録、アンケート実施(満足度、次のステップ希望)、投票・クイズ機能活用 リードの関心度・理解度の可視化、ホットリード特定
リードスコアリング 参加状況、質問、アンケート結果で評価・優先順位付け(A:即営業、B:継続育成、C:長期育成) 商談化見込みリードを効率抽出、営業効果最大化
フォローアップメール 参加御礼+関連資料、次回ウェビナー案内、次のステップ提案 継続的な関心維持、ナーチャリング強化
営業・マーケ情報共有 CRM・MAツールで行動履歴・関心情報をリアルタイム共有、営業に「この人はウェビナーでこんな質問をした」等のコンテキスト提供 訪問タイミング最適化、成約率向上、パーソナライズされた商談
電話・個別メール ホットリードに営業が直接連絡、訪問アポイント取得、ウェビナー内容を踏まえた会話 信頼構築・商談化促進、短期成約の可能性
ウェビナーコンテンツ活用 録画をオンデマンド配信、資料をナーチャリングに再利用、ブログ記事・SNS投稿に展開 説明効率化、商談成功率向上、コンテンツROI最大化、顧客理解深まる

3.オンライン広告とオフライン施策の連携

オンライン広告は新規リード獲得の起点として有効ですが、商談化につなげるにはオフライン施策との連携が不可欠です。

オンライン・オフライン連携の重要性は以下となります。

  • 各チャネルの強みを活かす
    ・オンライン広告の強み:精密なターゲティング、リアルタイム最適化、スケーラビリティ、測定可能性
    ・オフライン施策の強み:深い信頼構築、対面での複雑な説明、人間関係の構築、五感に訴える体験
  • 顧客は複数の接点を経て購買する
    ・BtoB購買では平均8-12のタッチポイントを経験
    ・オンライン広告で認知→Webで情報収集→展示会で体験→営業商談→受注、という流れが典型的
    ・単一チャネルだけでは不十分
  • 相互補完による効果増幅
    ・オンライン広告で展示会への集客を強化
    ・展示会参加者にオンライン広告でリターゲティング
    ・相乗効果により、ROIが30-50%向上する事例も
  • 一貫した顧客体験の提供
    ・顧客はオンライン・オフラインを別々のものではなく、一つの企業体験として認識
    ・メッセージ、ビジュアル、価値提案の一貫性が信頼を生む
施策タイプ
特徴
期待される効果
オンライン広告(認知・獲得) 精緻なターゲティング、リアルタイム効果測定、スケーラビリティ、24時間稼働 新規リード獲得、認知度向上、関心喚起、ブランディング
オフライン施策(展示会・セミナー・営業訪問) 直接コミュニケーションで信頼構築、複数担当者への接触可、体験型の理解促進 関係深化、商談化率向上、顧客満足度強化、購買決定の後押し
オンライン→オフライン オンライン広告でオフラインイベントへ誘導、デジタルで関心を高めてから対面へ イベント集客最大化、質の高い参加者獲得、イベントROI向上
オフライン→オンライン イベント参加者にオンライン広告でリターゲティング、継続的な接点維持 関係維持、トップオブマインド維持、追加商談機会創出
統合キャンペーン オンライン・オフラインを一つのキャンペーンとして設計、一貫したメッセージ・ビジュアル ブランド認知の強化、メッセージ浸透、顧客体験の向上

連携のポイントは以下です。

  • オンライン広告で得たリード情報をCRM・MAツールで一元管理し、状態を可視化
  • オフラインイベントの案内や営業訪問のタイミングをオンライン行動データにもとづき最適化
  • データ活用によりパーソナライズされたオフラインコミュニケーションを実現
  • 営業・マーケティング部門で連携を強化し、リードの反応に応じた柔軟な対応

