近年、ビジネスの自動化を進めるための手段として、RPA(Robotic Process Automation)が注目を集めています。RPAはロボットが人間のようにパソコンを操作することで、定型的な作業を自動化する技術のことです。
しかし、このRPAの導入には業界ごとに異なる特性やニーズが存在するため、どのような業界であってもRPAを導入する際には市場動向を把握し、自身のビジネスに合ったツールを選定することが重要となります。
本記事では、最新のRPAの市場動向をまとめ、業界別のツール選定意図を紐解くことで、RPA導入の成功に役立つ情報をご提供いたします。無料でダウンロードできる調査データもご用意しておりますので、そちらも合わせてお読みいただければ幸いです。
RPA(Robotic Process Automation)の注目度が高まっている昨今。
AIやIoTと並ぶデジタルトランスフォーメーション(DX)の主役として、その効果を各企業が試行錯誤しながら実感し始めています。
本項目では、RPAが国内外でどのように認知されているのか、そして今後どのような展開が予想されるのかについて詳しく解説いたします。
はじめに、RPAの国内市場がどのように成長してきたのかを見ていきます。
株式会社矢野経済研究所の2020年における調査によれば、RPA(ロボットによる業務自動化)の国内市場は順調に拡大し、今後も右肩上がりの推移が予測されています。
新型コロナウイルスによる社会の変化もRPAの導入を加速させる一因となっているようです。
出典:株式会社矢野経済研究所「RPA市場に関する調査(2020年)」(2020年12月7日発表)
年商50億円以上の大企業では導入率が2022年時点で45%に上り、前年比では8%増です。これは一定の経済力を持つ企業において、RPAが業務効率化の重要な手段と認識されつつあることを示しています。
それに対し年商50億円未満の企業の導入率は12%と低く、大きな企業との間には明らかなギャップが存在します。しかし、逆に言えば小規模企業におけるRPAの普及余地が大いにあるとも言えるでしょう。
出典:RPA活用有無がビジネスプロセス自動化に格差を生む ≪ プレスリリース | 株式会社MM総研
RPAは海外市場でも注目が集まっています。
近年、欧米を中心にRPAの導入が進んでおり、その市場規模は急速に拡大。
特にDX化が進む企業においては、生産性向上や業務効率化の手段としてRPAの重要性が認識されています。
また新型コロナウイルスの影響により、リモートワークが一般化する中、人手不足を補うための選択肢としてRPAが選ばれるケースも増えているようです。
海外市場においては今後も高い成長率を維持すると見られており、AIとの融合やクラウド化が進むRPA技術の進化、また新興国を中心としたインターネット普及率の上昇やデジタル化の進行などが理由に挙げられます。
RPAの海外市場は引き続き拡大傾向です。その動向は国内市場にも多大な影響を与えることが予想されますし、国内外のRPA市場の動向は見逃さないようにしましょう。
RPAの将来性について考える上で、海外市場の動向を無視することはできません。Precedence Researchのデータを見てみると、海外市場におけるRPAの利用は右肩上がりで推移し続けていますが、これは企業が手作業に依存する業務を自動化し、効率化を図るためにRPAを積極的に導入している結果と言えるでしょう。
出典:Robotic Process Automation Market Size, Report 2024-2033
この流れは今後も続くと予想されており、中でも注目すべきはアメリカにおける10年後の予想です。その予想は非常に高水準で、RPAの市場規模はさらに拡大することが見込まれています。
出典:Robotic Process Automation Market Size, Report 2024-2033
こういった予想からも、RPAは国内だけではなく世界規模で市場が大きくなっており、その将来性は非常に明るいと言えます。
本セクションでは、国内外でどのRPAツールが主要なシェアを占めているか、そのランキングをご紹介。その上で、RPAツールは利用者のニーズに合わせてどのように分類され、どのツールがどのような特性や特徴を持っているのかを解説していきます。
