• 2025/01/14
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成功する海外展開の広告出稿術ーB2B広告成功事例と戦略5選(後編)

成功する海外展開の広告出稿術ーB2B広告成功事例と戦略5選(後編)

どもども~B2Biニューヨーク特派員のようこです!

前編に引き続き、グローバル進出のマーケティングを担っていくみなさまのヒントになるような情報をお届けしていきます!

後編のテーマは「成功事例と戦略5選」についてです。

成功事例と戦略5選

さて、では実際に海外企業はどのような広告戦略を実施しているのか、実際の成功事例5つを元に、海外企業の広告戦略と成功ポイントをのぞいていきましょう。

①アマゾンビジネス社

キャンペーン名:バイ・スマーター・ドリーム・ビガー「Buy Smarter, Dream Bigger」

目的:B2B認知度向上、見込み客の購入検討の向上

施策:オムニチャネル型ブランド認知キャンペーン&ストーリテリング型広告

課題

アマゾンビジネス(Amazon Business)は、企業や組織向けに特化した調達・購買プラットフォームを提供するアマゾンの部門で、ビジネスの購買プロセスを効率化し、コスト削減や生産性向上を支援しています。アマゾンという名前自体は一般消費者に広く知られていますが、ビジネス顧客の間では認知度が低く、ブランドとしての「アイデンティティ問題」を抱えていました。大企業から中小規模の組織に至るまで、業界全体で「ビジネス購買ソリューション」と認知されることが課題となっていました。

広告概要

認知度向上にむけてオムニチャネル型ブランド認知キャンペーンを実施。このキャンペーンでは、マルチチャネルでDSP広告などを活用し、さまざまな規模や業界のビジネスに対してアマゾンビジネスのサービスが提供されているという事の認知度向上を目指しました。

さらに、ビジネスオーナーや購買担当者に対し、「どんな小さな事業者でも夢を追求し、ビジネスを成長させる可能性がある」というメッセージを伝えるために、「スマートに購入し、大きな夢を持つ(Buy Smarter. Dream Bigger.)」というスローガンで、アマゾンビジネス初の大規模なマス広告キャンペーンを打ち出しました。そして20週間にわたり、ストーリーテリング型広告とオムニチャネル型DSP広告キャンペーン(オフラインや屋外、音声、動画、ディスプレイなど)を通じ、アマゾンビジネスのサービス価値を訴求しました。

また同キャンペーンでは「スマートビジネス購買(Smart Business Buying :通称SBB)」という新しいカテゴリー用語を導入し、AIを活用した購買プロセスの自動化をアピールしたり、アマゾンビジネスの戦略的購買パートナーとしての位置付けなどを目的とし、実施されました。

キャンペーンの特徴

  • 100以上のカスタマイズ資産:動画広告(ターゲット別に3種類)、バナー広告、オフライン広告(屋外、ラジオ、ポッドキャスト)、デジタル広告(ソーシャル、ストリーミング、ディスプレイ)、そしてリーダーシップを示すためにカンファレンス(展示会)やニュース記事での出稿や登壇。
  • ビジュアル:従来のB2Bマーケティングの落ち着いた色調を避け、鮮やかで温かみのある色を採用することで、際立ったビジュアルでより広い層へリーチ。
  • 多様性:広告に登場するビジネス意思決定者は、多様な年齢、性別、民族背景を反映。
  • ストーリー:ペット企業をテーマにした動画では、動物たちが混乱した購買を試みる中で、アマゾンビジネスの購買制御機能が失敗を防ぐというユーモアに溢れた内容を描写。

測定と改善

  • 内部/外部の測定システム、データモデル、調査、フォーカスグループを活用し、キャンペーン前後の認知と検討の正確な測定を実施。
  • 計測基準は、ポテンシャル顧客の認知度と検討意欲の変動を金融単位のベーシスポイント(BPS)で評価。さらに、サイトトラフィック、CTR、顧客コンバージョン率、収益、動画視聴数も重要指標として使用されました。

結果

アマゾンビジネスを信頼性の高い戦略的パートナーとして確立でき、目標を大きく上回る成果を達成。

  • ブランド認知度:590ベーシスポイント向上。
  • リーチ:目標オーディエンスの95%にリーチ、平均接触頻度は65回。
  • インプレッション:合計35億インプレッション(広告表示回数)を達成。
  • 動画視聴:有料メディアで7億8,100万回、YouTube で1,800万回以上視聴。
  • ウェブサイト流入:business.amazon.com に770万以上のユニーク訪問者を誘導し、ページビューは1,290万以上を獲得。

