「自社のプロダクトに関心を持ってもらうにはどんなことをしたら良いのだろう」
「サイトへの流入を自然に増やしていくために、何をすれば良いのかわからない」
そうお悩みのご担当者様に、ぜひ知っていただきたいのがインバウンドマーケティングです。
インバウンドマーケティングとは、デジタル社会や個別化されたニーズに対応した新しいマーケティング手法のこと。デジタル社会の到来や顧客ニーズの個別化により、従来のマスマーケティングの効果が低下している昨今、注目されているマーケティング施策です。
そこで本記事では、インバウンドマーケティングの概要やメリット、導入プロセスについて詳しく解説します。インバウンドマーケティングへの理解を深める上でお役立ていただける情報となれば幸いです。
INDEX
インバウンドマーケティングとは?アウトバウンドマーケティングとの違いも解説
インバウンドマーケティングは消費者の自発的な興味を引きつけることを目的とし、顧客の自発的な行動を中心に据えたマーケティング戦略です。
企業側はオウンドメディア、SNS、動画などのコンテンツを通じて、顧客の興味や関心に応じた情報や体験を提供し、顧客側は自らの意志で情報を探求し、企業や商品に対する関心を深めていきます。
インバウンドとアウトバウンド、ぞれぞれ目的や特徴が異なる
インバウンドマーケティング |
アウトバウンドマーケティング |
|
目的 |
関心のある顧客を引き付ける |
広範囲な観客にアプローチ |
特徴 |
顧客の興味に基づく |
企業からの積極的な取り組み |
手法 |
SEO、SNS、コンテンツマーケティング |
テレビCM、ダイレクトメール、広告 |
コミュニケーション |
双方向 |
一方向 |
インバウンドマーケティングは顧客の興味やニーズに基づいて、双方向のコミュニケーションを通じて特定の顧客層にアプローチする一方、アウトバウンドマーケティングは広告や直接的なマーケティング手法を用いて広範囲な観客に一方的にアプローチする手法です。
インバウンドマーケティングが注目される背景
日本のマーケティングはデジタル時代の到来と共に大きく変わりつつあります。多くの人がインターネットで情報を積極的に検索するようになり、従来のアウトバウンド手法の効果は低下するのです。
インターネット検索結果の上位に表示される企業はマーケティングを優位に進めることができ、SEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)の役割が以前にも増して重要になっています。
【完全版】SEOとは?Webマーケティングを成功に導くための基礎知識&対策ポイント
また、新型コロナ(COVID-19)がインバウンドマーケティングの必要性を高めたといわれ、対面活動の減少により、企業はオンラインで進めることのできるインバウンドマーケティングに大きな価値を見出すようになりました。
その他、インバウンドマーケティングが注目される背景として以下のことがあげられます。
- 従来の広告手法の限界
- 購買パターンのシフト
- デジタル化への加速
従来の広告手法の限界
従来の広告手法では、テレビや新聞広告などのマス媒体を用いて一方的に情報を発信するものでしたが、これでは消費者の注意を引くのが難しくなっている昨今。
消費者は情報過多の中で、“興味のない広告をスキップする傾向”が強まっており、従来の手法はその効果に限界が生じています。
購買パターンのシフト
消費者の購買パターンも大きく変化しています。
消費者は購入前にオンラインで情報をリサーチし、レビューを確認してから商品を選ぶようになったため、ただ単に商品を宣伝するだけでなく、消費者に価値ある情報を提供し、信頼を築くことが重要です。
インバウンドマーケティングではこのプロセスをサポートし、消費者の購買決定に影響を与えることを目指しています。
デジタル化への加速
デジタル化が加速する現代においては、オンラインでのプレゼンスが企業の成長に欠かせません。WebサイトやSNSを活用して、コンテンツを通じて顧客とのエンゲージメントを深めることが求められています。
インバウンドマーケティングは、SEOやコンテンツマーケティングなどのデジタルツールを駆使して、ターゲットとなる消費者と自然に接点を持つことを可能にします。これにより、企業は持続的な関係を築き、長期的な利益につなげることができるのです。
インバウンドマーケティングを活用すべき企業
ソリューション情報と知識が重視されるビジネスでは、コンテンツマーケティングが顧客のニーズを満たすために重要な役割を果たします。特に、テクノロジー、ヘルスケア、教育関連の企業や、生活密着型のビジネス(食品、ファッション)を進める企業が有効です。これらの企業は専門性を示すコンテンツを提供することで、顧客との信頼関係を構築し、ブランドの信頼性を高めることが可能です。
