電通グループによる横断型の組織「電通B2Bイニシアティブ」が主催するBtoBマーケター向けの勉強会「B2B Connect」。
2026年4月23日に開催された第3回目では、パナソニック コネクトの関口昭如氏による「顧客価値起点マーケティング」をテーマにした基調講演に加え、後半ではシークレットゲストとしてNECの沖達朗氏が登壇。企業や業界の壁を越えた白熱のディスカッションが行われました。
INDEX
従業員500名以上のエンタープライズ企業を対象に、BtoBマーケティングの第一線で活躍する事業部長や役員クラスが完全招待制で集結する「B2B Connect」。
第3回の開会にあたり、座長を務めるNTTドコモビジネスの徳田泰幸氏が壇上に立ちました。徳田氏は過去2回の勉強会を振り返りつつ、「マーケティングが事業全体をカバーするようになり、重要度が増している。これからのマーケティング部門は、プロモーションを単発で見るだけでなく、データドリブンにレベニュー(収益)を見ていく組織へと成長していかなければならない」と、BtoBマーケティングのこれからを分析しました。
NTTドコモビジネス株式会社 ビジネスソリューション本部 事業推進部 グロースマーケティング推進室長
徳田泰幸氏
そのうえで、「マーケティング部門は、どうしても施策やツールといった『手法論』に走りやすい。しかし、もっと根底の部分で考えなければならないことがある」と提起しました。
組織全体で共通言語により本質的な目的を共有することの重要性が示され、参加者の視線が一段と熱を帯びたところで、いよいよイベントが幕を開けました。
第1部の基調講演では、パナソニック コネクト株式会社のデジタルカスタマーエクスペリエンス エグゼクティブであり、日本マーケティング協会の理事も務める関口昭如氏が登壇し、「顧客価値起点マーケティング」をテーマに熱弁を振るいました。
前職において、LTV(顧客生涯価値)ベースで1200億円もの利益を創出した実績をもつ関口氏。
その驚異的な数字の裏側には、SFAによる極めてストイックな運用があると語ります。
「マーケティングの貢献度について、営業が10か0かで考える。マーケ側が『自分たちの成果だ』と思っても、営業が0だと言えば0になる」と、あえて厳しい思考をすることで、自己満足を排し、営業が本当に認めた成果のみを計上。こうした姿勢により、経営層に対しても説得力のあるLTVを提示できたという生々しいエピソードに、会場の関心は一気に引きつけられました。
講演の核となったのは、戦略と戦術のズレを解消するためのフレームワーク「ブループリント」です。
関口氏は、「ターゲットがはっきりせず、何が独自価値かも分からないまま、商品発表の2ヶ月前に『プロモーションをお願いします』と丸投げされることがあった」という自身の苦い経験から、この仕組みを導入したと語ります。
ブループリントでは、主に以下の4つの要素を徹底的に定義し、ドキュメント化します。
特に「独自価値の発見」においては、1社の顧客理解に対して10時間以上を費やす泥臭い「N1分析」を実践していると関口氏。
マーケティング部門内に留まらず、営業やSEなど関係者を巻き込んだ部署横断での議論を通じて、「本当に自社にしかない価値は何なのか」を突き詰めることで、プロダクトの改善アイデアや、全く新しいターゲット層の発見に繋げているという実態を語りました。
関口氏の熱量たっぷりの講演を受けて、参加者同士のグループディスカッションへ。各テーブルでは、自社の現状と講演内容を照らし合わせながら、参加者同士の活発な意見交換が行われました。
一方的な感想の共有に留まらず、「自社ではこうだが、どう考えればいいか」といった、実務に裏打ちされた双方向的な議論に会場はさらにヒートアップ。
各グループの発表では、マーケターの役割がLTVやステークホルダーのイネーブルメントまで広がっていることへの共感が示される一方で、大企業ならではの「プロダクトアウトの罠」についても議論が及びました。
特に、「商品企画の段階で承認を取ること自体が目的になってしまい、その後のマーケティングプロセスでPDCAが回せていない」という生々しい課題が共有されると、会場のあちこちで深く頷く姿が見られました。
この熱気をさらに高めたのが、登壇者である関口氏と参加者の間で繰り広げられた熱いラリーです。