このハイブリッド戦略により、BtoB企業はデジタル施策でリード獲得・育成を効率化しつつ、リアル施策で信頼関係を強化し、商談化率・成約率の最大化を実現できます。

わたしたち電通B2Bイニシアティブでは、BtoB事業活動全般の戦略立案はもちろんのこと、デジタル領域の知見を活用した具体的な施策の実行から最終的な成果を分析・改善し続けるためのサイクルの創出まで伴走支援が可能です。

支援の詳細については、以下をご覧ください。

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デジタルマーケティング成功につなげる「デマンドセンター構築」のコツ  

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BtoB企業のデジタルマーケティングで成果を最大化するには、デマンドセンターの構築が不可欠です。

デマンドセンターとは、リード創出から育成、営業連携までを一貫して効率化・最適化する組織的な枠組みであり、単なるツールや施策の集約ではなく、戦略・プロセス・テクノロジー・人材・文化を統合した、マーケティング・営業の中核を司ります。

成功事例では、データ基盤、コンテンツ資産、営業連携、標準化されたオペレーションをバランス良く組み合わせ、全社で需要創出の仕組みを浸透させる企業が成果を上げています。

デマンドセンター成功企業の共通点は以下です。

  • 経営層のコミットメント
    トップダウンでの推進、予算・人材の確保
  • 明確なビジョンとロードマップ
    3-5年の長期視点での段階的構築
  • クイックウィン重視
    小さな成功を積み重ね、各組織の協力を獲得
  • データドリブン文化
    勘ではなく、データに基づく意思決定
  • 部門横断の協働
    マーケ・営業・CSの壁を超えた連携
  • 継続的な学習と改善
    失敗から学び、常に最適化
ポイント
具体的内容
期待される効果
目的と役割の明確化 デマンドセンターのミッションと目標を設定し、営業・マーケ・カスタマーサクセスの役割分担を明確化。RevOps組織の検討 組織全体の方向性が一致し、効率的なリード創出と商談化を促進
データ基盤の統合と活用 CRM・MA・Web解析ツールなどのデータを一元管理。CDPまたはデータウェアハウス構築 顧客情報の精度向上、ターゲティング最適化、360度顧客ビュー
コンテンツ資産の体系化 ホワイトペーパー、事例、動画などのコンテンツを管理・再利用可能に。購買ジャーニー別、ペルソナ別に整理・パーソナライズ リードナーチャリングの質向上、効率的なコンテンツ活用
オペレーションの標準化 リード管理、配信、効果測定のプロセスを標準化プレイブック作成、自動化推進 業務効率向上、施策の品質と再現性向上、属人化解消
ABM導入 重要アカウントへのパーソナライズ施策を営業連携で運用 高単価商談獲得、顧客満足度向上
継続的な効果測定と改善 KPI定常モニタリング、A/Bテスト、アトリビューション分析、四半期レビュー 施策の継続的最適化、ROI向上、市場変化への迅速対応

BtoB企業は、データ基盤、コンテンツ、営業連携、オペレーションのバランスを意識し、全社的に戦略としてデマンドセンターを構築・運用することで、デジタルマーケティングの成果を持続的に最大化できます。

2025年以降はAI・自動化技術の活用が成功の分岐点となるため、早期の導入と準備が不可欠です。

1.目的と役割の明確化

BtoB企業のデジタルマーケティングでデマンドセンターを構築する際、最初に取り組むべきは組織の目的と役割を明確にすることです。

単なるマーケティング施策の集約にとどまらず、全社的な需要創出のハブとして機能させるためには、各部門の責任範囲を具体的に定め、共通の目標に向かって連携する体制を整える必要があります。