企業の種類 |
コンテンツ |
具体的メリット |
食品 |
レシピブログや製品レビュー |
製品への関心喚起、ロイヤルティ向上 |
被服 |
トレンド情報、ファッションガイド |
トレンドセッターとしての地位確立、顧客基盤の拡大 |
テクノロジー |
製品使用ガイド、テクノロジー解説 |
製品知識の普及、技術信頼性の構築 |
ヘルスケア |
健康情報、ユーザーの成功事例 |
専門情報への理解、顧客エンゲージメントの向上 |
教育 |
教育コンテンツ、学習ガイド |
教育分野における専門性の強化、ブランド信頼性の向上 |
インバウンドマーケティングのメリット・デメリット
メリット
- 顧客中心のアプローチを実現できる
- 多様なチャネルを活用できる
- コスト効率の向上が見込める
インバウンドマーケティングの主要なメリットは、顧客中心のアプローチ、多様なチャネルの活用、そしてコスト効率の向上です。効果的なコンテンツにより顧客の関心を自然に引き付け、長期的に価値ある情報を提供します。
顧客中心のアプローチを実現できる
インバウンドマーケティングでは、顧客のニーズや関心を中心に戦略を組み立てます。
健康食品メーカーであればブログを通じて健康に関する情報やレシピを提供することで、健康志向の顧客を引きつけることが可能です。顧客は自らの関心・問題点に基づいて情報を探し、その過程でブランドと自然に関わっていきます。
高品質で有益なコンテンツは顧客による自発的な共有を促進し、ブランドのオーガニックな露出を拡大します。結果として、ブランドへの関心は高まり、最終的には製品の売上げ増加に貢献することになります。
多様なチャネルを活用できる
WebサイトやSNS、メールなど、さまざまなチャネルを通じて顧客との接点を持つことができます。
アパレルブランドであればInstagramでのスタイリング投稿と同時にニュースレターを特定の顧客に送信し、購買行動の促進を図ります。
テック系企業であれば、ソフトウェアの使用法解説をYouTubeでライブ配信し、同時に公式サイトリンクを提供してホワイトペーパーや仕様書などを参照してもらうこともできます。
コスト効率の向上が見込める
インバウンドマーケティングは伝統的な広告よりも低コストで高い効果を発揮します。高品質なコンテンツを一度作成すると、それが長期間の顧客獲得の資産となり、外部媒体への広告費用も可能に。オウンドメディアの利用やSEO対策により、コンテンツは恒久的なマーケティング資産として蓄積され、持続的な費用対効果をもたらします。
デメリット
- 結果が見えるまでに時間がかかる
- リソースが必要
- 競争が激化している
インバウンドマーケティングは多くの利点を持つ一方、いくつかのデメリットも存在します。
結果が見えるまでに時間がかかる
まず第一に、結果が見えるまでに時間がかかることがあげられます。インバウンドマーケティングは、顧客との関係構築や信頼の醸成を重視するため、短期間での即効性は期待しにくいです。そのため、長期的な視点で計画を立てましょう。
リソースが必要
またコンテンツの質と量が成功に直結するため、コンテンツ制作に多大なリソースが必要になります。質の高いコンテンツを持続的に提供し続けるには、専任のチームや専門家のサポートが求められることが多く、特に中小企業にとっては負担になる可能性もあります。
社内でカバーできないこともあります。必要に応じてアウトソーシングなど活用することも大切です。
競争が激化している
最後に競争の激化です。インバウンドマーケティングの普及に伴い、多くの企業が同様の戦略を採用する中で、自社のコンテンツが埋もれてしまうリスクが高まります。差別化を図るための独自性やクリエイティブなアプローチが不可欠ですので、SEO対策などもしっかり講じてコンテンツの評価を高めましょう。
メリット・デメリットそれぞれを理解し、適切に対策を講じることが、インバウンドマーケティングを効果的に活用する鍵となります。
効果的にインバウンドマーケティングを行うためのプロセス
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インバウンドマーケティングのプロセスを説明する上で「フライホイール」モデルを理解することは重要です。フライホールはインバウンドマーケティングを持続、成長させるサイクルを示します。
- Attract(惹きつける)
- Engage(信頼関係を築く)
- Delight(満足させる)
Attract(惹きつける)、Engage(信頼関係を築く)、Delight(満足させる)のサイクルを効率よくリレーしていくことが大切です。顧客のストレスを最小限にし、フライホイールをしっかりと回転させることで、インバウンドマーケティングに成長と勢いを生みだします。
1.Attract(惹きつける)
