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BtoB企業がマスマーケティングを行う意義とは?成果を最大化する投資ロジック

作成者: B2B Compass編集部|Aug 3, 2026, 9:07:03 AM

前回の記事では、価格競争から脱却して指名される企業になるために、Web広告の投資目的を「獲得」から「想起形成(メンタル・アベイラビリティの構築)」へとシフトさせ、評価基準を視認(ビューアブル)重視に変える具体的な手法を解説しました。この見直しにより、指名検索数や第一想起率(純粋想起による測定)を捉える評価の土台は整います。

前回の記事はこちら:BtoB広告戦略は“刈り取り”から“想起形成”へ 中長期の成果を生む広告戦略の考え方

しかしWeb広告の最適化によって指名検索数や純粋想起率を捉える土台が整う一方で、「限定的なターゲットへのアプローチだけでは、市場全体に認知を広げるスピードが不十分に感じる」という新たな課題に直面する可能性が高いでしょう。

構築したブランド価値をより効率的に、そして確かなスピードで市場へ浸透させるためには、マスマーケティングを活用した「面でのアプローチ」が有効です。

本記事では、BtoB企業におけるマスマーケティングの取り組み意義や、期待できる具体的な効果について多角的に解説します。

この記事でわかること

  • BtoB企業がマスマーケティングに取り組むべき本質的な意義
  • 「面でのアプローチ」がもたらす認知拡大と信頼性向上の効果
  • Web広告との相乗効果を生み出し、ブランド価値を市場へ浸透させる手法

この記事を読むことで、ターゲット層を超えて市場全体へ認知を広げ、自社のブランド力を最大化するための具体的なアプローチ方法が理解できるでしょう。

BtoB企業がマスマーケティングを通して「面展開」を行う意義

通常のデジタルマーケティング施策は、特定のターゲットを絞り込んだ効率的なアプローチが可能ですが、その反面、決裁者層のような広範囲かつ多様な層への認知拡大には限界があります。

BtoBの購買プロセスは、単一の担当者が決定することは稀であり、実務担当者、中間管理職(マネージャー層)、そして最終決裁者(経営陣・役員層)という複数のレイヤーにまたがる「DMU(Decision Making Unit:意思決定関与者)」によって合意形成がなされます。

そのため決裁者層への認知が不足すると、購買プロセスの重要な段階である社内稟議や承認が滞り、結果として商談成立の遅延や、最終フェーズでの機会損失につながるリスクを抱えることになるのです。

  • 決裁者層へのリーチ不足
    経営層や役員層は、実務的なキーワードでの検索行動や生成AIを用いた情報収集、特定のWebメディアの巡回頻度が実務担当者とは異なるため、絞り込み型のデジタル施策では接点を持てない傾向がある
  • 社内稟議の停滞リスク
    実務担当者が製品の価値を理解しても、決裁者層へのブランド認知が皆無である場合、社内稟議の段階で「実績や信頼性が不明確である」として承認が保留、あるいは却下されるリスクが常に付きまとう

BtoBマーケティング戦略の限界を打破するマスマーケティングの「面展開」メカニズム

BtoB取引の複雑な合意形成の摩擦を最小化するために有効なアプローチが、マスマーケティングによる「面展開」です。これは単一のターゲットに絞るのではなく、複数の階層や役職に対して「同時に、一貫したメッセージを届ける」手法を指します。

この投資の必要性を裏付けるデータとして、LinkedInの調査機関であるB2B Instituteが発表した「95:5ルール※」があります。この調査によると、任意の時点で実際に製品やサービスの購買を検討しているBtoB顧客は全体のわずか5%(In-Market)に過ぎません。残りの95%(Out-of-Market)は、現時点で購買意向を持たない潜在層です。

※参考:The 95:5 Rule is a Preview of B2B Marketing's Future (LinkedIn B2B Institute)

従来のターゲティング広告やSEOは、この「今動いている5%」の狭いパイを競合と激しく奪い合っている状態であり、参入企業の増加に伴ってCPA(顧客獲得単価)の高騰や、獲得効率の頭打ちが避けられなくなります。

顧客層
市場割合
特徴と従来のデジタル施策の課題
マスマーケティング(面展開)の役割

In-Market(購買検討層)

5% 具体的な購買意向を持ち、比較検討を行う。競合も集中するためCPAが高騰しやすい 潜在層のうちに事前認知を獲得できていれば、このフェーズに移行した時点で選定候補に入りやすく、結果として獲得広告のCPAを抑制できる

