コンテンツおよびUIの企画・設計・実装、Webサイトの構築・運用を中心に、さまざまなサービスを包括的に提供する株式会社ミツエーリンクス。2024年4月、第35期のスタートとともに4月26日から電通総研の完全子会社となり、新たなミツエーリンクスとして歩み始めました。
今回はミツエーリンクスの代表取締役社長(CEO)藤田 拓氏・代表取締役副社長(Co-CEO)東﨑厚広氏・エグゼクティブ・フェロー木達一仁氏と、株式会社電通 梅木俊成氏・株式会社電通デジタルの副社長執行役員 小林大介氏が対談。ミツエーリンクスが電通グループに参画した背景や、ミツエーリンクスとしてのB2Bの取り組み、またミツエーリンクスが強みとするサステナブルなウェブデザイン、アクセシビリティ施策などについて語ります。

PROFILE
株式会社ミツエーリンクス 代表取締役社長(CEO)
藤田 拓
2004年入社。フロントエンドエンジニアとしてウェブ標準案件を担当の後、2005年からWebCMS、およびシステム関連の案件に携わる。2006年システム本部長。2024年4月ミツエーリンクス代表取締役社長に就任。

PROFILE
株式会社ミツエーリンクス 代表取締役副社長(Co-CEO)
東﨑厚広
1995年入社。CIT事業部でテレビ視聴率分析やメディア広告関連のシステム開発を担当。2007年から営業として電通グループを担当、営業部長、営業ユニット長歴任の後、2019年に事業部長補佐。2024年4月ミツエーリンクス代表取締役副社長に就任。

PROFILE
株式会社ミツエーリンクス エグゼクティブ・フェロー
木達一仁
宇宙開発関連組織でウェブマスターとしての経験を積んだ後、IT業界へ。以来、Webコンテンツの実装工程に多数従事。2004年より株式会社ミツエーリンクスに参加、現在はエグゼクティブ・フェロー。ウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)作業協力者。

