ども〜B2Biニューヨーク特派員のようこです!さてさて、今回はマーケティング予算の設定と配分について少し硬いトピックとなりますが、非常に重要なポイントとなりますので、海外事業が始めての方でもわかるように解説していきますので、是非お付き合いください!
海外進出企業にとって、マーケティング予算編成と配分は事業の成功を左右させる非常に重要な部分となります。計画的で効果的なマーケティング施策と予算編成なしでは、マーケティング費用の掛けすぎや、逆に予算をかけられずに非効率なマーケティング施策に繋がってしまい、結果的に財務的な負担や非効率なリソース配分や投資収益率(ROI)を招きかねません。
一方、海外進出に挑む多くの企業は、「海外のマーケティングの予算感が分からない」や「海外でのマーケティング予算は国内マーケティングとどう違うか?」等というお声をよく聞きます。
そこで、今回のブログでは、米国の現地企業や北米進出している企業が採用しているマーケティング予算の決め方と配分ポイントに焦点を当て、他社でも実践できるマーケティング予算決めと配分ポイントについて解説します。
単なるルーチンワークではない、海外でのB2Bマーケティングの目標を確実に達成するための戦略的マーケティング予算の組み方のステップと戦略的アプローチを学んでいきましょう。
ステップ① リサーチ&競合分析
B2Bマーケティングの予算策定において、一番大切と言っても過言ではない競合他社調査。海外進出では未知となる地域や市場をいちから学び、十分に理解する事や、競合他社に関する情報収集は非常に大切なステップとなります。
主に、B2B競合他社のリサーチと分析ポイントとして、競合他社の企業規模や、顧客の経済状況やコストの考慮などを検討し、自社が新市場で提供する価値や他社との違いを再確認し、自社サービスもしくは商品の価値の最高の伝え方や、伝えるためにベストなチャネルを見い出していきましょう。
さらに、検索広告、ディスプレイ広告、業界特化型の広告などの分野で、競合他社が実施しているキャンペーンの分析や競合他社が投資を行っているチャネルやメディアの確認をする事で、自社でどのような対策、若しくはどのチャネルでどんなキャンペーンを行うべきか等を考え、予算の検討要項として把握するようにしましょう。
その他、競合の収益に対するマーケティング予算の割合もできる範囲で把握しておきましょう。これにより、マーケティング予算の規模感を明確にし、競争率の高いマーケティング戦略に挑む事ができるようになります。ここでいう収益に対するマーケティング予算の算出方法やベンチマークに関してはステップ③でより詳しく解説していきます。
ステップ② 事業目標の明確化
このステップでは、ビジネスや事業のゴールを明確化し、設定していく事から始め、ビジネスの目標達成のためのマーケティング戦略をより効果的に実行するために必要な支出額を決定します。
事業目標と一致したマーケティング目標を見い出し、効果的なマーケティング予算を組むためのマーケティング戦略の短〜長期のマーケティング目標を決定しましょう。下記のような主要業績評価指標(KPI)を具体的に設定するとよいでしょう。
短期的なマーケティング目標の具体例:
長期的なマーケティング目標の具体例:
ステップ③ 予算決定:一般的なマーケティング予算の決定方法
B2B、B2C関わらず海外(特に北米)の企業がマーケティング予算を決定する際、一般的に大きく分けて4つの方法が多くみられます。
その1:競合ベース
競合他社のペイ・パー・クリック(PPC)単価などを分析し、自社のマーケティング予算を設定したり、競合の収益ベースでのマーケティング投資額の割合に基づき予算を立てる方法となります。ただ、リード単価だけで決める目線だと、実際に「使えないリード」も「商談や受注に至るリード」も同じ扱いになってしまい、単なるデジタル広告のコスト追求だけになる点には注意が必要です。
その2:ゴールベース
事業目標ベースで設定する予算計画では、経営陣とマーケティング部門が事業目標に沿ってマーケティング指標を決め、それを達成するための予算を設定する方法となります。
例えば、事業目標が認知向上したいのであれば、マーケティング目標がソーシャルメディアでフォロワー数を獲得したり、顧客獲得の拡大を目標とするならば、ウェブサイトやコンテンツを通じてコンバージョン件数を達成することなど、具体的なマーケティングの指標値にビジネス目標と照らし合わせて金銭的価値を割り当てて考える場合も多くあります。例として、ウェブサイト経由の問い合わせは1件あたり100ドルの価値があるとして、100件を獲得すれば10,000ドル相当するなどと割り当てることができます。