成功ポイント

  1. 包括的なキャンペーン設計
    複数のチャネルを統合したオムニチャネル型のキャンペーンにより、セグメントごとに異なるコンテンツを作成した事で、キャンペーンのリーチと効果を増幅できる要因となりました。
  2. ユニークな価値提案
    SBB のような新しいコンセプトを導入することで、競争の激しい市場で差別化を図れる事にも成功しました。
  3. 魅力的で親しみやすいコンテンツ
    従来の堅苦しい B2B 広告スタイルから脱却したモダンでユーモアのあるアプローチを取ることでエンゲージメントが向上し、これによりキャンペーンの目的でもある認知向上に貢献できました。
  4. データ駆動型アプローチ
    キャンペーン前後での指標測定を徹底することで、効果を正確に評価
  5. 多様性と包括性を取り入れたターゲティング戦略
    多様なビジネス意思決定者をキャンペーン素材に取り入れることで、幅広い層に訴求し、より多くの見込み客へのリーチが可能となりました。

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画像:アマゾンビジネスのX(旧:ツイッター)より

②デルテクノロジーズ社(Dell Technologies)

キャンペーン名:SNSキャンペーン「I.T.スクワッド(I.T. Squad)」

目的:ITプロバイダとしての信頼関係の構築

施策:フォーラム型SNSでのメディア・コンテンツ戦略

課題

デルテクノロジーズ社は、企業向けに最先端のIT製品を多く提供していますが、多くのビジネス意思決定者がITプロバイダーを信頼していないという「信頼のギャップ」課題に直面していました。実際、意思決定者の49%はITプロバイダー企業を信頼せず、自分たちの課題を理解しようとしていないと感じているというデータや逆に信頼がある場合はITサービスへの支出が15%増加もあるというデータもありました。

また、従来の広告戦略では効果がなく、対象となる顧客層は接触が難しいと感じていました。しかし、企業間のパートナーシップを回復し、信頼関係を取り戻すためにも、まずは対象となる顧客層に関してもっと理解を深めるという点も課題の一つでした。

広告概要

まずは広告キャンペーンを実施する前の時点で、対象となる顧客層がどこで活動しているのか、どのようなIT情報源を信頼しているのか、何に動機づけられているのか、そして最も差し迫ったIT課題は何かを深く理解する必要がありました。

そこで調査を行った結果、対象となる顧客層は、若いビジネス意思決定者であり、このような層はコミュニティフォーラムでのエンゲージメントが他の層を上回っている事が判明しました。特にレディット(Reddit)やクオーラ(Quora)といったピアツーピア(Peer to peer)と呼ばれるフォーラム型のSNS上での議論は、この顧客層からの信頼を獲得していることが判明し、これらフォーラムはB2B購買プロセス全般で重要な役割を果たしているとわかりました。

また、同社リサーチではレディット(Reddit)の72%のユーザーがブランドの推奨を信頼しているというデータを見つけ、このデータを活用し、より自然な形でこのオーディエンスとつながる機会を見出しました。そこで同社は、ITビジネス意思決定者の信頼を得るためにレディットと提携し、「最高のITスクワッド」を結成。このチームはレディット上で活動をし、企業のITの意思決定者(ITDM)にとって頼れるリソースとして認知されることを目指しました。

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画像:レディットより

https://www.reddit.com/user/DellTechnologies/comments/xwcutg/s1e2_privacy_bryan_ryan_have_to_convince_the/?linkId=184547932

キャンペーンの特徴

  • オリジナルコンテンツ戦略:レディットのアバターを作成し、「I.T. Squad」というオリジナルコメディシリーズを実体化。ブライアン(Bryan)とライアン(Ryan)というITプロが主要キャラクターとなりシリーズに登場し、最も差し迫ったIT課題を解決するミッションを次々と遂行するという内容です。
  • レディットフォーラム特化型のストーリー戦略:このコメディシリーズは、レディット上のリアルなスレッドやプラットフォームなどで話題のホットトピックを基に制作されました。主に、I.T. スクワッド(訳:ITレスキュー隊)が常にデル社の最適なソリューションを活用し、課題を解決するという構成で、同社のリーダーシップとITの解決策という立ち位置を証明しました。
  • エンゲージメントを重視したコンテンツ戦略:視聴者はエピソードに投票したり、コメントを投稿したりして議論を続けることができるインタラクティブなフォーラム型のスタイルでエンゲージメントの向上を狙いました。
  • インフルエンサー戦略:また、I.T. スクワッドは「レディット・トークス(Reddit Talks)」や「アスク・ミー・エニシング:AMA(Ask Me Anything:何でも聞いて!)」シリーズを通じて議論をリード。各トピックの専門家やインフルエンサーを招いて見識を共有し、より多くの層へとリーチできるような施策も実施しました。

