BtoBマーケティングとは、企業対企業の取引を対象としたマーケティング施策のことです。そしてBtoBマーケティングで用いられる手法は、消費者を対象とするBtoC(Business to Consumer)とは異なり、取引先の企業や業界のニーズに応じた戦略が求められます。
BtoBマーケティングでは、長期的な関係構築や専門的な知識が重要視され、対面での営業活動やカスタマイズされたソリューションの提供が主となります。一方、BtoCマーケティングは消費者の感情に訴える広告やキャンペーンが中心です。
本記事では、これからBtoBマーケティングを本格的に強化していくご担当者に向けて、BtoBマーケティングの主要な手法と、どのように自社に最適な手法を選定するかについて詳しく解説します。
競争が激化する市場で、最適な手法を見つけ、ビジネスの成長を実現するためのステップを一緒に確認していきましょう。
INDEX
BtoBマーケティングの主要な5つの手法
BtoBマーケティングにおいて、効果的な手法はさまざまありますが、特に主要なものとして、以下の5つが挙げられます。
- コンテンツマーケティング
- メールマーケティング
- ウェビナー/オンラインセミナー
- SEO
- ホワイトペーパー
これから本格的にBtoBマーケティングを強化するにあたっては、闇雲にさまざまな手法を行うのではなく、まずはこの主要な顧客コミュニケーションである5つの手法からスモールスタートしていき、成果を積み上げていく形がおすすめです。
各施策においても深い顧客理解と購買プロセス、顧客課題によってコンテンツを適切に設計していく必要がありますが、この内容はまた別の記事でご紹介していきます。
ここからは、主要な5つの手法の特徴と、最小限で取り組む方法を解説していきます。
コンテンツマーケティング
コンテンツマーケティングとは、有益な情報を提供し、見込み客を引き寄せる手法です。ブログ記事やケーススタディを通じて、ターゲットの関心を引きます。
BtoB購買プロセスにおいても、購買のデジタル化は進行しており、自社のオウンドメディアへの誘導(総客)は書かせません。そのためにも、有用なコンテンツを積極的に提供すると共に、検索エンジンからの自然流入を狙っていきます。
特に専門性の高い業界では、具体的な事例やデータを用いたコンテンツが信頼獲得に重要です。
最小限での始め方
既存の知識を活用して、簡単なブログ記事からスタートし、定期的に更新します。コンテンツのテーマを継続的に見直し、顧客のニーズに応じた情報を提供することが重要です。
期待できる効果
まだブランド認知をされていないまた接点のない顧客層に対しては、ブランド認知度の向上と信頼性の確立が期待でき、既に接点のある顧客層に向けても中長期的な関係構築に繋がります。
BtoBビジネスにおいては、中長期の購買プロセスとなるため、このような関係性と深耕がとても大事になります。ターゲットが直面する問題を解決する情報を提供することで、顧客の信頼を得られるでしょう。
メールマーケティング
メールマーケティングとは、ターゲットに直接情報を届ける手法で、定期的なコミュニケーションを通じて関係を深めます。パーソナライズされたメール配信が、顧客の関心を引くために効果的です。
また、マーケティングテクノロジーとして代表的なマーケティングオートメーションツール(MAツール)からのメール送信によって、顧客のデジタル行動を可視化するといった重要な目的もあります。
最小限での始め方
簡単なニュースレターを作成し、既存のリストに送信することから始めます。メールマーケティング初期段階では保有している顧客リストに対して一斉送信となるかもしれませんが、早期に顧客の行動に基づいたセグメンテーション(業界別、規模別、課題別など)を行い、より顧客に寄り添う配信を心掛けましょう。
期待できる効果
顧客関係の強化とターゲット企業との信頼性の向上が図れます。メールの開封率やクリック率を分析し、またその後の行動を分析することによって、施策をより最適化することにつながり、顧客との関係性を高めることが可能です。
ウェビナー/オンラインセミナー
ウェビナー/オンラインセミナーとは、専門知識をオンラインで共有し、見込み客との接点を増やす手法です。参加者の質疑応答を通じて、双方向のコミュニケーションを図ることができます。
新規の顧客からのお申し込みによってリード獲得につなげ、また既存顧客に対しては関係性の深耕を狙っていきます。
最小限での始め方
無料のプラットフォームを利用し、少人数向けのセミナーを実施します。参加者のフィードバックをもとに、コンテンツの改善を行いましょう。事前登録フォームを準備し、参加者のリストを獲得すると共に、参加者属性を分析し、その後の戦略や施策効果を向上させるために活用していきます。
期待できる効果
新規の顧客の名刺情報の獲得や既存顧客との関係性強化・深耕(信頼構築)が可能です。セミナー後のフォローアップが、関係構築において重要な役割を果たします。
