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BtoB広告戦略は“刈り取り”から“想起形成”へ 中長期の成果を生む広告戦略の考え方

作成者: B2B Compass編集部|Jul 14, 2026 9:42:41 AM

価格競争から脱却し、顧客から選ばれ続ける「指名される企業」を目指す中で、現在のWeb広告の成果や運用方法に課題を感じていませんか。競合との差別化を図り、持続的な成長を実現するためには、広告の投資目的を従来の「獲得(刈り取り)」から、顧客の心に残る「想起形成」へとシフトさせることが重要です。

この想起形成を具現化するにあたっては、前回の記事で解説した「独自の強みの言語化」「インナー・アウターのメッセージ統一」「デジタルメディアやPRを活用した事例発信」という初期工程を完了していることが前提となります。

前回の記事はこちら:【第一想起の重要性】BtoB企業に「認知ブランディング」が必要な理由

これらの土台を整えた次なるステップとして、本記事では構築したブランド価値を効率よく市場へ広げるための「Web広告の見直し戦略」について詳しく解説します。

この記事を読むことで、限られた予算の中で潜在顧客の頭の中に自社の価値を正しく刻み込み、価格競争に依存しない広告運用の仕組みを再構築するための具体的なステップが理解できるようになるでしょう。

 

顕在層に偏ったBtoB広告運用の現状と構造的な限界

BtoBマーケティングにおける広告戦略において、即効性のあるリード獲得を目的とした「獲得型広告」を中心に据える企業は少なくありません。特にリスティング広告やリターゲティング広告は、検索意図や検討意欲が明確な顕在層をターゲットにしているため、短期間での成果が期待できる手法として広く活用されています。

四半期ごとの目標達成や、営業現場への安定したリード供給を優先する場合、こうした即時効果が見えやすい施策へ予算を集中させる判断は合理的です。しかし、組織全体のリード獲得数を確保しようとするあまり、予算の大部分がこの獲得型広告に偏り、潜在層へのアプローチが不足しがちになるという側面もあります。

企業が獲得型広告に注力する主な背景としては、以下の要因が挙げられます。

  • リード獲得の即効性: 成果が数値で可視化されやすく、短期的なKPI(重要業績評価指標)や予算管理の都合に適合しやすい
  • 高いターゲティング精度: 特定の検索キーワードに基づき、検討度合いの高い層へ直接アプローチできる
  • 営業現場への配慮: 営業活動の起点となるリード供給を安定させるため、毎月の一定数確保が優先されやすい
  • 導入のハードル: 運用ノウハウやツールが成熟しており、組織として導入・実行しやすい

顕在層中心の運用がもたらす構造的な限界とコスト高騰

このように顕在層を中心に予算を配分するアプローチには、市場の構造的な限界に伴ういくつかの課題が存在します。

まず挙げられるのが、CPC(クリック単価)の上昇とそれに伴う費用対効果の低下です。市場に存在する顕在層の数は限られているため、競合他社が同一のキーワードやセグメントに参入すると入札競争が激化します。その結果、広告費用を増やしてもリード数は比例して増えず、CPA(顧客獲得単価)が上昇し、全体のROI(投資収益率)が低下する傾向が見られます。

以下は、限られた顕在層市場において広告予算を増加させた場合の、一般的なシミュレーション例です。

広告予算
リード獲得数
CPA
ROI
100万円 50件 20,000円 150%
150万円 65件 23,000円 130%
200万円 75件 26,700円 110%
250万円 80件 31,250円 96%

※本試算は、リード1件あたりの平均的な売上貢献(成約率×受注単価)を一定と仮定した簡易例です。

この試算例が示すように、限られた市場の中で過剰な競争が発生すると、予算を増額しても獲得効率が低下し、広告投資の持続的な改善が困難になるという課題が出てくるのです。