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画像:レディットより
インフルエンサー、ルイス・ハウズさんをコメディーシリーズのITスクワッドへ招待し、「何でも聞いて!(Ask Me Anything:AMA)」のセッションをやりますという告知の投稿

測定と改善

インプレッション数、フォロワー数、動画視聴率(VTR)やコンテンツのエンゲージメントを図る指標やブランド信頼性を図るデル社内の指標などが利用され、キャンペーンの測定がされました。

結果

同シリーズはレディット限定で公開され、ブライアンとライアンは、一躍レディットコミュニティのスターとなりました。またこのシリーズはIT意思決定者にとって頼りになる存在へと成長し、「デル・ I.T.スクワッド」をヒットシリーズへと押し上げました。

  • 7,200万回のインプレッションを達成。
  • フォロワー1,000%増加。
  • ブランドの信頼性が200倍向上。
  • エピソードが レディットのエンゲージメント基準を一貫して上回る成果。
  • 標準的なソーシャルメディアキャンペーンと比較して35%の動画視聴率(VTR)増加。
  • 人気の高さから、第2シーズンを現在計画中。

成功ポイント

  1. 本格的なエンゲージメントを重視
    ターゲット層が信頼するプラットフォーム上での真の意味でのエンゲージメントは、ブランドの信頼性を高めるための重要な要素となり、キャンペーンの成功には欠かせない要素となりました。
  2. ユーモアやトレンドの活用
    サブカル文化やユーモアを活用することで、ブランドの親近感を大きく向上させることがより多くの人へのリーチとエンゲージメント獲得の成功要因となりました。
  3. 実際の問題解決に応えたコンテンツ
    ターゲットとなる人たちが直面している実際の課題に対応したコンテンツを発信することで、デル社の信頼とブランドロイヤルティを築けた要因となりました。
  4. インタラクティブで対話型のラフなコンテンツ
    AMA など、インタラクティブでカジュアルなコンテンツのフォーマットが逆にかしこまった固いビジネスライクなコンテンツではないため、逆にオーディエンスとの距離を縮めるために効果的でした。また、このようなコンテンツフォーマットでエンゲージメントや教育を促し、ブランドの権威も強調する事ができ、カジュアルながらもしっかりとビジネスとしての信頼感やポジションのアピールをする事にもつながりました。

③コマースツール社(CommerceTools)

キャンペーン名:「ザ・ネイセイヤー(反対者)」

目的:認知度向上、信頼性の向上

施策:グーグルディスプレイ広告、リンクドイン広告、ツイッター広告、ユーチューブ動画

課題

イノベーションを制約し、迅速な対応を妨げ、収益拡大を制限する硬直的なレガシープラットフォームに反し、コマースツール社は、世界中の企業に顧客がどこにいても販売できる柔軟性のあるツールとソリューションを提供しています。

しかし、この市場ではブランド認知に依存する大手企業などが多く、業界内でコマースツール社は自らをコマース技術のリーダーとして際立たせるキャンペーンを必要としていました。問題となるレガシーコマースプラットフォームを推進する意思決定者の多くが技術者ではない点や、財務的に安全な選択肢としてコマースツール社を認識させることが課題でもありました。

広告概要

まずは広告企画前の段階で、レガシーコマースプラットフォームの問題を再度調査。これらレガシープラットフォームによって、実は多くのビジネスリーダーが消費者の要求に応えられていない事や、閉塞感を感じていることを把握しました。

この洞察を基に生まれたのが、「反対者(ザ・ネイセイヤー:The Naysayer)」というクリエイティブコンセプトで、レガシープラットフォームの問題点を浮き彫りにしつつも、コマースツール社の独自の柔軟でオープンなアプローチを強調するストーリーをユーチューブ動画で打ち出しました。また、技術者ではない意思決定者が分かりやすいように、コマースツール社は専門用語の壁を取り除いたコンテンツで、意思決定者からの信頼性の向上を図る内容でキャンペーンに挑みました。

