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ウェビナーで集客しても商談は増えない?参加者心理が示す逆説と対策

作成者: B2B Compass編集部|Dec 10, 2025 2:27:55 AM

「参加者は集まるのに、商談につながらない」多くの企業がウェビナー参加者の目的やニーズを誤認識し、商談につながらない課題に悩んでいます。加えて、全員に同じ内容を送る画一的なフォローアップや「参加者数」「満足度」を重視したKPI(重要業績評価指標)設定が、商談につながらない問題をさらに悪化させています。

結論として、ウェビナーを通して商談につなげるには、参加者のエンゲージメントを高め、関心度に応じた適切なフォローアップを行い、質の高いリードを創出することが不可欠です。

本記事では、エンゲージメントスコアリングやフォローシナリオ設計など、質重視のアプローチで、商談につなげるウェビナー設計・運用方法を紹介します。

ウェビナーが商談につながらない3つの理由

ウェビナーを開催しても商談につながらない原因は、多くの場合、参加者の状態や施策の設計に根本的な課題が存在します。以下の3つの理由が特に重要です。

理由
詳細
影響
参加者の目的が「情報収集」で止まっている 多くの参加者はまだ商談意欲が低く、単に情報を得ることを目的としている。そのため、ウェビナー参加だけでは商談につながりにくい状態 見込み度の低いリードがが大量に混在し、営業リソースが分散する
参加者フォローが画一的 参加者全員に同じ内容、同じタイミングでフォローを行っていると、関心度の高い層に対して効果的なアプローチができない 商談チャンスを逃し、リードの離脱を招く可能性が高まる
KPIが「参加者数」中心でデータを活かせていない 参加者数を重視するあまり、実際の関心度や行動データの分析が不足し、質の高いリード獲得につながらない 施策の改善が進まず、商談創出の最大化が困難になる

これらの課題を放置すると、ウェビナーの成果が頭打ちになり、商談数の増加は見込めません。次に紹介する質重視のアプローチでは、これらの課題を解決し、効果的な商談創出を実現しましょう。

理由1.参加者の目的が「情報収集」で止まっている

ウェビナーに参加する多くの方は、まだ商談に直結する段階ではなく、主に情報収集を目的としています。これは、参加者が自社の課題やニーズを明確に把握していなかったり、製品やサービスの具体的な導入検討に至っていないためです。

こうした状態の参加者は商談意欲が低く、単に知識を得るためにウェビナーに参加していることが多いのです。

以下に、参加者の状態を大まかに分類し、それぞれの特徴をまとめました。

参加者の状態
特徴
情報収集層 目的は知識の獲得。課題認識が浅く、導入意欲はまだ低い
検討準備層 課題やニーズが明確になりつつあるが、具体的な製品比較や検討は未着手
購買意欲層 導入検討が進み、商談への準備ができている

このように、参加者の多くはまず情報収集の段階にあり、商談につなげるには段階に応じた適切なナーチャリングやフォロー施策が必要です。

ウェビナーの成果を最大化するためには、参加者の状態を正確に見極め、段階に応じたフォローで関心度を引き上げていく必要があります。しかし多くの企業では、この「見極め」ができていないことが次の課題につながっています。 

 理由2.参加者フォローが画一的

ウェビナー後の参加者フォローが画一的であることは、商談につながらない大きな要因の一つです。「ウェビナー翌日に全参加者へお礼メール+資料送付」といった一律対応では、参加者一人ひとりの関心度やニーズに合った対応ができず、効果的なナーチャリングが難しくなります。

参加者はウェビナー参加時点で関心度や理解度が大きく異なり、それに応じたフォローが求められます。例えば、質問を複数した高関心層には翌日の個別相談案内が効果的ですが、途中退出した低関心層に同じタイミングで営業連絡しても逆効果です。

また、情報収集段階の層には段階的な情報提供や課題整理資料の配布が最適で、焦って商談化を急ぐと離脱を招きます。

理由3.KPIが「参加者数」中心でデータを活かせていない

ウェビナー施策の効果測定において、従来は「参加者数」を主要なKPIとして設定するケースが多く見られます。これらは測定しやすく社内報告もしやすいため、多くの企業で採用されてきました。