営業現場における比較・交渉への影響

獲得したリードの性質も、営業活動に影響を与えます。すでに製品やサービスの比較検討段階にあるリードは、仕様の比較や価格交渉に終始するケースが比較的多く見られます。

複数の企業から見積もりを取り寄せ、条件を細かく検討しているため、営業担当者は他社との差異を打ち出しにくく、価格の引き下げを迫られる場面も増えがちです。

製品の本質的な品質や提供価値が伝わる前に価格を最優先に考えられてしまうと、自社の強みを十分に発揮できず、結果として利益率を圧迫するリスクが生じます。

単にリード数を追求するだけでなく、自社のユニークな価値を効果的に伝え、より付加価値の高い商談へとつなげるためのプロセスが求められています。

獲得型から想起形成へ、潜在層向け広告戦略の考え方

中長期的な成果を安定させるためのアプローチとして注目されているのが、まだ情報収集を本格化させていない「潜在層(将来の顧客)」を対象とした広告戦略です。

潜在層向けの広告戦略では、目先のリード獲得ではなく「想起形成」を目的とします。想起形成とは、潜在顧客の意識の中に自社ブランドや製品の価値をあらかじめ定着させ、将来的に購買を検討する段階になった際に、真っ先に思い出してもらう状態を作ることを指します。

市場全体の大部分を占める潜在層に対して事前にアプローチしておくことで、顧客が実際の課題を自覚しリサーチを開始した(検索エンジンや生成AIで「システムを導入したい」と検索するなどの)段階で、他社に先駆けて最初の選択肢(第一想起)に入る確率を高めることが可能です。

獲得型広告と想起形成型広告の特徴を比較すると、以下のようになります。

比較項目
獲得型広告(従来の運用)
想起形成型広告(新たなアプローチ)
ターゲット層 顕在層(直近の検討層) 潜在層(将来的な見込み顧客)
広告の目的 即時のリード獲得 ブランドの認知・想起形成
効果の現れ方 短期的、即効性重視 中長期的、継続的な効果
運用のポイント キーワード入札やリターゲティング重視 ブランドメッセージの一貫性と多様な接点創出
成果のKPI リード数、CPA、CPC ブランド認知度、想起率、指名検索数、リードの質

あらかじめ「選ばれる状態」を設計する仕組みへ変えることは、競合との直接的なクリックの奪い合いを回避し、中長期的なCPAの抑制とROIの改善につながるアプローチとなります。

具体的な想起形成のためのWeb広告戦略の見直しポイント

想起形成型の広告戦略を実践するにあたり、従来の運用方針から見直すべき具体的なポイントは以下の5点です。

見直しポイント
具体的な施策例
期待される効果
1.顕在層に偏った予算配分の最適化 リスティング広告の精査、SNS・ディスプレイ広告への配分 潜在層へのリーチ拡大とCPC高騰リスクの回避
2.潜在顧客に寄り添うコンテンツへの誘導 課題解決型のホワイトペーパーやコラムの配信 ターゲットの興味喚起とブランドの自然な記憶定着
3.動画広告の戦略的導入 業務課題と解決策を物語形式で伝える動画配信 複雑な提供価値の理解促進と高い記憶定着効果
4.リターゲティング広告の「育成型」への役割刷新 開発思想インタビューや事例記事の段階的配信 信頼感の醸成と専門パートナーとしての認知
5.評価基準を「視認(ビューアブル)重視」へ転換 ビューアブル率、動画再生完了率のKPI採用 良質な広告枠の確保と、中長期的なROIの向上

1.顕在層に偏った予算配分の最適化

競合の参入によってCPCが高騰しやすいキーワードへの過度な予算投下を適切に見直しましょう。生み出した余力を、SNS広告やディスプレイネットワーク(GDNなど)といった、自社が狙う業界・職種のターゲットへ広くアプローチできる配信面へとシフトし、認知の土台を広げます。

2.潜在顧客に寄り添うコンテンツへの誘導

製品の機能訴求や「無料トライアル」といった直接的なアクションを促す訴求だけでなく、ターゲットが日々直面している業務課題に焦点を当てたお役立ち資料(ホワイトペーパー)やコラムへの誘導し、即時の獲得ではなく課題啓発を通じて自社の固有価値を自然な形で記憶へ定着させます。

