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【成果最大化を目指す】BtoBデジタルマーケティング全体像&戦略設計のヒント

作成者: B2B Compass編集部|Oct 31, 2025 8:15:40 AM

BtoB企業にとって、デジタルマーケティングの全体像を理解し、効果的な戦略を設計することは、競争力を高めるための重要なステップです。しかし、多くの企業がこの全体像を把握できず、効果的な戦略を構築できていない現状があります。

今回はBtoBの視点から「デジタルマーケティングの全体像」と「デマンドジェネレーション」の重要性を解説し、成果を最大化するための戦略設計のヒントをご紹介します。

デジタルマーケティングの全体像を捉え、成果最大化に向けた第一歩を踏み出しましょう。

デジタルマーケティングの全体像とデマンドジェネレーション

デジタルマーケティングの全体像は、ビジネス目標を達成するために一連の段階を経る緻密なプロセスで構成されています。

まず、ターゲットオーディエンスにブランドや製品の存在を知らせる認知フェーズから始まります。ここでは、SEOやコンテンツマーケティング、そしてソーシャルメディアの活用が重要です。次に、興味を持った潜在顧客から情報を収集するリード獲得の段階へと進みます。

その後、集めたリードを育成し、信頼関係を築くためにメールマーケティングやパーソナライズされたコンテンツを提供します。

このリード育成の段階が完了すると、育成されたリードを商談に引き込む商談化のステップへと移行。ここでは営業チームとの連携が重要です。商談が成功すると、契約の締結やプロジェクトの開始を意味する受注フェーズに至ります。

最後に、マーケティング活動全体を継続的に測定・分析し、データに基づいて戦略を最適化する段階があります。これにより、デジタルマーケティングがビジネスの成長を強力にサポートし続けることが可能となるのです。

全体を俯瞰することで、各段階の重要性とその連携の必要性を理解することができます。

フェーズ
主な目的
主要施策・チャネル
営業連携ポイント
1.認知 ターゲット企業にブランド・製品を知ってもらう ・SEO/広告運用(Google、LinkedIn、YouTubeなど)
・オウンドメディア/SNS
・展示会・ウェビナー・共催セミナー
・YouTubeショート
・インテントデータ活用
営業が現場で得た「顧客課題・キーワード」をマーケにフィードバックし、コンテンツ設計に反映
2.リード獲得 興味を持った見込み客情報を取得 ・ウェビナー
・ホワイトペーパー
・LP+フォーム
・広告リード配信
営業と共有し、ターゲットアカウント(ABM対象)の優先度を確認
3.リード育成(ナーチャリング) 見込み顧客との信頼関係を醸成し、購買意欲を高める ・メールマーケティング/MA(マーケティングオートメーション)活用
・スコアリング/コンテンツ配信
・ニュースレター/事例紹介
・動画コンテンツ/ウェビナーオンデマンド
・営業がフォローすべき「温度の高いリード」を明確化
・定期的な情報共有ミーティング
4.商談化 育成されたリードを商談につなげる ・インサイドセールス架電
・個別相談/デモ誘導
・SQL(Sales Qualified Lead)定義をマーケ・営業間で明確化
・商談フィードバックをマーケに還元
5.受注(クローズ) 商談を成功させ、契約・導入へ ・提案書・デモ・PoC実施
・営業同行コンテンツ支援(資料・事例)
営業が「決裁者情報」や「失注理由」をMA/CRM(顧客関係管理)に登録し、マーケ分析に活用
6.継続的な測定・分析・改善 マーケ&営業活動のPDCA最適化 ・CRM/MAデータ統合分析
・ABM(アカウントベースドマーケティング)施策改善
・コンテンツ最適化
営業との定例レビューを通じ、リード品質・商談率・ROI(投資利益率)を改善

BtoBデジタルマーケティングの全体像を捉える時に重要な「デマンドジェネレーション」

BtoBデジタルマーケティングの全体像を理解する上で欠かせないのが、「デマンドジェネレーション」という概念です。

デマンドジェネレーションとは、潜在顧客の認知から受注に至るまでの一連のプロセスを体系的に設計・実行し、質の高い商談機会を継続的に創出することで営業生産性を最大化するための戦略的アプローチを指します。