しかし、この数値中心の評価方法には限界があり、商談創出という最終成果につながる質的な側面が見落とされがちです。「参加者200名」という報告はできても、「そのうち何名が商談につながる見込みか」は把握できていないのが実態です。

以下の表は、参加者数中心のKPIと、関心度・行動データを活用した質的評価指標の違いとその影響をまとめたものです。

KPIの種類
特徴
商談創出への影響
参加者数中心のKPI 集客数や満足度を重視。「100名参加、満足度85%」といった報告はできるが、参加者の関心度や具体的な行動は考慮されていない 商談につながるリードの見極めが難しく、営業が全参加者にフォローする非効率が発生
関心度・行動データ活用のKPI 質問数、滞在時間、資料ダウンロード、アンケート回答などの行動データを指標化し、リードの質を評価 質の高いリードを効率的に抽出でき、商談転換率の向上につながる

質的なデータを活用することで、ウェビナー参加者の「見込み度」を正確に把握し、効果的なフォロー施策を展開できます。これにより、単に数を追うだけでなく、成果を最大化する戦略的な施策設計が可能になります。

では、これら3つの課題を解決するには、具体的にどうすればよいのでしょうか。次章では、質重視のアプローチを詳しく解説します。

商談につなげるウェビナー後の「質重視」アプローチのポイント

ウェビナー開催後のフォロー施策は、「全員に同じ内容を同じタイミングで送る」画一的なアプローチから脱却し、参加者一人ひとりの関心度や行動データを活用した質重視の戦略に転換することが重要です。

質重視のアプローチでは、参加者の行動データ(質問数、滞在時間、資料ダウンロードなど)から関心度を定量的に評価し、高スコア層を優先的にフォローします。

前章で指摘した3つの課題(ターゲット不一致・画一的フォロー・KPI曖昧)を解決するため、質重視アプローチでは次の3つのポイントが重要です。

  1. エンゲージメントスコアリングで見込み度を可視化する
  2. スコア別のフォローシナリオをMAで自動化
  3. KPIを「MQL創出」と「商談転換率」で再定義

 

1.エンゲージメントスコアリングで見込み度を可視化する

ウェビナー後のフォロー施策で重要なのは、参加者の見込み度を正確に把握することです。従来の「参加した=関心がある」という一律の判断ではなく、実際の行動データから関心度を測定します。エンゲージメントスコアリングは、参加者の関心度や行動を定量的に評価し、質の高いリードを効率的に見極めるための有効な手法です。

具体的には、以下のような複数の指標を組み合わせてスコアリングモデルを構築します。これらの指標は、ウェビナー参加中および参加後の行動を反映し、参加者の関心度を多角的に評価します。

評価指標
概要
効果・意義
スコア例(参考)
質問数 ウェビナー中に参加者が質問した数 積極的な参加姿勢を示し、関心度の高さを測る 1質問=10点
滞在時間 ウェビナーに参加し続けた時間の長さ 内容への興味や理解度の深さを示す 90%以上視聴=20点
再視聴率 ウェビナーの録画を再視聴した割合 関心の持続性や理解促進を評価 再視聴=15点
資料ダウンロード 関連資料をダウンロードした回数や有無 具体的な検討意欲の指標となる DL=15点
アンケート回答 ウェビナー後のアンケートに回答した内容や率 参加者の満足度や追加情報への興味を示す 回答=10点

これらのデータは、MarketoやHubSpotなどのMA(マーケティングオートメーション)ツールと、Zoom、Webex、Microsoft Teamsなどのウェビナープラットフォームと連携させることで自動的に収集・分析できます。手動での集計作業は不要です。

スコアリングモデルはこれらの指標に重み付けを行い、総合スコアを算出します(例:質問2回+90%視聴+資料DL=45点)。一定以上のスコア(例:60点以上)を獲得した参加者を高スコア層として分類し、インサイドセールスが優先的にフォローアップを行う基準を設定します。これにより、質の高いリードの抽出精度が大幅に向上し、フォロー施策の効率化と成果向上が期待できるのです。

