2023年、多くの米国企業でマーケティング予算が削減されました。
各企業のCMO(チーフマーケティングオフィサー)は、2024年も予算が同水準か、もしくは減少すると見込んでおり、マーケティング担当者は目標達成に向けて予算的にも最も効果的なツール、データ、チャネルに焦点を当てることが重要です。
ROI、CAC、CLVといった重要指標を使った戦略策定や、インテントデータを活用したマーケティング手法について、2回にわたって紹介します。
CMO(最高マーケティング責任者)が注視すべきメトリクスを理解する
効果的な施策に取り組むには、まず、CMOが注目する主要なメトリクス(指標)を理解し、それに基づいてチャネルを評価することが大切です。各マーケティングチャネルの効果を評価する際には、ウェブトラフィックやソーシャルメディアのエンゲージメント、コンバージョン率などを詳細に分析します。具体的かつ現実的な指標とベンチマークを設定し、進捗を測定することで、戦略の改善点を見つけ出し、リソースを最適に配分します。これにより、マーケティング活動の質を保ち、企業の成長に貢献できるのです。以下、代表的なメトリクスを見ていきましょう。
ブランド認知とブランドエクイティ
ブランド認知は、顧客との最初の接点です。見込み客にあなたの存在を知ってもらい、さらに信頼できるパートナーとして認識されることが重要です。そのためには、ロゴやタグライン、ブランドのパーソナリティをすべてのチャネルで一貫させ、「この会社なら安心だ」と感じてもらうことが求められます。
また、ブランドのストーリーテリングも欠かせません。ビジュアルの統一にとどまらず、ブログやウェビナーを通じてブランドの「物語」を伝え、顧客との絆を深めましょう。頼れる情報源として認識されれば、顧客が課題に直面した際に真っ先に思い浮かべてもらえるでしょう。
ブランドエクイティ(ブランドの資産)を測定する代表的な方法としては、以下の項目が挙げられます。
- ウェブトラフィック:ウェブサイトへの訪問と滞在時間の推移
- 質の高いソーシャルシェア:コンテンツの拡散やユーザーとのエンゲージメント
- コンバージョン:コンテンツやブランドに触れた人がフォロワーになる、あるいはニュースレターの購読者になる、など
投資利益率 (ROI)、顧客獲得コスト (CAC)、顧客生涯価値 (CLV)の重要性
マーケティングの効果を正確に測定し、投資対効果を明確にすることは、CMOにとって不可欠です。特に、ROI(投資利益率)、CAC(顧客獲得コスト)、CLV(顧客生涯価値)は、マーケティング戦略の評価と調整において重要な指標です。
- ROIは、各チャネルや施策がどれだけの成果を上げているかを示します。
- CACは、新しい顧客を獲得するためにかかるコストを把握するための指標です。
- CLVは、顧客が企業にもたらす総価値を示し、長期的な利益を見積もるための指標です。
これらの指標を適切に理解し活用することで、マーケティング活動を効率的かつ効果的に行えるようになります。以下に、それぞれの指標の測定方法を紹介します。
投資利益率 (ROI: Return On Investment)と計算式
各チャネルへの投資の成果を証明することは、マーケティング活動を最適化するうえで欠かせない要素です。具体的には、ソーシャルメディア広告、検索エンジンマーケティング、コンテンツマーケティングなど、各施策の費用対効果を明確に測定する必要があります。これには、正確な記録管理、データの統合、活動の詳細な分析が求められます。これらを徹底することで、ROIを正確に把握し、テクノロジーへの投資やリソース配分を最適化することが可能になります。
ROIの測定方法は以下の通りです。
- ROI = (売上 − 売上原価 − マーケティング費用) ÷ マーケティング費用
各チャネルに対して期限を設けた目標を設定し、カスタマージャーニーの各段階を目標に含めることで、より正確に成果を追跡できます。たとえば、各チャネルや戦術が費用対効果を発揮するために必要なMQL(Marketing Qualified Lead)、SQL(Sales Qualified Lead)、ミーティングの数、顧客数などを設定し、それに基づいてパフォーマンスを評価します。
顧客獲得コスト (CAC:Customer Acquisition Cost)と計算式
マーケティング戦略を成功させるために、取引完了までのコストを的確に把握しましょう。理想的には、CACは平均取引額よりも低い方が望ましいです。もしCACが平均取引額を大幅に上回る場合、マーケティング活動が十分な価値を生み出していない可能性があります。業界のベンチマークを理解し、各マーケティングチャネルのパフォーマンスを定期的にチェックしましょう。
CACの測定方法は以下の通りです。
- CAC = 売上 + マーケティング費用 / 顧客数
