• 2025/12/08
  • 2025/12/08

販売パートナーマネジメントを強化する「PRACTモデル」とは

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私たち電通B2Bイニシアティブは、B2B企業の成長戦略において販売パートナー(ディストリビューターやリセラー ※1)の活用がますます重要になっていると考えます。実際、世界のB2B製品・サービスの約70%は販売パートナー経由で販売されているとのデータもあり、チャネル戦略は企業の売上拡大に欠かせないエンジンです。

しかし一方で、パートナーチャネルから十分な成果を引き出すことは容易ではありません。日本企業の多くはパートナー制度を導入していても、体系立てた支援や関係構築が不十分で「契約しただけで稼働しない販売パートナー」が散見されるのも事実です。海外ではパートナー支援の専門ツールやコンサルティングが充実し、PRM(Partner Relationship Management:パートナー・リレーションシップ・マネジメント)が20年以上研究され実践されていますが、日本ではまだ発展途上と言えます。

こうした状況を踏まえ、私たち電通B2Bイニシアティブではパートナー戦略の現場知見を体系化し、独自のPRM支援フレームワークである「PRACTモデル」を提唱しています。この記事では、電通の視点からPRACTモデルの有用性について、その具体的な内容と実践ポイントを解説します。

※1:ディストリビューターとは1次代理店や取次業者という意味。顧客に直接販売せず、リセラー(2次代理店)へ商材を卸す仲介の役割を持つ。
 

PRACTモデルとは?

PRACTモデルは、販売パートナーがベンダーの商材を認識し、販売準備を整え、実際の営業活動を行い、ベンダーと協働しながら成果を最大化し、最終的に長期的な信頼関係を築くプロセスを体系化したフレームワークです。

PRACTモデル

 

フェーズ
販売パートナーの行動
企業(ベンダー)の支援策

P: Perception(認識)

販売パートナーがベンダーの製品・サービスを知る PRMポータルの整備、情報提供、説明会

R: Readiness(準備)

販売パートナーが販売できる状態に育成する 研修、販売資料、営業ツールの提供

A: Activate(動機付け)

パートナープログラムなどにより、
パートナーが販売活動を行うインセンティブを構築する
インセンティブ制度・パートナープログラム

C: Collaboration(協働)

ベンダーと販売パートナーが連携し、成果を最大化する フォローアップ、共同マーケティング、データ共有

T: Trust(信頼関係)

販売パートナーとベンダーの長期的な関係を構築する 表彰、成長支援

 

5つのフェーズの詳細と成功のポイント

① Perception(認識) – 販売パートナーが商材を正しく理解しているか?

まずは販売パートナーがベンダー提供の製品・サービスの価値を正しく理解し、興味を持つ段階です。ここが起点であり、パートナーが「売ってみよう」という意欲を持つには魅力の伝達が不可欠です。専用のパートナーポータルで最新情報を提供したり、魅力を伝える説明会・ウェビナーを開催したりして関心喚起を図りましょう。逆に情報提供が不足すると、販売パートナー任せになり販売活動が始まらない恐れがあります。

✅ 成功するPRMのポイント

  • 販売パートナー向けの専用ポータルサイトを用意し、最新情報を提供
  • 商材の魅力や市場ニーズをわかりやすく伝える説明会・ウェビナーを開催
  • 販売パートナーごとにカスタマイズした情報提供(業界別・販売規模別)

❌ 失敗するPRMの典型例

  • 販売パートナーが必要な情報を探しにくく、商材理解が進まない
  • 販売パートナー任せで情報共有が不十分(売れるかどうかは販売パートナーの判断に委ねられる)

② Readiness(準備) – 売れる体制が整っているか?

次に、販売パートナーが販売活動を実行に移すための体制・知識を整える段階です。製品知識や営業ノウハウが不足したままでは成果は望めません。パートナー向け研修やeラーニングで製品知識を習得させ、営業トークスクリプトや提案資料、FAQ集なども提供します。パートナーごとに販売戦略を擦り合わせ個別サポートすることも有効です。準備不足のまま放置すれば、せっかく関心を持った販売パートナーも動けず機会損失になります。

✅ 成功するPRMのポイント

  • 販売パートナー向け研修・eラーニングを定期的に実施し、製品知識を強化
  • 営業トークスクリプトやFAQ、競合比較資料などを提供
  • 販売パートナーごとに販売戦略を立案し、個別サポートを行う