まずは、ターゲットにコンテンツに興味を持ってもらうことが大切です。SEOを駆使して、ターゲットのニーズに合致するコンテンツを作成し、自社のウェブサイトやブログにアクセスしてもらいます。SNSを活用してターゲットの日常に役立つ投稿を行い、自然な形で自社サイトへ誘導します。この段階の目標はブランドへの関心を高めることです。
2.Engage(信頼関係を築く)
次に信頼関係を築いていきます。リードのニーズに合わせたコミュニケーションを行い、取引へと繋げるための基盤を作ります。リードに対する教育や情報提供を通じて、顧客との関係を深めていきます。単なる製品やサービスの宣伝や売り込みではなく、顧客の問題解決に貢献するソリューションを提供することが重要です。
3.Delight(満足させる)
顧客が製品やサービスを利用して目標を達成できるよう、継続的な支援をします。購入後の顧客体験を充実させることで、ロイヤルティを育み、リピーター(常客顧客)に変化させることがこのフェーズの目的です。カスタマーサポート、適切なタイミングでのフィードバックの収集、顧客のニーズに対応する個別のアドバイスなどを行い、顧客との長期的な関係を目指します。
インバウンドマーケティングの導入手順とは?5ステップでご紹介
インバウンドマーケティングを企業が導入する際の5ステップを解説します。ここで解説するのは一般的な導入過程です。実際は企業のリソースに最適化された計画が必要になります。電通B2Bイニシアティブでは企業のインバウンドマーケティング導入をサポートいたします。ぜひ、お気軽にご相談ください。
1.目的/目標の明確化
最初にインバウンドマーケティングの導入目的を明確化します。次に、さまざまな事業計画と照らし合わせ、具体的な目標を設定してインバウンドマーケティングの方向性を決定づけます。成功の指標、達成期限、予算などをしっかりと反映させましょう。
(例)「新製品のリリースに伴い、6ヶ月以内にリード数を20%増やす」
まずは必要な予算と予想されるROI(投資収益率)を策定します。明確な目標を設定することで、インバウンドマーケティングに必要なリソースの配分と期待される成果の予測が可能になります。
2. 現状分析
事業の現行マーケティング活動を詳細に検証し、改善点を明らかにしていきます。改善点に対してコンテンツマーケティングが果たす役割などもチームで共有。分析にはリード生成や顧客獲得の現状、競合の動向、市場のトレンドといった情報の収集も含まれます。
CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)やSFA(Sales Force Automation:営業支援システム)のデータ、顧客や営業担当者からのフィードバックを活用し、実際の顧客行動やニーズも把握しましょう。
ここで得られたインサイトはインバウンドマーケティング計画を形成し、調整するための基盤となります。
3. 実施計画の策定
具体的な実施に関わる計画を策定します。ターゲット顧客の属性を特定し、ペルソナ作成やカスタマージャーニーマップの開発により、顧客の購入プロセスを深く理解していきます。現状分析結果に基づいた実際に実行できる計画を作ることが重要です。
適切な人材の配置と明確な役割分担も決定しましょう。チームが共通の理解を持ち、リソースを効果的に活用するための基盤を作ることが大切です。
4. コンテンツとチャネルの選定
配信するコンテンツと最適なチャネルを選びます。SEOに強いブログ記事、視覚的に訴求する動画、SNSやメール内容など、各ターゲットに合わせたコンテンツを選定し、顧客との接点を増やすことが大切です。
複数のチャネルを連携させ、ターゲットに対し魅力的なコンテンツを提供することで、インバウンドマーケティングの効果を最大化させましょう。
5. 実行と評価(PDCAサイクル)
インバウンドマーケティングを実行に移します。並行して、その結果を継続的にモニタリングしていきましょう。実施した活動の成果を定期的に評価し、目標達成に向けた計画の見直しを行うことが大切です。
得られたデータやフィードバックを基に、施策を最適化し、より効果的な手法へと進化させていきます。PDCAサイクルを回していくことで、インバウンドマーケティングを時代やトレンドに合わせて最適化させていくことができます。
インバウンドマーケティングを成功させるポイント3選
- 組織内の調整
- 明確なターゲット設定
- 適切なパートナーシップの構築
上記はインバウンドマーケティングを成功させる上で重要なポイントです。それぞれ詳しく見ていきましょう。
組織内の調整
社内の経営層や関係者との合意形成は大切です。目的やミッションを明確にし、マーケティング部門と営業部門の連携を強化することで、共通のゴールに向かって効果的に取り組むことができます。何か問題が起きた際にも企業内で協力体制を作りやすくなります。
