B2B Compass
常に物事全てが速いペースで進行していくニューヨーク。この都市で経営者として成功するためには、常にハイストレスとハイプレッシャーに耐えていける忍耐力と耐久力が問われます。同時に、家庭での育児も計画通りにいかないことが多く、ストレスが家でも職場でも絶えません。
一見、ビジネスと育児はまったく異なる事に思えますが、家庭も一つの組織ですし、いずれもハイストレスとハイプレッシャーな環境であるため、実は多くの共通点が存在しています。私自身、現在10ヶ月になったばかりの長女と5歳の長男の育児に日々追われる中、日々の育児から常に新しいニューヨーク流の経営スキルやヒントを学んでおり、新たな視点からの発見もたくさんあります。そこで今回は、私が育児を通じて学んだ教訓やヒントからニューヨークの視点で経営者として日々のストレスにどう向き合い、対処しているかを詳しくご紹介していきます。
INDEX
育児では、子どもが突然泣き出し予想外の出来事が頻繁に起こりますが、親としては、感情を瞬時に切り替え、冷静に対処する必要があります。このスキルは、ビジネスにおいても同じで、ニューヨークのビジネスシーンでは、突発的なトラブルやクライシスに即座に対応する場面が多々あります。その際、感情に流されることなく、冷静に判断し行動することがビジネスの成功を左右する要素ともなります。ビジネスも子育ても、何かあった際は常にリアクション(感情的な即時的な反応)ではなく、レスポンス(理性的な意図的な反応)対応で、冷静にまずは状況を理解し、その時の情報や状況に基づいたベストな行動や発言をすることを常に心がけるようにしています。
また、時と場合によっては、感情を後回しにする技術を利用し、「今、その感情に反応する必要がない」と意識的に決め、感情を表に出すタイミングを調整したりもします。どうしても感情的になってしまいそうであれば、席をはずし深呼吸で意識を整えてから、その感情に対してリアクション的に反応するのではなく、後でその感情に向き合うことを自分で許して、意図的に冷静な感情を選択します。そうすることで、緊急の場面では感情に惑わされずに対応するスキルが高まり、ベストな判断を下す事ができるようになります。
育児は一日の中で小さなタスクを数多くのこなす必要がありますが、限られた時間の中で効率的に常に優先順位をつけることが求められます。経営者としても同様に、忙しいスケジュールの中で業務を細かく管理しつつ、大きな目標に向かって進むことが必要となるため、常に的確に業務の優先順位をつけることがビジネスの舵取りには非常に重要な要素となります。
例えば、アイゼンハワー・マトリックスという優先順位付けのフレームワークでは、タスクを「緊急かつ重要」「緊急だが重要でない」「重要だが緊急でない」「緊急でも重要でもない」の4つのカテゴリーに分類し、今すぐ取り組むべきタスクを明確にし、緊急ではないが重要なタスクに対しても計画的に時間を割くような対策をとります。
そのほかに、80/20の法則(パレートの法則)で、仕事の結果の80%は、20%の重要な作業から生まれるという考え方に基づき、最も大きなインパクトを持つ業務から優先順位を付けます。インパクトの大きさや規模ベースで大切なタスクに一点集中する事で、それ以外の作業は削減するか後回しにすることで、効率を最大化し、ストレスの軽減も同時に狙います。
また、MIT(Most Important Task)というフレームワークでは、その日に必ずやらなければならない最も重要なタスクを3つ選び、そのタスクだけに集中するようにしています。忙しいときでも、少なくともその3つを終わらせることを目指し、他のタスクは可能な限り後回しにします。
このように、これらのフレームワークや考え方に沿って、常に何が一番大切な事なのかを考え、自分の行動結果で一番インパクトや影響力が大きいものから着手するようにしています。
育児には、子供の両親だけではなくその他の家族や保育者、友人などといった周りの人たちのサポートの連携が必要不可欠となります。同様に、経営も一人で全てを背負うことはできません。信頼できるチームを形成し、適切にサポートを受けることで、より大きな成果を上げることができます。ニューヨーク流のストレス管理術では、ネットワーキングやコミュニティを築き、困ったときに頼れる人脈を持つことも非常に大切となります。孤立せずに、情報交換やアドバイスを受けることで、心理的な負担を減らしたりもしています。
例えば、既存の関係を強化する事など、一見何事もないような事も重要なコミュニティ構築になります。既にいる友人や家族、家の周りの隣人や子供たちの友達の家族などとの関係を見直し、定期的にコミュニケーションを取る事で信頼できる人とのつながりを深め、助け合える関係を築くことは大切となります。時には感謝の気持ちを示し、相手にもサポートを提供することで、信頼関係をより深めたりもできます。そのほかに、新しい人とのつながりを広げることもサポートネットワークの重要な要素です。例えば趣味や興味のある活動に参加することで、共通の関心を持つ人たちと自然に交流を深め、地域のコミュニティやオンラインのフォーラム(フェイスブックなどでは子育てから経営まで様々なトピックのサポートグループがあります)、趣味のグループなど、さまざまな場所で新しいつながりを見つけてみましょう。
