BtoB領域の営業において、多くの営業担当者が、リードを多く集めることに注力する一方で、成約に結びつかないリードに時間を費やしてしまうという課題を抱えています。
結論として、BtoB営業における成功は、ただ多くのリードを獲得することではなく、質の高いリードを選別し、効果的にアプローチする能力にかかっています。
マーケティングと営業の連携を強化し、データドリブンなアプローチを用いることで、成約率を大幅に向上させることが可能です。これにより、時間とリソースを最適に配分し、ビジネスの成長を加速させることができるでしょう。
この記事では、リード獲得と成約のバランスを最適化するための戦略や、質の高いリードを見極め、成約率を向上させるためのヒントを詳しく解説します。
INDEX
BtoB営業において、リード獲得数が増加しても成約率が必ずしも上がらないという現象は、多くの企業で共通して見られる課題です。
この逆説的な状況は、単にリードの数を追い求めるだけでは、営業成果に直結しないことを示しています。
成約率が上がらない主な理由には、以下が挙げられます。
これらの課題を解決するには、リードの数だけでなく、質の向上と適切なナーチャリングを重視し、営業活動との連携を強化することが不可欠です。
また、KPIの見直しにより、リード獲得から成約に至るプロセス全体を可視化し、施策の効果を正しく評価・改善していくことが求められます。
今後のBtoB営業においては、ただ単にリード獲得数を追いかけるのではなく、「質」と「温度感」に注目し、ターゲットに適した効果的なアプローチを実践することが、成果向上の鍵です。
BtoB営業において、リード獲得の成功は単に数を増やすことではなく、いかに「適合度」と「温度感」を見極め、管理するかにかかっています。
リード数の偏重は営業リソースの分散や非効率を招き、成約率の低下を引き起こします。
ここで重要なポイントは、質の高いリードを獲得し、適切にナーチャリングすることで、営業活動の効果を最大化することです。
「質」への転換を実現するためには、リードを評価・管理する明確な評価軸を設けることが重要です。
具体的には、以下のようなポイントを抑え、リードの質を多角的に評価することで、営業の効果を最大化し、成約率向上を目指します。
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評価軸
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内容
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営業への効果
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| 適合度(フィット) | 自社のサービスや製品の価値に合致するかどうか、ターゲット企業の業種・規模や担当者の役職・ニーズといった要素を分析し、リードの質を見極める | 営業が効率的に有望なリードに集中できるため、成約率が向上する |
| 温度感(購買意欲) | リードの関心度や検討段階を把握し、ウェビナー参加や資料ダウンロード、問い合わせなどの行動から購買意欲の高低を評価 | 適切なタイミングで営業介入が可能となり、商談成立の確率が高まる |
| 関与度 | 意思決定者や影響者の関与状況を評価し、リードの意思決定プロセスへの関与度合いを把握する | 重要なキーパーソンにアプローチできるため、成約までのプロセスがスムーズになる |
| KPI連携 | マーケティングと営業のKPIを連動させ、リード獲得から成約までのプロセス全体を評価・改善する仕組みを構築する | 施策の効果を正確に把握でき、継続的な改善につながる |
これらの評価軸を活用することで、単なるリード数の増加にとどまらず、質の高いリードを見極め、効率的にフォローアップする営業施策が可能になります。
適合度とは、自社の価値提供とリードのニーズや属性がどれだけマッチしているかを示す指標であり、質の高いリードを見極める基準となります。
この適合度を評価する際の基準となるのが、ICP(Ideal Customer Profile:理想顧客プロファイル)です。
ICPとは、自社の製品・サービスで最も成果を出せる顧客の特徴を具体的に定義したもので、業種、企業規模、課題の種類、意思決定プロセスなどの要素で構成されます。リードがICPにどの程度合致しているかを評価することで、成約可能性の高いリードを効率的に特定できます。
適合度が高いリードは、営業が効率的にアプローチでき、成約の可能性が飛躍的に高まるため、単なるリード数の増加よりも重要視されるべきポイントです。
自社価値とは、自社の製品やサービスが提供する独自の強みやベネフィットを指し、ターゲットとなる企業や担当者が求める課題解決や成果と合致することが必要です。適合度の評価は、この自社価値とリードの特性を詳細に分析し、営業が注力すべきリードを選別するために活用されます。
以下の表は、適合度評価の主な要素と具体的なポイントをまとめたものです。これらの基準に基づいてリードを分析することで、営業効率の向上と成約率の改善が期待できます。
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評価要素
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内容
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営業・成約への効果
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| ターゲット企業の業種・規模 | 自社製品やサービスが特に効果を発揮する業種や企業規模を明確化する | 営業が注力すべきリードを迅速に特定できる |