部門ごとの役割例

  • マーケティング
    ・リード獲得施策の企画・実行(コンテンツマーケティング、広告、SEO、ウェビナー、展示会等)
    ・リードナーチャリング(MAを活用した段階的な育成)
    ・リードスコアリングとセグメンテーション
    ・MQL(マーケティング適格リード)の定義と創出
  • 営業
    ・マーケティングから引き渡されたリードの商談化
    ・顧客課題の把握と提案
    ・顧客課題の把握と提案
    ・フィードバックによる施策改善
    →効率的なリード対応と受注率向上、顧客満足度向上
  • カスタマーサクセス
    ・受注後のオンボーディング、活用支援
    ・アップセル・クロスセル機会の創出
    ・顧客満足度向上とチャーン(解約)防止
    ・顧客の声(VoC)を製品開発・マーケティングにフィードバック

RevOpsとの連携

デマンドセンターの運用をさらに効果的にするため、RevOpsチームとの連携が重要です。RevOpsはマーケティング・営業・カスタマーサクセスを横断して収益最大化を目指す組織です。

従来の縦割り組織の弊害(データサイロ、プロセスの分断、部門最適)を解消し、顧客視点での一貫した体験と効率的なオペレーションを実現します。

デマンドセンターと組み合わせることで、効率的な営業連携とデータ活用が可能になります。

具体的な役割例のイメージは以下です。

  • 戦略の統合:各部門の目標を整合、全社的な戦略に反映
    →バラバラだった部門目標を「収益成長」という共通ゴールに統一
  • プロセスの標準化・最適化:営業・マーケティング活動の効率化
    →リード→商談→受注→顧客育成の一気通貫プロセスを設計・改善
  • データ管理と分析集中化:CRM・MAツールなどのデータを統合し施策改善に活用
    →Single Source of Truth(唯一の信頼できる情報源)を確立
  • KPIの共通化・可視化:リード獲得から売上まで指標を統一し、部門間で進捗を共有
    →全員が同じダッシュボードを見て、同じ目標を追う

そして、目的と役割を明確にするメリットは以下になります。

  • 組織間の情報共有がスムーズになり、リードから売上までのプロセスが効率化
  • RevOpsとの連携により、データドリブンで迅速な意思決定と施策改善が可能
  • 責任範囲を文書化し、関係者に周知することで運用が安定
  • マーケティング施策やコンテンツ戦略、次の施策の効果が最大化

デマンドセンターは、単なるMA運用部隊ではなく、全社の需要創出の中心拠点です。目的と役割を明確にし、RevOpsと連携することで、持続的かつ戦略的なデジタルマーケティング成果の創出につながります。

目的・役割明確化のチェックリスト

  • ✓ 各部門の役割と責任範囲が文書化されている
  • ✓ マーケと営業のSLA(サービスレベル契約)が設定されている
  • ✓ 共通KPIが定義され、定期的にモニタリングされている
  • ✓ 部門間の定期ミーティング(週次or隔週)が設定されている
  • ✓ RevOpsまたはそれに準じる機能が存在する(または設立計画がある)

2.データ基盤の統合と活用

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BtoB企業におけるデマンドセンター構築の核心は、多様なデータソースを統合し、一元管理するデータ基盤の整備です。

CRM・SFA・MA・Web解析ツールなど複数のシステムを連携させることで、顧客理解を深め、施策の精度向上を実現します。

例えば、MAで検知したWebサイト訪問行動を、CRMの営業商談情報と紐付けることで、「どのコンテンツが受注に貢献したか」を可視化できます。

データ統合の重要ポイントは以下です。

  • データ統合
    ・CRM・MA・Web解析ツールなどを連携し、一元管理
    ・顧客情報の正確性・一貫性が向上し、ターゲティング精度アップ
    例:営業がCRMで見るリード情報に、MAで収集したWebサイト閲覧履歴が自動表示される
  • データ品質管理(Data Hygiene)
    ・入力ルール統一、定期的なクレンジング、重複排除
    ・正確なデータにより施策効果を最大化
    例:同一人物が3つの異なるメールアドレスで登録されているのを統合し、正確なエンゲージメント履歴を把握
  • スピーディな更新
    ・顧客行動や商談状況を即時反映
    ・最新情報にもとづくタイムリーな営業アプローチが可能
    例:顧客が価格ページを閲覧した瞬間に、担当営業にアラート通知
  • 組織間データ共有
    ・マーケティング・営業・カスタマーサクセス間で情報を統合
    ・顧客対応のスピードと質を向上
    例:カスタマーサクセスが把握した顧客の不満を、営業とマーケで共有し、対応策を調整
  • 分析と改善の促進
    ・統合データを活用して顧客分析、施策効果検証
    ・PDCAを回し、施策の最適化を実現
    例:マルチタッチアトリビューション分析により、「ウェビナー参加→事例ダウンロード→営業商談」の流れが最も受注率が高いと判明