PROFILE
株式会社電通デジタル 副社長 執行役員
小林大介

PROFILE
株式会社電通 第8マーケティング局B2Bマーケティングコンサルティング部
梅木俊成
INDEX
質実剛健を貫いてきた国内屈指のコミュニケーション・デザイン・カンパニー
梅木氏 お三方、本日はよろしくお願いします。電通としてこれからさらにB2Bに力を入れていこうという考えが加速するなか、ミツエーリンクスが電通グループに参画されたというお話を聞き、これはぜひ皆さんとお話させていただきたいと。改めて、ミツエーリンクスについて事業の特徴を教えていただけますか。
株式会社電通 梅木俊成氏(右から2人目)
藤田氏 ミツエーリンクスは技術と品質で顧客企業さまのビジネスを持続的発展に導く、国内屈指のコミュニケーション・デザイン・カンパニーです。映像や音声を含むコンテンツおよびUIの企画・設計・実装、Webサイトの構築・運用を中心に、システム開発、アプリケーション開発、アクセシビリティ・ユーザビリティの向上、アクセス解析に至るまで、さまざまなサービスを包括的に提供しています。高い内製比率によって実現するクオリティの高さも当社の強み。B2Bのハイレベルなニーズにも対応しています。
梅木氏 貴社は業界でも歴史のある企業ですよね。
ミツエーリンクス 代表取締役社長(CEO)藤田 拓氏
藤田氏 創業は1990年で、当初は音声事業を主軸にスタートしました。当時、デジタルで音声を収録するスタジオはほとんどなく、PBXの自動音声や、銀行ATMの音声の多くは当社が納品していました。また、企業でFAXが活躍していた時期でもあり、FAXでも鮮明な写真・画像情報を送信できる「FAX用画像処理サービス」を開発、省庁、ゲームメーカー、電子通信事業者、情報メディアサービス会社などに採用されていました。
創業者がニューメディアに対して強い関心をもっており、やがてWeb制作に事業をシフトしていきました。当時、Web制作は非常に出戻りが多く、納品後に大きな問題が発覚して従業員総出で修正の対応をするといったことも少なくなかった時代です。これではダメだと、ミツエーリンクスはWeb制作会社のなかで先駆けて「ISO90001」を取得しました。また、シックスシグマ(Six Sigma)の品質マネジメント手法も取り入れて品質の向上を目指していたようです。私自身は2004年にフロントエンジニアとしてミツエーリンクスに入社し、現場経験を積み上げて2023年に取締役社長となりました。
【電通総研×ミツエーリンクス】両社のシナジーで社会進化実装をさらに推進
梅木氏 貴社が電通総研グループにご参画された背景をお伺いできますでしょうか。
藤田氏 創業者でオーナーの高橋から引退の意向があり、事業継承先を探していました。広告代理店や印刷会社など複数社からお声かけいただいたのですが、そうした業界には、ミツエーリンクスと同業にあたるWeb制作のファンクションが既にあるので、ミツエーリンクスの強みが弱まってしまうのではという懸念があったのです。 一方、電通総研グループにミツエーリンクスが参画すれば、グループとして提供できるサービスの幅が広がる垂直統合となり、私たちの大切にしている価値や強みを維持できるのではないかと考えました。
加えて、電通総研のミッション・ビジョンや、社会に対する向き合い方がミツエーリンクスの考え方と近いことも決め手となりました。
株式会社電通デジタル 副社長 執行役員 小林大介氏
小林氏 今回のご参画は、双方において新たなシナジーの創出や、企業価値向上につながるものだと感じています。この効果をより高めていくためには、具体的にどのような取り組みが必要だとお考えでしょうか。
藤田氏 電通総研の行動指針に「AHEAD」という言葉がありますが、このなかのDが示す「Dialogue(互いに語り尽くす)」がまず大切だと思います。ある程度の情報はWebで得ることができますが、実際の姿は語り合うことで初めて理解し合えるでしょう。そして、AHEADのA・E・Aが示す「Agile(まずやってみる)」、「Explore(切り拓く)」、「Ambitious(夢を持つ)」を実行に移して形成しつつ、シナジーが生まれるベクトルを探してきたいです。 幸いにも「Humor(人間魅力で超える)」という部分はミツエーリンクスの特性でもあると思っています。AHEADの行動指針の下、お互いの技術・品質を昇華させていきたいですね。
ミツエーリンクス 代表取締役副社長(Co-CEO)東﨑厚広氏
東﨑氏 まずは、双方の強みを知ることで新たな協業領域を描く必要があるでしょう。そして、実績を積み上げながら、互いの企業文化や業務遂行のクセなどを体感していくことが大切だと考えています。さらに言えば、電通グループ各社とも、この取り組みの輪を広げていけたら良いですね。
小林氏 電通総研の事業コンセプトとして「社会進化実装」を掲げております。 貴社のご参画によって、コンセプトの実現に向けた取り組みなども進められているのでしょうか。
藤田氏 ミツエーリンクスはW3Cの理念「Webの可能性を最大限に引き出す」という部分に以前から共感しており、W3CのWeb制作会社のなかでは最古参となるメンバーです。この理念は社会進化に強くつながっています。例えば、Webの根本目的の一つである「情報をマシンリーダブルにする」という考え方を促進することで、さまざまなデバイスがWebの情報をより意味のあるものとして活用できますし、その流れはアクセシビリティやAIとの相互運用にまで繋がっていきます。私たちが目指すのは、人と機械がより理解可能となるインターフェースです。電通総研が提供するアプリケーションと、ミツエーリンクスのマシンリーダブルなインターフェースが加わることで、社会進化を促進できる大きな一手になるのではないかと考えています。
東﨑氏 社会進化実装の取り組みには、我々の顧客である企業や行政機関の先にある消費者や住民の皆様へのインターフェースが欠かせないと考えています。ミツエーリンクスは、Web制作業界のなかでもアクセシビリティやUXの領域に関して力を入れている企業だと自負しており、電通総研のIT実装力にミツエーリンクスのUI実装力が加わることでさまざまなプロジェクトで社会進化実装を実現できるのではないでしょうか。
BtoB分野のwebの構築・運用におけるサステナブルやアクセシビリティの重要性
梅木氏 貴社はサステナブルやアクセシビリティに配慮したWebサイトの構築・運用をソリューションとして提供されていますよね。本ソリューションに関する具体的な取り組みについて、ご教授いただけますでしょうか。
ミツエーリンクス エグゼクティブ・フェロー 木達一仁氏
木達氏 Webアクセシビリティについては、2006年頃から専門部門を立ち上げ、お客様へのさまざまな関連サービスを提供するばかりでなく、当社制作物のアクセシビリティ品質の向上に取り組んできました。かつては見積書において、アクセシビリティ対応を分けていた時代がありましたが、それでは簡単にアクセシビリティ対応が不要と思われがちです。そこで、2010年からは「標準対応」と称し、お客様から特別求められたり、また対価をいただかずとも、アクセシブルな制作物を納品するよう取り組んできました。