MM総研が2020年に公開した調査結果によると、大手企業の場合、RPAツールの導入状況は非常に競争が激しくなっています。導入されているブランドのシェアは、各社紙一重の差で分けられていることが確認できますが、特に目立つ存在がUiPathです。
UiPathが提供するRPAソフトウェアは、視覚的な設計機能や豊富な機能性、幅広い対応範囲が評価されています。なんと浸透率は全体の45%と、その人気は圧倒的です。
それを追う形で40%の浸透率を獲得しているのがBizRobo!です。
BizRobo!は、初めてRPAを導入する企業にとって取り組みやすいツールとして評価されており、シェア率は着実に増加しています。
またWinActorも38%の浸透率と、ランキング上位に名を連ねています。WinActorは国産のRPAツールで、日本企業のニーズにしっかりと応えてくれる点が特徴的です。
WinActorは大手企業だけでなく中小企業での導入実績も多く、2024年の最新調査によれば中小企業でのシェアがトップであるとわかっています。
出典:RPA国内利用動向調査2020 ≪ プレスリリース | 株式会社MM総研
参考:RPAツール導入シェア1位は「WinActor」、2位は「BizRobo!」─ノークリサーチ | IT Leaders
こういった結果から、国内のRPAツール市場では各社が独自の強みを活かしながら競争を繰り広げていることが明らかです。各ツールの特性を理解し、自社の業務フローに最適なツールを選択することがRPA導入の成功につながると言えるでしょう。
スタートアップ&最新テクノロジーメディア・TechCrunchの最新コラムによれば、海外市場においてもRPAツールのシェア率トップはUiPathであると明らかになっています。その後Automation AnywhereとBlue Prismが続いているようです。
これらの大手ツールが優位に立っている一方、新たなプレイヤーも市場に参入し競争を激化させている模様。今後も海外RPAツールの市場は技術革新とビジネスニーズの変化に応じて変動し続けると予想され、その動向を追い続けることは重要なキーとなりそうです。
参考:RPA market surges as investors, vendors capitalize on pandemic-driven tech shift | TechCrunch
RPAツールはその導入形態により、
の3つに大別されます。
導入の簡単さ、運用の自由度、コスト面などさまざまな観点から自社にとって最適なツールを選ぶようにしましょう。自社の業務内容や導入環境に最適なRPAツールを選択することこそ、効率的な業務自動化を実現する上で重要な要素となるのです。
国内RPAツールシェアランキングの上位3つを見てみると、いずれもサーバー型・デスクトップ型に分類されます。なおBizRobo!のみサーバー型・デスクトップ型にくわえてクラウド型も提供しており、基本同じ型ではあるものの、ツールごとに特徴差が見られ、ここがシェア率にも影響していると考えられます。
UiPathは国内だけでなく海外でも一定のシェアを持ち、世界的に広く使われているRPAツール。業務自動化にかかわる幅広い製品ポートフォリオを持っていることと、導入実績の豊富さが魅力的です。開発者向けの機能が強いため、大規模かつ複雑な業務処理の自動化に最適といわれています。
BizRobo!は製品形態の豊富さとさまざまなプランが用意されていることから、導入ハードルの低いRPAツールとして知られています。ロボットをバックグラウンドで実行できたり、スケジュール機能を標準装備にしていたりなど、安定的な稼働能力が高い点が特徴的です。
NTTグループが開発した純国産RPAツール・WinActor。国内企業のニーズに特化した機能を有しており、すべて日本語表記な上、使い勝手も簡単なことから、初心者やスモールスタートに最適です。そのため現場主導で導入しても効果を発揮しやすいともいわれています。
先述の通り、実際に中小企業でのシェアも高いことから、気軽で使い勝手が良いツールであると伺えるでしょう。
業種別の導入状況を理解することも、自社に最適なRPAツールの選択や導入計画を立てるための参考となるでしょう。
顧客が直面する課題を把握することで、導入にあたっての潜在的な問題点を事前に予測し、解決策を考えられるようになるはずです。
本セクションでは、RPAツールの導入における業種別の動向、顧客が直面する課題、そして顧客の購買意思決定に影響を与える要素について詳しく解説いたします。