具体的には、単にリードを獲得するだけでなく、その後のリード育成や商談化に至るまでの流れを一貫して管理し、マーケティングと営業の連携を強化することが重要です。

これにより、効率的に質の高いリードを創出し、受注率の向上や営業活動の効果的な改善が可能となります。

デマンドジェネレーションの重要ポイントは以下の通りです。

  • 全体最適の戦略設計
    リード獲得から受注までの各段階を切り離さずに、全体の流れを最適化すること
  • 営業とマーケティングの強力な連携
    共通KPIの設定や情報共有を通じて、双方の活動をシームレスに連携させる
  • 継続的な分析と改善
    データに基づく効果測定を行い、施策のPDCAサイクルを回していく
  • 顧客体験の一貫性
    顧客の購買プロセスに沿ったコンテンツやコミュニケーションを設計する
  • データドリブンな意思決定
    行動データ、インテントシグナル、予測分析を活用し、タイミングとメッセージを最適化する

このようにデマンドジェネレーションは、単なるマーケティング施策の集合体ではなく、営業生産性を最大化するための全体戦略の基盤となる考え方です。

そしてデマンドジェネレーション戦略では、リードジェネレーション、リードナーチャリング、リードクオリフィケーションが重要な役割を果たします。

これらのプロセスを体系的に設計し、連携させることが営業生産性最大化の鍵となるのです。

以下の表に、それぞれの要素の役割と具体的な施策例をまとめました。

要素
役割
具体的施策例
リードジェネレーション 潜在顧客の認知と初期接点の創出 SEO、Web広告、展示会出展、ホワイトペーパー配布、SNS活用、ウェビナー開催、インテントデータ活用、動画コンテンツ(YouTube等)
リードナーチャリング 獲得したリードの関心・興味を深め、購買意欲を高める メールマーケティング、コンテンツマーケティング、ウェビナー開催、チャットボットによる接客支援
リードクオリフィケーション リードの購買意欲や適合度を評価し、営業に引き渡す基準を設定 スコアリングモデル構築、行動履歴分析、SFA(営業支援システム)/CRM連携による見込み度評価、MQL(Marketing Qualified Lead)/SQL基準の明確化

これらの要素を統合し、データ分析と改善サイクルを回すことで、全体として効果的なデマンドジェネレーション戦略を実現します。

特にBtoBの場合、リードの質と営業との連携が成果に直結するため、戦略設計の段階でこれら3つのプロセスを明確に定義し、実行体制を整えることが重要です。

営業連携を軸にした全体戦略設計

BtoBデジタルマーケティングにおいて、営業連携を軸にした全体戦略設計は成果を最大化するための重要な要素です。

マーケティングが獲得したリードを営業が効果的に活用できなければ、商談や受注には結びつきません。つまり、マーケティングと営業を切り離さず、両部門が一体となって顧客を支援する仕組みを作ることが不可欠です。

営業連携が重要な理由は主に次の3点です。

  • リードの質と営業効率の向上
    マーケティングが獲得したリード情報を正確かつタイムリーに営業へ共有することで、営業は見込み度の高いリードに優先的にアプローチでき、アプローチの精度が高まる
  • 共通KPIの設定と目標共有
    両部門が同じ指標を用いることで、戦略と行動の一体化が可能になる。例えば、MQL→SQL変換率、商談化率、受注率などを共通KPIとして設定し、双方が同じゴールを目指す体制を構築する
  • 迅速な情報共有とフィードバックループの構築
    営業からの現場フィードバック(商談内容、失注理由、顧客の反応等)をマーケティング施策に反映し、改善サイクルを回すことができる

営業連携を強化する具体的な戦略設計

営業連携を実現するには、データ基盤・役割分担・ターゲット設計の3つを中心に整備することが効果的です。

1.SFA・CRMシステムの活用

営業とマーケティングが共通のプラットフォームでリード情報を管理し、進捗や成果をリアルタイムで把握できる体制を整えます。

これにより、両部門の活動をデータで可視化し、リードの状態に応じて最適なアプローチが可能となるのです。

2.データ統合とフィードバックループの構築

MAとSFA・CRMを連携させることで、リードの行動履歴や商談・受注状況を一元管理できます。具体的には、リードの行動履歴(Webサイト閲覧、資料DL、メール開封等)と営業活動履歴(架電、商談、提案等)を統合し、360度の顧客ビューを構築します。

これにより、営業の現場情報をマーケティング施策に反映し、ターゲティング精度やコンテンツの改善に活用できます。

  • 受注・失注データをマーケティングに戻し、ターゲティング、メッセージング、コンテンツをを改善
  • 顧客の関心度とエンゲージメントレベルに応じた最適なタイミングでのリードナーチャリング
  • リアルタイムでの営業対応や施策修正による迅速な意思決定