CRM・SFA・MAツールの連携

  • CRM:顧客情報・商談履歴の管理 → 最新情報を全社で共有
  • SFA:営業プロセス管理 → 優先順位付けや活動可視化
  • MA:リード獲得・ナーチャリング・スコアリング自動化→購買意欲に応じた育成

これらを統合することで、営業はリードの状態や行動履歴をスピーディに把握でき、最適なタイミングでアプローチ可能になります。

オンラインとオフライン施策の統合

  • オンライン:Webサイト、広告、メール、ウェビナー→潜在顧客の早期発見と情報提供
  • オフライン:展示会、セミナー、営業訪問 → 深い顧客関係構築と商談促進

統合のポイントは以下です。

  • 顧客情報をCRM・MAツールで一元管理
  • オンラインで関心を持った顧客をオフラインに誘導
  • 営業・マーケティング間で情報共有し、最適アプローチを実施
  • 成果を統合分析し、ROIの高い施策に集中

CDP(顧客データプラットフォーム)の活用

  • リアルタイムデータ統合
    オンライン・オフラインデータを結合し、最新顧客状況を把握
  • Cookie廃止対応
    ファーストパーティデータ中心で精度高いターゲティングを維持
  • 顧客プロファイル統合管理
    パーソナライズ施策でエンゲージメント向上
  • AI・機械学習連携
    リードスコアリングや施策最適化を自動化
  • プライバシー遵守
    法令に適合しつつデータ活用

CDPを導入することで、変化するマーケティング環境でも最適なタイミングで高精度な顧客データ活用が可能となり、BtoB企業の成果向上に直結します。

3.コンテンツ資産の体系化

BtoB企業のデジタルマーケティングでは、コンテンツは単なる情報発信の手段ではなく、戦略的資産です。デマンドセンターでは、このコンテンツを体系的に管理・活用することで、リードナーチャリングの質向上や営業連携の強化を実現できます。

コンテンツの一元管理と再利用

ホワイトペーパー、ブログ記事、動画、ウェビナーなどをCMSやDAMで一元管理することで、関係者が必要な資料をすぐに活用可能になります。

また、既存コンテンツをアップデートしたり、異なる形式に変換して再利用する「リパーパス運用」により、制作コストを抑えながら多チャネルで一貫した情報発信が可能です。

「資産化」とは、以下のように定義できます。

  • 作りっぱなしではなく、継続的に活用できる状態にすること
  • 誰もが必要な時に、必要なコンテンツをすぐに見つけられるようにすること
  • 一つのコアコンテンツから複数のフォーマットに展開し、投資対効果を最大化すること

購買段階・関与者階層に応じた最適化

BtoBでは購買プロセスが複雑で、複数の関与者が存在します。

  • 認知段階:経営者向けホワイトペーパー/現場担当者向けブログ
  • 検討段階:ROI分析資料/製品デモ動画
  • 決定段階:導入事例/契約支援資料

こうした段階・役割に応じたコンテンツ配置で、顧客の関心を段階的に引き上げ、商談化率を高めることができます。

デマンドセンターはコンテンツの「ハブ」

デマンドセンターは、コンテンツ制作・再利用・配布を一元管理するハブです。企画から制作、品質管理まで標準化し、営業やマーケティング部門と連携することで、成果につながるコンテンツを効率的に提供できます。