| 担当者の役職・職務 | 意思決定に関与する役職や購買担当者を優先して選定する | 適切なキーパーソンへのアプローチで商談成立率が向上する |
| 課題の合致度 | リードが抱える課題やニーズが自社提供価値とどの程度合致しているかを評価 | リードの関心を引きやすく、成約につながりやすい |
| 過去の取引履歴・関係性 | 既存顧客や過去に接点のあった企業のリードは優先度を高くする | 信頼度が高く成約率が上がる |
なお、上記の評価要素はBtoB営業で広く使われる「BANTフレームワーク」(Budget:予算、Authority:決裁権、Needs:ニーズ、Timeline:導入時期)とも対応しており、これらを初期段階で確認することでリードの質を迅速に見極められます。
このように、リードの適合度を正確に評価し、営業活動の優先順位を明確にすることは、BtoB営業における成約率向上の基盤となります。量ではなく質を重視したリード管理こそが、営業の成功に直結するポイントです。
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評価指標
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概要
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営業・成約への効果
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| ターゲットセグメント適合率 | 獲得したリードのうち、自社のターゲットセグメントに適合するリードの割合を示す指標。ターゲットの明確化と質の高いリード獲得施策の評価に有効 | 営業が注力すべきリードを効率的に特定でき、成約率の向上につながる |
| 業種別成約率 | 各業種ごとのリードから成約に至る割合を示す指標。業種特性に応じた営業戦略の最適化やターゲット選定の改善に役立つ | 業種ごとの成約傾向を把握し、効果的なアプローチや施策の選定が可能になる |
| 導入決定までの平均リードタイム | リード獲得から成約に至るまでの平均期間を示す指標。適合度の高いリードほどリードタイムが短縮される傾向があり、適合度評価の妥当性を検証する指標として活用される。業種別・セグメント別に分析することで、ターゲット選定の精度向上に寄与 | 適合度評価の精度を検証し、ターゲティング戦略の改善に活用。適合度の高いセグメントを特定することで営業効率が向上 |
BtoB営業におけるリードの「温度感」とは、リードが抱える課題の深刻度や購買検討の段階、つまり顧客の購買意欲や関心の度合いを指します。単にリードの数や適合度だけでなく、この温度感を正確に把握することが、営業の効果的なアプローチと成約率向上に直結するのです。
リードの温度感は、顧客が抱える課題のレベルや、検討段階(認知段階、興味関心段階、検討段階、意思決定段階など)に応じて多様に変化します。適切な評価ができなければ、営業は購買意欲の低いリードに無駄なリソースを割き、成約機会を逃すリスクが高まります。
以下の表は、温度感を評価する主要なポイントとその具体例、営業成約に与える影響を示したものです。
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評価要素
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内容
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営業・成約への効果
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| 課題レベル | 顧客が直面している問題の緊急性や重要度(例:業務効率化の強いニーズ、法規制対応の必要性) | 課題が明確で深刻なほど、購買意欲が高まり商談成立の可能性が高くなる |
| 検討段階 | リードが現在の検討フェーズ(認知段階、興味関心段階、具体的検討段階、意思決定段階)にあるか | 検討が進んでいるリードほど成約率が高く、営業は適切なタイミングで介入できる |
| 行動履歴 | ウェビナー参加、資料ダウンロード、問い合わせ頻度などの具体的な行動 | 積極的な行動を示すリードは温度感が高く、優先的なフォロー対象となる |
| 購買意欲の自己申告 | アンケートや面談での意向確認 | 顧客の意向を直接把握することで、営業戦略を最適化できる |
これらの評価ポイントを活用し、リードの温度感を正しく把握することは、営業リソースの最適配分と成約率の向上に不可欠です。特に、温度感の高いリードを優先的にフォローし、購買意欲が低いリードには適切なナーチャリング施策を講じることが効果的です。
さらに、温度感をKPIに組み込むことで、マーケティングと営業の連携が強化され、リード管理の精度が向上します。たとえば、温度感の高いリード発掘数や温度感別の成約率をモニタリングし、施策の改善に役立てることが可能です。
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評価指標
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概要
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営業・成約への効果