3.役割分担と協働体制の明確化

リード獲得から商談化、受注までの各フェーズで責任を明確化することで、情報の途切れを防ぎ、連携をスムーズにします。明確な役割分担により、リードの「受け渡し基準」と「対応タイミング」が明確になり、機会損失を防ぐことができます。

  • マーケティング:リード獲得・育成、MQLの創出
  • インサイドセールス:商談化支援、SQLへの転換
  • フィールドセールス:受注・クロージング、顧客関係構築

4.共通ターゲット(ICP)の設計

営業とマーケティングが協働して理想的な顧客像(ICP:IdealCustomerProfile)を定義することで、両部門の方向性を統一できます。

  • 業種・規模・課題の共通理解
    ・ターゲット業種(製造業、IT、金融等)
    ・企業規模(従業員数、売上高)
    ・典型的な課題・ペインポイント
  • 意思決定プロセス(DMU)の共有
    ・キーパーソンの役職・部門
    ・意思決定フロー(稟議、承認プロセス等)
    ・検討期間・購買サイクル
  • ICPに基づいたコンテンツ・チャネル戦略の策定
    ・ペルソナ別のコンテンツ設計
    ・効果的なチャネルの選定(LinkedIn、ウェビナー等) 
    ・メッセージング・訴求ポイントの統一

5.定期的なミーティングと情報交換

営業とマーケティングが定期的に集まり、課題や成功事例を共有することで、施策を常にブラッシュアップできます。

6.共通KPIの設定とモニタリング

両部門が共通で追うKPIを設定し、リアルタイムで確認できる仕組みを作ります。

  • リード関連KPI
    ・リード獲得数
    ・MQL数
    ・SQL数
    ・MQL→SQL転換率
    ・CPL(リード獲得単価)
  • 商談・受注KPI
    ・商談化率
    ・受注率
    ・商談化スピード
    ・営業サイクル
    ・パイプライン金額
  • 収益KPI
    ・平均受注単価
    ・受注金額(ARR/MRR)
    ・CAC(顧客獲得コスト)
    ・LTV(顧客生涯価値)
    ・LTV/CAC比率
  • 効率・品質KPI
    ・リードの質スコア
    ・商談品質スコア
    ・フォローアップ時間
    ・コンテンツエンゲージメント率

営業連携を軸にした全体戦略設計は、マーケティングと営業の活動を一体化させ、質の高いリードを効率的に受注に結びつける仕組みを構築します。

データ統合、KPI共有、フィードバックループ、共通ターゲット設計を組み合わせることで、商談化率・受注率・営業生産性の向上と、持続的な成長が可能となるのです。

デジタルマーケティングの基本情報はこちらをご参考ください。

【5分でわかる】デジタルマーケティングとは?基本と実施プロセス&手法一覧、成功事例を紹介

デジタルマーケティング全体像における主要構成要素

デジタルマーケティングの全体像を理解し、効果的な戦略を立案・実行するためには、その主要構成要素を正しく把握することが不可欠です。

これらの要素は相互に連携しながら、ビジネス目標達成に向けて機能します。各要素の役割を理解し、統合的に設計・運用することが 成果最大化の鍵となります。

主な構成要素としては以下が挙げられます。

  • リード獲得
    潜在顧客の認知拡大と接点創出を目的とした施策群。SEOやWeb広告、コンテンツマーケティング、ウェビナー、展示会、SNS活用などが含まれる
  • リード育成
    獲得したリードとの関係性を深め、購買意欲を高めるための継続的なコミュニケーション施策。メールマーケティングやパーソナライズされたコンテンツ提供が代表例
  • リード評価・選別
    リードの購買意欲や適合度を評価し、営業に引き渡す基準を設定するプロセス。スコアリングモデルや行動履歴の分析が重要な役割を果たす。MQLとSQLの明確な定義が不可欠
  • MA
    これらのプロセスを効率的に運用・管理するためのツールとシステム。リード管理やスコアリング、メール配信の自動化などを支援
  • データ分析と改善
    施策の効果を定量的に把握し、PDCAサイクルを回すことで戦略の最適化を図る。KPI設定やダッシュボードの活用が鍵となる