NEC沖達朗氏から関口氏へ「ブループリントに沿ってプロジェクトを進めるときと、そうでないときの大きな違いやメリットは何か?」という鋭い「逆質問」が飛び出す一幕も。
これに対し関口氏は、「ブループリントを用いることで、部門間でターゲットの認識が全く違っていることが可視化され、共通言語化できることが大きな効果」と即答。
「共通言語化」がいかに泥臭く、かつ組織を動かすうえで避けては通れないプロセスであるかという深い示唆を与え、会場全体が納得感と熱狂に包まれました。
休憩を挟んで行われた第2部では、第1回から参加しているNECの沖達朗氏がシークレットゲストとして登壇。
「表に出にくいBtoBマーケティングの実務」をテーマに、大規模組織における改革の実情が語られました。
セッションでは、大企業のBtoBマーケターが直面しやすいテーマとして、以下の「3つの壁」が提示されました。
これらは特定の企業に限った話ではなく、参加した多くのBtoBマーケターが日々直面している普遍的なテーマです。
表舞台では語られることのない改革の苦労やジレンマが赤裸々に示されると、参加者は自身の実務と重ね合わせるように真剣な面持ちで聞き入り、会場には深い共感の空気が広がりました。
沖氏からの課題提起を受け、2回目の参加者ディスカッションは一層加熱。BtoBマーケター共通の悩みや知恵が次々と共有され、さらに学びは深まっていきます。
「若手のモチベーションは高いが、経営層の意識を変えるのが難しい」
「施策ごとの『点』のデータは取れているが、売上貢献という『線』での可視化ができていない」
など、投資判断を仰ぐ際のもどかしさを感じている担当者は少なくないようです。
また、他業界の視点からは、「一つの指標を定点観測で追い続けることの重要性」や、「システム投資の前に、まずは予算配分を変えるなど、お金をかけずにインパクトを出す工夫が必要」といった具体的なアドバイスも飛び交いました。
さらに、“ツールの形骸化問題”について、「営業に対し、なぜ使わないのかをヒアリングし、教育や設計から見直すべきだ」という、本質に立ち返った示唆に富む議論に発展。
ディスカッションの講評として、アドバイザリーを務める電通コンサルティングの宮下剛氏は「システム投資の前に、まずは予算の配分を変えるなどお金をかけずにインパクトを出すことが重要。SFAの入力も、これからは『量』から『質』へ、広告のためではなく営業自身の成績を上げるための入力へと変わっていくべきだ」と実践的なアドバイスを送りました。
株式会社電通コンサルティング 宮下剛氏
本質的な議論による深い共感と、他社のアプローチからなんとか解決の糸口を探ろうとする参加者の熱量により、会場はまさに“共創”の一体感に包まれた2時間となりました。
イベント終了後、基調講演を行った関口氏は、「皆さんも同じようなことで悩まれている方が多いと感じました」と参加者の熱量に手応えを示しつつ、「課題解決のヒントは、意外と社内にあるもの。自分たちの独自価値を知っているのに、同じ方向を向いていなかったり、うまく共通言語化されていないケースが多いはずです」と、改めて社内における「共通言語化」の実践を呼びかけました。
第2部でシークレットゲストとして赤裸々な課題を共有したNECの沖氏は、「普段、外に出す情報は綺麗なものが多いですが、その裏側で苦しんでいることや、ちょっと恥ずかしいようなリアルな部分をお話しできたのは非常に貴重な機会でした」と振り返ります。「どんな反応をされるか不安もありましたが、多くの方に共感していただき、議論が盛り上がって嬉しかったです。『ああ、みんな悩みは一緒なんだな』と実感しました」と、参加者同士の深いつながりに笑顔を見せました。
また、徳田氏は、「手段ばかりが先行してしまうなかで、どうやって共通言語を作っていくのかが本日の最も大切なキーワードでした」と総括。「BtoB企業においてマーケティング部門は肩身の狭い思いをすることが多いですが、どうやって存在意義を出し、成果を可視化していくのか、各社が共通の課題を持っていると実感できました」と、企業を超えて悩みを共有することの意義を語りました。
BtoBマーケティングにおける「共通言語化」という本質的な課題に向き合い、企業や業界の壁を越えて知恵を出し合った第3回「Dentsu B2B Connect」。
マーケター同士が繋がり、共創するこの場から、BtoBマーケティング変革の新たな一歩が始まろうとしています。