❌ 失敗するPRMの典型例

  • 販売パートナーにトレーニングを実施せず、販売ノウハウが不足している
  • 販売ツールが整理されておらず、販売パートナーが提案しにくい

③Activate(動機付け)ー販売パートナーの活動を促進するインセンティブがあるか

パートナーが製品知識を得て案件を動かし始めても、継続的な成果につなげるには“内的・外的インセンティブ”の仕組み化が欠かせません。まずは収益面――販売マージンや案件登録ボーナス、達成度に応じた上位ランク昇格など――を明快に設定し、努力と報酬の因果をパートナー担当者が即座に理解できるようにします。特にランクに応じて段階的に高まる手数料率設計は最も直感的で強力なインセンティブで、各種外資メーカーもパートナープログラムに組み込んでいます。

また、営業担当者個人に対するSPIF(短期インセンティブ)や表彰制度、バッジ/認定資格の付与など“可視化された評価”を用意すると、法人だけでなく担当者本人のモチベーションも高まりやすくなります。

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こうしたインセンティブをパートナープログラムとして確立することで、パートナー側がプログラムを参照しながら自走していく環境を整備することが出来ます。一方で、制度が複雑・不透明だったり、報酬支払いが遅延したりすると「頑張っても報われない」という失望が拡がり、パートナー自体の撤退につながりかねません。

✅ 成功するPRMのポイント

  • 販売実績に連動したシンプルかつ段階的なインセンティブ
  • 初回受注〜報酬支払いまでの中間指標を達成条件とする
  • 担当者個人を称えるSPIF/表彰・認定バッジで“見える化”された評価を提供

❌ 失敗するPRMの典型例

  • 報酬体系が複雑で、担当者が「結局いくらもらえるのか」把握できない
  • 法人向けインセンティブのみで、担当営業個人の達成感・評価が設計されていない
  • ランク昇格条件がブラックボックスで、努力と結果の因果が不透明

④ Collaboration(協働) – 販売パートナーとベンダーが共に成長できる仕組みを作れているか?

パートナーが実際に顧客への販売活動を行う段階です。ベンダーから見れば、パートナー経由の商談が動き出すフェーズでもあります。パートナーの案件進捗や売上データを共有してもらい、定期的にミーティングで課題をヒアリングしましょう。必要に応じてベンダーの営業が同行したり、リサイクルリードを提供したりと、共同で案件獲得を支援します。このフェーズでの迅速な支援が、パートナーの初期成功と継続的な意欲に直結します。逆に状況把握ができていないと、問い合わせ対応の遅れや報告負担の大きさから販売パートナーの動きが鈍化する懸念があります。

加えて、ただ売ってもらうだけでなく、戦略的な協働関係を築く必要もあります。例えばベンダー・販売パートナー合同のマーケティングキャンペーンでリードを創出したり、営業戦略を共同で立案したりします。パートナー独自の強み(業界知識や地域ネットワーク)を活かしつつ、ベンダーのリソースと知見を融合させることで双方の成功確率を高めます。協働体制が弱いと「とにかく売ってください」と丸投げする形になりがちで、ベンダーがパートナーの悩みを把握できないままミスマッチが生じてしまいます。

✅ 成功するPRMのポイント

  • 定期的なミーティングで営業の課題をヒアリング・サポート(同行営業、マーケティング支援)
  • 共同マーケティング施策を企画し、リード獲得を支援
  • 販売パートナーの販売データをリアルタイムで可視化し、適切なアドバイスを提供

❌ 失敗するPRMの典型例

  • ベンダーが「売ってくれ」と依頼するだけで、具体的な施策がない
  • 販売パートナーが感じる課題をベンダーがキャッチできていない
  • 販売パートナーからの問い合わせにベンダーの対応が遅い

⑤ Trust(信頼関係) – 長期的なパートナーシップを築けているか?

