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パーパスCMがYouTubeで2,000万回再生!パナソニック コネクトの企業ブランディングとは(後編)

作成者: B2B Compass編集部|Feb 16, 2024 8:09:40 AM

前編では、パナソニック コネクトにおけるブランディング施策の取り組みについて、企業パーパスの策定からYouTubeの再生回数が2,000万回を超えるに至った経緯をご紹介しました。

後編となる本記事では、BtoB企業にとってのパーパスブランディングの重要性や社内への浸透のさせ方、広告施策の取り組みなどについてお話を伺い、おまとめしております。また、今後のパナソニック コネクトとしての展望についてもお聞きしておりますので、ぜひご一読ください。

 

ブランドガイドを策定し、誰しもが「コネクトらしく」発信できるように

遠藤:パーパスを軸に様々な接点でのコミュニケーションを設計していったとのことですが、社員数が約3万人ということで、発信部門も多岐に渡るのではないかと思います。どのように一貫性を担保していったのでしょうか?

 

飯干:パナソニック コネクト独自のブランドガイドを策定しました。冒頭の話のように、パナソニック コネクトにはさまざまな事業部門があり、それぞれが違うお客様とコミュニケーションをとっています。その際に一貫性のあるコミュニケーションでコネクトらしい世界観を作っていく必要がありました。そこでブランドガイドを作り、誰しもが「コネクトらしく」発信できるように、会社としてのコミュニケーションの望ましい姿を示しました。

このブランドガイドの特徴は、これが「絶対に守らなければならないルール」ではなく、コネクトらしく発信するために留意すべきポイントや、それをコンテンツに落とし込む際に参考にする指針となっているところだと思います。必須で守らなくてはならないのはブランドロゴの扱いくらいです。それでも、パーパスをブランド表現に落とし込み、コンテンツを制作する上での大切にすべき視点、フォント、カラー、デザインパターンなど、色んな要素を定めました。国内外のコンテンツ制作に携わる社員と制作会社の方にブランドガイド説明会を実施し、より活用しやすいようにパワポなどのデザインテンプレートを提供し、迷ったときには簡単に問合せできる仕組みを作ったり、皆さんが実践しやすいように工夫しています。

パーパスの社内への浸透

遠藤:「社員の思いを一つにするため」に策定したパーパス。企業の人格として社外発信の軸になるだけではなく、社内への浸透にも力を入れたのでしょうか?

 

飯干:そうですね。新会社ローンチの3か月前から様々な国内外の社内コミュニケーションを実施しました。グループ再編は、ビジネスを変革することを目的としていますから、当然そのビジネスをドライブしていく社員自身も変革していく必要があります。環境の変化や自分たちに期待される変化を前向きにワクワクとした期待をもって受け止め、社員の中に一体感を醸成していくことが重要でした。

先ほどのブランドガイドもパーパスやコアバリューの浸透につながりますが、他には例えば、イントラに特設サイトを作り、社名やパーパス、コアバリューに込めた思いをCEOの樋口の言葉で掲載したり、Ch.Yasuというライブストリーミング番組を新たに始め、樋口自身の言葉で想いをカジュアルに発信したり、事業会社になると何が変わるのか、経理・人事・マーケティングなど機能軸で起こり得る変化を番組で解説したり。新しい会社紹介をローンチ前に制作して社内に向け先に公開しましたし、Teams会議の背景やメールフッターなどのデジタルアセットも準備しましたし、国内外の社員全員にステッカーを配布したりもしました。パーパス・コアバリューの浸透施策は、人事総務と連携を密にしながら、今でも継続して行っています。

 

遠藤:例えばどんな取り組みをされましたか?

飯干:弊社の社員が日常的に企業パーパスやコアバリューに触れる機会を増やすことが大事だと考えたため、国内の各地の事業場のオフィスブランディングも進めました。オフィスに企業パーパスとコアバリューを装飾し、日常の中で企業パーパスとコアバリューに触れる環境を作りました。

また、パーパスを実現していくためには、社員一人ひとりがコアバリューを実践して行く必要がありますので、今年度からはコアバリューの発揮度が一つの人事評価指標になっています。

BtoB企業にとってのパーパスブランディングの重要性

唐澤:改めて、パーパスブランディングの重要性について教えてください。

 

飯干:8割以上のエンタープライズ企業のCXOが、BtoBディールの意思決定をする際にその企業のブランドを考慮するという調査結果もあります。取引単価が高いということに加え、取り扱っているものが、私どもが販売するような「ソリューション」である場合はなおさら、その企業のブランドの信頼性がビジネスに直結すると考えます。

お客様のビジネスの現場で起こっている課題を深掘りし、最適化していくソリューションを提案し、導入して頂き、運用して頂くということは、お客様が求めているのはソリューションであると同時に、お客様ご自身のビジネス改革を進めるためのビジネスパートナーでもあるわけです。今日立ち上がったばかりの名も無い企業のままでいては、会話の土俵にすら立てません。そういった意味で、企業ブランディングはBtoB企業がビジネスを優位に進めていく上でとても重要です。

ブランドコミュニケーションを、「会社として何ができるか」というレイヤーで行うと、能力を訴求する点では良いのかもしれませんが、当社のように事業内容が多岐に渡る場合、事業が変わるとまるで別の会社であるかのようなバラバラの印象を与えてしまいます。誰が発信しても、時代が変わっても、パーパスという普遍的なものを軸にすることで、一貫した印象を形成していく、ということを大切にしました。その積み重ねが「コネクトらしさ」を色濃くしていき、ブランドを強くしていくのだと思います。

 

地道にコツコツと取り組んでいった広告施策

遠藤:取り組んできた広告施策について教えてください。

飯干:ターゲットをしっかりと整理した上で、広告施策を実施したものの、やったこと自体はとてもオーソドックスで、奇をてらったようなことはしていません。

会社が立ち上がって3ヶ月は、とにかく露出を増やすために、ビジネス関心層を睨みつつも一般層に寄せてCMを打ったり、タクシー広告を出したり、駅構内や山手線のOOH広告を出したりしました。その後は出稿量が減った分、ビジネス関心層に重点を置いてデジタル広告の設計をし、コツコツと積み上げていきました。

 

遠藤:そのほかに、具体的に実施したことはありますか?