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| MQL→SQL転換率 | マーケティングが獲得したリードのうち、営業が商談候補と認定したリードの割合 一般的なB2B企業での転換率は10〜30%程度とされ、業種や商材により大きく異なる。自社の過去データと比較し、継続的な改善を目指すことが重要 |
リードの質とナーチャリングの効果を測定。転換率向上で営業効率と成約率がアップ |
| フェーズ別スコア分布 | リードの検討段階や温度感をスコアリングし、各フェーズに分布させた割合 | リードの成熟度を把握し、育成施策の重点化や営業介入タイミングの最適化に活用 |
| コンテンツ別温度上昇率 | 特定コンテンツ(ウェビナー、ホワイトペーパー、事例資料など)の利用前後(通常は利用直後〜2週間以内)のリードスコア変化を測定。例:ウェビナー参加前50点→参加後70点(+20点上昇) | 効果的なコンテンツの特定と施策改善に役立ち、リードの購買意欲向上に貢献 |
| 平均リードスコア推移 | リード全体の平均スコアの時系列変化を測定(週次・月次) | ナーチャリング施策の全体効果を可視化し、施策の改善タイミングを判断 |
| 高温度リード比率 | 全リードのうち一定スコア以上(例:80点以上)のリードが占める割合 | 営業に引き渡すべきリードの量を予測し、営業リソースの配分を最適化 |
BtoB営業において、リードの成約可能性をより正確に評価するためには、意思決定者や影響者の「関与度」を把握することが不可欠です。
関与度とは、リードとなる企業内のキーパーソンが購買プロセスにどの程度関与しているかを示す指標であり、営業活動の優先順位付けや効果的なアプローチに直結します。
これまでの評価軸である「適合度」や「温度感」がリードの属性や購買意欲を評価するのに対し、「関与度」は意思決定プロセスの深さと関与者の影響力に焦点を当てています。
特にBtoB商談では複数の関係者が意思決定に関わるため、日本企業では、稟議制度による合議制の意思決定が一般的であり、現場担当者、部門長、経営層に加え、情報システム部門や購買部門など、複数部門が関与するケースが多く見られます。
そのため、各関与者の役割と影響力を正確に把握することが、より一層重要となります。以下の表は、意思決定者・影響者の関与度を評価する主な基準と具体的な測定方法、営業への効果を整理したものです。
近年のBtoB購買では、意思決定に関与する人数が増加しており、平均6〜10名が関与するとされています(Gartner調査)。この意思決定グループを「DMU(Decision Making Unit)」または「バイイングコミッティ」と呼び、発案者、利用者、影響者、決定者、購買者、門番といった複数の役割が存在します。
特に重要なのが、社内で導入を推進する「チャンピオン」と、予算権限を持つ「エグゼクティブ・スポンサー」の特定です。
日本企業では稟議制度により複数部門が関与するため、各関与者の役割と影響力を正確に把握することが、より一層重要となります。
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評価要素
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内容
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営業・成約への効果
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| 意思決定者の特定 | 企業内で最終決裁権を持つ人物の把握。役職情報や組織図、過去の商談履歴の分析 | 最も影響力のある人物に直接アプローチすることで、商談成立率が大幅に向上 |
| 影響者の把握 | 購買に影響を与える部門や担当者の特定。営業ヒアリングやCRMデータの活用 | 複数の関係者を巻き込む提案が可能になり、意思決定までのプロセスが円滑化 |
| 関与度の度合い | 関与頻度(会議参加回数、メールや電話のやり取り数)、意思決定における発言権の強さをスコアリング | 関与度の高い人物にリソースを集中させることで、営業効率と成約率が向上 |
| 意思決定プロセスの段階 | リードの関与者が購買プロセスのどの段階にいるかを把握。初期調査、比較検討、最終決裁など | 適切なタイミングでのアプローチが可能となり、商談の進捗が加速 |
これらの評価を通じて、営業はリードの意思決定構造を正確に理解し、最も効果的な接点を見極めることができます。結果として、営業活動の効率化と成約率の向上が実現し、限られた営業リソースを最大限に活用することが可能です。
また、意思決定者・影響者の関与度をKPIとして設定し、定期的にモニタリングすることで、営業とマーケティングの連携強化や施策の継続的な改善が可能になります。CRMやMAツールの活用によるデータ収集と分析も効果的です。
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評価指標
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概要
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営業・成約への効果
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| 意思決定層関与率 | リード獲得・商談過程において、意思決定層(経営層・部長クラスなど)が関与している案件の割合 | 意思決定者との接点強化を可視化し、戦略的なリード獲得施策や営業活動の優先順位付けに活用 |
| リード内役職構成比 | 獲得したリードにおける役職別の構成比(経営層・管理職・担当者など) | ターゲット層の偏りやギャップを把握し、アプローチ戦略や広告メッセージの最適化に活用 |