育児の中でも、子どもと一緒に過ごす時間や遊びの時間は、親にとっても大切なリフレッシュの機会です。ビジネスにおいても、常に働き詰めではなく、定期的にうまくリフレッシュすることが重要となります。ニューヨークの喧騒の中で持続的に高いパフォーマンスを維持するためには、ストレスをうまく解消し心身をリセットするための時間を意識的に作ることが必要不可欠となります。
特にフィットネスや運動の優先は非常に大切となり、多くのニューヨーク経営者が毎日のルーティンに組み込んでいるアクティビティの一つとなります。ニューヨークには早朝のランニングクラブや、ビジネスミーティングと併せて行うウォーキング会議なども人気ですが、運動によりストレスを減らすことでビジネスや育児に必要な集中力を高める事ができるため、日々のルーティンでは欠かせない部分となります。どんなに忙しくても10分や15分、20分など少しの時間でも良いので運動する時間を優先し、ストレスの軽減と体調管理に努めるようにしています。
そのほかに、プライベートな時間を確保し、仕事以外の時間をしっかりとプライベートな活動に充てることも重要視されています。子育てで疲れた時などは、1時間でも2時間でもいいので、ビジネスや育児から少し距離を置き、趣味やその他リラックスや何かに没頭できる時間を意図的に作り、心の余裕を作るように日々心がけています。
ビジネスと育児を両立させるスケジュールではハイストレスが続く状態が続きます。時間を振り分け、しっかりと時間配分のメリハリをつける事で「仕事ができないストレス」からまずは自分を解き放ち、仕事ができる時間帯と育児をする時間帯にそれぞれ分けて、各活動を活動時間内でしっかり集中してこなすようにしています。
そして仕事の時間になれば、ニューヨーク流の働き方にギアーを変え、短期集中型と成果にしっかりとフォーカスし、一斉集中モードで仕事をします。もともとニューヨークビジネスでは、1日の時間が限られているため、様々なツールを使って効率性や生産性を向上させ、事業ゴールの達成に必要なタスクのみ一点に集中して仕事をこなしています。こうする事でビジネスタイムと家庭タイムの両立とストレスの軽減を図っています。
また、ストレスを軽減するために、タイムブロッキングやマイクロブレイクという手法で仕事を進める人もニューヨークでは多く見かけます。例えばタイムブロッキングでは、一日のスケジュールを細かい時間単位でブロック(区切り)に分け、その時間ごとに特定のタスクや活動に集中する時間管理の方法です。この手法では、あらかじめカレンダーにどの時間に何を行うかを決めておくため、無駄な時間や空白の時間が減り、効率よく仕事を進めることができます。
例えば、朝の9時から10時までを「メールの処理」に、10時から12時までを「プロジェクト作業」に、12時から13時を「昼食」に、といった形で時間を割り当てます。それぞれのブロックは特定の作業やタスクに集中する時間として設定され、あらかじめ計画することで、時間の浪費や他の作業に気を取られるのを防ぎます。これによって集中力の向上や優先順位を付けなくてもよいため、ストレスの軽減に繋がりやすくなります。
また、マイクロブレイクでは、仕事や作業の合間に取るごく短い休憩のことで、一般的には1分から5分程度の短い時間を指しますが、この間に簡単なストレッチ、深呼吸、目を閉じてリラックスする、窓の外を見るなど、身体や心をリフレッシュさせるアクティビティを行うプチ休憩時間となります。マイクロブレイクは、特に長時間の集中作業やデスクワークを続けているときに効果的で、疲労やストレスを軽減し、集中力や生産性を維持するのに役立ちます。短い休憩でも、リラックスしたり身体を動かしたりすることで、気分転換ができ、集中力の回復やストレスの軽減により、結果的に効率的に仕事を続けられるようになります。
育児では、子どもの成長やニーズに合わせた柔軟な対応が求められますが、同じように、ビジネスにおいても顧客や従業員からのフィードバックに迅速に対応し、改善を重ねることが重要となります。
特にニューヨークのビジネスではフィードバックに対して積極的に対応し、常に柔軟であることが、ビジネスの成長には必要不可欠となります。また、ビジネスの柔軟性に関していうと、リモートワークやフレキシブルな勤務形態により、時間やロケーション的な拘束などという制限から解放する事で、ストレスの軽減を図っています。ニューヨークの多くの経営者は、リモートワークやフレキシブルな勤務形態を取り入れて、自身のストレスを軽減すると同時に、ビジネスの成長に必要なフィードバックに対する柔軟な対応にエネルギーを注力しています。オフィスにいることに縛られず、場所にとらわれない働き方が、精神的な余裕を生む事で事業主やスタッフのパフォーマンスの最適化を目指しているのです。