Out-of-Market(潜在層)

95% 現時点では購買意向はない。従来のターゲティング施策ではアプローチが難しい 将来の市場参入時に自社ブランドが最優先で選ばれるための「第一想起」の土台を築く

95%の将来顧客が市場に参入した際の「第一想起」を担保する投資の必要性

マスマーケティングの本質的な価値は、現時点ではニーズがない95%の潜在層に対して、数ヶ月〜数年後に彼らが市場(5%の購買検討フェーズ)に参入したタイミングで、自社ブランドを「最初に思い浮かべてもらう(第一想起)」ための記憶のベースを事前に構築することにあります。

この中長期的な仕込みにより、将来的な検索連動型広告のCPAを抑制し、デジタルマーケティング全体のROI(投資収益率)を底上げできます。

95%の潜在層に対する広告投資の考え方や予算配分については、以下の記事で詳しく解説しております。

成果を最大化するBtoB広告投資配分&全体最適KPIの設計戦略

BtoB領域におけるマスマーケティングは潜在層から決裁者まで網羅可能

製品やサービスの機能・スペックの同質化(コモディティ化)が進む現代のBtoB市場において、スペックや価格だけの差別化で勝ち続けることは困難です。特に高額なITツールや企業向けサービスを導入する際、決裁者が最も嫌うのは「導入後に失敗し、自身の社内評価や事業に悪影響が及ぶこと(心理的不安・リスク)」です。

BtoBにおける決裁者の心理的リスクイメージ(一例)

  • 性能リスク: 本当に謳い文句通りの効果が出るのか?
  • 社会的リスク: 知名度のない企業を採用して、社内や株主から選定責任を問われないか?

実務担当者が比較検討を行っている最終フェーズにおいて、マスマーケティングによる「決裁者・経営層への面展開」は、心理的不安を解消する「社会的証明」として機能します。

実務担当者が作成した稟議書が役員会にかけられた際、役員層が「あのCMの会社か」「最近よく見るツールだな」と事前に社会的信用を認識していれば、出所不明のツールとして却下されるリスクが減少します。

決裁者が抱く「本当に導入して大丈夫か」という心理的なバリアを事前に解消しておくことが、商談の最終フェーズでの失注を防ぐことにつながるのです。

BtoB企業がマスマーケティング施策によって得られる営業効率の最大化

どれだけ多くのリードを獲得しても、営業現場でのアポイント獲得率や商談移行率、そしてコンペ勝率が低ければ、マーケティングのROIは担保できません。

だからこそ威力を発揮するのが、見出し1で述べた「95%の潜在層への事前認知」と「決裁者層への面展開」の仕込みです。

彼らがニーズの顕在化によって実際に市場へ参入してきた時(現在の5%の検討層へ変化した時)、事前に植え付けられた記憶と信用は、営業活動のフロントにおける心理的ハードルを下げ、商談全体の進捗を強力に加速させる「営業支援効果」へと変化します。その具体的な移行メカニズムは以下の3つに集約されます。

  1. タッチポイント継続による商談化率の底上げ
  2. インサイドセールスの架電効率最大化
  3. 競合コンペにおけるポジティブな影響

1. タッチポイント継続による商談化率の底上げ

マスマーケティングを通じて日常のタッチポイント(タクシー広告や主要ビジネスメディア等)で認知を維持し続けていれば、95%の潜在層が購買検討を始めた時に、自社が「第一想起(真っ先に思い浮かぶブランド)」として選ばれる可能性が向上します。

また、過去に獲得したものの動きがない「休眠リード」や、メルマガが開封されない検討層に対しても、水面下で認知のベースが維持されているため、彼らの社内で課題が再燃したタイミングで、競合に流れることなくスムーズな商談化へとつながるのです。

2. インサイドセールスの架電効率最大化

潜在層が市場に参入し、自社からインサイドセールスを仕掛ける際、事前に仕込まれた「面展開」の効果が出てきます。すでに実務担当者や受付スタッフの頭にブランド名が刷り込まれているため、テレアポにおける営業特有の「見知らぬ企業からの売り込み」という警戒感を初期段階で解除でき、「受付突破率」や「担当者接続率」が向上するというわけです。

ブランドへの安心感があるため、予算(Budget)、決裁権(Authority)、必要性(Needs)、導入時期(Timeline)といった、通常は開示を躊躇しがちなBANT情報のヒアリングもスムーズになり、無駄な架電コストを抑えながら、有効商談への移行率を引き上げることが可能です。