| 意思決定者起点リードの成約率 |
意思決定者から直接発生したリード(問い合わせ・資料請求など)の成約割合 |
高品質リードの特徴を明確化し、優先的なフォロー体制やマーケティング施策の強化に寄与 |
| チャンピオン特定率 |
全案件のうち、社内推進者(チャンピオン)を特定できている案件の割合 |
チャンピオン不在の案件を早期発見し、リスク管理と育成施策に活用 |
日本企業では稟議制度による合議制の意思決定が一般的であり、以下の点に特に注意が必要です。
これらの特性を踏まえ、単に「誰が決裁者か」だけでなく、「誰の賛同が必要か」「どのような順序で説明すべきか」を把握することが、成約率向上の鍵となります。
わたしたち電通B2Bイニシアティブでは、BtoB事業活動全般の戦略立案はもちろんのこと、デジタル領域の知見を活用した具体的な施策の実行から最終的な成果を分析・改善し続けるためのサイクルの創出まで伴走支援が可能です。
支援の詳細については、以下をご覧ください。
BtoB営業の現場でリードの質を高め、成約率を向上させるためには、単なる評価軸の設定だけでなく、組織的な体制と運用の仕組みを構築することが不可欠です。
前章までで述べた適合度や温度感、関与度などの評価軸をもとに、具体的な営業・マーケティング間の連携、ナーチャリング体制の継続実施、そして部門横断の取り組みを進めることが、成果を最大化するポイントとなります。
以下の表は、リードの質向上に向けた体制・運用づくりにおける主な要素と具体的なポイント、期待される効果をまとめたものです。
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要素
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内容
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期待される効果
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| リードの優先度設計 | リードの評価軸に基づき、優先度を明確化し営業が効率的に対応できるようにする。リードスコアリングやターゲットセグメントに応じた分類を実施 | 営業リソースの最適配分が可能となり、成約率が向上する |
| 連携ルールの明確化 | マーケティングと営業間でリードの引き渡しタイミングやフォローアップ責任を明文化。定期的な情報共有やフィードバックの仕組みを設置する | 情報伝達の遅延や重複対応を防ぎ、効率的な営業活動を促進する |
| ナーチャリングの継続運用 | メール配信やウェビナーなど多様なチャネルを用い、リードの購買意欲を段階的に高める施策を継続的に実施。効果測定と改善を繰り返す体制を整備 | リードの温度感を適切に維持し、成約可能性の高いリードを増加させる |
| 部門横断のRevenueチーム思考 | 営業、マーケティング、カスタマーサクセスなど複数部門が成果に責任を持ち、一体的に取り組む体制を構築。共通のKPI設定と目標共有を行う | 組織全体で売上向上にコミットし、リードから成約、顧客維持までのプロセスが最適化される |
近年、関与度向上のために以下の手法が効果を上げています。
提案資料やROI計算ツールを一元管理する専用Webページを提供し、複数の関与者が情報にアクセスできる環境を整備。誰がどの資料を閲覧したかを追跡することで、関与者の関心度をリアルタイムで把握でき、チャンピオンの社内推進も支援できます。
LinkedInなどのビジネスSNSを活用し、意思決定者や影響者との接点を構築。業界インサイトやソートリーダーシップコンテンツを通じた価値提供により、従来の営業アプローチでは接点を持ちにくい経営層との関係構築が可能になります。
これらの手法により、複数関与者への同時アプローチや経営層との早期接点構築が実現し、関与度指標の向上と成約率アップにつながります。
まず、リードの優先度設計とは、獲得したリードを評価軸に基づいて分類し、営業が優先的にアプローチすべきリードを明確にすることです。適合度、温度感、関与度などの評価基準を活用し、リードスコアリングやターゲットセグメントごとの優先順位を設定します。
次に、マーケティングと営業の連携ルールの明確化は、リードの引き渡しタイミング、フォローアップ責任の所在、情報共有の方法を定めることで、施策の効果を最大化し、営業活動の効率を高めることを目的としています。
以下の表は、リードの優先度設計と連携ルールの主な要素と具体例、期待される効果をまとめたものです。
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要素
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内容
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期待される効果
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| リード優先度設計 | 適合度・温度感・関与度に基づくリードスコアリングの実施。ターゲットセグメント別の優先順位付け | 営業が最も成約可能性の高いリードに集中でき、成約率の向上 |
| 引き渡しタイミングの設定 | リードの温度感が一定レベル(例:スコア70点以上、またはデモ申込み・見積依頼などの高温度行動あり)を超えた時点で営業へ引き渡すルールの策定。業種や商材により基準を調整し、マーケと営業で合意 | タイミングの適切化により、商談機会の損失を防止 |