海外、特に北米の多くの企業はこれら4つの方法をミックスした独自の予算策定方法を利用し、マーケティング施策に望んでいるため、これらのポイントとステップをよく理解し予算の取り決めに活用するようにしましょう。
その3:売上高・収益ベース
一般的に、海外企業のマーケティング予算はB2B、B2C関わらず売上高に占める割合が望ましいとされています。しかし、実際の割合は企業規模、業界の競争力、業界や市場の状況、具体的なビジネス目標によって異なる事も事実です。
海外のB2B企業は売上高の6.5%から9.5%をマーケティングに割り当てる企業が多く、新しいビジネスやベンチャー事業の場合は、この割合以上に投資する事が多いでしょう。また、知名度がまだない創業5年未満の企業は、マーケティングに10%から12%を費やす場合もあります。
アメリカのデロイト社の調査では、B2Cサービス(6.5%)、B2Bサービス(5.9%)と平均して売上の約7.8%がマーケティング予算に充てられている事がわかります。また、ガートナー社の調査では、B2Bマーケティング予算の平均は企業収益の約11.2%と調査結果が出ており、10パーセント台を上回る場合も多く見受けられます。カナダの銀行BDC社は、B2B企業は売上の2~5%をマーケティングに費やすべきと推奨しており、北米でのB2B企業のマーケティング予算はおおよそ5~10パーセントの間を推移している事が分かります。
アメリカのデロイト社の調査かわ分かる、業界別で見る収益ベースの割合で算出するマーケティング投資額は下記のベンチマークを参考にしてみてください。
その4:トップダウン
トップダウンの予算計画では、四半期や年度にいくら使うべきか、経営陣が数字を決定し、マーケティング部門に予算額を渡すという設定方法となります。
また、予算決めだけではなく、マーケティング予算の配分も効率的なマーケティング施策を行い、予算の最適化を図るためには非常に重要なポイントとなります。マーケティング予算の最大限の費用対効果を出すためにも下記4つの予算配分のポイントを押さえておきましょう。
ポイント① 事業目標達成のためのタッチポイント
B2B事業のマーケティング予算配分には、上記の予算決定方法ステップ②で明確化した事業の大きな目標を明確にしておくことが重要となります。
そこから、下記のようなB2Bマーケティング・バイヤーファネルを利用し、どの戦術やチャネルが最も効果的かを割り出し、これら事業の目標を達成するためにどのようなユーザータッチポイントが必要かを策定していきます。
例えば、もっと見込み客(リード数)を増やしたいと考えているのであれば、ユーザーの問題解決に役立ち、価値のあるコンテンツを作成すると同時に、自社をその問題解決策の権威やソートリーダーとして位置づけるようなウェブコンテンツを作成する施策などに予算配分のプライオリティ付けをするようにしましょう。
逆に、既存顧客からのクロスセルやアップセルを促したい場合などは、Eメールマーケティングで、よりパーソナライズされたタッチポイントが効果的なため、パーソナライズ化されたメールマーケティングの施策などを優先し、予算配分を検討していきます。
また、以下のようなファネルを作成し、ファネルのどの段階でどの戦術を使うか、もしくは現在使っているかを書き出して見ましょう。これをする事により、どこの部分で多く投資しているのかを確認でき、より効率の良い予算の配分構成を組み立てる事が出来ます。
ポイント② 各ステージ別の配分
ファネルが大きい部分は戦術の数も多くなるため、投資額も比較的大きくなるでしょう。そのため、多くの企業のマーケティング施策のうちで最も費用がかかるのは認知度向上であるともいえます。予算配分と内訳例は以下のようになります:
例)予算配分と内訳例
認知拡大ステージ: 予算の40%
有料広告(Google、LinkedIn)
SEO など
検討ステージ: 予算の30%
コンテンツ作成・SEO
検討&購買ステージ: 予算の30%
Eメールマーケティング、SEO、ウェブサイトUX・UIの向上 - 15%
新製品プロモーション、アンケート、限定オファー など- 15%
一つ、ポイントとして覚えておきたいのが、最も費用対効果が高いのは、小さな変化で大きな効果をもたらす一番下の部分となる場合があるという点です。
ファネルの最下位部分の購買・購買後のステージや検討ステージから順に戦略を立てていくことは、実際非常に効果的で、問い合わせフォームの更新やCTAの改善などから、よりパーソナライズされたEメールなどのタッチポイントでの小さな改善が、見込み客をより質の高いリードに押し上げてくれる可能性があります。
また、ファネルの最下位から行う施策は素早くできて、簡単で、低コストである事も魅力の一つです。そこから、信頼を築くためにどのようなツールやリソースが必要かを特定し、見込み客にそれらのリソースを宣伝できる認知段階へと、ファネルを段階ずつ登っていくような戦略も視野に入れながら予算の配分を検討する事もよいでしょう。
