経済環境が厳しい中でも、世界のITソリューションへの予算は「不況に強い」とされ、ITバイヤーの87%が今後12か月で予算が増加または維持されると回答しています。日本市場でも同様の傾向が見られますが、企業によっては慎重に予算を見直す姿勢もあります。海外市場、とくに北米市場への進出を考える日本のマーケターにとっては、こうしたIT投資の動向や意思決定プロセスの理解がますます重要です。
以下、Foundryが2024年、2023年に実施した「IT意思決定者の役割と影響力に関する調査」に基づき、IT意思決定者がどのような情報源を活用し、導入プロセスの各段階でどのような役割を担っているのかについてのインサイトをご紹介します。
IT導入におけるリーダーシップと影響力
調査によると、ビジネスニーズの特定から導入後のフォローアップに至るまで、世界では多くのIT意思決定者が各段階で関与し、それぞれ異なる役割を担っています。意思決定チームには平均28人が参加しており、内訳はIT部門15人、業務部門13人とバランスよく配置されています。企業規模によって関与する人数は異なり、大企業では32名(IT部門17名、業務部門15名)、中小企業では22名(IT部門12名、業務部門10名)です。プロセス全体でCIOやIT部門の管理職がリーダーシップを発揮し、エンジニアは技術要件の決定や製品評価で重要な役割を担います。また、コンプライアンスやサイバーセキュリティ対策が不可欠であるため、セキュリティ担当者も多くの場面で関与しています。
日本市場では、複数部門が協力して合意形成を行うプロセスが重視されるため、意思決定に慎重かつ時間を要する傾向がありますが、上記のようなグローバルデータは、海外進出を目指す日本企業にとって有益な知見と言えるでしょう。
ITバイヤーが信頼する情報リソース
調査によると、グローバルでは、IT意思決定者の74%が購入プロセス中に信頼できるブランドのコンテンツを利用するとしており、平均で7つのコンテンツを参照しています。特に、製品レビュー、ケーススタディ、市場調査、テクノロジー関連の動画が好まれる情報源です。
まずは信頼されるブランドのイメージを確立し、以下のような信頼性の高い情報源を提供することが効果的です。
- IT関連のコンテンツサイト
- ホワイトペーパー
- ウェブキャストやウェビナー
- ITベンダーとの電話やメール、ビデオ会議
- ITベンダーのウェブサイト
特に購入プロセスの初期段階(ビジネスニーズの決定から製品評価)では、IT意思決定者はIT関連のコンテンツサイトを最も信頼できる情報源として活用しています。これらのサイトは教育的なリソースが豊富で、製品レビューや専門的な見解を提供しているため、初期段階でのリサーチに適しています。
調査が示す導入停滞の要因
一方で、ベンダーの選定が進み、承認プロセスに移行すると、IT意思決定者はベンダーのウェブサイトやメール、ビデオ会議でのやりとり、また同僚からの意見にも依存するようになります。特に承認や評価の段階ではプロセスが遅れがちであり、65%がベンダーと協力して「導入を実現するためのビジネスケース(投資計画)」を作成することで、意思決定をスムーズに進めようとしています。
ITバイヤーが注目する情報提供スタイル
購買の意思決定に最も役立つ情報源として、動画は常に活用されており、ITDMの95%がビジネスに役立てる目的でテクノロジー関連のストリーミングメディアを視聴していると回答しています。最も人気のあるトピックは業界調査/技術アナリストのレポートと詳細な製品レビューであり、利用率はそれぞれ44%と43%で僅差となっています。その後、業界専門家へのインタビューやテクノロジーニュースのレポートが続きます。単なる商品説明を録画しただけの、いわゆる「Unboxing Video(開封動画)」は、提示された選択肢の中で最も人気がありませんでした。ポッドキャストは徐々に受け入れられるようになっています。
海外市場に向けて効果的なマーケティング戦略を構築するには、以上のような世界の動向を把握し、IT意思決定者がどの情報源を重視し、どの段階で活用しているかを理解することが重要です。各ステージで最適なアプローチを設計することで、ITソリューションやマーケティングの成果を最大化することができます。