最後に、長期的なパートナーシップを維持・発展させる段階です。ここまでくれば一朝一夕で築けるものではなく、継続的なフォローと双方の成功体験の積み重ねが重要です。ベンダー側から定期的な成果共有や表彰制度、インセンティブ(成功報酬)などを用意し、販売パートナーのモチベーションを維持します。併せて追加トレーニングや新製品情報提供など、パートナーの成長を引き続き支援します。信頼関係の深化により、パートナーは自社専属のような愛着と責任感を持って活動してくれるようになります。反対に一度取引しただけでフォローを怠れば関係はすぐ希薄化してしまい、せっかく育てたパートナーからそっぽを向かれるリスクがあります。

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✅ 成功するPRMのポイント

  • 成果に応じた報酬や表彰制度で販売パートナーのモチベーションを維持
  • 追加トレーニングやスキルアップ支援の提供
  • 販売パートナーの意見を定期的にフィードバックし、施策を改善

❌ 失敗するPRMの典型例

  • 一度取引した後、販売パートナーへのフォローがなく関係が希薄になる
  • 販売パートナーの意見やニーズを聞かず、施策が形骸化する

ここまでのまとめ

以上がPRACTモデルの5フェーズです。私たちの経験上、このチェックリストを満たしていくことでパートナー施策の成功確率は格段に高まると感じています。言い換えれば、どれか一つでも欠けていると販売パートナーの稼働率や売上貢献度に穴が生じやすいのです。実際、情報提供の不足(Perception不足)や教育支援の欠如(Readiness不足)は、販売パートナーが動かない典型的要因ですし、成果共有やインセンティブがない(Trust不足)関係は長続きしません。PRACTモデルはこうした「つまずきポイント」を事前に洗い出し、手当てする指針として機能します。

グローバル企業に学ぶPRACTモデルの有用性

PRACTモデルで示したアプローチは、既に多くのグローバル企業のパートナープログラムに共通する成功要因でもあります。世界のトップ企業が実践している事例をいくつかご紹介しましょう。

例えば、クラウドCRM大手のSalesforceは世界中に巨大なパートナーエコシステムを築いており、PRACTモデルの各段階に対応する施策を徹底しています。Perceptionの段階では毎年開催する大規模イベント「Dreamforce」をはじめ各種ウェビナーでパートナーに最新情報と成功事例を発信し、Readinessではオンライン学習プラットフォーム「Trailhead」で誰でも製品トレーニングを受け認定資格を取得できる環境を提供しています。さらに Activateでは商談管理やマーケ支援の専用ツールをパートナーに提供し、Collaborationでは共同提案や定期レビューを実施、そしてTrust構築のため毎年「Partner Awards」で優秀販売パートナーを表彰するなど、パートナーの成功とモチベーション維持に注力しています。これらの施策により、Salesforceは各国の販売パートナーと共に市場を開拓し、自社ビジネスを拡大する好循環を実現しています。

またMicrosoftは「パートナーあってのMicrosoft」と言われるほどチャネル戦略で有名です。同社では実に全世界売上の95%がパートナー経由で生み出されているとも言われ、その成功の裏にはPRACTモデルに沿った包括的なパートナー施策があります。Perceptionの段階では数十万人規模の「Microsoft Partner Network (MPN)」を通じ製品情報や販売戦略を共有し、Readinessでは認定資格制度やトレーニングカリキュラムでパートナー技術者の育成を支援。 Activate では共同販売プログラムを整備しマーケ資料や営業ツールを提供、Collaborationでは案件の共同提案や成功事例の共有による戦略最適化、Trustでは毎年「Partner of the Year」を表彰しインセンティブや補助金プログラムで継続的な関係強化を図っています。その結果、全世界で数十万社のパートナー企業がMicrosoft製品の販路を支え、年間1兆ドル規模のビジネスを創出しているとも報告されています。Microsoftの事例は、いかにパートナーとの長期的協業が企業の収益基盤になり得るかを示す象徴的なケースでしょう。

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製造業に目を向けても、PRACTモデルの考え方は共通しています。
例えばドイツのSiemensは産業機器分野で全世界の販売パートナー網を活用し、パートナー向けに「Siemens Digital Academy」を設けて最新のIoTやAIソリューションの研修機会を提供しています。また販売現場では専用ツールや技術サポートで販売パートナーの提案活動をバックアップし、地域ごとに販売パートナーと共同で市場戦略を立案する協働体制を敷いています(Collaboration)。成果に応じた報奨・表彰制度もあり、優秀パートナーのモチベーション維持と技術力強化を両立させています。