同キャンペーンでは、レガシーコマースプラットフォームを「ネイセイヤー(Naysayer)」という人物像で擬人化し、停滞を楽しむ硬直的で頑固で耐えがたい存在として描きました。ネイセイヤーは、優れたモダンなコマース体験を妨げる存在であるのに対し、コマースツール社は柔軟で肯定的な「イェーセイヤー(Yeasayer:賛同者)」として描かれ、次世代のコマースを推進し、時代遅れなプラットフォームを排除できる事を意思決定者に提示しました。

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画像:コマースツール社のXより ー 動画ザ・ネイセイヤ―

キャンペーンの特徴

  • コメディー調の動画で一際目立つ動画:コメディ俳優のウィル・アーネットをネイセイヤ―として起用し、注目を集めました。また、このキャンペーンでは、従来のB2Bの用語を一切使わず、ユーモアに富んだ表現を取り入れることで、より広範囲のリーチや認知度の向上を目指しました。
  • 大型業界特化型イベントでのキャンペーンローンチ:ヨーロッパで行われる巨大IT・デジタル系イベントの「OMR」に合わせてキャンペーンをローンチし、会場の看板やターゲットを絞った屋外広告など通じて認知度を向上させました。同時に、戦略的なデジタル、ソーシャル、PRを展開し、特に米国を中心にグローバルなリーチの拡大を狙いました。
  • イベントでのマルチチャネル型広告:OMRのラスベガスでのイベントに合わせ「ネイセイイングス(Naysayings:反対意見)」というサブコンセプトを作成。ネイセイヤーの言い訳や反対意見などがラスベガス中に散りばめられ、空港広告、ビルボード、会場の看板、タクシー広告に展開されました。その一方、コマースツール社のブースでは、明るく肯定的な「イェーセイヤー(Yeasayer)」として訪問者を迎え入れる安らぎの場を提供し、イベント会場のブースに行くまでのすべてのタッチポイントでの露出を目指しました。/li>
  • オフラインからオンラインへ誘導:イベント会場やオンラインで見た反対意見や言い訳の数々を目の当たりにしたイベントの観客は、キャンペーンのクリエイティブに誘導され、コマースツール社のブースもしくはオンラインのランディングページへたどり着く仕組みを展開。そこでは、「イエス」がもたらす革新さが提示され、ソーシャルメディアでは、ネイセイヤーの暗く陰鬱なビジュアルとは対照的なコマースツール社の明るい新ブランド「イェーセイヤー(Yeasayer)」のイメージで新たな可能性を切り開くパートナーであることを提示されました。

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画像:コマースツール社のXより ー OMRイベントでの広告とブースの様子

測定と改善

  • コマースツール社は下記をビジネスゴールとしてキャンペーンの成功を定義しました。
  • リンクドインおよびツイッターアカウントでのオーガニックなインプレッション、エンゲージメント、エンゲージメント率、ブランド評価の向上など
  • ユーチューブ広告を通じてグーグルが測定するブランドリフトを達成すること
    コマースツール社のウェブサイトおよびキャンペーンのランディングページへの訪問者を促進すること
  • デジタルおよび屋外広告チャンネルを通じてキャンペーンのインプレッションを拡大すること
  • キャンペーンに関する大型メディアでの報道を最低2件獲得すること

結果

  • 同キャンペーンは、開始直後から小売業界内で注目を集め、同業者やクライアント、さらには競合他社からも好意的なフィードバックを受けました。
  • Googleディスプレイ広告、リンクドイン、ツイッター、グーグル検索、ユーチューブを通じて50.1万クリックを達成。
  • 視聴者はただスクロールして通り過ぎるだけではなく、ユーチューブでは動画の完視聴率が初日で55%に達成。
  • 動画は初日で150万インプレッションを獲得し、約30%のエンゲージメント率を達成。
  • ユーチューブ動画は2,010万回の動画視聴を記録
  • EMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ)およびAMER(アメリカ)地域で46%の平均動画完視聴率を達成。
  • コマースツール社米国ページへのオーガニックトラフィックが前年同期比(2022年上半期比)で32%増加。
  • 開始初日でブランドに関するオンライン上の会話が3,200%以上増加。
  • ソーシャルシェア・オブ・ボイスは0.4%から4.2%へ増加。
  • ソーシャルメディア上でのブランドに対する感情は95%がポジティブ評価。
  • リンクドインとツイッターでブランドに関する会話が308%増加。
  • リンクドインとツイッターで98%のポジティブ評価を達成。
  • Ad Age(アド・エイジ)、Adweek(アドウィーク)、The Drum(ザ・ドラム)、MediaPost(メディアポスト)、Total Retail(トータルリテイル)などのメディアで取り上げられました。