3.動画広告の戦略的導入

バナーやテキストなどの静的広告だけでは伝わりにくい複雑な提供価値や信頼感を補うため、動画広告を検討しましょう。ターゲットが共感する業務課題とそれに対する解決策をストーリーとして届けることで、記憶への定着を促し、将来の第一想起につなげます。

4.リターゲティング広告の「育成型」への役割刷新

過去にサイトを訪れたユーザーに対して、画一的な問い合わせ促進バナーを過度な頻度で繰り返し配信する運用を見直しましょう。自社の開発思想を伝えるインタビューや、業界特有の成功事例といった中身の濃いコンテンツを段階的に露出させ、信頼できる専門パートナーとしての位置づけを確立していきます。

5.評価基準を「視認(ビューアブル)重視」へ転換

「その場でコンバージョンしたか」という短期指標のみで配信面を評価すると、潜在層へ届く良質な広告枠の価値を見落としてしまう可能性があります。ターゲットの画面に広告が適切に表示されたか(ビューアブルインプレッションや動画再生完了率)を重視し、日常の動線上で何度も目にする安心感を醸成していきましょう。

想起形成を目的としたBtoBマーケティング広告の効果測定方法

出稿目的を獲得から想起形成へと見直した際、従来の「CV(コンバージョン)数」や「CPA」といった短期成果を中心とした評価指標だけでは、広告の持つ中長期的な価値を正しく評価できなくなる場合があります。

想起形成型広告は中長期的なブランド浸透や認知度向上を目的とするため、短期的なリード獲得数にとらわれず、ブランドの認知度や顧客の記憶への定着度を示す多角的な評価体制を構築することが重要です。

評価体制構築のポイントは以下の2点です。

  1. 指名検索数の推移による市場認知の可視化
  2. 定期的なブランド認知度調査による純粋想起の測定

1. 指名検索数の推移による市場認知の可視化

Web広告の出稿目的をシフトさせた後、一般名詞(例:「BtoB 〇〇システム」)ではなく、自社の「サービス名」や「ブランド名」で直接検索された回数がどれだけ伸びたかを追跡します。

固有のサービス名で検索される回数の増加は、広告に触れた瞬間にクリックしなかった潜在ユーザーが、後から自発的に情報を探し始めていることを示すため、想起形成の成果を捉える先行指標として活用できます。特にBtoB領域では購買決定までのプロセスが長いため、即時の反応ではなく、こうした段階的な興味の高まりを捉えることが重要です。

なお近年は、買い手が初期リサーチを検索エンジンではなく生成AIに委ね、「〇〇の課題解決でおすすめは?」とAIに直接尋ねるケースも増えています。この場合、検索ログには表れない一方で、AIの回答に自社が名指しで挙がること自体が、想起形成が進んだことを示すシグナルとなります。指名検索数の追跡とあわせて、主要な生成AIで自社が想起・推奨されるかを定期的に確認することも、これからの市場認知の可視化に有効です。

指名検索数を効果的に分析・活用するための具体的なアプローチは以下の通りです。

分析視点
具体的な内容
運用上のポイント
時系列分析 広告出稿開始前後の指名検索数の変動を比較 季節要因や市場動向を考慮し、単純な増減ではなく中長期のトレンドを把握する
広告施策との相関 キャンペーンや特定施策の実施期間と指名検索数増加の関連性を確認 施策内容(動画・ディスプレイなど)ごとに区分けし、効果的なアプローチを特定する
競合比較 競合ブランドの指名検索動向と比較し、自社の市場ポジションを評価 競合分析を通じて、自社の差別化ポイントやメッセージの浸透度を見直す
地域・属性別分析 ターゲット地域や業種ごとの指名検索数を把握 セグメント別の効果測定により、今後の広告配信のさらなる最適化を図る
生成AIでの想起確認 主要な生成AIに「〇〇の課題解決でおすすめは?」と課題ベースで質問し、自社が回答に挙がるか・推奨順位を記録する モデルや時期、質問の仕方で結果が変動するため、質問文を固定して定点観測する。指名検索数と並ぶ想起の先行指標として捉える