日本の製造業大手FANUC(ファナック)も世界各地のパートナーと共に「自動化ソリューション」の提供体制を築いており、販売パートナーエンジニア向けの高度な技術研修や資格制度を通じて自社ロボット製品の知見を共有するなど、まさにPRACTモデルを体現する取り組みを行っています。このように業種を問わず、パートナーとの関係強化に成功している企業は総じてPRACTの各段階に対応する施策を講じているのです。

PRACTモデルを活動指標にすることで得られる期待成果

では、PRACTモデルを活動指標にすることで具体的にどのような成果が期待できるのでしょうか。定量的な調査結果もいくつか報告されています。Forrester社の調査によれば、パートナープログラムが成熟している企業はそうでない企業に比べ収益成長率が2倍に達し、さらに全売上の28%をパートナー経由で稼ぎ出しているというデータがあります。逆に言えば、パートナー支援に本腰を入れていない企業は約3割の売上機会を逃している可能性があります。また別の調査では、企業のわずか33%しか体系立てたパートナー教育プログラムを持っていないとの結果も出ています。

裏を返せば、残りの多くの企業にとってパートナーの成長余地がまだまだあるということです。パートナーが適切に教育・啓発されればエンド顧客への提案力が向上し、結果的に自社の売上増加につながるのは想像に難くありません。事実、「パートナーへの研修投資により売上が向上した」「認定資格制度でパートナー社員の案件獲得率が上がった」などの声を私たち電通も現場で多数確認しています。パートナーは単なる販売チャネルではなく“共に育つ仲間”です。長期視点で関係を深めるほど、双方にとって大きなリターンがあることを、データも雄弁に物語っています。

PRMに取り組む企業をPRACTモデルに照らし合わせて整理してみた

では、前述した企業も含めPRMに取り組む企業の取り組みをPRACTモデルに照らし合わせて整理し成功のポイントをまとめました。

事例① Salesforce(セールスフォース)

業種:クラウド型CRM/営業支援ツール(SaaS)
PRMの特徴:全世界に販売パートナー(SIer・コンサルティング企業)ネットワークを持ち、パートナーエコシステムを構築

PRACTモデルとの対応

フェーズ
Salesforceの取り組み

P: Perception(認識)

Salesforceは「Salesforce Partner Program」を通じて、世界中の販売パートナー(SIerやコンサルティング企業)向けに、製品情報や成功事例を提供。ウェビナーやパートナー向けイベント(Dreamforce)で積極的にPR。

R: Readiness(準備)

「Trailhead」というオンライン学習プラットフォームを提供し、販売パートナーが製品知識を習得できる仕組みを整備。認定資格プログラムを設け、販売パートナーのスキルアップを支援。

A: Activate(動機付け)

販売パートナー向けにセールス&マーケティング支援ツールを提供し、販売を促進。顧客案件を共有し、共同提案できる体制を整備。

C: Collaboration(協働)

販売パートナーと共同で市場戦略を立案し、販売戦略を実行。パートナーごとの成果を分析し、定期的なフィードバックを実施。

T: Trust(信頼関係)

成功したパートナーを表彰する「Salesforce Partner Awards」を毎年実施。長期的な関係を維持し、販売パートナーの成長を支援。

成功のポイント

  • 販売パートナーが学習・スキルアップしやすい環境を整備
  • 共同マーケティングや案件支援を通じて販売パートナーのビジネスを支援
  • 継続的な評価・表彰制度により、販売パートナーのモチベーションを維持

事例② Microsoft(マイクロソフト)

業種:ソフトウェア・クラウドサービス
PRMの特徴:AzureやMicrosoft 365を中心に、多様なパートナー企業と協業するエコシステムを構築

PRACTモデルとの対応

フェーズ
Microsoftの取り組み

P: Perception(認識)

「Microsoft Partner Network(MPN)」を通じ、販売パートナー向けに製品情報や販売戦略を提供。定期的なパートナー向けイベントやセミナーを開催。

R: Readiness(準備)

パートナー向けに資格認定プログラムを設け、専門知識を習得できる仕組みを提供。技術トレーニングや営業研修を実施。

A: Activate(動機付け)

Microsoftのクラウド製品を販売パートナーが販売しやすいように、共同販売プログラムを実施。専用の販売ツールやマーケティング資料を提供。

C: Collaboration(協働)

販売パートナーと共に共同提案を行い、パートナーが案件を獲得しやすい仕組みを構築。パートナー企業の成功事例を共有し、戦略を最適化。

T: Trust(信頼関係)