これらの構成要素は単独で機能するのではなく、互いに連携し合うことで初めて効果的なデジタルマーケティング戦略を実現します。

例えば、リード獲得で得た情報を基にリード育成を行い、その結果をリード評価に反映させ、MAで全体の運用を効率化しながら、データ分析で改善点を見出していく流れです。

このように、デジタルマーケティングの主要構成要素を理解し、それぞれの役割と連携の重要性を押さえることが、戦略設計の基盤となります。特に重要なのは、これら5つの要素を統合的に設計し、継続的に改善 していく体制を構築することです。

これにより、次の段階で具体的な施策や手法を効果的に選択・運用することが可能となり、成果最大化につながるのです。

商談につながる有望顧客の入り口として「リード獲得」を設計する

BtoBデジタルマーケティングにおいて、リード獲得は戦略の基盤となる重要なステップです。リード獲得の目的は、潜在顧客との接点を創出し、見込み客の情報を収集することにあります。

重要なのは、単に数を 追うのではなく、自社のターゲットに合致した質の高いリードを獲得 することです。効果的なリード獲得手法を選び、適切に運用することで、質の高いリードを獲得し、営業活動の成功率を高めることが可能となるでしょう。

リード獲得手法にはさまざまな種類が存在し、それぞれ特徴や効果が異なります。以下の表に主なリード獲得手法の種類と特徴、BtoBマーケティングにおける具体的な施策例をまとめました。

手法
特徴と効果的な活用例
コンテンツマーケティング 専門的な記事やホワイトペーパーを通じて潜在顧客の関心を引き、信頼を築く。SEOと連携し、検索流入の増加にも寄与。動画コンテンツ (解説動画、ウェビナー録画等)やインタラクティブコンテンツ (診断ツール、計算機等)も効果的。長期的な資産として機能し、 継続的にリードを創出
ウェビナー・オンラインセミナー リアルタイムでの情報提供と双方向コミュニケーションにより、見込み顧客の具体的な課題把握と関係構築を促進。参加者の関心度が 可視化され、ホットリードの特定に有効。録画のオンデマンド配信で 継続的なリード獲得も可能。共催ウェビナーでリーチ拡大も効果的
検索広告・SNS広告 ターゲット層に合わせた精密な広告配信が可能で、短期間でリード獲得を実現。特にLinkedIn(役職・業種ターゲティング)やGoogle(検索意図の高い層)、YouTube広告(認知拡大)がが効果的
SEO オーガニック検索を通じて自然流入を増やし、長期的かつ安定的なリード獲得基盤を構築。顧客の課題や検索意図に合致したコンテンツ 作成が重要。テクニカルSEO、コンテンツSEO、E-E-A-T(経験・専門性・ 権威性・信頼性)の向上が鍵。広告と異なり継続的にコストをかけずに リード獲得が可能
展示会・オフライン施策との連携 リアルな接点を活かし、オンライン施策と組み合わせてリード情報の質を高める。フォローアップのオンライン連携も重要
ABM、インテントデータ活用 特定企業や見込み顧客行動データを基にターゲティングを最適化し、効率的に有望リードを獲得

これらの手法は単独で使うよりも、ターゲットの特性や購買プロセスに合わせて組み合わせることで効果が高まります。例えば、コンテンツマーケティングで興味を引きつけ、ウェビナーで具体的なニーズを把握し、検索広告でリーチを拡大するといった多角的アプローチが有効です。

リード獲得を設計する際のポイントは、単に数を追うのではなく、商談につながる質の高いリードを意識しましょう。具体的には、ターゲットとなる理想的な顧客像を明確にし、その購買意欲やニーズに合致したコンテンツや施策を提供することが重要です。

また、獲得したリードの情報を正確に管理し、営業へのスムーズな引き渡しができる体制を整えることも欠かせません。

デジタルマーケティングにおけるMAツールの重要性と役割

BtoBデジタルマーケティングにおいて、MAツールは戦略の効率化と効果最大化に不可欠です。MAツールはリード獲得から育成、評価までの一連のプロセスを自動化・最適化し、マーケティング活動の運用負荷を軽減しつつ、質の高いリードを効率的に管理・活用する役割を担います。