成功ポイント

  • 従来型にとらわれないB2Bマーケティング:B2Bマーケティングにありがちな固いストーリなどではなく、ユーモアを活用し、専門用語を一切利用しないストーリーで効果的に対象ターゲット層へのメッセージを届けた事が、これらの結果にも反映されています。
  • 戦略的なキャンペーンローンチ:業界イベントでのローンチをする事で対象顧客にピンポイントでリーチをする事が可能となるほか、イベントの参加者がついソーシャルメディアでシェアをしたくなってしまうようなユーモアを活用した話題性を呼びやすいキャンペーン内容で、より広範囲なリーチを狙った事がこれらの成功につながっています。
  • ウェブサイトやブースへの誘導方法:イベント会場ではしっかりとブースへ、もしくはオンラインのラインディングページへと誘導をしており、そこから狙いのメッセージを届ける事に成功しています。

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画像:コマースツール社のXより 
ー レガシープラットフォームの擬人化をしたキャラクターによる風刺・コメディコンテンツ

④ノースロップ・グラマン社(Northrop Grumman)

キャンペーン名:「ノースロップ・グラマンで聞いた話(Overheard at Northrop Grumman)」

目的:認知度向上、イメージの向上

施策:リンクドイン、その他SNSでのコンテンツ戦略

課題

2020年以降、ノースロップ・グラマン社(以下NG社)では新モットー「Defining Possible(可能性を定義する)」の確立を目指し、航空宇宙・防衛(A&D)業界では多くの革新的な技術を生み出してきました。しかし一方で、多くの人にとってはA&D業界は官僚的で革新には程遠い「ブラックボックス」のように思われていました。そこで潜在的な人材やA&D業界の顧客、(中には議会や国防総省の意思決定者、投資家、影響力のある人物なども含まれる)をターゲットに、NG社のポジティブな認識を高めることを目的とし、このような思い込みから脱却しより良いイメージでの認知向上を目指しました。

広告概要

ここで登場したのが、「ノースロップ・グラマンで聞いた話(Overheard at Northrop Grumman)」というリンクドインやその他SNSチャネル向けに制作された初の連続コメディです。このキャンペーンでは、35本以上の短編が制作され、コメディを活用しコメディだからこそ出来る固定概念の打破を狙いました。特に主要な技術系人材に対する既存の固定概念を打破し、NG社に対する新しい認識を形成する為に人間味のあるユーモアあふれる動画が配信されました。また、NG社をより親しみやすくすることを目指し、従業員の視点からNG社での生活を描き出すとともに、NG社が「可能性を形作る」存在として競争の中で一歩先を行く姿を印象付けたコンテンツを配信ました。

キャンペーンの特徴

  • 人間味あるコンテンツ:NG社がこれまで見たことも予想もしなかったような側面を描き、人間味あふれる企業として表現。しばしば無機質と見なされる業界に多くの人からの共鳴や共感をよび、命を吹き込むことができました。
  • 全SNSでの配信:2021年11月から、新しいエピソードを2カ月ごとに配信。リンクドイン、フェイスブック、インスタグラム、ツイッター、ユーチューブ、レディットといったターゲット層が最も活発なプラットフォームに配信され、それぞれのチャネルに合わせた投稿文が作成されました。

測定と改善

成功の測定には、動画のインタラクション完視聴率、ソーシャルメディアでのエンゲージメント、NG社サイト上でのトラフィック数や求人応募数などが含まれました。また、これらの結果は前年度のパフォーマンスを基準に比較され、評価されました。

結果

ブランドへの注目とソーシャルエンゲージメントは、これまでの歴史で類を見ないほどの成果を上げました。クライアントや従業員、さらには競合企業の従業員からも、全チャネルで非常に好意的な反応が寄せられ、全体として、これまでのNG社のSNSキャンペーンで最も成功したものとなり、航空宇宙業界全体でも最高レベルのキャンペーンと言える成果を上げました。

