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ABM(アカウントベースドマーケティング)は、近年、国内外で急速に注目を集めているマーケティング手法です。特に、企業が特定の顧客(=アカウント)に焦点を当て、それに応じたカスタマイズされた戦略を展開することで、効果的にリードを育成し、売上を最大化することが可能となります。この手法は、顧客のニーズを深く理解し、個別に対応することで、従来のマスマーケティングとは異なる、よりパーソナライズされたマーケティング施策を実施します。
米国をはじめとする先進国では、すでに多くの企業がABMを導入し、競争優位を築いています。日本においても、DXの進展に伴い、ABMの導入が増えつつあり、その効果が期待されています。
今回は、国内外の事例をベースに、ABMの重要性と取り組みのポイントについて解説します。
INDEX
はじめに、ABMの理解を深めておきましょう。
ABM(アカウントベースドマーケティング)とは、企業が特定の顧客(=アカウント)をターゲットに、その顧客にあわせたきめ細やかなマーケティング活動を行う手法のことをいいます。
従来のマーケティング手法が広範なターゲットを対象に一律のメッセージを展開するのに対し、ABMは特定の企業や個人に焦点を当て、顧客のニーズや課題を深く理解し、その企業に最適な情報を提供する(=パーソナライズする)ことで、より高い成約率を目指します。この手法は、BtoB企業で特に効果的とされています。なぜなら、顧客のビジネスの意思決定が複数のステークホルダーによって行われることが多いからです。ABMは、営業チームとマーケティングチーム(企業によってはカスタマーサクセスチーム等も含む)が協力し、特定のアカウントに対してカスタマイズされたメッセージやコンテンツを提供することで、関係性を深め、契約獲得の可能性を高めます。
また、ABMの成功は、ターゲットアカウントの選定、ターゲットに対する深い理解、そして適切なメッセージの提供に依存しています。これにより、企業はマーケティングリソースをより効率的に配分し、高い投資対効果を得ることが可能となるでしょう。テクノロジーの進化により、データ分析や自動化ツールを活用することで、ABMはより効果的かつスケーラブルな戦略となっています。
特に、デジタルチャネルを活用したABMは、ターゲットアカウントに対してリアルタイムでのインタラクションを可能にし、迅速なフィードバックと調整を可能にするため、競争力のあるマーケティング戦略として注目されているのです。
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近年、ABMが注目される背景には、マーケティング戦略の進化と企業のビジネス環境の変化があります。従来のマーケティングでは、広範囲にわたるターゲティングが主流でしたが、これでは特定の顧客に対して効率的にリソースを配分することが難しいという課題がありました。
昨今のデジタル技術の進化により、ターゲット顧客に関する様々な企業データの収集と分析が容易になり、より精度の高いマーケティング施策が可能になっています。さらに、顧客ごとにパーソナライズされた体験が求められる中で、ABMはそのニーズに応える手段として企業の注目を集めています。このように、ABMはマーケティングの効率を上げ、競争優位を築くための重要な戦略として広く活用されつつあります。
まとめると、ABMは、特定の顧客(=アカウント)に焦点を当て、個別にカスタマイズされたアプローチを行うことで、より高いROI(投資対効果)を実現するための新たなマーケティング手法として注目されています。
ABMのメリットは以下の通りです。
まず、ターゲットを明確に絞り込むことで、マーケティング資源の効率的な配分が可能になります。これにより、ROIの向上が期待できるでしょう。また、ABMはカスタマイズされたコンテンツやメッセージを提供するため、顧客とのエンゲージメントが深まりやすく、信頼関係の構築が促進されます。
さらに、営業チームとマーケティングチーム等の連携が強化され、統一された戦略の下で一貫したアプローチを展開することが可能です。これにより、コンバージョン率の向上が見込まれるでしょう。またABMは成果を測定しやすく、データに基づいた戦略の改善が容易であるため、持続的なビジネス成長を支援します。
BtoBにおけるABMの重要性は、顧客との深い関係を築くための戦略として近年ますます注目されています。ABMは、特定のターゲットアカウントに対して個別にマーケティング戦略を展開する手法であり、従来のマスマーケティングとは異なり、個別のニーズや課題に応じたカスタマイズされたアプローチを取ることが可能です。
これにより、顧客の関心をより効果的に引き付け、関係構築を促進します。特にBtoBの市場では、顧客ごとの契約単価が高いため、個々のアカウントに対する影響力を高めることは非常に重要です。さらに、ABMは営業チームとマーケティングチーム等との連携を強化し、両者がお互いに協力して目標達成に向けて統一された戦略を展開することが可能になります。これにより、営業プロセスの効率が向上し、結果としてROIの向上を実現します。