| SLA(Service Level Agreement)の設定 | マーケと営業間で合意した対応品質基準。例:「SQLを受領後24時間以内に初回コンタクト」「初回商談後48時間以内にCRMに結果記録」など | 対応スピードと品質が標準化され、リードの取りこぼしを防止。双方の責任範囲が明確化 フォローアップ責任の明確化 |
| フォローアップ責任の明確化 | 営業チーム内での担当割り当て(インサイドセールス→フィールドセールスの分担含む)や、マーケから営業への引き渡し後の追跡責任の設定。特に日本では、長期フォローが必要なため、放置期間の上限(例:2週間以上未対応の場合はエスカレーション)も明確化 | 対応漏れや重複対応の防止。営業効率の向上 |
| 情報共有の仕組み | CRMやMAツールを活用したリード情報のリアルタイム共有と定期的な連絡会議(週次の営業・マーケ合同会議、月次のリードレビュー会議など)の実施。営業のフィードバックをマーケ施策に反映するフローも整備 | 施策効果の可視化と改善サイクルの促進 |
リードの優先度は、行動データやスコアリング結果を用いて「高・中・低」の3段階で分類するのが効果的です。この分類により、マーケティングと営業が共通の認識を持ち、各リードに対する適切なアプローチ方法を明確化できます。
3段階分類は、シンプルで運用しやすく、マーケと営業双方が直感的に理解できるため広く採用されています。より細かい5段階分類(A〜E)を用いる企業もありますが、分類が複雑になると運用負荷が高まるため、自社の体制に応じて選択することが重要です。
以下の表は、リード優先度ごとの対応範囲とスピード感の例を示したものです。
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優先度
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評価基準(例)
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マーケティングの対応
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営業の対応
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スピード
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| 高 | スコア80点以上(スコア上位20%)、かつ以下のいずれかの行動: ・問い合わせ・デモ申込み・見積依頼 ・ウェビナー参加+資料ダウンロード複数回 ・意思決定者の関与あり ・料金ページや導入事例の繰り返し閲覧 |
即時フォローアップ・パーソナライズドコンテンツ提供・営業への即時連携通知(Slackアラート等) | 優先的に商談化を目指すアプローチ・直接連絡・直接連絡(電話+メール)・経営層へのエスカレーション提案 | 迅速(24時間以内の初回コンタクト必須)※SLA設定推奨 |
| 中 | 【評価基準(例)】 スコア50〜79点(中間層)、以下の行動: ・資料ダウンロード1〜2回 ・メール開封率50%以上 ・Webサイト月1〜2回訪問 ・ウェビナーアーカイブ視聴 | 定期的なナーチャリングメール配信(週1〜2回)・ウェビナー案内・課題別コンテンツ提供・スコア推移モニタリング | 定期的な状況確認(月1回程度)・関心度の再確認・スコア上昇時に積極介入 | 適切(3〜5営業日以内の対応を目安)※急激なスコア上昇時は24時間以内 |
| 低 | スコア49点以下(スコア下位20%)、以下の状態 ・メール開封率20%以下 ・Webサイト訪問なし(または初回のみ) ・資料ダウンロードのみで以降反応なし ・登録後3ヶ月以上無反応 |
自動化されたメール配信や長期的ナーチャリング・休眠リードの定期クリーニング | 営業は原則対応せず、マーケで温度上げを継続ただしスコアが50点を超えた場合は中優先度に移行 | 長期的(即時対応不要。3〜6ヶ月の長期育成視点) |
このように優先度を明確に分類し、対応範囲とスピード感を定めることで、営業リソースを「今動くべき顧客」に集中させることが可能になります。これにより、営業の効率性が向上し、成約率の大幅な改善が期待できるのです。
また、優先度に応じた対応体制をマーケティングと営業で共有し、KPIに連動させることで、施策の効果検証と継続的な改善を実現できます。リード獲得数だけでなく、質と対応の最適化を追求することが、BtoB営業成功のポイントと言えるでしょう。
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優先度
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主担当
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推奨アクション
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目標指標
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| 高 | 営業 | 即時連携(24時間以内)・初回ヒアリング・課題深堀り・提案資料提示・意思決定者との面談設定 | 商談化率50%以上、初回接触→商談化までの期間7日以内 |
| 中 | マーケ主導(ナーチャリング実施)+営業は週次レポートで状況把握、スコア上昇時に介入 |
マーケ:育成メール(週1〜2回)・課題別セミナー案内・パーソナライズドコンテンツ配信 営業/IS:月1回の状況確認、スコア70点超で積極介入 |
ナーチャリング進行率(スコア上昇率) |