標準対応は当初、新規構築案件に限定していましたが、2016年からはこれを運用案件にも適用。さらにWCAG(Web Content Accessibility Guidelines)の更新に伴い、2018年からはWCAG 2.1、2024年からはWCAG 2.2にそれぞれ制作基準をアップデートしてきました。Webアクセシビリティに関して言えば、コンサルティングから品質の監査、社内教育、品質チェックツールの導入支援など、お客様がWebアクセシビリティの継続的改善に取り組んでいただくためのさまざまなサービス、また取り組みに伴走させていただく体制を提供させていただいています。
サステナビリティについては、アクセシビリティに加え「表示パフォーマンス(Webコンテンツの表示速度や表示の安定性)」、「ファインダビリティ(SEO対策を含めたコンテンツの見つけやすさ)」、そして「UX改善」をソリューションとしてパッケージ化し、ご提案をしています。
いずれの分野も、Webコミュニケーション、Webサイトの構築・運用において欠かせない品質や取り組みであると同時に、サステナビリティにも求められるものです。たとえば、優れた表示パフォーマンスは、消費電力の抑制に効果があるとともに、ユーザー体験にとってもプラスになります。また、4つの分野はいずれもW3Cで策定されつつあるWeb Sustainability Guidelines(WSG)に包括されています。将来的にはその多くを当社制作物の「当たり前」品質として採用することで、お客様からだけではなく社会から求められるWeb制作会社、コミュニケーションデザイン会社を目指したいと考えています。
Webコンテンツが備える品質として「アクセシビリティ」は当たり前と考えている
小林氏 B2B分野におけるwebの構築・運用にあたって、サステナビリティやアクセシビリティに配慮することの重要性についてお伺いできますでしょうか。
木達氏 1991年にWebが誕生して30年以上が経過し、その利用状況は大きく様変わりしました。ユーザーは右肩上がりに増加し、今や老若男女や身体的・精神的障がいの有無などにもかかわらず、数多くのユーザーがWebコンテンツを利用し、コミュニケーション手段にWebを必要としています。その過程で、Webにアクセスする手段は、急速に多様化しました。スマートフォン、タブレットに加えスマートスピーカーなど、さまざまなデバイスがWebへのアクセスに用いられています。加えて画面の内容を読み上げるスクリーンリーダーといった、主に障がいをもつ方々が利用する支援技術も普及しています。
また、Webを支える通信も、昔と比べて飛躍的に高速化し、安価で利用できるようになりました。さまざまなユーザーが、さまざまなデバイスで、さまざまな国や地域から、さまざまな通信インフラを介してアクセスできる、それが現在のWebなのです。これを踏まえると、いまやB2BとB2Cを問わず、あらゆるデジタルコミュニケーションにおいて、アクセシビリティへの配慮は不可欠と考えます。障がい者や高齢者への対応という限定的な文脈で語られがちなアクセシビリティですが、私たちはまったくそういった考え方では捉えていません。Webコミュニケーションを実現するうえで、Webコンテンツが備え得るべき必須の品質、それがアクセシビリティであり、それに配慮することは特別なことではなく、むしろ「当たり前」と考えています。
また、サステナビリティへの取り組みは業種・業界を問わず、あらゆる企業において求められている認識です。地球温暖化は特に喫緊の課題として、関連する報道を目にしない日はないくらいですが、そもそも環境が持続可能でなければ社会は成り立たず、社会が持続可能でなければ経済は、そしてビジネスは成り立ちません。企業におけるサステナビリティ活動というと、その企業の提供する製品やサービスにフォーカスされがちですが、本来はあらゆる企業活動を通じてサステナビリティに取り組む必要があるでしょう。
当然、Webを活用するマーケティングやブランディングを目的とした活動、広報・PR活動も、例外ではありません。となれば、今後はますます、Webを介したビジネスやコミュニケーションにおいても、サステナビリティへの貢献が求められていくと考えています。例えば、Webは膨大な電力消費を背景として機能しています。少しでも使用電力を減らし、温室効果ガスの排出の抑制につなげるような取り組みは、アクセシビリティと同様にB2BとB2Cの別を問わず、Webサイトの構築・運用にとって必要かつ重要と考えます。
今後は、新たな技術領域へのチャレンジを後押ししていきたい
梅木氏 貴社はコミュニケーション・デザイン・カンパニーとして、多様なサービスを包括的にご提供されているかと存じます。今後企業として強化していきたい取り組みなどはありますでしょうか?
藤田氏 ミツエーリンクスはWeb制作会社のなかでは老舗の一社になってきた印象があります。ここまで長い間ビジネスを伸ばし続けることができたのは、W3Cの理念に沿ったWebの基礎技術を大事にして、その品質を維持してきたからこそだといえるでしょう。しかし、WebやITの世界は現在も変化しており、社会進化を促進するための技術は新たな領域を生み出しています。ぜひそういった領域にチャレンジしたいと思う社員たちをサポートしていきたいですね。
東﨑氏 アクセシビリティやUXの領域は、まだまだ進化していくものだと考えておりますので、つねに強みとして強化していきたいと考えておりますし、デリバリー力も高めていきたいです。またWeb制作における品質も当社の強みですが、そこに上流からのコンサル力と運用フェーズのサービス強化を加え、一気通貫でWeb施策を支援できる企業になりたいと考えています。
小林氏 いろいろなお話をありがとうございました。最後に今後の経営ビジョンや企業展望などがございましたら、お伺いさせてください。
東﨑氏 今年、電通総研グループに参画いたしましたが、さらに視野を広ければ電通グループに参画したということであり、当社があまり手掛けてこなかったサービス系のWebサイト(B2C)構築にもサービスを拡張していけるようになりたいですね。
藤田氏 ミツエーリンクスの社員の年齢構成はピラミッド型になっています。この若い層が力をつけることで、より強い企業に成長できるでしょう。彼らの入社のきっかけとなったミツエーリンクスらしさをベースとしつつ、電通総研グループへの参画による新たなマーケットへのデリバリーを加え、より若い世代が活躍できるような取り組みを創造できればと考えています。
株式会社ミツエーリンクス コーポレートサイト:https://www.mitsue.co.jp/

PROFILE
B2B Compass編集部