3. 競合コンペにおけるポジティブな影響

市場に参入した顧客が、いよいよ複数の類似サービスを比較検討する最終フェーズにおいて、見出し1で挙げた「決裁者・経営層への面展開」が決定打となり得ます。

機能やスペックの同質化(コモディティ化)が進むBtoBコンペにおいて、価格やスペックだけの勝負は容易ではありません。ここで効いてくるのが、前述の「決裁者・経営層への面展開」が生む社会的証明です。役員会の場で決裁者がすでに自社を社会的信用のある企業として認識していれば、稟議は承認へ進みやすくなります。この心理的バリアの事前解消こそが、コンペ勝率(受注率)を改善し、大規模なマスマーケティングの投資費用を確実に回収ラインへと導く鍵となります。

3つのプロセスを踏まえた、マスマーケティングにおける営業効率への影響をわかりやすく以下に整理しました。

営業プロセス
従来の課題(認知不足時)
マスマーケティング導入後の効果
営業効率への影響

アプローチ・架電(タッチポイント)

不審がられ、受付拒否や即切断が多い 「あの広告の会社」と認識され、スムーズに接続 受付突破率・担当者接続率の向上

ヒアリング・商談化(インサイドセールス)

警戒心から社内状況やBANT情報を隠される 安心感から課題や時期などの情報開示が円滑に 無駄な架電の削減、有効商談移行率の向上

最終決裁・競合コンペ

知名度の低さから、役員会で稟議が却下・保留 社会的信用の担保により、決裁者が安心して承認 商談期間の短縮、コンペ受注率の向上

BtoB企業がマスマーケティング施策によって得られるインナーブランディング&採用の副次効果

マスマーケティングへの投資は、単なる顧客獲得に留まらず、組織の内部固め(人事・経営)においても高いROIを発揮します。

社外に向けた大規模な発信は、自社の価値を社会に証明するプロセスそのものであり、これが巡り巡って営業現場のパフォーマンス向上や全社的なコスト最適化をもたらし、マーケティングROIのリターンを最大化する基盤となります。

副次効果の対象
具体的な変化(インナー&アウター)
経営・ROIへの長期的メリット

既存の従業員

自社への誇り・エンゲージメントの向上。家族への安心感醸成 顧客対応(営業・CS)の質向上。既存顧客の解約率低下、LTVの最大化

採用候補者(求職者)

採用市場における知名度と社会的信頼性の向上 即戦力(営業・CS等)の獲得率向上。商談成約率の底上げ

組織を強固にするマスマーケティング

外部メディアでの積極的な露出は、社外へのアプローチであると同時に、自社の社員に対する強力なメッセージ(インナーブランディング)となり、組織の結束力を高めます。これが顧客接点における体験価値を向上させ、マーケティング成果を増幅させる好循環を生み出すのです。

「自分の会社がタクシー広告やテレビで大々的に流れている」という事実は、社員の誇りや家族への安心感に直結し、特に帰属意識が薄れがちなリモート環境下においても会社への愛着(エンゲージメント)を刺激します。

このエンゲージメントの向上は、営業やカスタマーサクセス(CS)における顧客対応の質を高めることにつながるでしょう。結果として、既存顧客の解約率低下やLTV(顧客生涯価値)の向上をもたらし、マーケティング活動によって獲得した顧客からのリターンをもたらします。

マスマーケティングを通した優秀な人材獲得とROI向上

マスマーケティングによって企業の社会的知名度と信頼性が高まることで、採用市場における自社のプレゼンスが向上し、本来であれば獲得が難しい「他社で高い実績を持つ即戦力の営業」や「優秀なコンサルタント・CS人材」を採用できる可能性が上がります。

これら優秀な人材が即戦力として組織に配属されることで、マスマーケティングによって創出された豊富な商談の打率(成約率)向上につながるでしょう。優れたヒアリング力や提案力を持つ人材の獲得は、競合との差別化をさらに盤石なものにし、最終的な経営視点でのROIを最大化させる要因となるのです。

【実践】BtoB企業が投資効果を得るためのマスマーケティングスモールスタート設計ポイント

BtoB企業のマスマーケティングの検討における大きなボトルネックは、「初期費用を投じて期待通りの成果が伴わないリスクへの懸念」ではないでしょうか。

しかしマスマーケティングにおいても、デジタル広告のように予算、エリア、期間を意図的にコントロールし、局所的な検証(テストマーケティング)から安全に開始するやり方が可能です。