2. 定期的なブランド認知度調査による純粋想起の測定

ブランド認知度の定量的な広がりだけでなく、潜在顧客の記憶にどれだけ深くブランドが刻まれているかを把握するために有効な手段が、定期的な「純粋想起率」の測定です。

純粋想起とは、ブランド名の選択肢をあらかじめ提示せず、顧客が自力で思い浮かべるブランドを挙げてもらう測定方法です。このうち、課題やカテゴリーから真っ先に名前が挙がる割合が「第一想起率(トップ・オブ・マインド)」であり、本記事が重視してきた指標にあたります。ターゲット市場で「〇〇のサービス(課題解決)といえば?」と尋ね、自社プロダクトが最初に挙がる割合(第一想起率)を定期的に測定しましょう。

Web上の行動データだけでは見えない「顧客の脳内シェアの変化」を定量化できるため、出稿方法の見直しが中長期の投資として妥当であるかを判断する材料となります。
具体的な調査の設計においては、対象となる市場の潜在顧客層に対して無作為抽出のアンケートを実施し、以下のような多角的な質問項目を設定してみましょう。

純粋想起・ブランド調査の質問設計例

  • 純粋想起・第一想起の把握:「〇〇の課題を解決するサービスで、最初に思い浮かべる企業や製品はどこですか?」
  • 認知度の全体像把握:「以下のブランドの中で、あなたが知っているものをすべて選んでください(助成想起)」
  • ブランドイメージの質的評価:「そのブランドに対して、どのようなイメージや印象を持っていますか?」

定期的な調査によって、単なる認知率の数値だけでなく、想起されるブランドの順位やイメージの変化を分析することで、広告戦略の改善ポイントやブランド価値向上の方向性をより精緻に見出すことが可能となります。

指名される企業になるには「面でのアプローチ」も重要

本記事では、価格競争から脱却して「指名される企業」になるためのWeb広告の見直し戦略と、シフト後に不可欠となる新しいKPIの仕組みについて解説しました。

構築したブランド価値をベースに想起形成を狙う際、一部のターゲットに絞り込んだ狭いWeb広告だけでは、市場全体に認知を広げるスピードが遅すぎるという課題に直面することがあります。より効率的に市場へ価値を浸透させるためには、従来の枠組みを超えたアプローチも視野に入れる必要があります。

  • 「面」でのアプローチ:潜在層へ一気にアプローチし、数万人・数千社規模に同時にメッセージを届ける
  • マスマーケティングの活用:タクシー広告やTVCMなどは、BtoB企業においても認知拡大の有効な選択肢となる

土台となるWeb広告の運用を見直した後は、自社の成長フェーズに合わせて、こうしたダイナミックな手法を検討していくことが次のステップとなります。

わたしたち電通B2Bイニシアティブは、BtoB事業の成長を加速させるデマンドジェネレーションとブランディングのプロフェッショナルです。

電通グループの強みである広範なネットワークと豊富なデータ資産、そしてBtoBに特化した専門チームの知見を活かし、以下の領域をトータルで支援します。

  • 事業戦略の立案
  • 顧客体験(CX)の最適化
  • マーケティング/営業活動の支援
  • DX推進

わたしたちの核にあるのは、広告コミュニケーションで培ってきた「人の心を動かす力」です。この力を活用し、経営・人材・組織・事業といったあらゆるレイヤーにおける課題に向き合いながら、具体的な施策の実行から最終的な成果を分析・改善し続けるためのサイクルの創出まで伴走します。

単なる「施策の提供」にとどまらず、強いブランドづくりや売れる仕組みの構築を通じて、企業の持続的な成長と信頼性の高いパートナーシップの実現を目指します。

デジタル領域における、BtoBに特化した多様なご支援が可能ですので、ぜひ一度ご相談ください。

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