具体的には、MAツールは以下のような機能と役割を持ち、デジタルマーケティング戦略の中心的な支援ツールとして活用されます。

機能
役割と効果
リード管理・セグメンテーション 獲得したリードを属性や行動履歴に基づいて分類し、ターゲットに合わせた適切なアプローチを可能にする
メールマーケティング自動化 パーソナライズされたメール配信を自動で行い、リードの関心を持続的に高める
スコアリングとリード評価 リードの行動や属性に点数を付け、営業に引き渡すタイミングを判断する質の高いリードの選別に貢献
キャンペーン管理 複数チャネルでの施策を一元管理し、効果測定と最適化を容易にする
データ集約と分析支援 リードの動向や施策効果を可視化し、改善サイクルの推進を支援

これらの機能により、MAツールはマーケティング担当者の運用負荷を大幅に軽減しつつ、戦略的な施策展開を支援します。

また、営業部門との連携を強化するための基盤としても重要です。例えば、SFAやCRMと連携することでリードの情報共有がリアルタイムで可能となり、営業のアプローチ精度と効率が向上するでしょう。

さらに、MAツールの活用はデータドリブンな戦略改善を促進します。マーケティング活動の各段階で収集されるデータを活用し、効果的な施策の継続や改善ポイントの特定が可能です。これにより、PDCAサイクルを高速で回し、成果最大化を実現できるのです。

このように、MAは営業活動の効率化を図るための「中枢ツール」として、デジタルマーケティング戦略において重要な役割を果たしています。

わたしたち電通B2Bイニシアティブでは、BtoB事業活動全般の戦略立案はもちろんのこと、デジタル領域の知見を活用した具体的な施策の実行から最終的な成果を分析・改善し続けるためのサイクルの創出まで伴走支援が可能です。

支援の詳細については、以下をご覧ください。

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全体像で捉えるチャネル横断でのデジタルマーケティングシナリオ設計

BtoBデジタルマーケティングの全体像を正確に捉えるためには、顧客が複数のチャネルを横断して情報収集や意思決定を行う現実を理解し、それに対応したシナリオ設計が不可欠です。

顧客の購買行動は単一のチャネルに留まらず、Webサイト訪問、メール開封、広告クリック、ウェビナー参加、営業接触など多様な接点を経て進展します。このため、チャネルごとに分断された施策ではなく、統合されたチャネル横断のシナリオを設計し、一貫した顧客体験を提供することが成果最大化の鍵となります。

一貫性のあるシナリオ設計を行うメリットは以下です。

  • 顧客の購買プロセス全体を俯瞰し、最適な情報提供やアプローチが可能になる
  • チャネル間の情報共有がスムーズになり、マーケティングと営業の連携が強化される
  • 顧客視点での一貫した体験を提供し、信頼感やブランド価値の向上につながる
  • 効果的なデータ活用により、施策の改善や最適化が進む

チャネルを横断したシナリオ設計全体ステップ

ステップ
目的
詳細内容・ポイント
1.顧客行動の理解・分析 顧客の関心・購買段階の把握 Web訪問履歴、資料DL、メール開封、広告クリックなど多様な行動データを分析し、カスタマージャーニーを可視化
2.チャネルごとの役割を明確化 チャネルごとの機能最適化 SEO・広告は認知、メール・ウェビナーは興味喚起・育成、営業接触は商談化に特化
3.統合シナリオの設計 顧客属性に応じた最適な接触設計 顧客の立場や状況に合わせ、チャネル・タイミング・コンテンツを組み合わせたシナリオ作成
4.MA・CRM・SFAの連携 効率的かつ効果的な運用 行動データを活用し自動化・スコアリング・リード育成を推進、営業連携も強化

1.顧客行動の理解・分析

BtoBデジタルマーケティングの全体像を捉え、チャネル横断で効果的な戦略を設計するためには、まず顧客の行動理解が不可欠です。

顧客がどのようなチャネルを通じて情報収集し、どの段階でどのような行動を取っているかを正確に把握することで、最適な施策の設計と改善が可能になります。

具体的には、以下のような顧客の行動データを収集・分析します。

行動データの種類
具体例
分析のポイント
Webサイト訪問 ページビュー数、滞在時間、訪問経路 訪問頻度やページ遷移のパターンを把握し、興味関心を測定
資料ダウンロード(DL) ホワイトペーパーや製品カタログのダウンロード数、ダウンロード後の行動 関心度の高いコンテンツを特定し、リードの質を評価
メール開封・クリック 配信メールの開封率、リンククリック率 メールの効果測定と個別の関心度把握に活用
広告クリック リスティング広告やディスプレイ広告のクリック数、CTR 広告の訴求力とターゲティングの精度を評価