失敗を防ぐマスマーケティング設計の考え方

リスクをコントロールするためにおすすめなのが、自社が最も狙いたいセグメントだけにレバレッジをかけるための「配信枠の絞り込み手順」を設計することです。

配信枠の絞り込み手順

  • ターゲットセグメントが密集するエリアへの限定
    全国一斉ではなく、自社が最も狙いたいBtoB顧客や決裁者が集中する特定の主要都市(例:東京都内の主要ビジネス街を走るタクシー、主要ターミナル駅など)に限定して配信枠を絞り込む
  • 短期集中型のスケジュール編成
    配信期間を数週間から1ヶ月程度に限定。細長くダラダラと流すのではなく、特定の期間に露出を集中させることで、限られた予算でもターゲットの記憶に残る「認知のインパクト」を作り出す

まずは特定の主要都市や、「短期集中型」のスケジュールに限定することにより、無駄な露出コストを極限まで抑えられます。まずは小さく施策を打つことで、投資リスクを最小限に抑えながら確実な効果検証につなげられるでしょう。

指名検索の跳ね返りとWeb流入の定点計測を通して、本格展開へつなげる

局所的な展開期間中に、前段記事の施策で構築した「指名検索数の増加率」や「Webサイトへの流入数・CVR(コンバージョン率)の変動」を日次・週次で定点計測しましょう(前回の記事はこちら:BtoB広告戦略は“刈り取り”から“想起形成”へ 中長期の成果を生む広告戦略の考え方)。

限定されたエリア内での「広告投資に対する市場認知の跳ね返り(反応率)」を定量データとして蓄積することで、全国展開やテレビCMなどの大規模投資へシフトした際のリターンの予測モデルを自社内で確立できます。

このスモールスタートによる客観的な検証データが、経営陣や財務部門に対する稟議の確実な裏付けとして活用できます。

テスト検証のステップ
具体的な実施内容
計測するKPI(重要業績評価指標)と目的

1. 局所配信

特定エリア(例:都内主要ビジネス街)✕ 短期集中(3〜4週間)での出稿 露出コストを最小限に抑え、リスクをコントロールする

2. 定点データ計測

配信エリア内の指名検索ボリュームの推移、サイト流入数、CVRの変化を追跡 広告投資に対する市場の跳ね返りを可視化する

3. 予測モデルの構築

局所検証の反応率をベースに、全国展開時のROIをシミュレーション 経営陣や財務部門を納得させる稟議の客観的エビデンスを確立

マスマーケティングがもたらすROIの底上げ

本記事では、BtoBマーケティングにおける比較検討の停滞やCPA(顧客獲得単価)の高騰を打破するアプローチとして、マスマーケティングの意義と効果を解説しました。

市場の大部分を占める95%の潜在層へ事前にブランドを浸透させる「面でのアプローチ」は、中長期的な指名検索数の増加にとどまらず、全社的なROIの向上に寄与します。具体的には、以下のような多角的な効果が期待できます。

  • インサイドセールスにおける商談化率の向上
  • 認知度向上に伴う決裁者稟議の円滑化
  • 企業の信頼性向上による優秀な人材の獲得と、体制強化に伴う成約率の底上げ

わたしたち電通B2Bイニシアティブは、BtoB事業の成長を加速させるデマンドジェネレーションとブランディングのプロフェッショナルです。

電通グループの強みである広範なネットワークと豊富なデータ資産、そしてBtoBに特化した専門チームの知見を活かし、以下の領域をトータルで支援します。

  • 事業戦略の立案
  • 顧客体験(CX)の最適化
  • マーケティング/営業活動の支援
  • DX推進

わたしたちの核にあるのは、広告コミュニケーションで培ってきた「人の心を動かす力」です。この力を活用し、経営・人材・組織・事業といったあらゆるレイヤーにおける課題に向き合いながら、具体的な施策の実行から最終的な成果を分析・改善し続けるためのサイクルの創出まで伴走します。

単なる「施策の提供」にとどまらず、強いブランドづくりや売れる仕組みの構築を通じて、企業の持続的な成長と信頼性の高いパートナーシップの実現を目指します。

デジタル領域における、BtoBに特化した多様なご支援が可能ですので、ぜひ一度ご相談ください。

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