  • リンクドイン:エンゲージメント率が62%増加。
  • フェイスブック:エンゲージメント率が270%増加。
  • ツイッター:動画完視聴率が86%増加。
  • 2022年11月配信開始から1カ月もしない時点で、ソーシャルメディア全体でのインプレッション数が約5,000万回、動画再生は約4,300万回に達成。
  • 前年度比のSNSで実施されたクリエイティブとは少なくとも2倍のパフォーマンスを記録。
  • 2022年にはFY21で設定されたベンチマークを大幅に上回り
  • 同社の主要プラットフォームであるリンクドインでは、2022年にエンゲージメントが強化されたことで、効率性が向上。クリック単価(CPE)は$4.23のベンチマークから$2.88に大幅低下しました。
  • しばしば批判的なコメント欄がポジティブな反応や称賛、さらには冗談を交わす協力的な雰囲気に満たされました。

成功ポイント

  • ギャップが面白いコンテンツ:宇宙、防衛、コメディ、というこのギャップが、多くの人の興味を沸き立たせ、広範囲でのリーチができた要因となりました。また、普段は見えない技術者の一面や、人間味あるユーモアを活用し、固定概念を打破する事で親近感を生み出すコンテンツが面白さと新鮮さ、そして多くの共感を生み出した点となります
  • タイムリーなコンテンツ:特定のメディア配置やクリエイティブを組み合わせたり、重要な文化的なタイミングに合わせて新しいエピソードを投入するなど、NG社やターゲット層にとって重要なイベントを取り囲む形で展開された点などがタイムリーなコンテンツとなり、これらの成功へと繋がりました。
  • プラットフォーム毎のコンテンツ:メッセージは、ショートフォームおよびロングフォームの動画、さらにはリターゲティング用では静止画を通じて伝えられましたが、プラットフォーム毎に反応が強かった形式が都度選択されました。また、それぞれのチャネルに合わせた投稿文が作成され、SNSチャネルそれぞれに合ったコンテンツが配信された事でより深いエンゲージメントが図れた要因となりました。

⑤フローキャスト社(フローキャスト社)

キャンペーン名:「PBC」

目的:認知度向上、イメージの向上、求職応募数の向上

施策:メディア・コンテンツ戦略

課題

会計業界では、ベビーブーマー世代の大量退職に伴い、専門職人口が減少。それに加え、進化の遅い業界であることや、会計士に対する固定観念が新しい人材を業界に呼び込びにくくしている点や、現在会計士として既に働いている層もこの職に留まる意欲を損ねているという背景がありました。そのため、会計士という職と業界全体に対するイメージの向上が必要でした。

広告概要

そこで、同社は会計業界の改革を根本から始めるためにも、会計士を題材にしたこれまでにないエンターテインメント性のあるコメディ番組を制作。この番組は、これまでつまらないと思われてきた会計士の仕事や生活に焦点を充て、次の世代の人たちを業界に惹きつけるとともに、会計士に対するイメージやストーリーを変えることを目指しました。退屈な数字を扱うだけというステレオタイプを超え、会計士の可能性や日常生活の共感できる側面をコミカルに描き、会計という職業を高める事を目的としたシリーズが展開されました。

キャンペーンの特徴

  • 会計士が主人公のコメディドラマ番組:主人公の会計士が通常のキャリアパスを進む中で、業界内ではほとんど知られていない新たな役割や刺激的な機会を発見し、それを描きながら、職場コメディを織り交ぜていくという、今までにない会計士が主体となった新しいコメディ・ドラマを展開。
  • 製作チームを一から編成:経験豊富な脚本家兼プロジェクト開発者のジョシュ・シムズ氏を起用し、番組の執筆と制作を主導を依頼。また、フローキャスト社の取締役代表が自身の勤務経験を活かして、企業知識とクリエイティビティを融合させたストーリーに貢献。そうする事でブランディングの確立と番組のエンターテインメント性の確立を両立する事が重要な要素となりました。
  • 誰が見ても面白いストーリー:質の高い経験を持つ制作会社シネマンド社(Cinemand)との提携をしました。その結果、会計士特有のシナリオやストーリを一般の人でも会計業界でも面白いと響くコメディ脚本にうまく変えられています。