| 低 | マーケ | リマーケティング広告・事例配信(月1〜2回)・年1〜2回のリエンゲージメントキャンペーン・6ヶ月無反応の場合はリスト除外判断 | 再訪率・スコア上昇率10%以上、6ヶ月以内の再活性化率5〜10% |
リードの引き継ぎ段階は企業や業界、営業スタイルによって異なりますが、一般的には以下のような段階が設定されます。
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引き継ぎ段階
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内容
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主な目的
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| リード獲得直後 | マーケティングがリードを初めて獲得したタイミングで営業に情報を共有 | 迅速なフォローアップによる商談機会の創出 |
| MQL(Marketing Qualified Lead)到達時 | マーケティングが設定した基準を満たし、一定の温度感や適合度が認められたリードを営業に引き継ぐ | 効率的に温度感の高いリードに営業リソースを集中 |
| SQL(Sales Qualified Lead)認定時 | 営業がリードの商談化を判断し、フォローアップを本格化 | 成約率の高いリードに営業活動を集中させる |
これらの段階を事前にマーケティングと営業で合意し、具体的な判断基準や担当者を明確にすることで、次のような効果が得られます。
また、適切な引き継ぎルールの設定は、営業の負担軽減にもつながり、質の高いリードに集中できる環境を整えることにも貢献します。
日本企業特有の営業プロセスを考慮し、以下の点に留意した引き継ぎルール設計が重要です
日本のBtoB商談は検討期間が長く(平均6〜12ヶ月)、MQLからSQLまでの育成期間を十分に確保する必要があります。短期的な反応がなくても、定期的なタッチポイント維持が重要です。
大手企業を中心に、「マーケ→インサイドセールス(IS)→フィールドセールス」の3段階モデルが一般化しています。ISがMQLを精査してSAL(Sales Accepted Lead)に認定し、フィールドセールスへの効率的な引き継ぎを実現します。
SQL段階では、営業だけでなくマーケティングも稟議資料作成や社内説明資料の提供で協働することが成約率向上につながります。
4月・10月の新年度・下半期開始時期に向けた戦略的なタイミング調整が、成約率を大きく左右します。
BtoB営業において、リードの質を高め成約率を向上させるためには、ナーチャリング施策を一過性のイベントとしてではなく、継続的に運用できる仕組みとして組織に根付かせることが重要です。
ナーチャリングはリードの温度感を高め、購買意欲を醸成するプロセスであり、その継続性がなければ効果的なリード育成は実現できません。
継続的なナーチャリングの仕組みづくりには、以下のようなポイントが挙げられます。
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ポイント
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内容
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期待される効果
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| 施策の体系化と計画的実施 | メール配信、ウェビナー、セミナー、ホワイトペーパー配布など多様なチャネルを組み合わせたナーチャリング計画を策定し、定期的に実施する。例:認知段階は教育的コンテンツ(業界トレンド記事)、検討段階は比較・評価コンテンツ(ベンダー選定ガイド)、決定段階は導入支援コンテンツ(ROI計算ツール、事例)など、段階別のコンテンツマップを作成 | リードの温度感を段階的に高め、成約に結びつくリードを増加させる |
| 仕組み化による継続性の確保 | MAツールやCRMを活用し、リードの行動履歴やスコアリングを自動で管理。ワークフロー自動化により、スコアに応じたメール配信やアラート通知を実行。担当者の属人化を防止し、施策の継続的実行を支援する | ナーチャリング施策の抜け漏れや遅延を防ぎ、一定のクオリティを維持できる |
| 営業との情報共有と連携強化 | リードの温度感やナーチャリング状況を営業とリアルタイムで共有(CRMダッシュボード、Slack通知等)し、適切なタイミングで商談に繋げるための連携体制を整備する。週次のリードレビュー会議で、高温度リードの状況確認と対応方針を協議 | 営業のフォローアップ精度が向上し、成約率アップに寄与する |
| PDCAサイクルの運用 | ナーチャリング施策の効果測定を定期的に行い、メール開封率やウェビナー参加率、商談化率などのKPIをダッシュボードで可視化。データに基づく継続的な改善を実施し、効果の低い施策は停止、高い施策は強化するアジャイルなアプローチを採用 | 施策効果の最大化と継続的な改善が可能となる |
| 役割分担の明確化と教育 | マーケティング担当者と営業担当者の役割を明確にし、ナーチャリングの重要性や運用方法について定期的な教育・情報共有を行う。例:四半期ごとのトレーニング(MAツール操作、リードスコアリング基準、効果的なコンテンツ設計等)、成功事例の共有会、ベストプラクティスの標準化 | 組織全体でナーチャリングの意識が高まり、施策の質と成果が向上する |