競争の激しい市場環境において、ABMは競合との差別化を図り、持続的な成長を支える強力なツールとなりえるでしょう。
国内でもABMの取り組みは徐々に広がっており、企業によって形はさまざまですが、成功事例もいくつか存在します。
ここでは、3つの事例をご紹介します。
ある大手IT企業では、部署間での顧客情報連携に課題を持っていました。そこでABMを採用し、顧客情報の洗い出しと整理を徹底。徹底した顧客管理を行った結果、特に自社における優良顧客と関連が深いような「ホワイトスペース」を発掘し、アプローチに成功しています。ABMを採用したことで精度の高いデータを部門間で管理できるようになり、ホワイトスペースを攻略したことで、BtoB領域におけるリード転換率が従来より5倍以上向上しました。
あるWeb制作企業では、新規アプローチ企業の発掘に時間がかかっていることや、質の高いリードのリストアップに課題を持っていました。そこでABM機能を持ったMAツールを導入。ツールを活用することでアプローチ企業の獲得がしやすくなり、リードのリストアップも簡単にできるようになったそうです。リード獲得〜狙った企業へのアプローチのフローにおける情報精度向上&効率化がなされたことで、アポイント率の向上にも繋がっています。
こちらは電通B2Bイニシアティブがご提供するインサイドセールスソリューションにてご紹介させていただいている事例です。
ある通信キャリア企業では、インサイドセールスの正しいやり方の理解と、問い合わせ部門のやり方をプロアクティブなものに変えたいという課題感があり、ABM型のプロセスに変えることを採用しました。ソリューションセールスのためのトレーニングやPDCA改善、KPI設計やインサイドセールス部門の人事評価の改革に取り組みました。結果、前年比前年比100%以上の収益増加達成や、ターゲット顧客内での新たなコンタクト先&案件の発見に繋がっています。
海外ではABMの事例が豊富に存在します。ポイントとなるのは、「緻密なターゲットインサイトの発掘と部門間連携の強化」といえるでしょう。
ここでは2つの事例をご紹介します。
ある大手のクラウドサービス企業では、トップ企業に限定したABMの専任チームを立ち上げ、MAツールなどを活用しながら各企業のニーズ発掘に努めています。同社ならではのスコアリングシステムでホットリードを抽出し、ターゲット企業にパーソナライズドされたコンテンツを配信。ターゲット企業のニーズにマッチしたアプローチを図り、顧客満足度の向上を達成しています。
ある大手IT企業では、専門チームによるターゲット企業インサイトの発掘から、各アカウントの課題分析を図り、案件創出力を高めています。ターゲット企業のビジネス課題をマーケティングチームが分析し、自社のソリューションと絡めたポイントと合わせて営業に連携。営業はターゲット企業が抱える課題に沿ったアプローチが可能となるため、案件化に繋げやすくなっているようです。
事例を踏まえて、ABM戦略や運用を図る際のポイントを理解しておきましょう。
主には、以下がポイントとなってきます。
ABMの成功は、明確なターゲット設定から始まります。国内外の企業の成功事例を分析すると、共通点としてターゲットとなるアカウントの選定が極めて重要であることがわかるでしょう。
まず、企業の成長目標や市場セグメントに基づき、最も価値のあるアカウントを特定することが求められます。これには、売上、業界、地域、企業規模などの具体的な基準に基づく詳細なデータ分析が必要です。
さらに、ターゲットアカウントの意思決定者や影響力のある人物に関する情報を集め、彼らのニーズや課題を理解することも重要です。これにより、パーソナライズされたマーケティング戦略を構築し、より効果的なコミュニケーションが可能となります。
国内外の事例から学べることは、ターゲットアカウントの選定が曖昧であれば、ABM戦略全体の効果が減少するということです。したがって、明確なターゲット設定は、ABM戦略の基盤であり、戦略の成功を左右する重要な要素となります。
ABMは、特定のターゲットアカウントに対するパーソナライズされたアプローチが成功の鍵を握る戦略です。国内外の事例を分析すると、共通して見られるのは、このパーソナライズをどれだけ精密に行えるかが、ABMの効果を大きく左右するという点です。具体的には、ターゲット企業の組織構造、業界特性、さらには個々の意思決定者のニーズや関心に基づいたメッセージを作成することが求められます。
例えば、海外の大手IT企業では、ターゲット企業の内部での最近のプロジェクトやニュースに基づき、その企業が直面する課題に直接応える内容のメッセージを送ることで、関心を引き、信頼関係を構築しています。国内でも、特定の業界に特化したソリューションを提供する企業が、各クライアントの経営戦略に合わせた提案を行うことで、受注率を大幅に向上させた事例があります。