SEO(検索エンジン最適化)
SEOとは、検索エンジンでの露出を高め、ウェブサイトへのトラフィック(流入)を増やす手法です。特にBtoBでは、専門的なキーワードに焦点を当てた戦略が必要です。
SEOはテクニカルな側面もありますが、何よりターゲットに対していかに便益を届けるかの視点からコンテンツは作成すべきです。良質なコンテンツは、結果的に検索エンジンから評価され露出が高まっていくでしょう。
最小限での始め方
基本的なキーワード調査を行い、コンテンツを最適化することから始めます。競合分析を行い、自社の強みを活かしたキーワード戦略を構築しましょう。
期待できる効果
オーガニックトラフィックの増加とブランドの認知拡大が期待できます。継続的なSEOの取り組みが、長期的な成果に繋がるでしょう。
ウェブサイトへの集客は、他に広告施策がありますがこちらは継続的なキャッシュアウトが発生します。対してSEOは貴社内で実施することも可能であり、両者を並行して進めていくことが大事です。
ホワイトペーパー
ホワイトペーパーとは、専門的な情報を提供し、見込み客に信頼を与える手法です。具体的なソリューションを提示することで、ターゲットの課題解決を支援します。
最小限での始め方
既存の資料をもとに簡単なホワイトペーパーを作成します。ダウンロードの際には、リード情報(新規顧客の名刺情報)を収集する仕組みを設けましょう。
期待できる効果
ホワイトペーパーを用いたマーケティングは、専門性のアピールとリード獲得に繋がります。また、見込み客の購買意欲を高める効果が期待できます。
これらの手法を組み合わせることで、より効果的なBtoBマーケティング戦略を築くことが可能です。それぞれの手法が相互に補完し合い、多角的な視点からターゲットにアプローチします。
BtoBマーケティング初めての手法選びチェックリスト
ここからは、自社に最適な手法を選べるチェックリストをご用意しました。どの手法に取り組むべきかお悩みのご担当者様は、ぜひ選定基準の一つとしてご活用ください。
手法選びチェックリスト
Q1. マーケティングで一番力を入れたい部分はどれですか?
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認知拡大(まず知ってもらいたい)
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見込み客の獲得(リードを増やしたい)
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商談化・受注率の向上(すでに接点がある人を動かしたい)
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Q2. 今の顧客接点の状態はどうですか?
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ほとんど接点がない・営業が開拓している
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Webでの問い合わせや名刺リストなどがある
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定期的にメルマガや資料送付などを行っている
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Q3. 商談に至るまでの検討段階はどのように設定していますか?
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顧客は自社をよく知らない
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検討リストには入っている
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比較・意思決定フェーズでの勝負が多い
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チェックリストの解答
Q1=認知+Q2=接点なしの場合:【Aタイプ】
まだ接点がなく認知が必要なため、SEOまたはコンテンツマーケティングがマッチする可能性が高いです。
Q1=見込み客獲得 or 商談化+Q2=接点あり+Q3=検討リスト段階:【Bタイプ】
接点はあるものの商談化が課題となるケースが多いため、ホワイトペーパーまたはウェビナーによる情報提供が有効と考えられます。これにより、見込み客に対する教育や信頼構築を進め、商談化のハードルを下げることが期待できます。
Q1=商談化 or 受注率UP+Q2=定期接点あり+Q3=比較・意思決定段階:【Cタイプ】