これらの行動データを統合的に分析することで、顧客の購買プロセスや関心の推移を明確に把握できます。特に、複数チャネルを経由するBtoB顧客の行動パターンを理解することは、効果的なチャネル統合シナリオ設計の基盤となります。

次に、こうした行動データを基にカスタマージャーニーを可視化することが重要です。カスタマージャーニーの可視化とは、顧客が認知から購買に至るまでの各段階でどのような接点や行動を取っているかを時系列で示すものです。

これにより、顧客体験のギャップやボトルネックを発見し、改善施策の立案に役立てることが可能になります。

カスタマージャーニー可視化の方法としては、以下のポイントが挙げられます。

  • 行動データを時系列で整理し、顧客の意思決定プロセスを追跡する
  • 顧客セグメントごとに異なるジャーニーを描き、パーソナライズされた施策設計に活用
  • 定量データ(行動履歴)と定性データ(顧客インタビュー等)を組み合わせて実態を把握
  • 可視化ツールやダッシュボードを活用し、関係者間で共有・活用しやすくする

このように顧客の行動理解とカスタマージャーニーの可視化は、デジタルマーケティングの全体像を捉えた戦略設計において最も基礎的かつ重要なステップです。

これを踏まえて初めて、チャネル横断で統合されたシナリオ設計や施策の効果的な改善が実現します。

2.チャネルごとの役割を明確化

顧客は複数のチャネルを経由して情報収集や意思決定を行うため、それぞれのチャネルが担う機能を理解し、最適に活用することが成果最大化のポイントとなります。

顧客行動に基づくチャネルの役割整理

フェーズ
チャネル
役割
目的
ポイント
認知 SEO/広告 ブランド・製品の存在認知 潜在層にリーチし、興味を喚起 キーワード・ターゲティングの最適化、SEOは長期、広告は短期的成果
興味・検討 メール/ウェビナー リード育成、関心喚起 製品理解・関心度向上 行動データに基づく配信設計、双方向コミュニケーションでエンゲージメント向上
商談化 営業接触 個別提案・商談 リードを受注に進める マーケティングで育成されたリードを引き継ぐ、KPI共有、課題に応じた提案

このようにチャネルごとに役割を明確化し、それぞれの特性を活かした施策を組み合わせることが、BtoBデジタルマーケティングの全体像を捉えた戦略設計において不可欠です。


チャネル横断の具体的な設計ポイント


  • リード情報の統合管理
    ・MAとCRM・SFAを連携して行動履歴や接触履歴を一元化
    ・リードスコアリングで関心度の高いリードを営業に優先引き渡し
    ・重複リードや属性情報を定期的に整合
  • シナリオ設計
    ・顧客属性や行動に応じて接触チャネルと順序を最適化
    ・SEO・広告で認知→ウェビナーで理解→メールで育成→営業接触で商談化、などの流れを構築
    ・各タッチポイントの反応率を分析し、改善サイクルを回す
  • タイミング最適化
    ・顧客行動をトリガーにメール配信や広告表示を自動化
    ・MQL・SQLステータスに応じて接触頻度や内容を調整
    ・複数チャネルでの過剰接触や機会損失を防止
  • KPIによる成果管理
    ・商談化率、受注率、リード獲得単価(CPL)を共通指標に
    ・チャネル貢献度を分析し、予算配分や施策改善に活用
    ・定期的なレビューでPDCAサイクルを回す

3.統合シナリオの作成

チャネル横断の設計において、顧客の状況や立場に応じて最適なチャネル・タイミング・コンテンツを組み合わせる「統合シナリオ設計」は、効果的なリード育成と商談化を実現する重要な戦略要素です。

前段階での顧客行動理解とチャネルごとの役割分担を踏まえ、顧客の属性や購買段階に応じた最適な接触シナリオを設計することが求められます。

以下の表は、顧客の立場ごとに代表的なシナリオ例を示し、それぞれに最適なチャネル、タイミング、コンテンツの組み合わせを具体的に整理したものです。これにより、どのようにチャネルを統合し、一貫した顧客体験を設計するかのイメージがつかめます。