優秀なパートナーを表彰する「Partner of the Year」制度を設け、長期的な関係を強化。販売パートナーのビジネス成長を支援する補助金プログラムも提供。

成功のポイント

  • 強力なパートナーエコシステムを構築し、販売パートナーが成功しやすい環境を整備
  • 資格制度とトレーニングを充実させ、販売パートナーのスキルアップを支援
  • 共同提案やマーケティング支援を提供し、販売パートナーの売上向上をサポート

事例③ Adobe(アドビ)

業種:デザイン・マーケティングソフトウェア
PRMの特徴:Creative CloudやAdobe Experience Cloudを販売する販売パートナー向けのプログラムを提供

PRACTモデルとの対応

フェーズ
Adobeの取り組み

P: Perception(認識)

「Adobe Partner Connection」を通じ、パートナー向けに製品情報を発信。パートナー向けセミナーを開催。

R: Readiness(準備)

販売パートナー向けのeラーニングや認定資格制度を導入し、販売スキルを向上。

A: Activate(動機付け)

販売パートナー専用のマーケティングツールを提供し、販売活動を支援。

C: Collaboration(協働)

販売パートナーと共同でプロモーションを展開し、市場拡大を目指す。

T: Trust(信頼関係)

販売パートナー向けの特別キャンペーンやボーナスプログラムを実施し、関係を強化。

成功のポイント

  • 販売パートナー向けのトレーニングを充実させ、販売スキルを向上
  • 販売パートナーと共同で市場開拓を行い、販促活動を支援
  • 販売パートナーとの長期的な関係構築のための報酬プログラムを提供

事例④ シーメンス(Siemens)

業種:産業機器・オートメーション
PRMの特徴:グローバルな販売パートナーネットワークを活用し、IoT・デジタルソリューションを展開

PRACTモデルとの対応

フェーズ
シーメンスの取り組み

P: Perception(認識)

「Siemens Partner Program」を通じて、世界中の販売パートナーに向けた情報発信を強化。製造業向けIoT「MindSphere」のプロモーションを積極展開。

R: Readiness(準備)

販売パートナー向けに「Siemens Digital Academy」を開設し、デジタルツイン、IoT、AIに関する専門研修を提供。パートナー認定資格制度を整備。

A: Activate(動機付け)

販売パートナーが顧客に提案しやすいように、専用の販売ツール・技術サポートを提供。導入事例を共有し、販売ノウハウを蓄積。

C: Collaboration(協働)

販売パートナーと共同で市場戦略を立案し、特定地域ごとの販売施策を展開。プロジェクトベースでの協働を実施。

T: Trust(信頼関係)

販売パートナーの成果に応じた報奨制度やパートナー向け表彰制度を設け、長期的な関係を構築。

成功のポイント

  • 「デジタルアカデミー」で販売パートナーの技術力を強化し、製造業向けのIoT市場で優位性を確立
  • 地域ごとの販売戦略を販売パートナーと共同で策定し、グローバル展開を推進
  • 表彰制度を活用し、販売パートナーとの長期的な関係を維持

事例⑤ ファナック(FANUC)

業種:産業用ロボット・工作機械
PRMの特徴:販売パートナーと共に「自動化ソリューション」を提供し、製造業のDXを推進

PRACTモデルとの対応

フェーズ
 ファナックの取り組み

P: Perception(認識)

「FANUC Partner Program」を通じて、販売パートナー向けにロボット・CNCシステムの情報を提供。展示会やデモンストレーションを積極実施。

R: Readiness(準備)

販売パートナー向けに技術研修を実施し、ロボットのプログラミングやメンテナンス技術を習得させる。専用の技術サポートチームを設置。

A: Activate(動機付け)

販売パートナーが顧客企業に最適なソリューションを提案できるよう、営業支援ツールを提供。成功事例の共有を通じて販売活動を促進。

C: Collaboration(協働)

販売パートナーと共同で企業向けの自動化プロジェクトを実施し、製造現場の課題解決を推進。OEMパートナーとの協働も強化。

T: Trust(信頼関係)

