B2B Compass
SaaS企業・サービスが市場を席巻する今、SaaSビジネスにおけるインサイドセールスは、地理的な制約を超え、顧客獲得の効率を高めるひとつの手段です。
保育・教育施設向けにICTを活用した業務支援システム「CoDMON(コドモン)」を提供する株式会社コドモンは、インサイドセールスチームを設立してオンライン商談を導入することで、受注数を大幅に向上させました。
同社のインサイドセールスの具体的な仕組みと成功要因について、普及推進部チーフ推進アドバイザーの濱中悠里氏に伺いました。
INDEX
保育園・幼稚園・こども園をはじめとする保育・教育施設向けに、現場に寄り添ったサービスを提供し、保育の質の向上と業務の効率化を支援する同社。ICTを活用したSaaS型業務支援システム「CoDMON(コドモン)」は、47都道府県の約20,000施設で利用され(2024年11月1日時点)、日本で最も選ばれている※ 保育ICTシステムです。
※「SaaS型業務支援システムの導入園調査 2023」 株式会社東京商工リサーチ(2024年1月)
インサイドセールスチームのマネージャーを務める濱中氏は、同社におけるインサイドセールスの定義や業務範囲をこう説明します。
株式会社コドモン 普及推進部チーフ推進アドバイザー 濱中悠里氏
「インサイドセールスチームは普及推進部に属するチームとして、並列でフィールド営業や公共営業のチーム、またマーケティングのチームが存在しています。インサイドセールスチームのミッションは、ずばりSMB領域のお客様の新規受注を獲得すること。アポイント取得ではなく、商談やクロージングを担っています」(濱中氏)
同社は2019年にインサイドセールスを導入し、受注数を以前の2倍に向上させました。さらに、2022年度のチーム受注数は1,400施設、2023年度はメンバーを1人増員したうえで受注数を1,800施設と成長を続けています。
インサイドセールスを始めたきっかけについて、濱中氏はこう振り返ります。
「『CoDMONをより早く、より多く普及する』という目的を達成するための最適な手段としてインサイドセールスをスタートしました。以前は全国の園からのお問い合わせを受け、営業担当者が一件一件現地に赴いて商談を進めるフィールドセールス形式で対応していたので、訪問までに2~3ヶ月お待たせしてしまうことも多かったです。この課題を解決し、できるだけ時間を置かずに商談が行えるよう、コロナ禍前の2018年からweb商談システムを活用し、オンラインで営業活動ができる環境を整えました。
当初はオンライン商談でお客様の温度感を把握できれば良いと考えていましたが、想定に反してオンライン商談のみで価値合意から受注に至ることが多くあったため、インサイドセールスの専門チームを立ち上げて、SMBのお客様については従来型の対面商談から、オンラインに完全シフトしました」(濱中氏)
同社はインサイドセールスチームを立ち上げる際、インフラを整備しただけではありませんでした。従来の対面とは違った商談スタイルで成果を最大化させるために、組織としての価値観を抜本的に見直したと濱中氏は話します。
「オンライン商談は対面での直接的なコミュニケーションと比べると、感覚や雰囲気で得られる情報量が少なく、お客様(リード)のニーズや反応を把握しにくいという難しさがあります。そのため、オンライン商談では、売上や成績よりもお客様との正しい価値での合意を優先して考えています。対面の場合はお客様から現状の課題や要望を聞くことがマストでしたが、オンラインの場合、いきなり根掘り葉掘り質問をしてしまうと逆に不信感をもたれてしまうので、あえて冒頭から詳細なヒアリングはしません。また、誰が担当しても一定の商談品質を維持できるよう、常に同じご案内を徹底しています。ご説明をした後、相手の反応を感じ取れない場合、『いかがですか?今の説明はわかりましたか?』など、意志や不明点を直接言葉で質問して確認することも大切にしています」(濱中氏)
また、メンバーのモチベーションを保ち、働きがいのある組織をつくるために、チームや個人の目標設定も一新したそうです。
「期ごとにチームの目標を立てる際、『最低限超えるべき必達目標』と『容易には達成できない目標』の二軸で設定しています。最低限超えるべき目標ではなく、あえて達成できない高い目標を追いかけることで、去年と同じ方法を繰り返すのではなく、改善し続けるモチベーションを維持しつつ、気づいたら最低限超えるべき目標は越えている状況です。また、インサイドセールスチームでは個人としての売上や成績は追いません。給与面でも個人成果に対するインセンティブはなく、チームの成果として全員に還元される仕組みです。これはコドモンを一日も早く普及する目的に対して、個人間で競争ではなく協力しあうことが最適なためです。結果、個人が案件を抱え込むことはなく、徹底的に情報共有を行っているなど、協力し合う体制が整っています」(濱中氏)
さらに、商談後の顧客対応を巻き取るデスクチームとの分業化により、セールスチームが商談に集中できる環境をつくりあげていることも、高い受注率に繋がっていると濱中氏は語ります。
「デスクはセールスの後方支援を行うチームですが、単なるセールスアシスタントに留まらず、契約周りの手続きや商談後のお問い合わせ電話など、従来はセールスが行っていた営業業務を大きく巻き取ることで、営業担当者が商談や顧客対応に集中できるようにしています」(濱中氏)
CoDMONのさらなるグロースに向けてインサイドセールスを導入し、着実に成果を上げている同社。受注数の増加以外にも副次的にさまざまな効果があり、今後もさらに取り組みを進めていくと、最後に濱中氏はこう語りました。
「インサイドセールスの実施に向けてお客様への案内をマニュアル化するなど、運用を統一することで、新人・営業未経験者の即戦力化や、メンバーの成績の均一化・安定化を実現できました。調査を実施したところ、クレームやトラブルも少なくなり、顧客満足度も高まっています。今後は過去に商談をしてペンディングになっていたお客様のフォローや、研修関連など業務支援システム以外のサービスのご案内など、インサイドセールスの領域をさらに広げていきたいです」(濱中氏)
B2B Compass編集部
B2Bのビジネス課題を解決に導く、コンパス(羅針盤)となるような情報をお届けします。