さらにAIや自動推薦ツールを活用すれば、パーソナライズされた情報提供も可能になるでしょう。

コンテンツを戦略的資産として体系的に管理し、再利用・パーソナライズを徹底することは、リード育成の質向上と営業連携の強化につながります。

BtoB企業が持続的な成果を上げるには、デマンドセンターをコンテンツハブとして機能させることが不可欠です。

4.オペレーションの標準化

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BtoB企業がデジタルマーケティングを効率的かつ持続的に運用するためには、デマンドセンターにおけるオペレーションの標準化が不可欠です。標準化されたプロセスは、施策の一貫性と品質を確保し、組織全体での成果創出を加速させます。

標準化がもたらす効果は以下です。

  • 一貫性の確保
    リード管理から営業連携まで、顧客体験の質を安定化
  • 効率向上
    明確なルールにより、作業時間短縮とミス削減
  • 再現性の確保
    成功事例を体系化し、横展開を容易に
  • 改善促進
    共通KPIにもとづきPDCAを高速化

標準化すべき領域の例は以下となります。

  • リード管理
    獲得から営業引き渡しまでをルール化し、取りこぼし防止
  • コンテンツ配信と効果測定
    チャネル・タイミング・指標を統一し、改善を加速
  • 自動化・ツール活用
    MAやCRMツールでスコアリングやレポートを標準化
  • 継続的改善体制
    レビューや会議を制度化し、改善を組織文化に

さらに実務面では、メール配信・広告キャンペーン・イベントリード処理のプロセスを明文化し、MAシナリオやキャンペーンをテンプレート化することで、属人化を防ぎ再現性を高められます。

また、新しい施策やツール導入は「PoC→標準化→全社展開」の段階を踏むことが効果的です。小規模検証でリスクを抑え、ルール化を経て全社に展開することで、組織全体にスムーズに浸透させられます。

オペレーション標準化は、単なる効率化ではなく営業との連携強化や商談化率向上にも直結する施策です。

市場や技術の変化に対応しつつ、継続的に標準化を見直すことが、BtoB企業のデジタルマーケティング成功の鍵となるでしょう。

5.ABM導入

BtoB企業のデジタルマーケティングにおいて、ABMは高単価商談や戦略的アカウントへの深耕に欠かせない取り組みです。デマンドセンターにABMを組み込むことで、より精度の高い需要創出と営業連携を実現できます。

ABM組み込みのポイント

  • ターゲットアカウントの選定と合意形成
    マーケティングが抽出した候補リストに営業の知見を反映し、優先度を定めることで、両部門が共通認識を持って施策を推進できる
  • 課題に沿ったコンテンツ・施策展開
    1社ごとのニーズに合わせ、ホワイトペーパーや事例記事、セミナーをパーソナライズして提供。広告やメールもカスタマイズし、関心度の高い接点を増やす
  • アカウント単位での進捗管理
    CRMやSFAを活用し、リード状況や商談フェーズを一元管理。営業活動を補完し、最適なタイミングでのアプローチを可能にする
  • インテントデータの活用
    Web閲覧履歴や資料ダウンロード、検索行動などから購買シグナルを検知。営業がホットリードに集中でき、商談化率の向上につながる
  • 営業連携と継続的改善
    マーケティングが提供するパーソナライズドコンテンツと営業の顧客対応を組み合わせ、アカウントごとの成果をKPIで評価。定期的なレビューにより、戦略を磨き込む