ポイント③ データ回収と分析方法
そして成果のモニタリングをするレポーティングへの投資もしっかりと怠らずに予算配分に入れていきましょう。どの施策が最も効果的なのか、各事業の目標に併わせ、包括的なデータレポートの抽出を取り入れてマーケティング施策に取り組みましょう。
それにより、どのマーケティング施策が効果的で効率が良いか、そしてどの部分で失敗しており、改善を必要としているのかを包括的に理解できるような体制作りをするようにしましょう。
ポイント④ ROIの計測
BtoBマーケティングには必要不可欠なROIの計測も、マーケティング予算配分の検討事項として策定し、再確認しておきます。上記、予算決定方法ステップ②で明確化した事業の大きな目標のROI計測に必要なマーケティングの指標とKPI、計測方法を明確にしておきましょう。
これにより、年内の施策の優先順位を決めやすくなるほか、事業目標の達成に必要な水準を数値化することで目標に対する進捗が把握しやすくなり、必要に応じて予算の配分を最適化することも容易となり、結果としてマーケティングの効率性と効果性の向上に繋がりやすくなります。
おまけ:
よくあるマーケティング予算編成の落とし穴
マーケティング予算の策定には多くの事業要素が絡むため、様々なミスに繋がりかねません。このプロセスで間違うと、全体として効果的なマーケティングを施行する事が難しくなり、財政的な問題にもつながりかねません。以下、典型的な予算計画の間違いをいくつか挙げてみました。予算を立てる際には、これらのミスに気をつけるようにしましょう。
間違いその1:新しく、効果的なマーケティング施策に投資したがらない。
多くの企業は、新しいマーケティング施策が効果的であると証明されていたとしても、長年慣れているマーケティング施策に資金を投入しがちです。消費者の動向は常に変わりつつあるため、今まで効果的だったマーケティング手法が常に効果的であるとは限りません。そのため、新しい施策と既存の施策を併せて投資をし、変化する市場環境に対応できるような体制と予算作りを目指すことをお勧めします。
間違いその2:データの質の不改善。
有効なマーケティング手法だからと言って、闇雲にマーケティング施策に手を出すことは、財務上のリスクをもたらす可能性があるためお勧めしません。マーケティング施策を実施するにあたり、リード情報を見直す必要があります。しかしそのデータのクオリティが低いままでは非効率なマーケティングにつながってしまうため、まずは既存のデータに目を通し、異常値や矛盾しているデータなどの取り除きに努め、データの質の向上に努めましょう。
間違いその3:新規顧客の構築に集中しがち。
マーケティング施策の展開事、より多くの見込み客をセールスファネルに通したいがために、トップファネルをとことん広げなければならないというプレッシャーを感じるかもしれません。しかし、新規顧客を増やすことは、既存顧客を維持することよりもコストがかかることが多いのも事実です。より安定した収益と利益向上のためにも、既存顧客の維持やリテンションの改善に集中したほうが良い場合も多々あるため、ビジネスの目標と併せ、マーケティングファネルを見直し、ビッグピクチャーを視野に入れた施策を考慮しましょう。
間違いその4:前年度予算の引き継ぎ。
最後に、消費者動向は毎年変わるため、前年度のマーケティング予算を単純に引き継ぐことも避けるようにしましょう。年々変化する消費者の優先順位や市場の動向を考慮し、予算編成には毎年の企業目標の再評価と市場の新しい動向なども組み込んで、新しいテクノロジーや社会的な変化がもたらす市場の機会を見逃さないよう、予算の見直しと微調整、それから新施策にチャレンジをできるような予算の組み方を検討しましょう。
最後に
海外事業での成功にはマーケティング予算の適切な設定と効果的な配分が鍵となります。
B2Bマーケティング予算の編成は、単なるルーチンワークではなく、俊敏性、戦略的な企画性、包括的な計画を必要とするダイナミックなプロセスです。
だからこそ、競合他社を調査し、事業目標を定め、現地の企業と戦えるマーケティング予算を決定し、的確に配分することが非常に重要となります。企業の持続的なビジネスの成果と成功を達成するためにも以上のステップを踏まえ、予算の決定と配分に取り組むようにしましょう。
いかがでしたか?
海外事業のマーケティング予算編成は未知な部分が多いかもしれないですが、このブログが少しでも皆さまの理解を深め、今後の参考になれれば幸いです。次回もまたニューヨークから海外進出で知っておきたいB2Bマーケティング情報をお届けしますので乞うご期待!