また、スコアリングで高スコア層を抽出した後、以下の基準でインサイドセールスへ引き渡します。

基準項目
内容
効果・意義
スコア閾値の設定 総合エンゲージメントスコアが一定以上(例:80点以上) 高い関心度を持つリードを確実に抽出し、優先的に対応可能にする
行動パターンの考慮 質問数の多さや資料DLの有無など複数指標で判断 単一指標に頼らず多面的に関心度を評価し、精度の高い見込み客を選定
タイミングの最適化 ウェビナー終了直後から24時間以内の迅速な引き渡し 関心が高いタイミングを逃さず、商談化の可能性を最大化
属性情報の付加 企業規模・業種・役職などを加味して優先度を調整 営業側のアプローチ効率を上げ、より効果的な商談展開を支援

エンゲージメントスコアリングの導入により、「誰を優先的にフォローすべきか」が明確になります。

しかしウェビナーのみで商談化率を高めることは困難であり、他のマーケティング施策を複合的に組み合わせたナーチャリングが何よりも重要です。実際にスコアリングを行う際は、ウェビナー単体で判断するのではなく、他のマーケティング施策も含めて、リードの関心度合いを図る必要があります。

そして次に取り組むべきなのが、スコアに基づいて「どのようにフォローするか」、つまりフォローシナリオの設計です。 

2.スコア別のフォローシナリオをMAで自動化

ウェビナー後のフォロー施策を効果的に進めるためには、参加者のエンゲージメントスコアに応じて異なるフォローシナリオを設計し、それをMAで自動化することが重要です。

手動で個別対応すると工数がかかりすぎるため、MAによる自動化が実務上不可欠です。これにより、参加者の関心度や商談意欲の段階に合わせた最適なアプローチが可能になり、効率的かつ質の高いナーチャリングが実現します。

エンゲージメントスコアに基づき、参加者を3つの層に分類します(例:高関心層=60点以上、中関心層=30〜59点、低関心層=29点以下)。以下の表は、各層のフォローシナリオと具体的な施策例です。

関心度層
フォローシナリオの概要
具体的な施策例
フォロータイミング
高関心層(導入検討段階) ウェビナー直後から迅速に個別相談やデモ案内を行い、即時の商談接続を目指す。
インサイドセールスと連携し、パーソナライズされた対応を実施
・参加直後に個別相談の案内メール送付
・デモ予約ページへの誘導
・営業担当者からの電話フォロー
即時(24〜48時間以内)
中関心層(課題認識あり) ウェビナー後数日をかけて段階的に情報提供し、関心を深めるナーチャリングを実施。
MAで自動的にフォローアップメールを配信し、再エンゲージメント施策を展開
・3日後に課題整理資料の送付
・1週間後に成功事例やケーススタディ配信
・行動に応じたリマインドメール送信
段階的(3日〜2週間)
低関心層(情報収集段階) 長期的な関係構築を目的とし、定期的なナーチャリングメール配信で関心維持を図る。
MAの自動化機能を活用し、継続的な接触を確保
・定期的な情報提供メールの送付
・ウェビナー関連の追加コンテンツ案内
・将来的な商談につながる教育的コンテンツ配信
長期的(月次〜四半期)

このように、スコア別のフォローシナリオをMAで自動化することで、参加者一人ひとりの関心度に即した効率的なアプローチが可能となります。一度シナリオを設定すれば、ウェビナー開催の度に手動対応する必要がなく、マーケティング担当者の工数を大幅に削減できます。

また、スコアリングだけでなく、企業規模や業種、役職などの属性情報を加味したパーソナライゼーション設計を行うことで、さらに効果的なフォローアップが実現するでしょう。例えば、同じ高スコア層でも、大企業の経営層と中小企業の現場担当者では、訴求すべきポイントが異なります。