このタイミングではナーチャリングにフォーカスしたいため、既存の接点を活用したメールマーケティングがマッチするでしょう。定期的なコミュニケーションを通じて、顧客の課題に対するソリューションを提供し、比較・意思決定フェーズでの勝利を狙います。
このように、BtoBマーケティングでは、ターゲットのニーズや自社の強みを考慮した施策展開が成功への鍵となります。各タイプに応じた効果的な手法を選択し、持続的な成長を目指しましょう。
BtoBマーケティングの成果を高めるための手法選定&活用のポイント
ここからはBtoBマーケティングの手法と施策を効果的に実行するためのポイントについて、以下3つの視点から解説します。
- BtoBマーケティングの手法で成果を出すために前提で考えるべきこと
- BtoBマーケティングの手法を選定する際のポイント
- BtoBマーケティングの手法を活用する際のポイント
BtoBマーケティングの手法で成果を出すために前提で考えるべきこと
まず手法の選定や活用をしていく前段階で考えておくべきポイントが3つあります。
- 顧客ターゲットの理解を深める
- 成果の種類を明確にする
- 自社の状況を把握する
顧客ターゲットの理解を深める
顧客の業種、規模、ニーズ、課題を把握し、具体的なペルソナを設定することが重要です。ペルソナ設定では、顧客の購買行動や意思決定プロセスも考慮し、パーソナライズされたアプローチが可能です。
さらに、ペルソナごとにコンテンツをカスタマイズし、メールキャンペーンやランディングページでのコンバージョン率を高めることができます。
成果の種類を明確にする
リードジェネレーションやブランド認知度向上など、達成したい目標を明確にします。例えば、リードジェネレーションでは、潜在顧客を特定し、MAツールなどの仕組みを使ってのリードスコアリングを通じて見込み度を評価することが有効です。
自社の状況を把握する
自社のリソースや強みを理解し、それをどのように活用するかを計画しましょう。競合分析を行い、競争優位性を明確にし、差別化戦略を立てることが重要です。SWOT分析を用いて自社の強みと弱点を明確にし、機会を最大限に活かし、潜在的な脅威に備える戦略を立案します。
BtoBマーケティングの手法を選定する際のポイント
次は手法を選定する際、合わせて確認しておきたいポイントです。前にご紹介したチェックリストも選定時に役立ちますが、以下のポイントを抑えることでより深い視点で自社に最適な手法を見極めることができます。
- 達成したい目標を明確にする
- 顧客との接点状況を確認する
- リソースと予算にそって検討する
- 計測と改善がしやすい手法から始める
達成したい目標を明確にする
まずは達成したい目標を設定し、施策の方向性を決めましょう。具体的な目標があれば、それに合った効果的な手法を選びやすくなります。例えば、売上の増加、ブランド認知度の向上、特定の顧客層へのリーチなど、それぞれの目標に応じた手法を選ぶことが重要です。
また、SMART(Specific, Measurable, Achievable, Relevant, Time-bound)な目標設定を行うことで、より現実的かつ達成可能なプランを立てることができます。
顧客との接点状況を確認する
既存顧客との関係性や新規顧客の開拓状況を把握し、最適なチャネルや手法を選ぶための指針にしましょう。顧客ペルソナの作成やカスタマージャーニーの分析を通じて、どのチャネルが最も効果的かを見極めることができます。
例えば、LinkedInを活用したリードジェネレーションや、メールマーケティングによる既存顧客との関係強化などが考えられます。
リソースと予算にそって検討する
利用可能なリソースと予算を考慮し、コスト対効果を意識した手法を選定しましょう。限られたリソースを最大限に活用することが重要です。例えば、社内でのコンテンツ制作が可能であれば、コンテンツマーケティングに注力したり、予算に応じて広告出稿を調整するなど、柔軟な対応が求められます。
計測と改善がしやすい手法から始める
計測と改善が容易な手法を選ぶことで、導入後の効果測定と最適化がしやすくなります。具体的には、KPI(重要業績評価指標)を設定し、定期的に分析を行うことで、施策の効果を可視化し、必要に応じて戦略を修正することが可能です。
例えば、ウェブサイトのアクセス解析や、キャンペーンのコンバージョン率の追跡などが挙げられます。
BtoBマーケティングの手法を活用する際のポイント
最後に、手法を活用し成果を高めていくために押さえておきたいポイントを3つご紹介します。
- 営業と連携して活用されるコンテンツにする
- KPIをシンプルに設定し、改善サイクルを持つ
- 施策を単発で終わらせず、流れ(ジャーニー)で考える
営業と連携して活用されるコンテンツにする
コンテンツが実際の営業活動に役立つようにし、KPIをシンプルに設定しましょう。営業チームとマーケティングチームの連携を強化することで、リードの質と商談転換率を向上させます。