測定と改善

市場シェアの拡大、視聴回数、インプレッション数、従業員数、求職応募数、事業の評価額、などが評価・測定基準となりました。

結果

  • シーズン1の成功を受けて、取締役会がシーズン2を承認し、革新的なコンテンツを活用したブランド構築と、業界を変えるという考えが受け入れられた証明となりました。
  • 2シーズンにわたり、フローキャスト社は数百名の従業員の増員に成功。
  • また、PBCの成功を通じて、フローキャスト社を知った会計士による応募数が増加。
  • 同社の評価額は引き続き成長を遂げ、市場シェアも拡大し、ユニコーン企業へとフローキャスト社が成長を達成。
  • 番組を通じてフローキャスト社を知り顧客数が増加。番組を見てソフトウェアを導入する決断をした顧客も多く、認知度向上からの成約件数の向上も達成。
  • シリーズのエピソードやトレーラーを合わせて、コンテンツは100万回以上の視聴回数を記録し、数百万回のインプレッションを達成。
  • 番組はユーチューブチャンネル登録者数は2年間で33万5千人以上獲得

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画像:フローキャストスタジオのウェブサイトより
https://www.floqast.studio/

成功ポイント

  • コンセプトが面白いコンテンツ:医師、弁護士、消防士、警察官、ミュージシャン、アーティスト、銀行家などの職業をテーマにした番組が数多くある中で、つまらなそうな会計士をテーマにしたメインストリーム向けの番組はあまり聞いたことがない
  • 質が高いコンテンツ:テレビ番組を制作するプロのチームを編成し、プロデューサーとして、会計界で「ラップするCPA」として知られるドリュー・キャリック氏の起用や、映画制作の経験を10年以上持つジョシュ・グラスマン氏を制作ディレクターとして迎えたり、ダニー・トレホ氏やケイト・フラナリー氏といった俳優・女優のスターや、インターネットで人気のニック・コレッティ氏やクリスチャン・A・ピアース氏をキャスティングした事などにより、質が高い番組に仕上げる事ができた事が成功要因ともなりました。

まとめ

海外展開で成功する広告戦略には、企業購買者や一般消費者の嗜好や行動が常に進化する中で市場の変化に対応出来るためにも、ビジネスゴールの設定や、対象ターゲット層の理解、競合他社の分析など、様々な面でしっかりと準備をする必要があります。また、広告の出稿後も継続的に見直しをし、常に改善していくことが、特に海外展開時には成功を左右する重要なポイントとなります。

海外のB2B企業の成功事例を見て分かる通りに、様々なビジネスゴールの定義に沿って戦略的な動画やDSP広告やマルチチャネル広告、オムニチャネル型の広告戦略に取り組んでいる事が分かります。また、成功指標などもしっかりと定義したうえで、広告キャンペーンに取り組み、成功に導いている事が分かります。

最近では、ユーモアを活用した動画で広範囲に話題性を呼ぶ施策に取り組むB2B企業が増えていますが、B2Bの従来の固いメッセージより、クリエイティブでユニークなコンテンツでの認知拡大などがより効果的である事が上記の成功例と戦略の分析を見ると分かります。また、対象となるターゲット層がいるチャネルやプラットフォームで効果的なリーチをする為にも、事前の調査も必要不可欠であることもこれらの事例から読み取れます。

このように、様々な要素の確認や準備が必要となる海外の広告戦略では、細かいステップを見逃さないように進める為にも、前編でご紹介した以下の海外展開の広告出稿のための基礎となる8ステップを確認して海外広告に取り組むようにしましょう。

海外広告戦略の基礎8ステップ

  1. ビジネス・ゴールを定義する
  2. ターゲットの国を決める
  3. 対象マーケットと検索習慣を知る
  4. 現地競合他社を分析する
  5. 広告を出す媒体を決める
  6. 広告戦略を決める
  7. 戦略的予算のスモールスタートで実施する
  8. 配信後のデータ分析と改善

いかがでしたか?以上の広告の成功事例から皆さんの企業の海外展開に向けて何か良いヒントやアイディアに繋がれば嬉しいです!しっかりとこれらステップを踏まえて是非海外展開に望んでみてください!

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ヨウコ・ウィルソン(旧名:内田洋子)

PROFILE

ヨウコ・ウィルソン(旧名:内田洋子)

2014年からニューヨークを拠点に日系企業の海外進出支援とマーケティング事業を展開。現在は電通B2Bi公式パートナー企業として、日系B2B企業の海外進出を支援中。2児のママとして子育てをしながらエッジメディア社他、複数の事業を経営中。

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