| 柔軟なコンテンツ更新とパーソナライズ | リードの属性(業種、企業規模、役職)や行動(閲覧ページ、ダウンロード資料)に応じてコンテンツを適宜更新・最適化し、パーソナライズされた情報提供を実施する。動的コンテンツ(Dynamic Content)機能を活用し、同じメールでも受信者によって表示内容を変える高度なパーソナライゼーションも有効。AIレコメンデーションによる次のコンテンツ提案も活用 | リードの関心を維持し、購買意欲の向上につながる |
このように、ナーチャリングプロセスを継続できる仕組みとして落とし込むことで、BtoB営業におけるリード獲得から成約までの一連の流れがスムーズになり、営業チームの効率化と成果向上を実現できます。
重要なのは、施策を単発で終わらせず、組織全体でデータドリブンな運用と継続的な改善を繰り返す文化を醸成することです。
ナーチャリングの仕組み化においては、リードの「温度感」を正確に把握し、効率的に営業リソースを配分することが成約率向上の重要なポイントです。特に、顧客がどのフェーズにいるかを見極めることは、適切なアプローチと効果的なフォローアップを実現するために不可欠です。
近年では、MA(マーケティングオートメーション)ツールを活用し、顧客のウェブサイトの行動ログや資料閲覧履歴、セミナー・ウェビナー参加状況などの多様なデータをスコア化・分析することで、顧客の購買フェーズを自動的に分類する手法が主流となっています。
これにより、データをもとにした再現性の高いナーチャリングプロセス運用につながるのです。また営業は「温まったリード」に集中でき、無駄なリソース消費を防止できます。
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顧客行動の種類
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スコアリング例
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分類される顧客フェーズ
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営業への活用ポイント
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| ウェブサイトの閲覧履歴(製品ページ、価格ページなど) | 閲覧ページ数や滞在時間に応じたスコア付け例:価格ページ閲覧=+10点、導入事例=+8点、ブログ記事=+3点。繰り返し閲覧や長時間滞在で追加ポイント | 認知~検討フェーズ | 関心の高いリードを早期に発見し、適切な情報提供を行う |
| ホワイトペーパーや資料のダウンロード | ダウンロード数や種類によりスコア加算例:導入ガイド=+15点、業界レポート=+8点、初心者向け資料=+5点。複数資料DLで追加ポイント | 認知~検討フェーズ | 具体的な課題意識を持つリードを区別し、ナーチャリングに活用。ダウンロードした資料のテーマに応じた関連コンテンツを提供 |
| セミナー・ウェビナー参加 | 参加頻度や参加内容の重要度でスコア化例:製品デモウェビナー参加=+20点、業界トレンドセミナー=+12点、アーカイブ視聴=+8点。質問・チャット参加で追加ポイント | 検討~決定フェーズ | 購買意欲が高いリードを特定し、営業介入のタイミングを最適化。ウェビナー終了後24時間以内のフォローアップが効果的 |
| 問い合わせやデモ申込み | 問い合わせ内容の深刻度や申込み数で高スコア例:デモ申込み=+50点(即SQL候補)、見積依頼=+60点、一般問い合わせ=+30点 | 決定フェーズ | 即時対応が必要なリードとして優先的に営業へ引き継ぐSLA設定:24時間以内(推奨は1時間以内)の初回コンタクト必須 |
MAだけでなく、CRM(顧客関係管理システム)の活用も、ナーチャリングプロセスの仕組み化におすすめです。MAとCRMを連携することで、営業はリアルタイムで「どのリードが今最も熱いか」を把握し、効果的なアプローチが可能となります。
また、マーケティングチームは施策ごとの貢献度を定量的に可視化し、KPI改善に役立てることができます。
以下の表は、MAとCRM連携による主な機能とその営業・マーケティングへの効果をまとめたものです。
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機能
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内容
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営業への効果
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マーケティングへの効果
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| リードスコアリングの自動反映 | リードの行動履歴(Webサイト閲覧、メール開封、資料DL等)や属性情報をMAでスコア化し、CRMにリアルタイム連携 | 営業は優先度の高いリードを即時把握し、効率的にアプローチ可能 | リードの質を定量的に評価し、施策の改善に活用できる |
| リードの温度感のリアルタイム可視化 | ウェビナー参加状況や資料ダウンロードなどの行動データ(リードレコード内のアクティビティタイムライン等)をCRM画面で確認可能。営業はリードの「最近の動き」を一目で把握し、会話の糸口に活用 | 営業は現在のリードの購買意欲を瞬時に把握し、適切なタイミングでフォローアップ | 温度感の変化を分析し、効果的なナーチャリング施策の設計に役立てる |