顧客生涯価値 (CLV: Customer Lifetime Value)と計算式
CLVは、顧客があなたのビジネスと関わる期間中に生み出す総価値を示します。顧客を長期間維持するほど、CLVは大きくなります。この指標を活用して、最も高いROIを提供する顧客セグメントに注力しましょう。
CLVの測定方法は以下の通りです。
- CLV計算式 = (平均購入額 x 平均購入頻度) x 平均顧客寿命
CLVとCACを比較することで、マーケティング戦略の効果を評価し、持続可能な利益を確保することができます。理想的には、CLVがCACを大幅に上回り、顧客獲得コストをカバーしつつ長期的な利益を生み出すことが重要です。
以上のメトリクスの理解は、マーケティングチャネルの選定に役立ちます。
主要マーケティングチャネルの特徴
各チャネルには、それぞれに特有のメリット、特定のパフォーマンス指標、必要なツール、そして最適化にかかるコストがあります。以下、詳しく紹介していきます。
オーガニック検索
ウェブサイトの自然流入を増やし、オーガニック検索経由での訪問者数を増やすことは、マーケティングの重要な課題の一つです。ウェブサイトは、質の高いコンテンツを提供し、見込み顧客とつながり、その行動を分析するための最適な場所だと言えます。
効果的なオーガニック検索チャネルを構築するには、自発的なウェブトラフィックを引き寄せ、検索エンジンの結果ページ(SERPs)の上位に表示されるように、コンテンツやウェブサイトの要素を最適化することが必要です。この目標を達成するためには、キーワードの選定、バックリンクの構築、サイト内のトピックの充実、関連性の向上、さらにはローカルおよびグローバルな要素を考慮したSEO戦略が求められます。
<オーガニック検索に投資するメリット>
- ウェブサイトのトラフィックを増加させる。
- ブランド認知を向上させる。
- コンバージョン率とエンゲージメントを高める。
- 長期的な利益を獲得する。
オーガニック検索は、広告費用がかからないため、コスト効率の高いマーケティング手段とされています。ただし、効果を上げるためには戦略的なアプローチが欠かせません。オーガニック検索のパフォーマンスを向上させるには、時間や労力、そして特定のツールや専門知識への投資が必要です。それでも、最適化を通じて得られる長期的な利益は、限られた予算で最大の効果を狙う企業にとって魅力的な選択肢です。
<オーガニック検索の評価と測定>
以下の指標は、ウェブサイトが検索エンジンの結果でどのようなパフォーマンスを発揮しているか、またユーザーがコンテンツとどのように相互作用しているかを把握し、ベンチマークし、測定するための定量的データを提供します。
- オーガニックトラフィック
- キーワードランキング
- クリック率(CTR: Crick Through Rate)
- コンバージョン率(CVR: Conversion Rate)
- ページ滞在時間の平均
- 訪問あたりの平均ページ数
- オーガニックページランク
<オーガニック検索ツール>
ここでは、オーガニック検索の取り組みを強化し、その効果を最大化するために、マーケターにおすすめのツールを解説します。
- キーワードリサーチツール
ユーザーが検索エンジンに入力している関連キーワードや検索語を特定するのに役立ちます。 - SEO分析およびトラッキングツール
ウェブサイトのパフォーマンスや検索結果でのランクを分析します。トラフィック、キーワードランキングなどのデータを提供します。 - 競合分析ツール
競合他社のオンライン戦略(ターゲットキーワード、バックリンクなど)を理解し、独自のオーガニック検索の取り組みに役立てます。
検索広告
検索広告は、オーガニック検索結果の横や上に表示される有料広告枠で、キーワードに対して入札を行い、ビジネスやコンテンツをより高い位置に表示させるものです。オーガニックSEOは成果が出るまでに時間がかかる一方、有料の検索広告は即座に検索結果の上位に表示させることができます。もちろん、これは広告費を支払っている間のみ有効です。また、SEOのスコアが有料広告の表示にも影響を与えます。このスコアは、広告の関連性や使用されているキーワードなどによって評価されます。
入札額は、特定のキーワードに対して支払う最大金額を指します。広告の表示順位はこの入札額によって決まり、検索結果での可視性に影響を与えます。検索広告は、他のマーケティングチャネルとは異なり、多くがテキストベースで構成され、画像はあまり使われません。また、ユーザーが実際に検索するクエリに基づいて表示されるため、非常に高い関連性を持つのが特徴です。
<検索広告に投資するメリット>
- 即時に視認性を高める。
- ターゲットオーディエンスにリーチする。
- ブランド認知を向上させる。