ニューヨークのスピード感に流されないためにも、経営者としての自己ケアは不可欠です。育児中に小さな自己ケアの時間を取り入れるように、忙しいビジネスライフの中でもメンタルウェルネスを意識した生活を送ることで、長期的なストレス管理が可能になります。
育児中に取り入れる自己ケアの習慣の例として、毎日日課となっているのは、子供との外でのジョギングもしくはウォーキングです。私はこの運動中の時間を活用し、オーディオブックやポッドキャストを聞いたり、瞑想したりして一つのアクティビティでいくつもの自己ケアとなるようなアクティビティも一緒にこなすようにしています。また、ニューヨークの忙しい環境での健康管理法として、週末の食事の作り置きをしたりして平日に食べる食事をまとめて準備することで、忙しい平日に食事の準備のストレスを軽減できるような対策もとっています。
その他にもデジタルデトックスを意識的に実行するようにしています。ニューヨークの経営者の中には、一定時間ごとにデジタルデトックスを行い、スマホやタブレット、ラップトップなどというデバイスから距離を置く習慣を持っている人も多く、中にはスマートフォンやメールの通知をオフにし、常に情報にさらされるストレスを軽減したりしています。私もいちいち通知などに惑わされないよう、通知に対してリアクションベースではなく、常に自分のスケジュールと意識を主体ベースでスマホやアイウォッチなどの通知を確認したり、受け取るようにしています。
そのほか、マインドフルネスや瞑想はニューヨークのビジネスシーンでも広がっており、特に瞑想は短時間で心を落ち着け、リフレッシュできる手法として取り入れられ、朝や昼の短い時間にセッションを設ける経営者が増えています。私も、よく子供たちが寝静まった後に10分〜15分ほどの瞑想を日課として取り入れ心とメンタルのリフレッシュを行ったりしています。
そのほか、ニューヨーク流といえば、メンタルヘルスサポート、カウンセリングやセラピー、コーチングなど、経営者の間ではメンタルヘルスの専門家との定期的なセッションを設けることもごく一般的です。セラピストやコーチングを活用して、自身の精神的、心理的な負担を軽減し、問題に対するクリアな視点を保つよう、経営者としての心のケアと心がけをし、このような健康的なライフスタイルの維持が、結果的にビジネスのパフォーマンス向上にも繋がるのです。
子育てでは子供たちが遊びやすいよう、家庭でのリラックスした環境作りをしますが、このような環境づくりは子どもだけでなく大人のストレス軽減にも役立ちます。職場でも同じようにポジティブな文化や環境を作ることで、チーム全体のストレスを減らし、より良い業績を上げるための要素として取り入れています。
ニューヨークでは、効率的かつ健康的なカルチャーの構築方法として、労働時間の効率化を図り、長時間労働ではなく、成果を重視した働き方を推奨し、必要以上の残業を避け、短期間での集中作業を行うカルチャーを構築する事や、メンタルヘルスの支援、透明性のある経営体制を設け、経営陣が率先して透明性のある意思決定を行り、社員全体がビジョンや目標を共有することで、一体感と信頼感を育てる事などが挙がります。これにより、ストレスの発生を防ぎつつ、社員のモチベーションを高めることができます。
そのほかにも、リーダーシップチームへの委任ができるシステムや取り組みを構築する事で、経営者はすべての仕事を自分で抱え込まず、信頼できるリーダーシップチームに委任することを重要視しています。これにより、無理なく時間を確保し、自分にとって本当に重要なタスクに集中でき、全体の生産性を高める事ができるようにします。このように、ニューヨークの忙しいビジネス環境において、持続可能なストレスフリーなカルチャーやシステムの構築を推進する事で日々のストレスを軽減し、長期的な事業の成功を支える基盤を整えています。
ニューヨークの経営者としてビジネスと育児の両立が求められる中、ストレス管理は必要不可欠となりますが、今回は私が育児から学んだ教訓やヒントから、私自身も実践しているストレスを効果的に管理するための方法をみなさんと共有しました。例えば、瞬時の感情コントロールからタスクマネジメントや優先順位の決定方法、サポートネットワークの重要性やリフレッシュタイムの取り入れ方、タイムマネジメント、自己ケア、柔軟な勤務形態、ストレスフリーのカルチャー構築など、ビジネスや子育てのシーンで実践できるような具体的な手法をいくつかご紹介しました。以上の部類で、すこしでも意図的に意識することにより、ハイストレスな環境でも感情のバランスを保ち、みなさんのビジネスや育児生活の長期的な成功へと繋がれば嬉しいです。ということで、今回のブログも読んでいただいてありがとうございました。みなさんのビジネスと育児生活の成功を心から願っております!
ヨウコ・ウィルソン(旧名:内田洋子)
2014年からニューヨークを拠点に日系企業の海外進出支援とマーケティング事業を展開。現在は電通B2Bイニシアティブのビジネスパートナーとして、日系B2B企業の海外進出を支援中。2児のママとして子育てをしながらエッジメディア社他、複数の事業を展開。