デジタルトランスフォーメーションを進めるCIOの役割
デジタルトランスフォーメーションが進む中で、グローバル企業のCIOたちはビジネス環境の変化にどう対応し、組織の成長をどう支えているのでしょうか。本記事では、世界的な建築資材メーカー、Owens Corning(オーウェンス・コーニング)社のCIOであるAnnie Baymiller(アビー・ベイミラー)氏にインタビューし、技術導入や社内連携のための具体的な戦略を伺いました。
米国オハイオ州に本社を構えるOwens Corningは、住宅や商業ビル向けの建材や複合材システムで世界的リーダーの地位を築き、テクノロジーを活用して持続可能な未来の実現を目指しています。Annie氏は、220名の「小さくても強力な」ITチームを率い、1万9000人の従業員を抱える同社の技術革新を牽引しています。
今回のインタビューでは、CIOとしての役割だけでなく、進化するIT購入プロセスやビジネス全体と連携して成長を支えるアプローチについても語っていただきました。アニー氏の洞察は、海外企業がどのようにデジタル技術を活用して変革を実現しているかを理解するためのヒントになるはずです。
INDEX
- CIOが語る、日々の業務とIT戦略の最前線
Q. グローバルCIOとしての職務内容について教えてください。
Q. 典型的な1日のスケジュールについて教えてください。
Q. IT関連の購入においてどのような役割を担っていますか?
Q. 他の部門とどのように協力してIT関連の購入を進めていますか?
Q. 過去5年でIT関連の購入プロセスはどのように進化しましたか?
Q. ITベンダーが顧客の関心を引くために改善すべき点は何ですか?
CIOが語る、日々の業務とIT戦略の最前線
Q. グローバルCIOとしての職務内容について教えてください。
グローバル全体のITを統括しています。時代に対応するための、デジタルトランスフォーメーションの推進、データ分析、サイバーセキュリティ、運用技術の管理が主な役割です。また、会社の成長に合わせて拡張可能なエンタープライズプラットフォームを維持することも重要な任務です。
Q. 典型的な1日のスケジュールについて教えてください。
私の1日は大きく3つの要素に分かれます。まず最も重要なのはチームのサポートです。チームが一体感を持ち、サポートされていると感じられると、最高の成果が得られると信じています。メンバーがやりがいを感じながらチャレンジに取り組むことで、チーム全体のパフォーマンスが向上し、結果として高い社員定着率が実現できます。そのため、私は人材サポートに多くの時間を割いています。
次に、将来の戦略を考える時間です。経営陣やリーダー層と協力し、会社の今後の方向性について意見を交わし、相互に良い影響を与え合うことを目指しています。チームと共に、数年先を見据えて必要なテクノロジーや人材のニーズを戦略的に検討しています。
最後に、現在進行中のプロジェクト管理があります。チームが技術プロジェクトを通じてビジネス価値を生み出し続けることが重要です。優秀なリーダーたちに日々のプロジェクト管理を任せることで、人材育成や経営陣・取締役会との戦略的対話、さらには業界や顧客との連携により多くの時間を割けるようになりました。
Q. IT関連の購入においてどのような役割を担っていますか?
リーダーらと共に、すべてのIT関連の購入やサービスの契約に関わっています。目的は、企業全体でのレバレッジを最大限に引き出すことです。当社は複数のビジネスユニットが世界各地に分散しているため、購入したリソースを各部門で共有する方が効率的です。また、セキュリティの重要性が増しているため、新しいベンダーや技術導入には早い段階で関与し、リスクの軽減を図っています。リーダー層が各部門の指揮に加わり、ビジネスニーズに迅速に対応できるよう強力な連携体制を整えているところです。
Q. 他の部門とどのように協力してIT関連の購入を進めていますか?
関わるグループの規模は、購入額やリスク、評価期間、技術の複雑さに応じて調整しています。新しいテクノロジーの評価段階から、実際に使用するメンバーが関与することで、使いやすさやビジネス価値に対する実用的な視点を得られるようにしています。課題やチャンスに早い段階から取り組むことで、スムーズな実装と迅速な成果を実現し、ビジネス価値に早く結びつけます。
私たちの役割は、ビジネスのスピードに合わせて、社内リソースや技術パートナーと連携し、必要なソリューションを迅速に提供することです。デジタル技術やデータ分析は成長の原動力であり、ビジネス部門や経営陣の計画にも組み込まれています。
また、全社から新しいアイデアが生まれる環境を整え、各従業員に適切なデータを行き渡らせることで、個々がインサイトやユースケースを発見し、ビジネス機会を逃さないようにしています。こうした環境を維持するために、セキュリティレビューの徹底とリスク管理を重視し、持続的な成果を確保しています。
Q. 過去5年でIT関連の購入プロセスはどのように進化しましたか?
いくつかの点で変化がありました。各企業がデジタルトランスフォーメーションの方向性を模索する中で、特定のニーズに応えるニッチな技術が増え、興味深いソリューションが登場しています。ただし、こうした技術が増えることで、企業全体での活用効果や長期的な安定性のバランスが課題となり、従来よりも慎重な精査や評価が必要になっています。
また、多くの技術が「As a service」(サービス型)モデルに移行しています。これに伴い、調達プロセスやシステムへの適合性の評価方法も変わり、予算計画や成長モデルについても新たな視点が求められるようになっています。
Q. ITベンダーが顧客の関心を引くために改善すべき点は何ですか?
まず、事前にその企業について理解していることが重要です。これによって会話がスムーズになり、双方にとって有意義なやりとりが可能になります。また、一方的な売り込みではなく、信頼関係を築く姿勢が大切だと思います。私が信頼するプロバイダーは、私たちのニーズを深く理解し、それに優先的に応えてくれるパートナーです。
技術面においては、セキュリティを最優先に設計すること、そして他のテクノロジーとの統合が容易であることが重要です。今後、データフローや自動化のニーズが増加していく中で、単独で完結するソリューションではエンタープライズ全体での価値を引き出すのが難しくなっています。また、評価段階で小規模なプロトタイプを提供し、早い段階で価値提案を示してもらえると助かります。私たちは厳格なプロセスで意思決定を行いますが、できる限り迅速に進めたいと考えています。

PROFILE
Foundry