加えて、CRMツールを活用して情報を一元管理し、チーム間のコミュニケーションを円滑に行うことで、より効果的なリードフォローが可能になります。
KPIをシンプルに設定し、改善サイクルを持つ
継続して改善サイクルを持つことで成果を向上させましょう。顧客からのフィードバックを定期的に収集し、施策に反映させることで、マーケティング活動の質を高めます。
また、顧客満足度調査やNPS(ネットプロモータースコア)を活用し、顧客体験の向上に努めることが重要です。
施策を単発で終わらせず、流れ(ジャーニー)で考える
施策を単発で終わらせず、顧客の購買ジャーニー全体を考慮に入れた長期的な施策を構築します。顧客ライフサイクル全体を通じたエンゲージメントを目指し、持続的な関係構築を図りましょう。
さらに、顧客ロイヤルティプログラムを導入し、既存顧客の維持と再購入を促進することも効果的です。
これらのポイントをしっかりと押さえ、適切に実行することで、BtoBマーケティングの成果を最大化することが可能です。
BtoBマーケティングのよくある手法選び・活用お悩みQ&A
BtoBマーケティングで最適な手法を選んで活用していく際には、さまざまな疑問が生まれることも少なくありません。ここからは、手法選定時によくあるお悩みをQ&A形式で解説していきます。
Q:どの手法から始めればいいかわからない
A:まずは、自社の目的と課題、営業プロセス上のボトルネックを明確にすることが重要です。目的が認知向上なのか、リード獲得なのか、商談化なのかを明確にし、それに基づいて手法を選定しましょう。
チェックリストを活用することで、選択肢を整理しやすくなります。最初は小規模で始め、結果を分析しながら徐々に手法を拡大するのが賢明です。
Q:リードは取れるけど商談に繋がらない
A:リード獲得はできても商談に結び付かない場合は、リードの質を見直す必要があります。資料が誰でもダウンロードできるような内容では効果が薄いかもしれません。
BtoBでは中長期的なナーチャリングが重要です。メールや事例、FAQを活用してリードとの関係性を強化しましょう。また、営業とホットリードの定義を共有することも欠かせません。
Q:社内にマーケ人材がいない/ノウハウがない
A:社内にマーケティング人材がいない場合は、外部支援やツールを活用するのが有効です。制作代行やマーケティングオートメーション(MA)ツールなどを取り入れてみましょう。同時に社内で担当者を決めて、少しずつ育成することも視野に入れます。
営業チームからのフィードバックを通じて、コンテンツに活かすことも大切です。
Q:成果が見えにくい・評価しにくい
A:成果が見えにくいと感じる場合、最初はシンプルなKPIを設定することが重要です。資料ダウンロード数や商談化率など、具体的な指標を設け、可視化ツールを活用しましょう。
特に成果が出るまでには時間がかかることを前提に、長期的な視点で評価することが求められます。
Q:営業が手法(施策)を活用してくれない
A:営業と共同で「使えるコンテンツ」を企画することが効果的です。事例や比較表など、営業が直接使える資料を作成し、DL通知やリード情報をスムーズに共有できる体制を整えましょう。定期的なミーティングで活用事例を紹介し、共有することも有効です。
逆に、顧客理解の高い営業側に必要な情報やコンテンツを提供してもらい、マーケティング側が活用していくのも有用でしょう。
Q:コンテンツのネタが思いつかない
A:コンテンツのネタ切れに悩む場合は、よくある質問や営業現場の会話からヒントを得ることができます。
また、自社の技術や強み、提案内容を再整理して、新たな視点でコンテンツを構築することも重要です。業界キーワードや検索ニーズを調査し、顧客の購買行動を考慮した内容を企画しましょう。
チェックリストやQ&Aを活用し、自社に最適なBtoBマーケティング手法を選択しよう
BtoBマーケティングの手法と施策は、企業が抱える課題に応じて柔軟に選択し、実行していくことが重要です。多くの企業が直面する悩みは、どの手法を選べば良いのか、どのように施策を展開すれば成果を上げられるのかという点です。
しかし、まずは自社の目的を明確にし、顧客のニーズや市場の状況を深く理解することが成功への第一歩となります。チェックリストを活用して選択肢を整理し、小さく始めて改善を重ねることで、確実に成果を積み重ねていきましょう。
次のステップとしては、具体的な施策を一つ選び、実行に移してみてください。例えば、簡単なブログ記事から始めるコンテンツマーケティングや、既存の顧客リストを活用したメールマーケティングなど、始めやすい手法から取り組むのがおすすめです。
実行後には、その結果をしっかりと分析し、次の改善に活かすことが成功への鍵となります。BtoBマーケティングの旅を共に進め、ビジネスの成長を一緒に実現しましょう。
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PROFILE
B2B Compass編集部