 

飯干:これは広告施策ではありませんが、例えば、メディアをお招きしてのラウンドテーブルを何度か開き、ぶら下がりの対応をしてCXOと記者との関係を構築したり、社内の事であっても可能な限りニュース性を持たせて発信していったりしました。例えば、今年の入社式で生成AIが制作した挨拶文を、CEO樋口のアバターが読み上げるということを実施したのですが、報道番組を含む多くのメディアで取り上げて頂きました。また、直接的な露出にはつながらなくとも、事業内容や業界をより深く知って頂くためのメディアセミナーを開催したり、記者の方が当社の情報や素材を探しやすくするために企業サイト内にNews Roomを開設したり、メディアとのリレーションの構築には注力してきたと思います。

発足したてのころは、記事の見出しで「パナソニック子会社」と表記されることが多かったのですが、「パナソニック コネクト」と社名を出していただけるよう地道に働きかけ、最近では限られたスペースでも「パナコネクト」などと記載頂けることも増えてきました。

企業ブランディングで採用活動に良い影響が生まれた

遠藤:企業ブランディングの成果として、目に見えて良かったと言えるものはありますか?

 

飯干:採用には良い影響が出ていると実感しています。発足の22年4月時点で、前年(CNS社時代)と比較すると、「パナソニック コネクト」関連でサーチリフトが約7倍になっていました。23年もサーチの伸び率はグループ内トップでした。今年度のインターンも、想定の4倍もの学生さんがご参加下さいましたし、何より出席率がほぼ100%だったのは、当社への興味・関心の強さの表れかと、ものすごく嬉しく思いました。    

 

遠藤:その他に、成果などはありましたか?

 

飯干:新会社ローンチの際のIMCで実施したことのひとつで、CEO樋口が『パナソニック覚醒』という本を出版しています。CNS社時代からどのように企業改革を進めてきたのかをまとめたもので、Amazonの売れ筋ランキングでは出版1か月後も「経営診断」のカテゴリでベストセラー1位を獲得するほどご好評頂きました。

例えば、フォーマリティ排除のために推進した服装のカジュアル化が評価され、樋口が企業代表としては初となるベストジーニスト賞を頂きましたし、フリーアドレスというオフィスのスタイルに加え、企業変革の考え方も評価頂き日経ニューオフィス賞も頂きました。もちろんこういった表層的な部分だけではなく、本にも記載がありますが、痛みを伴うものも含め様々な改革を行ってきています。そういう過去から積み上げてきた一つひとつが少しずつ浸透してきたのか、色んな企業様から「オフィス見学もかねて、企業改革についてお話をお聞きしたい」とお声がけ頂く機会が増えました。

『NIKKEI BtoBマーケティングアワード』にてブランディング賞を頂いたことでも、講演会にお声がかかったり、今回のようなインタビューの機会を頂いたりしています。私たちは「現場から 社会を動かし 未来へつなぐ」会社です。企業改革にしろ、企業ブランディングにしろ、コネクトの取り組みが少しでも他社様の参考になり、より良い未来につながるのであれば、この上ない喜びです!

多くの方に、コネクトのファンになって頂きたい

唐澤:最後に、今後の展望について教えてください。

 

飯干:パナソニック コネクトのステークホルダーは、お客様、パートナー様、投資家、採用対象者、社員と様々いますが、パーパスCM制作のところでもお話しした通り、「パナソニック コネクトが目指す未来は、なんだかワクワクするぞ」という期待を持ってもらうことを目指してコミュニケーション活動を行っています。つまり、一人でも多くの方に、コネクトのファンになって頂きたいのです。

コネクトのオウンドメディアである「GEMBA」では、事業だけでなく、コネクトの企業のカルチャーや社員一人ひとりに焦点を当てたコンテンツも多く発信しています。コネクトの取り組みを内側からレポートする「From the Inside」シリーズや、コネクトでイキイキと自分らしく働く社員を紹介する「Meet the CONNECTer」シリーズ、先ほどお話したCh.Yasuのアーカイブ動画などもご覧いただけます。

ビジネスケイパビリティをしっかり示していくのは当然として、「GEMBA」や他の接点を通じて、コネクトの価値観や姿勢、人となりに共感を持って頂き、期待感を醸成していきたいです。そしてその先に、多くの人の中で「ああ、パナソニック コネクトって、あの会社でしょ?」という想起がとれるようになったら最高ですね。

あとがき

パナソニック コネクト株式会社の飯干氏にインタビュー形式でお話を伺い、2022年4月に誕生して知名度がゼロの段階からいかに企業ブランディングを成功させたかを前編・後編にわたりお聞きしました。

本記事の内容がBtoB企業のブランディング施策成功の一助となりますと幸いです。