属性
特徴
パーソナライズ施策例
企業規模 大企業は組織的意思決定が多く、中小企業は経営者主体の判断が多い 大企業向けは複数担当者へのフォロー強化、中小企業向けは導入コストや手軽さを強調
業種 業界ごとに異なる課題やニーズが存在する 業種別の成功事例や業界トレンドを盛り込んだ情報提供
役職 ウェビナー終了直後から24時間以内の迅速な引き渡し 関心が高いタイミングを逃さず、商談化の可能性を最大化
属性情報の付加 経営層はROI(投資対効果)重視、現場担当者は具体的な効果や操作性を重視 経営層向けは戦略的価値の訴求、現場向けは導入事例や操作説明の提供

スコア別フォローシナリオの自動化により、「誰に・いつ・どのような内容を届けるか」が最適化されます。そして、この施策の成果を正しく評価するためには、KPIの再定義が不可欠です。

3.KPIを「MQL創出」と「商談転換率」で再定義

従来のウェビナー施策におけるKPIは、主に「参加者数」と「参加者満足度」を中心に設定されてきました。しかし、「参加者200名、満足度90%」と報告できても、「そのうち何件が商談化したか」「売上にどう貢献したか」が見えなければ、施策の真の価値は判断できません。

KPI
特徴
課題・問題点
参加者数 ウェビナーの集客規模を示す基本的な指標で、多くの企業で最も重視されてきた 参加者数が多くても商談意欲が低い参加者が多い場合、質の低いリードが増え、商談創出に結びつきにくい
参加者満足度 アンケートや評価フォームによる参加者の満足度を測定。ウェビナーの内容や運営の評価に用いられる 満足度が高くても必ずしも商談意欲や行動変容に直結しないため、成果評価としては不十分

このように、従来のKPIはウェビナーの表面的な成功を評価するには適していますが、商談数や売上といった営業成果への連動が弱いため、施策の効果を十分に把握できないという課題があります。結果として、営業とマーケティングの連携が取りづらく、ウェビナー施策のROIを正確に評価できないケースが多く見られるのです。

そこで、KPIを「MQL創出」と「商談転換率」に再定義すると、ROIを正しく評価できるようになります。これにより、マーケティングと営業が共通の成果指標で議論でき、施策の改善方向も明確になります。

ウェビナー施策のKPIというのは、営業成果に直結する指標に焦点を当てることが重要です。特に、MQL(Marketing Qualified Lead)創出数、SQL(Sales Qualified Lead)への転換率、商談化率、そしてパイプライン貢献額の4つの指標は、ウェビナーの成果を具体的かつ定量的に評価する上で欠かせません。

以下の表は、これら再定義後のKPIの概要と、それぞれの指標がウェビナー施策において果たす役割をまとめたものです。

KPI
概要
ウェビナー施策における意義・活用ポイント
MQL創出数 マーケティング活動により一定の基準を満たした見込み客の数 ウェビナー参加者の中から質の高いリードを見極め、インサイドセールスや営業へ効果的に引き渡す指標。フォロー施策の効果測定にも活用
SQL転換率 MQLから営業が商談可能と判断したリードへの転換割合 マーケティングと営業間の連携強化の指標であり、商談につながるリードの質や営業のフォロー体制の評価に有効
商談化率 ウェビナー参加者全体に対する商談成立数の割合 施策全体の商談創出力を示し、ウェビナーのROIを測るための重要指標
パイプライン貢献額 商談から見込まれる売上(パイプライン)にウェビナー経由のリードが貢献した金額 営業成果を金額ベースで評価し、ウェビナー施策のROIを具体的に把握・改善するために活用

これらのKPIを設定・測定することで、ウェビナー施策の質を高め、商談創出の最大化を図ることが可能になります。

ただし、KPIを再定義しただけでは不十分で、MAツールとCRM(SFA)を連携させてデータを一元管理し、マーケティングと営業が定期的にレビューする体制が不可欠です。

こうした質重視のアプローチに加えて、ウェビナー自体の設計・運用を最適化することで、さらなる商談化率の向上が期待できます。 

わたしたち電通B2Bイニシアティブでは、BtoB事業活動全般の戦略立案はもちろんのこと、デジタル領域の知見を活用した具体的な施策の実行から最終的な成果を分析・改善し続けるためのサイクルの創出まで伴走支援が可能です。