顧客の立場・状況
シナリオ例
最適なチャネル
タイミング
コンテンツ例
現場担当者(技術者・オペレーター) Webサイト閲覧→メール送付→ウェビナー参加→営業接触 Webサイト、メール、ウェビナー、営業訪問 情報収集初期→興味喚起→詳細説明→商談促進 製品スペック資料、ケーススタディ、技術ウェビナー、個別相談
管理職・意思決定者 SEO検索→ホワイトペーパーDL→メールフォロー→営業提案 検索エンジン、メール、営業訪問 課題認識→詳細検討→購買検討→商談化 市場動向レポート、ROI分析資料、導入事例、提案資料
経営層 メールニュースレター→セミナー参加→個別面談 メール、オンラインセミナー、営業訪問 市場把握→価値理解→意思決定支援 業界トレンドレポート、成功事例、ROI説明資料

統合シナリオ設計のポイントは以下の通りです。

  • 各顧客層のニーズや関心に即したチャネルとコンテンツを選定し、適切なタイミングで提供すること
  • チャネル間の情報共有を前提とし、顧客体験に一貫性を持たせること
  • 顧客の購買プロセスに沿った段階的アプローチで、次のアクションを自然に促す設計を心がけること
  • シナリオの効果を定期的に評価し、データに基づいて改善を繰り返すこと

統合シナリオは、単にチャネルを並列に使うだけではなく、顧客の状況や立場を踏まえた戦略的な組み合わせとタイミング調整が成果最大化に直結するのです。

これにより、顧客は違和感なくスムーズに次の段階へ進みやすくなり、マーケティング施策の効果が高まります。

次のセクションでは、これら統合シナリオを実効性の高いものにするためのMA・CRM・SFAの三位一体設計について解説します。

4.MA・CRM・SFAの三位一体設計の観点

MA、CRM、SFAの三位一体設計は、チャネル横断でのリード育成や営業連携を強化し、成果最大化を実現するために欠かせない要素です。

これらのシステム連携により、行動データを活用した効率的な自動アクションが可能となり、マーケティングと営業の一体運用が促進されます。

まず、MAはリードの行動データを収集・分析し、顧客の関心度や購買段階を把握します。これに基づいて、メール配信やコンテンツ提供、スコアリングなどの自動化された施策を実行し、リード育成を効率化。一方、CRMは顧客情報の一元管理と営業活動の履歴管理を担い、SFAは商談管理や営業プロセスの効率化を支援します。これらが連携することで、マーケティングと営業がリアルタイムで情報を共有し、迅速かつ的確な対応が可能になるのです。

以下の表は、MA・CRM・SFAの三位一体設計における主要な機能と役割、及びそれぞれが連携して実現するメリットをまとめたものです。

システム
主な機能・役割
連携による効果・メリット
MA リードの行動データ収集・分析、自動メール配信、リードスコアリング、キャンペーン管理 リード育成の自動化と効率化、購買意欲の高いリードを特定し営業に迅速に引き渡し可能
CRM 顧客情報の一元管理、営業履歴管理、顧客対応履歴の共有 営業活動の一貫性向上と顧客理解の深化、マーケティング施策との連携強化
SFA 商談管理、営業プロセスの可視化・効率化、営業活動の進捗管理 営業の生産性向上と商談化率アップ、MAからのリード情報活用で的確なアプローチ実現

これらのシステム連携により、チャネル横断で得られる行動データを元にリードの状態を的確に把握し、最適なタイミングで自動的に次のアクションを実施できます。

例えば、Webサイトの閲覧頻度が高いリードに対しては自動メールでフォローアップを行い、興味が深まればスコアリングを上げて営業に通知する、といった流れです。

さらに、MA・CRM・SFAの三位一体設計は営業連携を強化し、マーケティングと営業間の情報共有をリアルタイムかつスムーズに行うことで、リードクオリフィケーションの精度向上と商談化率の向上に寄与します。

これにより、BtoBデジタルマーケティングの全体像に沿った戦略設計が実現し、成果最大化につながるのです。

全体像を把握して自社のデジタルマーケティング成果最大化を目指そう

デジタルマーケティングの全体像を把握することは、BtoB企業が競争力を高めるために欠かせないステップです。この記事を通じて、デマンドジェネレーションの重要性や、リードジェネレーションから受注までのプロセスを理解できたでしょうか。

営業との連携やチャネルを横断したシナリオ設計、そしてMA・CRM・SFAの統合は、成功への鍵となります。

次にすべきは、自社の現状を見直し、具体的な戦略を設計することです。効果的なデジタルマーケティング戦略を立てることで、貴社の成果最大化に向けた一歩を踏み出すことができます。ぜひ、この記事を参考に、実践に移してみてください。

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