- 高い購入意欲を持つオーディエンスにリーチする。
検索広告はオーガニック検索とは異なり、具体的な広告予算を必要とします。コストはかかりますが、検索広告は即時に視認性を高める効果的な手段です。その結果、トラフィックやコンバージョンの増加に繋がり、ポジティブな成果を生み出す可能性があります。
<検索広告の評価と測定>
検索広告の効果を正確に測定し、ベンチマークを行うことは、キャンペーンのパフォーマンスを把握し、最適化のための意思決定を行う上で非常に重要です。
検索広告に投資する際に注目すべき主要な指標は以下の通りです。
- クリック率(CTR)
- コンバージョン率
- クリック単価(CPC: Cost Per Click)
- 広告の表示順位
- コンバージョン単価
これらの指標とベンチマークは、オーガニック検索と似ていますが、検索広告は購買意欲の高いユーザーをターゲットにすることが多いため、ROIがより高くなることが期待されます。また、キーワードやキャンペーンを意図に応じて分類し、特定のコンテンツやブランドキーワードに誘導する戦略を取ることも可能です。
<検索広告ツール>
検索広告の取り組みとパフォーマンスを最適化するために、マーケターが活用できるツールにはどのようなものがあるでしょうか。
- 入札管理ソフトウェア
検索広告キャンペーンの入札を自動化し、最適化するためのツールです。これにより、より良い結果とコスト効率を達成できます。 - 競合分析ツール
Google広告やMicrosoft広告での競合他社のキーワード、広告コピー、広告費用を調査するためのツールです。 - 広告キャンペーン管理プラットフォーム
複数の検索エンジンでの検索広告キャンペーンの作成、整理、最適化を支援するツールです。代表的な例として、Google広告やMicrosoft広告があります。
メールマーケティング
メールマーケティングは、ターゲットメッセージや特別なオファーを通じて、見込み顧客や既存顧客の日常業務に自社の存在を届ける効果的な手段です。メールを活用することで、件名や配信時間、メッセージ内容を試行しながら、コンテキスト、ペルソナ、購買ステージに基づいてオーディエンスをセグメント化することができます。
<メールマーケティングに投資するメリット>
- 見込み顧客や既存顧客と直接コミュニケーションが取れる。
- コンテンツをセグメント化し、パーソナライズできる。
- リードの育成ができる。
- アウトリーチを自動化できる。
多くのマーケターは、自社のウェブサイト、ブログ、メールを活用してコンテンツを配信していますが、その中でもメールマーケティングは一般的な手法の一つです。デジタルマーケティングの中でも特に高いROI(投資対効果)を示しており、例えば1ドルの投資に対して平均で36ドルのリターンが期待できると言われています。他のチャネルと比較してもコストが比較的低いため、収益を生み出す可能性が非常に高いです。ただし、メールマーケティングはコスト効率が高い反面、プラットフォームの選定やセットアップには初期費用がかかる点を考慮する必要があります。
<メールマーケティングの評価と測定>
効果的なメール戦略を活用することで、見込み顧客をカスタマージャーニーに沿って進め、適切なコンテンツやリソースを提供することができます。メールマーケティングの評価には、メールキャンペーンのパフォーマンスを分析し、マーケティング目標の達成度を測定することが含まれます。
メールマーケティングの成功を追跡するために重要な指標は以下の通りです。
- 開封率
- クリック率(CTR)
- コンバージョン率
- バウンス率(メールが届かなかった割合)
- 配信解除率
<メールマーケティングツール>
メールマーケティングの取り組みとパフォーマンスを最適化するために、マーケターが利用できる一般的なツールをいくつか紹介します。
- メールマーケティングプラットフォーム
メールキャンペーンの作成、送信、追跡に必要な機能を提供する包括的なツールです。カスタマイズ可能なテンプレート、リスト管理、セグメンテーション、自動化、A/Bテスト、分析機能が含まれています。代表的なプラットフォームとしては、MailChimp、Constant Contact、HubSpotなどがあります。 - マーケティングオートメーションプラットフォーム
ユーザーの行動やトリガーに基づいて、自動化されたメールワークフローを設定できるプラットフォームです。特定のタイミングでパーソナライズされたメールを送信することができます。代表的なプラットフォームには、HubSpotやMarketoなどがあります。
その2では、引き続き主要マーケティングチャネルの特徴についてご紹介します。
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