さらに、パーソナライズされたメッセージは、単なるメールや提案書だけに留まらず、ウェビナーやイベント、ワークショップなどの場を活用し、直接的なコミュニケーションを通じてアプローチすることも効果的です。このような双方向のコミュニケーションは、ターゲットアカウントとの信頼構築を促進し、より深いビジネス関係を築く基盤となります。国内外の事例から学ぶべきは、パーソナライズの精度を高めるために、データ分析やAIを活用し、常に最新の情報をもとにメッセージを調整することの重要性です。これにより、ABM戦略は単なるマーケティング手法を超え、企業成長の強力なエンジンとなるでしょう。
ABMを成功させるための最適なチャネル選定は、ターゲットアカウントの特性と行動に深く根ざしています。国内外の成功事例から学ぶと、チャネル選定においては、まずターゲットの業界、企業規模、購買意思決定プロセスを詳細に分析することが重要です。
特に、BtoBの分野では、LinkedInやX(旧Twitter)といったプロフェッショナル向けのソーシャルメディアが有効であるとされます。これらのプラットフォームは、特定の業界や職務における影響力を持つ専門家に直接リーチできるため、精度の高いターゲティングが可能です。
また、メールマーケティングは依然として重要なチャネルであり、パーソナライズされたメッセージングが鍵となります。さらに、ウェビナーやカスタマイズされたコンテンツ提供も、ターゲットアカウントに対するエンゲージメントを高める手段として有効です。海外の事例では、AIを用いて顧客データを分析し、最適なチャネルを自動で選定する技術が進化しており、日本市場でもその導入が進んでいるようです。
最後に、複数のチャネルを組み合わせたオムニチャネル戦略が、ターゲットの多様な接点をカバーし、より高い成果を生む鍵となります。これらのポイントを押さえることで、ABM戦略の効果を最大化することが可能です。
ABM戦略の成功には、営業チーム等との密接な連携が不可欠です。国内外の事例を分析すると、効果的なABM運用には、営業チームとマーケティングチーム等との間での情報共有と共同目標の設定が重要であることがわかります。
例えば、国内のあるIT企業では、マーケティングチームがターゲットアカウントの詳細なペルソナを作成し、それを営業チームと共有することで、より的確なアプローチが可能になりました。これにより、ターゲットアカウントへの提案内容がカスタマイズされ、成約率が大幅に向上しました。
また、海外の先進企業では、定期的な合同ミーティングを開催し、各アカウントの進捗状況や課題を共有する文化が根付いています。これにより、営業チームが現場で得たフィードバックをマーケティング施策に迅速に反映させることができ、アジャイルな戦略調整が実現。さらに、共通のKPIを設定することで、両チームが同じ目標に向かって協力しやすくなり、組織全体のパフォーマンス向上に寄与しています。
ABMの効果を最大化するためには、戦略構築と運用の段階でパフォーマンスを的確に測定することが重要です。国内外の成功事例から学ぶと、ツールを活用したパフォーマンス測定が不可欠であることがわかります。
例えば、国内のある企業では、CRMとマーケティングオートメーションツールを連携させ、ターゲットアカウントの行動データをリアルタイムで収集しています。これにより、顧客の関心度や購買意欲を即座に把握し、営業チームとマーケティングチームが迅速に戦略を調整できるようになりました。
一方、海外の事例では、ABM専用プラットフォームを導入し、詳細なアカウント分析や自動化されたレポート機能を活用しています。海外でよく使われるプラットフォームとしては、以下などが挙げられます。
これらプラットフォームは、アカウントごとのカスタマージャーニーを可視化し、どの施策が最も効果的かを明確にします。ツールを用いたパフォーマンス測定は、定量的なデータに基づく意思決定を可能にし、ABM戦略の精度を高めるのに寄与するでしょう。
これらの事例から学べるポイントは、適切なツールを選択し、それを最大限に活用することで、ABMの成果を着実に向上させることです。ツール選びにおいては、企業の目標や規模、業界特性に応じたカスタマイズが可能なものを選ぶことが肝要です。
ABMは、ターゲット企業に対する個別のアプローチを重視する手法として、国内外で注目を集めています。この記事では、最新の事例を通じて、ABM運用の効果的なヒントを提供してきました。
これらの知見をもとに、企業が自らの状況に適したABM戦略を構築することが求められます。さらに、これからのABM運用においては、変化に柔軟に対応できる組織体制の構築や、顧客とのパーソナライズされたエンゲージメントを深めることが必要不可欠です。未来のビジネス環境において競争優位を築くために、ここで得た知識を実践に活かし、持続可能な関係構築を進めていきましょう。
B2B Compass編集部
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