| 施策別効果測定の自動化 | 各マーケティング施策(ウェビナー、広告、コンテンツ等)のリード獲得数、MQL/SQL転換率、商談化率、成約率、ROIをダッシュボードで一元管理 | 営業活動の成果をKPIとして共有し、目標達成に向けた連携が強化される | 施策ごとのROIを明確化し、予算配分や施策改善の意思決定を支援 |
| アラート通知・自動タスク生成 | 特定スコア以上のリード(例:80点以上)が発生した際に営業にアラート(メール、Slack、CRM内通知等)を送信し、対応を促す。CRM内に自動タスク生成(「24時間以内に初回コンタクト」等)も可能 | 重要リードの取りこぼし防止と迅速な対応が可能になる | 営業のフィードバックを受けて施策の効果検証がしやすくなる |
BtoB営業におけるリードの質向上と成約率アップを目指すには、営業、マーケティング、カスタマーサクセスなど複数の部門が一体となって成果を追う「Revenueチーム思考」への転換が不可欠です。
これは、単なる部門間の連携を超え、顧客のライフサイクル全体を見据えた体制・運用づくりを意味します。
従来の営業とマーケティングが分断された体制では、リード獲得から成約、さらには顧客維持に至るまでのプロセスで情報が断絶し、成果に結びつきにくい状況が続きがちです。Revenueチーム思考を取り入れることで、以下のようなメリットが期待できます。
実践にあたっては、以下のポイントを押さえることが重要です。
具体的な取り組みの一つが、定期的に「リードレビュー会議」を設けることです(推奨:週次、参加者:マーケ・IS・フィールドセールスの各リーダー)。
ここでは、マーケティングが営業に引き渡すリードの基準を明確化し、実際に成約に至ったリードの共通点や特徴を共有します。これにより、両部門間でリードの質に対する共通認識が深まり、効率的なリード選別とフォローアップが可能となります。
また、施策やリード管理を分断せず、「リード→商談→成約→顧客維持」という一気通貫のデータフローを構築することも重要です。
CRMやMAツールを連携させ、リードの獲得から成約までの情報をリアルタイムで共有・管理することで、営業のタイムリーなアプローチとマーケティングの施策改善が同時に実現します。これにより、「どの施策が最終的に売上に貢献したか」を正確に把握し、ROIに基づく予算配分が可能になります。
以下の表は、マーケティングと営業が同じKPIで動き、リードレビュー会議を通じて連携強化し、一気通貫のデータフローを構築することで得られる主な効果をまとめたものです。
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取り組み
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内容
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期待される効果
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| KPIの統一 | リード獲得数ではなく、商談化率や成約貢献率など、成果に直結する指標を共通KPIに設定 | 両部門が同じ目標を共有し、一体的に成果向上を目指せる |
| リードレビュー会議の設置 | 定期的にマーケと営業が集まり、引き渡し基準や成約リードの共通点を分析・共有 | リードの質向上と営業効率化、無駄なリソースの削減に寄与 |
| 一気通貫データフローの構築 | CRMとMAツールを連携し、リードから商談、成約までの情報をリアルタイム共有・管理 | 営業の迅速なアプローチとマーケ施策の継続的促進が可能になる |
このように、マーケティングと営業が別々のチームとしてではなく、共通のKPIを持つ“Revenueチーム”として連携することで、BtoB営業の成約率向上と効率化が大きく進展します。組織全体で成果を追い、施策改善を継続する体制づくりが成功の鍵となるのです。
BtoB営業でリード獲得数を増やすことは重要ですが、成約に結びつくリードの質を見極めることがさらに重要です。
リードの質を高めるためには、リードが自社の製品やサービスにどれだけ適合しているか、またそのリードがどの程度の購買意欲を持っているかを評価することが必要です。
これには、営業とマーケティングの密な連携が欠かせません。特に、データに基づいた戦略を活用し、ナーチャリングを行うことで、リードを効果的に育てることができます。
これらの取り組みを通じて、ただリードを集めるだけでなく、実際に成約につながるリードを効率よく見つけ出し、アプローチできるようになります。
次のステップとして、自社のリード評価基準を見直し、営業とマーケティングのプロセスを改善することを検討してみてください。これにより、持続的なビジネス成長を実現するための基盤が整うでしょう。
わたしたち電通B2Bイニシアティブは、BtoB事業の成長を加速させるデマンドジェネレーションとブランディングのプロフェッショナルです。
電通グループの強みである広範なネットワークと豊富なデータ資産、そしてBtoBに特化した専門チームの知見を活かし、以下の領域をトータルで支援します。
わたしたちの核にあるのは、広告コミュニケーションで培ってきた「人の心を動かす力」です。この力を活用し、経営・人材・組織・事業といったあらゆるレイヤーにおける課題に向き合いながら、具体的な施策の実行から最終的な成果を分析・改善し続けるためのサイクルの創出まで伴走します。
単なる「施策の提供」にとどまらず、強いブランドづくりや売れる仕組みの構築を通じて、企業の持続的な成長と信頼性の高いパートナーシップの実現を目指します。
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