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商談化に効果的なウェビナー設計・運用最適化のポイント

前章では、ウェビナー後のフォロー施策(エンゲージメントスコアリング、フォローシナリオ、KPI再定義)を解説しました。

ウェビナーを通して質の高いリードを獲得し商談に繋げるには、参加者のエンゲージメントを高める戦略的な設計と運用の最適化が不可欠です。具体的には「参加者の関心を引きつける」「適切な形式で届ける」「継続的に改善する」という3つの観点が重要です。

ここでは、それぞれに対応する以下の3つのポイントを解説します。

  1. エンゲージメントを最大化するコンテンツ設計(関心を引きつける)
  2. ライブ配信とオンデマンド配信の戦略的使い分け(適切な形式で届ける)
  3. データドリブンな改善サイクル(PDCA)の実装(継続的に改善する)


これら3つのポイントを実践することで、参加者のエンゲージメントスコアの分布が改善し(低関心層が減少、高関心層が増加)、結果として商談化率を向上させることができます。では、それぞれのポイントを具体的に見ていきましょう。 

1.エンゲージメントを最大化するコンテンツ設計

まずは参加者のエンゲージメントを最大化するコンテンツ設計が不可欠です。しかし、多くのウェビナーでは「情報を詰め込みすぎて60分超」「一方的な説明で離脱率が高い」「CTAが曖昧で次のアクションにつながらない」といった課題を抱えています。

参加率や視聴完了率の向上はもちろん、特定のセクションでの滞在時間やCTA(Call to Action)クリック率の改善も重要な指標となります。

これらの課題を解決し、エンゲージメントを高めるコンテンツ設計には、5つのポイントがあります。これらは相互に連動し、参加者の関心維持につなげます。

ポイント
具体的施策
期待される効果
明確なゴール設定 ウェビナーの目的を商談創出やリード育成に明確化し、企画段階から成果を意識した構成を設計 ターゲット層の関心を引きやすく、質の高い参加者を集めやすい
最適な時間配分(30~45分) 導入5分、課題提起10分、解決策提示15分、事例紹介10分、CTA5分という構成で参加者の集中力を維持 離脱率低減、視聴完了率向上、商談意欲を喚起
インタラクティブ要素の戦略的配置 開始5分で投票(関心確認)、中盤15分でチャット質問タイム、最後にQ&Aセッションを配置。能動的関与を促進 エンゲージメント向上、参加者満足度アップ、質の高いリード創出(特に質問者は高スコア化)
参加率・視聴完了率・特定セクション滞在時間の可視化 参加者の行動データを収集し分析、離脱ポイントを特定して改善策を講じる 継続的なコンテンツ改善と参加者の関心維持
分かりやすい構成と表現 専門用語の解説や図解活用、ストーリー性のある構成で理解を促進 情報吸収効率の向上、参加者の納得感増加

特にインタラクティブ要素は参加者の主体的な関与を促し、エンゲージメントスコアリングで測定できる行動データ(質問数、投票参加など)を増やすことで、質の高いリード獲得に直結します。

また、参加率や視聴完了率、CTAクリック率などのデータは、効果的なフォローアップ施策の立案にも役立ちます。ウェビナーの設計段階からこれらのポイントを徹底的に意識し、質の高いコンテンツ提供を追求することが、成功の鍵です。

そして、このようなエンゲージメントの高いコンテンツを、より多くのターゲットに届けるためには、配信形式の戦略的な選択が重要になります。

2.ライブ配信とオンデマンド配信の戦略的使い分け

ウェビナーの配信形式は主に「ライブ配信」と「オンデマンド配信」に大別され、それぞれに特徴や活用法が異なります。商談化率を高め、ウェビナーの成果を最大化するためには、両者のメリット・デメリットを理解し、戦略的に使い分けることが重要です。