組織内の調整をクリアにすることで、問題発生時などはクロスファンクショナルチームを形成しやすくなります。クロスファンクショナルチームは多様な部署や職位から異なる識能を持つメンバーによって構成されます。緊急時には多角的なアプローチで課題に対処し、企業全体のリスク管理能力を高めます。
明確なターゲット設定
「顧客になりうるのはどんなユーザーか」を明確にすることは重要です。
ペルソナの設計を通じて具体的な顧客像を理解し、ニーズに合わせたコンテンツ制作やSEO戦略を策定することで、リードへの効果的なアプローチが可能となります。
市場調査、顧客のフィードバック、およびウェブのデータ分析を通じて、想定する顧客がどのような情報を求めているのか、どのようなチャネルを使用しているのかを把握していきましょう。高い精度でターゲット顧客に最適なメッセージを届けることができるようになります。
適切なパートナーシップの構築
インバウンドマーケティングは、MA(Marketing Automation)やSEOツールを用いたデータドリブンな取り組みです。専門スタッフや技術パートナーが必要になる場合があります。社内リソースに限りがある場合は、外部の専門家などにも協力してもらうことでコンテンツマーケティングを成功に導きます。
電通B2Bイニシアティブではインバウンドマーケティングを運用する際の技術サポートも承っております。導入時などに、お気軽にご相談頂ければ幸いです。
インバウンドマーケティングの課題
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コンテンツに対するビジョンをうまく策定できていない
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更新頻度を維持できるのか
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効果の遅れと評価の難しさ
インバウンドマーケティングは多くのメリットを持つ一方、コンテンツ選定の難しさや、評価の複雑さといった課題も抱えています。インバウンドマーケティングを進める上で直面しがちな課題を理解し、それを克服する方法を見つけることが重要です。
コンテンツに対するビジョンをうまく策定できていない
インバウンドマーケティングでポイントとなるのは、提供コンテンツの内容です。
顧客にとって価値のある情報を提供するかがポイントとなるため、コンテンツの選定に悩まれる企業も多いでしょう。ターゲットが何を求めているのか、どのような情報が彼らにとって価値があるのかを把握することが不十分だと、コンテンツの効果が低下します。
より価値のある情報を提供するためにも、綿密な市場調査やペルソナの作成は不可欠です。導入段階の「コンテンツとチャネルの選定」でコンテンツに対するビジョンをしっかりと策定し、チーム内で共有しましょう。一貫性のあるコンテンツ選定ができるようになります。
更新頻度を維持できるのか
コンテンツの質と量のバランスを取ることも大切です。質の高いコンテンツを作成するには時間とリソースが必要ですが、コンテンツの更新頻度を維持することも重要となります。
リソースが限られている中で、どのように効果的にコンテンツを生み出し続けるかが課題となるため、コンテンツカレンダーを作成したり、チーム内での役割分担も心がけましょう。
効果の遅れと評価の難しさ
インバウンドマーケティングの効果は短期間で現れるものではありません。長期的な取り組みが必要であり、その間にも継続的な投資が求められます。効果を正確に測定するためにも、適切なKPIの設定とその分析が必要です。
また、ブランドへの関心増加や顧客ロイヤリティの向上といった数字では表すことが難しい結果もあるため、経営層や関係者の理解を得るのが難しい場合があります。顧客からのフィードバック情報なども成果として共有することも大切です。
DXやMAと組み合わせてBtoBビジネスを成長させよう
インバウンドマーケティングは顧客との関係構築を中心に据え、長期的な信頼とブランドロイヤルティを築く新しいマーケティング手法です。DX(Digital Transformation)やMAといった取り組みとも非常に相性がよく、ビジネスの効率化にも大きな役割を果たします。
以上、インバウンドマーケティングの概要、メリット、および導入プロセスについて詳しく解説しました。本記事が新しいマーケティング手法を模索する企業、経営者、マーケティングスタッフの方々に向けてお役に立てる情報となれば幸いです。
電通B2Bイニシアティブはインバウンドマーケティング導入や運用のサポートをさせて頂きます。導入計画の立案からマーケティング効果の評価分析といった専門的コンサルティングもお任せください。
PROFILE
B2B Compass編集部