事務作業をはじめとした各種業務の自動化を進めるうえで有用なツールとして、各社が導入するRPA。しかし、業務にフィットしない・開発コストがかかるなど、さまざまな理由で上手く使いこなせずに苦戦する企業も少なくありません。
RPAの効果的な活用方法や、自社に合ったツールを選ぶときのポイントとは?
主力製品としてRPAツール「BizRobo!」を提供するオープン株式会社のBizRobo!事業部 マーケティング部の林田保氏と髙橋亜希子氏に、提供事業者の視点からその極意を伺いました。
2024年6月1日に、RPAテクノロジーズ株式会社、株式会社セグメント、オープンアソシエイツ株式会社の3社が統合し、新たなスタートを切ったオープン株式会社。
RPAやAIをはじめとしたスマートロボットを活用した情報処理サービス、コンサルタント事業、アウトソーシング事業、デジタルマーケティング、オンライン広告事業を展開するなか、主力製品として提供しているのがRPAツール「BizRobo!」です。
BizRobo!事業部 マーケティング部 林田保氏
「BizRobo!は低コストで無制限にスケールできるRPAツールとして、開発環境と実行環境をオールインワンで提供しています。スケジュール実行機能を有し、ロボットやユーザーを一元管理できるため、統制のとれたプロジェクトの進行が可能です。特定の場所に縛られることなく開発することができるため、リモートワークにも適しており、現在(2024年10月時点)2,981社に導入いただいております」(林田氏)
国内でRPAが注目され始めた2010年代よりも前の2008年10月にリリースされたBizRobo!。その背景を、髙橋氏はこう話します。
BizRobo!事業部 マーケティング部 髙橋亜希子氏
「BizRobo!は、米国に本社を置くKofax社(現:Tungsten Automation社)のRPA製品『Kofax RPA(現:Tangsten RPA)』を日本国内向けに改良した製品として誕生しました。 BizRobo!の取り扱いを始めた頃はRPAという言葉もなく、ツールも海外製ばかりで、国内企業が導入するにはハードルが高かったです。 そこで、BizRobo!はツール内のUIはもちろん、サポートコンテンツなども日本語で設計し直すことで、それまでITやロボットに抵抗感があった企業も気軽にRPA開発を行い、業務効率化や業務自動化を手軽に実現できるツールを目指しました」(髙橋氏)
RPAをうまく活用できないひとつの理由として「業務との親和性」がポイントになります。どんな業務にも馴染むわけではなく、RPAでカバーできる“得意分野”があると林田氏は語ります。
「基本的にRPAロボットは、人間の知能や行動を再現して学ぶAIとは異なり、教えられたことしかできません。そのため社内で活用する際は、定型業務が比較的多い部署に適していると言えます。 例えばアプリ操作やデータ集計、データチェック、書類作成、社内システム連携、外部システム接続などです。人が行うと手間や時間がかかるこれらの業務をRPAで自動化することで飛躍的に業務効率が向上します。同時に誤入力や手順の抜けなどによるミスもなくなるため、住民や患者の機密情報を扱う自治体や医療機関などでも活用されています」(林田氏)
RPAの活用が浸透しないケースとして「開発の難しさ」も挙げられるでしょう。親和性の高い部署で活用する場合でも、業務に合わせて個別でRPAロボットを開発する必要があります。こうした課題は「適切なRPAツールを選ぶことで解消できる場合がある」と髙橋氏は話します。
「RPAを社内で使おうとしたとき、RPAロボットの開発知識があり、なおかつ部署の業務をわかっている担当者がいることが理想的です。しかし現実的に考えると、例えば経理部門の請求業務を熟知していてエンジニアリングもできるような人材は少ないでしょう。社内のシステム部門や外部ベンダーに開発してもらう方法もありますが、コミュニケーションや費用面でコストがかかってしまいます。ITに詳しい人材がいない部門でRPAを使う場合は、UIがわかりやすく、ローコードで開発できるようなRPAツールがおすすめです。業務に関する知識をもつ現場担当者が、エンジニアリングの専門知識を有することなく活用できます」(髙橋氏)
導入のハードルや浸透の難しさなど、課題も語られるRPAですが、一方で多くの企業や団体がRPAによって日常業務をドラスティックに自動化し、その恩恵を享受しています。
両氏は、3つのBizRobo!導入事例をもとに、その有用性を語ります。
「従業員数が数万人規模の某小売事業者さまは、各種データ登録や、来店客の会計に関するシステムの利用状況集計など、100近い業務をRPAロボットで自動化し、年間で4,000時間もの余力を創出しました。若手の従業員さまが責任者となり、社内の開発体制を確立して次々に既存業務の自動化を進めています。こうした大規模な事業者様の場合、1つの業務を自動化した場合のインパクトが非常に大きいため、専任の担当者を立ててRPA活用を推進しても充分なコストメリットがあります」(林田氏)
「BizRobo!は閉域ネットワークでも安定稼働するため、高いセキュリティ要件が求められる省庁でも利用されています。経済産業省では、管理職級職員の異動情報を登録する業務などをRPAで自動化し、作業時間が3分の1に圧縮されました。ローコード開発によりプログラミング未経験者の方が実装して成果をあげている好事例です」(林田氏)
「BizRobo!は、院長を含めて従業員数わずか2名のクリニックでお使いいただいているケースもあります。開発未経験の院長さまが自ら操作方法を覚えてローコードでロボットを開発し、訪問看護指示書や在宅療養計画書など、電子カルテ情報を転記して対応する書類作成といった院内の定型業務を自動化しています」(髙橋氏)
BizRobo!は、小規模事業者のサポートも今後拡充されていく予定とのことです。
最後に、国内におけるRPA活用の現在地や、今後RPAの提供事業者として目指す未来について、林田氏はこう話します。
「2010年代から国内企業でのRPA導入が進み、現在は“一段落ついている”ような印象をもっています。今後はRPAに生成AIなどの最先端技術を組み合わせて利用したいというニーズが増えてくるでしょう。そうした声をキャッチアップしながら、RPAの高度化とともに、更なる使いやすさも両立して求めていきます」(林田氏)