販売パートナーの販売実績に応じたインセンティブを提供し、長期的な協力関係を構築。定期的な販売パートナー会議を開催し、情報共有を強化。

成功のポイント

  • 高度な技術研修を提供し、販売パートナーのエンジニアリング力を向上
  • OEMパートナーと協力し、ロボット導入のエコシステムを強化
  • 成功事例を共有し、販売パートナーの営業活動をサポート

事例⑥ シュナイダーエレクトリック(Schneider Electric)

業種:電力・エネルギーマネジメント
PRMの特徴:販売パートナーと共同でエネルギー管理ソリューションを展開し、持続可能な社会を実現

PRACTモデルとの対応

フェーズ
シュナイダーエレクトリックの取り組み

P: Perception(認識)

「Schneider Electric Partner Program」を通じ、販売パートナーにエネルギー管理の最新情報を提供。カーボンニュートラル戦略の推進。

R: Readiness(準備)

パートナー向けに「EcoXpert」認定制度を提供し、エネルギー管理の専門知識を育成。技術サポート体制を強化。

A: Activate(動機付け)

販売パートナー向けにマーケティングツールや販売支援コンテンツを提供し、営業活動を促進。案件ごとに技術コンサルティングを実施。

C: Collaboration(協働)

販売パートナーと共同でエネルギーマネジメントの導入プロジェクトを展開。

T: Trust(信頼関係)

販売パートナーの成長を支援する報奨制度を導入し、長期的な関係を構築。

成功のポイント

  • EcoXpertプログラムで販売パートナーの技術力を強化し、専門性を高める
  • マーケティング支援ツールを提供し、販売パートナーの営業活動を後押し
  • カーボンニュートラル戦略と連携し、販売パートナーの市場競争力を向上

まとめ:パートナー戦略を次のレベルへ

パートナービジネスの重要性が増す中、特に北米を中心とするPRMソリューションは急激に発達し、そのソリューションを様々な企業が採用しています。しかし日本国内ではまだこの考え方が確立されていません。

私たち電通B2Bイニシアティブが提唱するPRACTモデルは、貴社のパートナー施策を体系立てて見直し強化するための有効なフレームワークであると考えます。PerceptionからTrustに至る5つの視点で現状をチェックすれば、どの段階に改善の余地があるかが明確になります。例えば「製品情報の周知が足りていない」「研修コンテンツが不足している」「共同マーケ施策ができていない」「表彰制度がない」等、ボトルネックとなっている箇所が浮き彫りになるでしょう。ぜひ貴社のパートナープログラムについて、PRACTモデルのチェックリストを適用してみてください。足りないピースを補完し磨きをかけることで、パートナーとの協業からこれまで以上の成果が得られるはずです。

私たち電通B2Bイニシアティブは、パートナーエコシステムを通じた貴社の持続的成長を全力で支援していきたいと考えています。貴社のパートナー戦略が次のレベルに飛躍する一助として、PRACTモデルがお役に立てば幸いです。

PRACTモデルのチェックリスト

  • ✔ Perception(認識) → 販売パートナーはベンダーの製品・サービスを十分に理解しているか?
  • ✔ Readiness(準備) → 販売パートナーがスムーズに販売できるだけのサポート体制があるか?
  • ✔ Activate(動機付け) → 販売パートナーの成果を可視化し、適切なフィードバックをしているか?
  • ✔ Collaboration(協働) → 販売パートナーとベンダーが協力し、相互成長できる仕組みがあるか?
  • ✔ Trust(信頼関係) → 販売パートナーと長期的な関係を築き、継続的に支援しているか?

この5つのステップを実践することで、PRMの成功確率を高め、販売パートナーとの強固なパートナーシップを築くことができます。

まずは、自社のPRM戦略を「PRACTモデル」に照らし合わせ、改善点を見つけてみましょう!

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梅木 俊成

PROFILE

株式会社電通 第8マーケティング局B2Bマーケティングコンサルティング部 B2Bマーケティングコンサルタント

梅木 俊成

マーケティング、営業部門を経て2020年より現職。 2012年から素材、半導体、産業用ロボット、PC、スマートフォン等の製造業や人事、会計等のSaaS商材等、300社以上の国内外におけるB2B事業コンサルティング及びブランド戦略とデマンド戦略を中心に担当。顧客購買データ分析を起点にオンオフ施策やMA/SFA/CDP等のDXツールの導入、インサイドセールス、カスタマーサクセス体制等の組織構築支援を行う。電通B2Bイニシアティブ共同代表。

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