以下の表に、ライブ配信とオンデマンド配信の特徴、メリット・デメリット、そして商談化率向上に向けた活用ポイントを整理しました。

配信形式
特徴
メリット
デメリット
商談化に向けた活用ポイント
ライブ配信 リアルタイムで双方向コミュニケーションが可能。参加者の反応を即時に把握できる ・参加者の関心を高めやすい
・Q&Aや投票などインタラクティブな施策でエンゲージメント向上
・限定感を演出し参加促進
・参加時間が限定されるため参加者数が制約されやすい
・技術トラブルのリスクがある
・開催準備にコストと工数がかかる
・双方向性を活かして高関心層を早期発掘
・インサイドセールスと連携した迅速なフォローアップ
オンデマンド配信 録画コンテンツを好きな時間に視聴可能。視聴の柔軟性が高い ・参加者の時間的制約を解消し参加率向上
・繰り返し視聴によるナーチャリング効果
・SEO効果で新規リード獲得が持続的に可能
・双方向コミュニケーションが制限され、エンゲージメントの維持が課題
・参加者の関心度把握が難しい
・フォロー施策の工夫が必要
・視聴データを活用したスコアリングで関心度を推定
・中長期的なナーチャリング施策で商談化率向上

また、配信形式別にフォローシナリオやリードスコアリング基準を設計することも重要です。

ライブ配信の場合

リアルタイムの行動(質問回数、投票参加、チャット発言)や発言を重視し、高スコア層にはウェビナー終了直後〜24時間以内にインサイドセールスと連携して迅速な商談化を目指します。

オンデマンド配信の場合

視聴完了率(何%まで視聴したか)、視聴回数(繰り返し視聴)、や資料ダウンロード、アンケート回答などのデータを多角的に分析 活用し、スコアが一定以上になった時点で段階的なフォローを開始します。中長期のナーチャリング施策(1〜3ヶ月)を展開することで、情報収集層を検討準備層へ育成します。

さらに、対面参加とオンライン配信を組み合わせたハイブリッド開催も注目されています。ハイブリッド開催は多様な参加者層を取り込めるため、ウェビナー施策の戦略的な一環として積極的に活用すべきポイントです。

ハイブリッド開催の戦略的活用

  • 重要顧客・高関心層は対面参加を案内(より深い関係構築、その場での商談化) 
  • 地方企業・多忙な層はオンライン参加で間口を広げる 
  • オンライン参加者の行動データから次回の対面イベント(個別相談会など)への誘導 

このように、ライブ・オンデマンド・ハイブリッドを戦略的に組み合わせることで、ターゲット層を最大限カバーしながらリードの質を高めることができます。

3.データドリブンな改善サイクル(PDCA)の実装

ウェビナーの商談化率を高めるためには、データに基づいた継続的な改善が不可欠です。しかし、多くの企業では「ウェビナーを開催して終わり」「データは取得しているが分析していない」「改善点が分かっても次回に活かせていない」という状況が見られます。

特にPDCA(Plan・Do・Check・Act)サイクルを効果的に実装することで、施策の質を高め、成果最大化を図ることができます。

以下の表は、ウェビナー運用におけるPDCAサイクルの各段階と主なポイント、具体的施策例をまとめたものです。これにより、運用担当者は各フェーズで何を重視すべきかを明確に理解できます。

PDCA段階
運用ポイント
具体的施策例
Plan(計画) ・明確なKPI設定(MQL創出数、商談転換率など)
・ターゲット層の分析と課題把握
・コンテンツやフォロー施策の戦略立案
・過去データを活用したターゲットセグメントの最適化
・エンゲージメントスコアリング基準の設定
・フォローシナリオの設計
Do(実行) ・ウェビナー開催とフォロー施策の実施
・参加者の行動データ収集とリアルタイム分析
・ライブ配信やオンデマンド配信の実施
・MAツールを活用した自動フォロー配信
・アンケートや行動ログの収集
Check(評価) ・KPI達成度の定期的なモニタリング
・参加率、視聴完了率、エンゲージメントスコアの分析
・営業からのフィードバック収集
・ダッシュボードを活用したデータ可視化
・商談化率やMQL・SQL転換率の分析
・営業チームとの定例ミーティング実施
Act(改善) ・分析結果に基づく改善施策の立案と実行
・KPIや施策内容の見直し
・営業・マーケティング連携の強化
・コンテンツ構成やフォロータイミングの最適化
・スコアリングモデルの精緻化
・新施策のテスト導入と効果検証