RPAツールの導入状況は業種によりさまざまですが、Biz Clipの調査によると2019年時点で金融業界や通信業界での導入率が高いことがわかっています。導入による効果予測がしやすかったこともあり、当時金融業界では40%以上、通信業界では50%以上がすでにRPAツールを導入している状況だったようです。
出典:【NTT西日本 Biz Clip調査レポート(第13回)「あなたの会社、RPA導入していますか<2019>】
金融業界を筆頭に、新型コロナウイルスによる働き方の変化や製品の質向上などのさまざまな背景から、他業種でも導入が進んでいます。たとえば流通・小売業界はRPAの力を発揮しやすいと考えられ、積極的に導入する企業が増えてきているようです。
一般企業だけでなく、教育業界や医療業界においても効率化やコスト削減のためにRPAツールが注目されています。各業種での業務改善や生産性向上の一助となっており、その導入は今後も広がっていくと予想されます。
企業がRPAツールの導入を検討する背景には多くの課題が存在しています。
スターティアレイズの2023年の調査によると、導入前の課題で最も多かったのは「手作業による業務が多い」という点。多くの企業が、人手に頼った業務を自動化することで、業務の効率化を図ろうとしていることがわかります。
その他の課題としては「手作業によるミスが多い」、「DXや働き方改革の推進」が続きます。特に手作業によるミスは業務の品質や効率に大きな影響を及ぼすため、その解消は喫緊の課題と言えるでしょう。
またDXや働き方改革の推進は、企業の競争力を維持・向上させるために重要な要素であり、その実現の一助としてRPAツールの導入が検討されています。
こういった課題に対する解決策としてRPAツールの導入を考える企業が増えており、その動向が明確になっています。
実際、RPAをふくむシステム関連ツールの導入において、顧客はどのような検討段階を踏むものなのでしょうか。
そこで、電通B2Bイニシアティブが2021年に調査した「B2B購買担当者調査【ITインフラ・システム開発編】」を抜粋する形でご紹介いたします。
とくにRPAをふくむシステム関連ツールを取り扱うご担当者さまにおいては、顧客とのコミュニケーションや商談材料にぜひご活用ください。
全体の傾向として、年に1回の頻度で商材を検討する企業が最も多いことがわかります。ここから、顧客とは長期的な観点で継続したつながりが必要そうだと伺えます。
一発注あたりの年間予算で多いのは「100万円以上〜500万円未満」「500万円以上〜1000万円未満」となります。また売り上げ規模と年間予算にはある程度の相関関係があることがわかります。
情報収集〜選定を経て、実際に問い合わせ等をおこなう企業数で最も多いのは「3社」でした。一発注の予算別に、最も多い問い合わせ企業数を見てみると、50万円未満が「2社」、50万円〜500万円未満が「3社」500万円以上で「4社」となります。
ブランド営業マンとコンタクトをとる時点での絞り込み企業数では、「3〜4社」「1〜2社」がボリュームゾーンとなります。
コンタクトタイミングについては、全体的に「情報収集」のタイミングでおこなわれることが多いようです。また売り上げ規模が1000億円以上、一発注の平均予算が5000万円以上の企業では、「要件定義」も同じくらい高いパーセンテージを獲得しています。
選定時の情報源として、全体的に多いのは「営業による説明・提案機会」でした。売り上げ規模別に見てみると、100〜1000億円未満の場合「日本経済新聞」や「研修・セミナー」「YouTube」などが高い傾向にあり、メディアを活用した能動的な情報収集状況が伺えます。
さまざまなデータから、RPAは今後国内外ともに市場が拡大し、伸びしろがある分野であるとわかりました。国内においては、2019年時点では大手企業のさらに売り上げ規模が高い企業を中心に普及している状況でしたが、新型コロナウイルスによる働き方の変化をきっかけに、企業規模や業種にかかわらない導入傾向が見え始めています。
業種によって導入のしやすさは変わりますが、働き方の変化はもちろん、昨今の人手不足な状況も相まって、RPAはますます注目されると考えられます。
次回は導入率の高い3ツールにフォーカスし、課題や目的に応じた選定方法を詳しくお伝えします。