ABMをデマンドセンターに組み込むことは、単なる施策の追加ではなく、営業とマーケティングが一体となった戦略的アプローチを意味します。

インテントデータやパーソナライズ施策を組み合わせることで、効率と成果を両立し、BtoB企業の競争優位性を高めることが可能です。

6.継続的な効果測定と改善

BtoB企業のデジタルマーケティング成功には、施策を一度実行して終わりではなく、継続的な効果測定と改善を仕組み化することが不可欠です。

特にデマンドセンターの運用においては、KPIを明確に定め、データを基盤にPDCAサイクルを高速で回す体制が求められます。

そもそも測定と改善がないと、どのような問題が起こるのでしょうか。

  • 何が効いているか分からず、予算配分が最適化されない
  • 失敗を繰り返し、成功パターンが確立されない
  • 経営層にROIを説明できず、予算が削減される
  • 市場変化に対応できず、競合に遅れを取る

効果測定の主な指標

  • リード獲得数
    施策全体の認知・興味喚起の度合いを把握
  • MQL・SQL数
    リードの質を評価し、営業との連携度を確認
  • 商談化率
    ナーチャリングやスコアリングの有効性を検証
  • 受注率・売上
    施策のビジネス貢献度を直接評価
  • LTV
    長期的な顧客価値を測定し、アップセルや顧客維持に活用

改善の仕組み化

効果測定は単なる数字の確認ではなく、具体的な改善策につなげることが本質です。

  • ターゲットやセグメントの見直し
  • コンテンツの質・配信タイミングの改善
  • 配信チャネルの最適化
  • 営業との情報共有・連携強化

さらに、施策ごとのROIを数値化し、「どのチャネル・コンテンツが商談化につながったか」をトラッキングすることで、投資判断を迅速に下せます。UTMパラメータ、MA・CRMツールの連携、アトリビューション分析などを組み合わせれば、正確な因果関係を把握可能です。

アジャイル的な運営文化

改善を継続的に推進するためには、小さな仮説検証を高速で繰り返すアジャイル的な運営を文化として根付かせることが重要です。

  • 小さなアイデアをすぐに試し、結果を即評価
  • 成功・失敗事例を可視化して組織に蓄積
  • リーダーが挑戦を奨励し、失敗を許容する姿勢を示す
  • デジタルツールを活用し、データドリブンで改善を加速

このように、効果測定→改善→再実行のサイクルを組織的に回し続けることで、BtoB企業は変化の激しい市場環境でも柔軟に対応し、デジタルマーケティングの成果を持続的に最大化できます。

デジタルマーケティングの成功事例を参考に自社のマーケティング戦略を最適化しよう

デジタルマーケティングの事例を通じて、BtoB企業が直面する課題とその解決策を探ってきました。成功するためには、顧客理解やコンテンツの充実、営業との連携が重要です。特に、コンテンツを通じた業界課題の解決策の提供や、データにもとづいた改善サイクルが鍵です。

また、デマンドセンターの構築では、データ基盤や標準化されたオペレーションの整備が求められます。

これらの要素をバランスよく組み合わせることで、効果的なデジタルマーケティングを実現できます。具体的な改善策や新たな取り組みを計画し、まずは小さなステップから始めてみましょう。

デジタルマーケティングの力を最大限に引き出し、ビジネスの成長を加速させるための一歩を踏み出してみてください。

わたしたち電通B2Bイニシアティブは、BtoB事業の成長を加速させるデマンドジェネレーションとブランディングのプロフェッショナルです。

電通グループの強みである広範なネットワークと豊富なデータ資産、そしてBtoBに特化した専門チームの知見を活かし、以下の領域をトータルで支援します。

  • 事業戦略の立案
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  • マーケティング/営業活動の支援
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わたしたちの核にあるのは、広告コミュニケーションで培ってきた「人の心を動かす力」です。この力を活用し、経営・人材・組織・事業といったあらゆるレイヤーにおける課題に向き合いながら、具体的な施策の実行から最終的な成果を分析・改善し続けるためのサイクルの創出まで伴走します。

単なる「施策の提供」にとどまらず、強いブランドづくりや売れる仕組みの構築を通じて、企業の持続的な成長と信頼性の高いパートナーシップの実現を目指します。

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B2B Compass編集部

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