また、ウェビナー参加者の視聴行動データを統合的に分析することも重要です。

重点的に分析すべきデータ

  • 離脱ポイント:どのセクションで離脱が多いか(コンテンツ改善に直結) 
  • 再視聴箇所:繰り返し見られている部分(関心の高いトピック特定) 
  • 資料ダウンロード:どの資料が最も関心を集めたか 
  • Q&Aの内容:参加者が抱える具体的な課題や懸念点

これらを多角的に把握することで、参加者の関心度や課題を詳細に理解し、フォロー施策やスコアリングの精度を向上させられます。

さらに、以下の要素についてA/Bテストを継続的に実施し、最も効果的なパターンを見極めることも重要です。 

A/Bテストの推奨項目(優先度順)

  1. ウェビナータイトル:課題訴求型vsソリューション提示型 
  2. 開催時間:午前(10〜11時)vs午後(14〜15時) 
  3. CTA文言:「個別相談」vs「デモ予約」vs「資料ダウンロード」 
  4. コンテンツ構成:事例先出しvs理論→事例の順 
  5. 講師:社内専門家vs外部有識者 


1回のウェビナーで全要素をテストするのではなく、月に1〜2要素を優先的にテストし、データを蓄積していきます。

タイトルや開催時間、講師、コンテンツ構成、CTA文言などのA/Bテストを継続的に実施し、最も効果的なパターンを見極めることも、ウェビナー効果の最大化に欠かせません。

こうしたテスト結果はPDCAの各段階で活用し、施策の質を向上させるための貴重なデータとなります。

加えて、ウェビナーごとの成果を正確に追跡し、投資対効果を可視化することも重要です。

 追跡すべき指標とROI計算

  • ウェビナーコスト:制作費+運営費+人件費(例:50万円) 
  • MQL創出数:20件 - 商談化数:5件 
  • 受注件数:1件(受注額500万円) 
  • ROI:(500万円 - 50万円)÷ 50万円=900% 

これらをダッシュボードで可視化し、営業とマーケティングが定例会議(月次または四半期)で共有することで、両部門の連携を強化し、施策の継続的改善が実現します。

過去のウェビナーで高い成果を上げたテーマや形式、ターゲット層を特定し、次回企画に反映させることで、PDCAサイクルが機能し始めます。データに基づいた改善を繰り返すことで、ウェビナーの効果は着実に向上していくでしょう。

ここまで解説してきた質重視のアプローチと設計・運用の最適化を実践することで、ウェビナーを真の商談創出エンジンへと変革できます。より効果的なウェビナー施策を継続的に実現できるでしょう。

参加者のエンゲージメントを高める工夫で、商談につなげる効果的なウェビナーを設計しよう

本記事では、「ウェビナーで集客しても商談につながらない」という課題に対して、その原因と解決策を解説してきました。

ウェビナーを商談へと効果的につなげるためには、単に参加者数を増やすだけではなく、参加者のエンゲージメントを高め、フォローアップの質を向上させることが重要です。

具体的には、エンゲージメントスコアリングを活用して参加者の関心度を可視化し、その結果に基づいてフォローシナリオをマーケティングオートメーションで自動化することが有効です。

さらに、KPIを「MQL創出」や「商談転換率」に再定義することで、より質の高いリードを創出しやすくなります。
これらの質重視のアプローチを実践することで、ウェビナーが単なる情報提供の場から、ビジネス成長を促進する場へと変わります。

今日から始められるアクション

  1. 過去のウェビナー参加者データを分析し、現状の商談化率を把握する 
  2. エンゲージメントスコアリングの基準(質問数、滞在時間など)を定義する 
  3. 営業とマーケティングでKPI(MQL創出数、商談転換率)について合意する 
  4. 次回ウェビナーで1つの要素(例:インタラクティブ要素の追加)をテストする


今後のウェビナー計画にこれらの要素を取り入れることで、より効果を期待できます。まずは、次回のウェビナーに向けて、参加者のエンゲージメントを高める工夫を始めてみましょう。

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